私の名前はトム・マールヴォロ・リドル   作:ライアン

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「ワイはハグリッドと約束したから人間食べんぞ!」←ほーんなるほどな、ハグリッドは無実だったんやな
「でも、それはワイとハグリッドの間の約束であってワイの嫁や子どもにとっては関係ない話やろ?」←所詮は畜生か……


後輩

 トム・リドルが秘密の部屋を発見したという事は当然ながら大きな話題となった。

 多くの生徒たちは困惑した。スリザリンの秘密の部屋を継承する事が出来るのはサラザール・スリザリンの後継者のみであり、その証拠とばかりにトムはサラザール・スリザリンと同じパーセルマウスであり、秘密の部屋に存在したバジリスクを自分の物としたからだ。

 

 これがトムが入学したばかりの一年の時であれば、多くの者は困惑する事無くスリザリン所属のこの上なく優秀な生徒がスリザリンの後継者となったことを納得して受け止めただろう。純血主義の生徒はかのスリザリンの後継者が現れた事を喜びトムを純血主義のプリンスとして仰ぎ、そうではないマグル生まれの生徒などはトムがバジリスクを自分達にけしかけるのではないかと恐怖するという真逆の反応で以て。

 しかし、トム・リドルがマグル生まれ、マグル育ちの人間を迫害する純血主義者どころか、そうした生徒をむしろ積極的に庇い純血主義について散々に懐疑的な立場を取っていた事はホグワーツに於いてはもはや周知の事実だ。故にこその困惑。何故彼がスリザリンの後継者になったのか?と誰もが訝しがった。

 

「その理由は至って簡単。この僕トム・リドルはスリザリンの後継者等ではなく、サラザール・スリザリンを超える者だからだ。サラザール・スリザリンは確かに偉大な魔法使いだったのだろう、彼の掲げた純血主義にも確かな理が彼の存命時(・・・・・)に於いては存在したのだろうーーーそれは認めよう。だがしかし、彼がこの世を去ってから一体どれだけの時が流れたと思う?魔法界には彼の掲げた純血主義を超克すべき時代が来ているという事であり、それを果たすのが偉大なるアルバス・ダンブルドアの愛弟子たるこの僕トム・リドルであるというだけの事さ!」

 

 日間予言者新聞のインタビューに於いてトムは自信に満ちた態度で応えた。

 彼のこの宣言は純血の王とも謳われるブラック家を筆頭に多くの純血の名家から憎悪を買った一方で、純血主義に反感を抱いていた多くの魔法使いから歓迎された。

 またホラス・スラグホーンのように純血の名家の生まれであってもトムの味方をしてくれる者も居たーーーただ自分も精一杯目をかけているつもりのトムが恩師としてダンブルドアの事ばかり語るのには多少スネた態度を見せたが。

 

 如何に優秀とは言えバジリスクを一生徒に委ねるという行為に対する危惧の声も挙がった。

 バジリスクは毒蛇の王とも謳われる極めて危険な生物である。魔法省の分類に於いて魔法使い殺しであり、訓練することも、飼いならすこともできない存在たるXXXXXへと分類されており、その飼育が禁止されている生物だ。

 ましてサラザール・スリザリンが残して1000年もの間生きた存在ともなればその脅威は通常のバジリスクを遥かに超える事が予想された。如何にダンブルドアの再来等と囁かれている才気溢れる魔法使いとは言え、トム・リドルは未だ12歳の少年。任せるには余りに未熟であり、魔法省の管理下に置くべきだとそう考える者が出るのはむしろ必然とさえ言えただろう。そしてそれを覆すには未だ学生の身であるトム・リドルには余りに実績というものが不足していた。

 

 故にトムにとっては甚だ不本意ながらも、バジリスクはトムから引き離されようとしていたのだがーーー

 

「諸君は彼が余りにも幼く未熟故にバジリスクを飼育出来る実績が不足していると言う。

 しかし、そもそもそう言う諸君の中に果たしてバジリスクを飼育したという実績を持つ者が居るじゃろうか?

