ヴォルデモート(原作)「なんだぁ……てめぇ……」
7話で終わると言いましたが、7話では多分終わりません。
5年生が始まる直前、己の出生を知ったトムはダンブルドアからある申し出を受けていた。
「トム、君が望むのであれば儂は君を正式に儂の養子に迎え入れる用意があるが、どうかな?」
それはトムにとっては願ってもない提案であった。きっと少し前にこの提案をされていればトムは一も二もなくこの申し出を受け容れていただろう。
「ありがとうございます、ダンブルドア先生。でもきっと僕がダンブルドア先生の養子になったとなれば、皆噂する事でしょう。やはり、僕はダンブルドア先生の隠し子だったんだなんて風に。先生に迷惑をおかけしてしまいます」
「トム、子どもというのは親に苦労をかけて大きくなるものじゃよ。気にする事はない」
「ありがとうございます、でも良いんです。ダンブルドア先生が僕の事を、息子のようだと、そう思ってくれていると知れただけで僕は十分なんです。それに、僕がダンブルドア先生の息子だと、そうなったらきっと魔法界に存在する純血主義は無くならないと思うんです。トム・リドルが優秀だったのはアルバス・ダンブルドアの息子だったからーーーやはり、親の才能というのは子どもにも受け継がれる、だから純血主義は間違っていないんだとそんな具合に。僕は、それが嫌なんです。僕は皆の希望になりたい。純血の魔法使いの母とマグルの父との間に生まれた僕でも、こんな立派な魔法使いになれたんだ。だからーーー純血じゃなかったとしても自分の出自に負い目を覚える必要なんて無いんだと示したい。「あのトム・マールヴォロ・リドルだって父親はマグルだったじゃないか」とそんな風に言われるようになりたいんです」
ダンブルドアは雷に打たれたかのように一瞬固まった。そして、感極まったようにゆるゆると首を振った。
「トム、君は儂にとっての誇りじゃ。君という生徒を、そして息子を持てた事を儂は心より誇りに思う」
・・・
5年生となったトムは当然のように監督生になったーーーそして自身の両親についての話をするようになった。
家族から虐待を受けていた哀れな女メローピー・ゴーント、そしてそんなメローピーが悪魔の囁きに耳を貸して欲望の赴くがままに、マグルの父親に愛の妙薬を使い、出来た子どもが自分なのだと。純血の魔法使いにして碌でなしの祖父マールヴォロ・ゴーント、そしてマグルにして母によって人生を狂わされた父親トム・リドル、それを持つのが自分トム・マールヴォロ・リドルなのだと。
トムを快く思って居ない者は当然のようにトムへの罵倒にそれを利用するようになった。
とてもハンサムな上に、監督生に選出される程に優秀で親切なトムは当然のようにモテたので、リドルは母親と同じように愛の妙薬を使ったに違いない等とそんな具合にだ。
そうした罵倒をトムは鼻で笑った。自分の出自を明かした時にその手の程度が低い煽りをしてくる者が出てくる事など、トムはとっくの昔に想定していた。「モテない男の嫉妬は醜いものだね」「君たちが言うところの自らの血を裏切った売女が穢れたマグルと交わった末に出来た子どもが、君たちの崇めるサラザール・スリザリンの後継者に選ばれたわけだが、その辺り由緒正しき血統を持たれる純血のお方々はどうお考えなのかな?」と小馬鹿にするように笑いながら言ってやると、相手は忽ち顔を真赤にしてこれまた程度が低い罵倒をしてきたが、それらはトムにとっては何ら痛痒を覚えるものではなかった。
また、純血の中にもそうした罵倒に参加しない者も居た。彼らはいい意味での名門としての誇りを抱いている者達であった。「純血主義が間違っているとは思わないが、それはそれとしてトム・リドルの優秀さは認めざるを得ないーーーだからこそ誇り高き純血の名門である自分達はトム・リドルよりも優秀である事を示す事で自らの正しさを証明しなければならない。程度の低い罵倒をしている暇があるのならば自らの力を高めるべし」と言うわけだ。決して仲が良いというわけではない、だがそうした者達の向けてくる清廉な競争意識はトムにとっても心地良いものだったし、互いの間には確かな敬意が存在した。
ーーー真の友とは決して一度も喧嘩しない存在の事を言うのではない。時にはぶつかり合う事も必要じゃろう。
