最初に断っておきます。ほぼっほぼ原作ガン無視です。作者の趣味全開です
どうぞよろしくお願いします・・・
白銀とかぐやの目的であるエンジンだけでなく、ピトー管などの各種計器、信号灯や発煙筒、飛行服、電鍵、果ては特殊ねじに至るまで、航空機に関するありとあらゆる物品が出品されている。
そして、その間を行き交う人々は、各地から集まった航空機製作者や、航空冒険者たちのみならず、興味をそそられて会場を訪れた一般人―――見物客も少なからずいた。そうした見物客を相手に、商品の解説やちょっとした実演を行っている出品者も多い。別会場で行われる展示飛行もその一環である。
空と飛行機に魅せられた人間が集まる場所、それがこの見本市であった。
かくして、その熱気の中に足を踏み入れた白銀とかぐや。目的のエンジン以外、特に見る場所を決めていたわけでもなく、今は適当に会場を見て回っているだけである。
決して少なくはない人ごみの中、それを掻き分け、時折かぐやを気にして歩く白銀。面白そうな展示を見つけては足を止め、かぐやに勧めてくる白銀。
―――何だか本当に、逢引きみたいね。
うきうきと沸き立ってしまう心を何とか覆い隠しながらも、かぐやは上機嫌であった。
飛行服の展示が行われていた場所では、試着をすることができた。猫が好きだという出品者が、猫耳をモチーフに自作したというヘッドフォンが展示されており、かぐやは勧められるまま、それを装着してみた。
「どうですか、会長?」
「・・・まあ、いいんじゃないか」
思ったよりも薄かった反応が若干不満であったため、かぐやは逆に白銀にも被せる。
これがとてもよく似合っていた。理由は上手く説明できない。だが歴然とした事実として、白銀と猫耳の相性は高かったのである。芸術とはかくして生まれるのかと納得させられるくらいには、猫耳ヘッドフォンを装着した白銀は可愛かった。
―――おかわわわわわわわわっ
混乱する内心と、どうしようもない口元の緩みをスキル・舌噛みでごまかし、なんとか事なきを得たかぐやの中で、白銀は猫耳が似合う男子第一位に認定された。
「そろそろ、本命に行くか」
「ええ、そうしましょう」
「それじゃあ、行くぞ」
足を踏み入れた
人間の声がほとんど聞こえない。代わりに普段は聞きなれない轟音が響いている。その正体を、白銀とかぐやは知っていた。
シリンダー内に送られた燃料と空気の混合気が爆発する音。それが連続し、エンジンの軸を力強く回す音。飛行機の心臓が、今目の前で脈動している音である。
「見物客が多いとは聞いていましたが・・・こんなにいらっしゃるのですね」
「まあ、こっちの会場じゃあ、一番の見どころだからな。本物のエンジンを間近で見る機会なんて、この見本市ぐらいしかない」
「それもそうですね。いつも見れないものが見れるって、それだけで楽しいものです」
「だな」
答えつつ、白銀が歩き始めた。目指しているのは、格納庫の中ほどにある展示である。
今回の見本市参加にあたって、航空研究会では作戦会議が執り行われた。石上会計を中心にして予算の折衝が行われ、どの程度の金額でどの程度の性能のエンジンを買うかが、検討された。
結果、カタログ掲載のエンジンの内、候補が三つにまで絞られている。後はそれを白銀とかぐやが実際に見て、どれにするかを決めるのである。
ふと、かぐやは思い出して、白銀を見る。
作戦会議の席上で、白銀が一つ残念そうにしていたことがあった。彼の中では、設計段階からすでに、搭載するエンジンにある程度の想定をしていたらしい。今回その出品がなかったことを、残念がっている様子であった。
ともあれ、四人で話し合って選定したエンジンは、カタログスペックと値段のつり合いが申し分ない。これからその状態を確かめ、どれにするかを見極めるのが、今回の見本市参加の目的である。
まもなく展示運転が始まる、第一候補のエンジンの前に、白銀とかぐやは立った。
「どのエンジンも申し分ないですね」
白銀のメモを眺めつつ、かぐやは今見た三つのエンジンに対する率直な感想を口にした。一旦会場の端までやってきた二人は、据え置きのベンチに腰かけて、最後の話し合いをしている。
「そうだな。中古品でも、相当状態が良かった。余程大切に整備されてきたんだろう」
白銀も感想を漏らす。
この三つであれば、どれを選んでも大きな性能差は出てこないはずである。値段も予算内だ。
白銀とかぐや、二人の意見は、第一候補のエンジンでほぼ固まっていた。
値段は一番張るが、使用期間が最も短く、また摩耗品も新品に換装されていた。整備性もある程度確保されていて、手入れや調整は他の二つより明らかに簡単だ。
持ち帰ってもう一度研究会内で話し合いをしてもいいが、ここで決めてしまった方が納品も早く、手間もかからない。決定権は白銀とかぐやに委ねられているのだ。もうここで決めてしまった方がいいだろう。
「それじゃあ、決まりだな」
白銀が立ち上がり、改めて、第一候補のエンジンへ向かおうとする。かぐやも立ち上がり、それに続こうとした。
だがふと、かぐやの目に何かが止まる。