 無視し得ぬ事実としてそもそもバジリスクが主として認めているのはトム・リドルのみであり、そしてかのバジリスクは主である彼の命を守り他者を害するような行いを働いた事はない。それこそが何物にも勝る実績と言えるのではないかな?」

 

 そうダンブルドアはトムを擁護すると共に、自身がトム・リドルの後見人を引き受けてもしもバジリスクが彼の制御から離れて誰かを害するような事があれば、自分が責任を取って始末するとまで宣言。イギリス魔法界最強の盾にして史上最悪の闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドを唯一打倒し得る魔法使いとして尊敬の念を集める、この偉大な魔法使いに此処まで言われては魔法省としても引き下がる他無かった。

 当然のようにトムのダンブルドアに寄せる尊敬と信頼の念はますます深まった。彼にとってダンブルドアからの信頼を裏切る行為は何物にも勝る禁忌となった。彼はバジリスクに自身が考える最もハイセンスで素晴らしい名前である「ヴォルデモート」*1という名前を贈ると同時に、決して人を傷つけないよう命じた。

 

「ヴォルデモート、もしも君がこの禁を犯した時は僕は友である君をこの世で最も信頼する父が殺す事となるのを認めなければならない。そんな事は僕にとってはこの身を引き裂かれるような悲劇だ、わかってくれるね?」

 

 主となったトムからの言葉にヴォルデモートは全面的に従った。元々彼はこの千年間自ら人を襲った事はない、主である継承者から命じられれば何の抵抗もなくそれをするし、襲われれば抵抗もするが、そうでないのならば自分から人間をわざわざ襲う理由は彼には存在しなかった。

 バジリスクを従えたトムに対立状態にあった生徒たちは完全に恐れを為した。そうした生徒たちの下をトムは微笑を湛えながら訪れ、過去の諍いを水に流して魔法界の同胞として、ホグワーツの仲間として下らない差別など止めて共に切磋琢磨していく事を提案した。バジリスクを従えたスリザリンの継承者から差し伸べられた手を払いのけるような度胸のある者はおらず、表立ってのマグル生まれやマグル育ちへの嫌がらせはなくなり、トムは彼らから深く感謝されたのであった。

 

・・・

 

 3年生になったトムは相も変わらず順調そのものの学生生活を送っていた。

 極めて優秀で優れた精神ととてもハンサムなトムは教師から目をかけられ、先輩からも可愛がられ、多くの友人が出来て、多くの彼を慕う後輩が出来た。そしてそんな彼を慕う後輩の中にルビウス・ハグリッドという生徒が存在した。

 

 ハグリッドは魔法使いとしてはお世辞にも優秀とは言い難く、また短慮で口が軽く、欠点を挙げだせばキリがない少年であった。しかし、トムはこの寮の違う手間のかかってしょうがない後輩を殊の外可愛がった。それは手間のかかる後輩でも決して見捨てない彼の人格の公正さと素晴らしさの表れという部分も存在したが、それだけならば後輩の中でもハグリッドを特に目にかける事は無かっただろう。彼がハグリッドを特別可愛がった理由、それはハグリッドがヴォルデモートの素晴らしさを理解する数少ない、生徒の中では唯一の、存在だったからだ。

 

 それまでの評判と日間予言者新聞での宣言、そしてダンブルドアが後見人となった事でトムがパーセルマウスの使い手だと判明しても、友人たちはトムを怖がったりはしなかったが、ヴォルデモートに関しては別だった。何せかのサラザール・スリザリンが残した毒蛇の王、どれほどトムが大丈夫だと保証しても進んで会いたいと思う者等そう居るはずもなかった。だがハグリッドだけは違った。彼は入学してトムがバジリスクを従えているとしるや否やその目を輝かせながらトムへと頼み込んできたのだ。是非ともバジリスクに会わせて欲しいと。

 

「すげぇ……綺麗で……素敵だ……」

 

 興奮を顕にうっとりとした様子でヴォルデモートを見つめるハグリッドにトムはすっかり気分を良くした。

 

「先輩はヴォルデモートと話せるのか!?なんて凄いんだ!!!」

 

 トムがパーセルマウスである事を知ったハグリッドはそんな風にトムを尊敬の眼差しで見つめてきた。

 秘密の部屋を出る頃にはトムはすっかりこの2つ年下のグリフィンドールの後輩の事を気に入り、何か困った事があれば先輩として最大限力になると約束し、ハグリッドはそんなトムに満面の笑みでお礼を言いーーートムが思わず安易に約束した事を後悔する程のレベルでトムに苦労をかけた。

 

 しかし、トムはこの欠点は挙げだせばキリがなく凄まじく手はかかるが自身への尊敬の念を顕にしてくる気のいい後輩を見捨てる事は出来ず、ハグリッドの方はハグリッドの方で凄まじく優秀で何かと自分を助けてくれる優しい先輩をそれこそ兄のように慕い、両者の関係は生涯に渡って続く事となったのであった。

 

*1
フランス語で死の飛翔を意味しており、死の魔眼を持つバジリスクにピッタリな素晴らしい名前だとトムは自負している




トム「ダンブルドア先生は本当に素晴らしい先生なんだ!」
ハグリッド「トム先輩は本当にすげぇ先輩なんだ!」
ハリー「誰だこいつら」

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