かつて偉大なる恩師がスリザリンの中で自分が孤立した時に語ってくれた言葉をトムは思い出した。
そして同時にスリザリンでまことの友を得るという組分け帽子の歌が嘘ではない事をトムは理解した。
きっと友情にはこんな風に互いに意地を張り合いながら、刺激し合うそんな関係もあるのだ。
そんなわけでトム・マールヴォロ・リドルの中にはもはや自身の出自に対する恐怖や負い目というものはほとんど消えていた。
何故ならばこの世で最も偉大な存在が、自分を息子のように思っていてくれたのだという事をトムは知ったから。そしてそんな出自等気にせず変わらぬ友情を以て接してくれる多くの友人が居たから。「出自を明かした自分の堂々とした態度に勇気づけられた」そんな事を言ってくる多くの後輩が居たから。トムが特に目をかけて、手をかけさせられている可愛い後輩ルビウス・ハグリッドもそんな一人であった。彼はトムへと告白した。実は自分の母親が巨人である事を。そしてその事で他ならぬトムに、優しくて素晴らしく優秀な魔法使いな偉大な先輩に対してコンプレックスを抱いていた事を。
「実はずっと不安だったんだ……先輩は俺なんかと違って優しくて、賢くて、ダンブルドア先生の再来なんて言われる位に優秀で、皆からも慕われて監督生にまで選出された。一方の俺と来たら、図体ばかりでかくて、間抜けで、ドジで、先輩やダンブルドア先生に迷惑かけてばかりの問題児だ。だから、ダンブルドア先生が実は先輩の親だって噂聞いた時俺は思ったんだ。ああ、やっぱり先輩のような立派な人の親はダンブルドア先生のような立派な人なんだ、俺みたいな半巨人はどう足掻いたところで先輩のようにはなれないんだって……何時か先輩に愛想を尽かされるんじゃないかって、母親が巨人だって知った先輩が冷たい目を向けてくるんじゃないかって……そんな失礼な事を考えとったんだ」
何時になく弱々しい様子で語る後輩の言葉にトムは黙って耳を貸していた。
そして彼の最も尊敬する人物を意図的に真似て、とても穏やかな口調で語りかけた。
「ハグリッド、君には確かにいくつもの欠点がある事を僕は良く知っている。だけどそれ以上に君の良いところも知っている。気にする必要はないんだよハグリッド、君は君だ。母親が巨人だったからなんて事にコンプレックスを持つ必要なんて無いんだ。次席のフリットウィックだって半小鬼で首席の僕だって母親が愛の妙薬で父親をたぶらかして生まれたんだぜ?な、気にする必要なんてない事がわかるだろ」
「先輩……!」
泣きじゃくり続ける自分よりも大きな図体を持った、されど小さな弟のような後輩にトムはしばらく胸を貸してやった。ようやく解放された時には、トムの服はハグリッドの涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていてその事に気がついたハグリッドは慌てて平謝りしてきたが、トムは「気にしなくていい洗えばいいだけの事さ」とだけ伝えて、その場で魔法で綺麗にし、笑って許してやるのであった。
ーーー後日ハグリッドがバジリスクと同じカテゴリー:XXXXXに分類されるアクロマンチュラを密かに飼育していた事を知った際は流石に笑って許してやる事は出来ず、常に無い剣幕で真剣に叱った*1が、それでもトムはこの手のかかってしょうがない後輩を見捨てることはせず、そのアラゴグなるアクロマンチュラはハグリッドに懐いており決して人を襲わないとハグリッドと約束した事、校内にはアクロマンチュラの天敵として知られるバジリスクのヴォルデモートが目を光らせている*2為万が一は無いこと、監督生である自分が二度とこのような事は無いようにハグリッドをきちんと教育する事を約束する等、八方手を尽くした事でなんとかハグリッドは放校処分を免れたのであった。
当然、ハグリッドは自身を庇ってくれたトムに誠心誠意お礼を言い、そんなハグリッドの様子にトムは毒気を抜かれたようにため息を漏らしながら、この手のかかる弟分に対して必死に常識というものを一年かけて叩き込み、トム・マールヴォロ・リドルのホグワーツに於ける5年目の時間は過ぎて行ったのであった……
トム「ハグリッドの大馬鹿野郎はどこだ!どこへ行った!」
マクゴナガル「ドラゴンを育てにノルウェーに行くと……」