四宮かぐやは観察眼に優れた人間である。それは元々、他人の能力を見極め、自分にとって有用な人物かを判断するために身についたものであるが、その使い所は何も人間だけに限った話ではない。些細なことも見逃さないのが、かぐやがかぐやたる所以である。でなければ、白銀と恋愛頭脳戦を戦うことなどできはしない。
そのかぐやが、視界の端に何かを認めたのである。
シートで覆われたエンジンが据え置かれていた。ぱっと見、状態は悪くない。展示運転をされるわけでもなく、ただ格納庫の影になっているところに鎮座するエンジン。
エンジンカバーに、開発した社名が刻印されている。それと並んで、エンジンの名前と思しき刻印もある。
ぞわり。かぐやはすぐさま、白銀の袖を引き、彼を引き留めた。
「会長、あれ」
「?どうした?」
振り向いた白銀が、かぐやの指さす方を見る。その動きが止まった。
かと思えば、白銀はすぐに動きだしていた。エンジンまで駆け寄り、近くの整備士に声をかける白銀。
「すみません!このエンジンを、動かしてもらえませんか!?」
初老の整備士は明らかに怪訝な表情を浮かべていた。躊躇うように、白銀に答える。
「お前さん、こいつがどんな代物か知ってて、言ってるのか」
「はい、知っています。ですからお願いします、この目で動いているところを見たいんです」
頭を下げる白銀。かぐやもまた、白銀と同じように頭を下げる。
小さな溜め息を吐いて、整備士が頷いた。
エンジンカバーを外して、潤滑油を可動部に差していく。潤滑油や冷却水の残量確認が手早く行われ、点火プラグの電源が投入されて、燃料油の供給が「切」から「入」に切り替えられた。整備士が取手を取り付け、エナーシャを回す。初動を与えられたエンジンは、シリンダー内の混合気燃焼による爆発のみで軸を回せるようになった。あとは燃料噴射のガバナを操作し、回転数を上げていく。
V字に並べられた十二本のシリンダーがリズミカルに爆発音を奏でる。美しい音色だと、かぐやは感じた。これまで聞いてきたどのエンジン音とも異なる、歌声によく似た軽やかさ、清廉さが聞こえる。
「もういいか」
「・・・はい。ありがとうございます」
整備士が燃料油ガバナを下げ、エンジンへの燃料供給がカットされる。音色は鎮まり、エンジンはゆっくりと回転を止めていった。
かぐやは白銀の顔を窺う。きりりと引き締まった目の中で、瞳が爛々と輝いている。ようやく見つけたと、その感動を物語っている。
「すみません、このエンジンは、」
「悪いが、こいつは売れない。いわくつきだ。縁起が悪すぎる」
だが白銀が言い切る前に、整備士は険しい顔で首を横に振った。
いわくつき。縁起が悪い。あまり穏当とは言えない言葉が、かぐやの胸に刺さる。
「どういうことですか?」
「・・・開発の時に、色々とあったエンジンなんだ」
見定めるようにエンジンを見つめ続ける白銀が答えた。
「主任設計士が相次いで亡くなったり、試作一号機が火災事故を起こしたりな。しかも、戦闘機用に設計されたエンジンだった。関わった人間の命を奪い、あの世へ導くから、『天使』、あるいは『悪魔』。だからエンジンの名前も『ANGEL』になったらしい」
「その通りだ」
白銀の言葉を肯定して、整備士が頷く。
「ANGEL」というエンジンの名前は知っている。それは白銀が初期から想定していたエンジンだ。小型軽量でありながら馬力に優れ、重量あたりの発揮可能な馬力では、先に見て来た三つを上回る。
だが、そんないわくつきのエンジンであるとは、聞かされていなかった。
整備士の話は続く。
「それにこいつは、その中でも極め付けのいわくつきだ。先の戦争で、ある撃墜王の機体に積まれていた。戦争末期にその男は撃墜されたが、それでもこのエンジンだけはしぶとく生き続けた。生まれる前も、生まれた後も、多くの人間の命を奪い続けた。周りのあらゆる人間を飲み込み続けた、とびきりの化け物だ」
「けれど、優秀なエンジンに変わりはありません」
だが、そこで退く白銀ではなかった。
「私には、そのエンジンが必要です」
ハッとしてかぐやは白銀を見る。
真っ直ぐな目線が、「ANGEL」と整備士に向けられている。いつだって真剣で、一直線な白銀の瞳だ。
「・・・おかしな学生さんだな。こいつが怖くないのか」
整備士の問いかけにも、白銀の答えは揺るがなかった。
「機械は人間を殺しません。機械に命をかける人間がいるだけです」
白銀も、整備士も、お互いのことしか見ていない。ただただ真っ直ぐな視線のぶつかり合いから取り残され、かぐやははらはらとしながら見守る他ない。
「・・・その制服、秀知院学園だな。ということは、例の航空研究会か」
溜め息混じりに呟いた整備士は、一旦白銀の前から立ち去り、やがて何かを携えて戻ってくる。それは一枚の紙とペンだった。
「条件がある。お前さんたちの作った機体を、一度見せてくれ」
提示された条件に頷いて、白銀は契約書にサインをした。
ラブコメの二次創作でなんでエンジンの話してんの?
ラブコメっぽかったの最初の方だけだよ?
しかも作者が勉強したのは、航空機用のガソリンエンジンじゃなくて、船舶用のディーゼルエンジンだよね?あんまり知ったかぶりしないようにね?
次回は、はい、ちゃんと(?)ラブコメっぽい話にしたい・・・したくない?
(ここから雑談)
かぐや様の実写化が決まったそうで・・・とりあえず生暖かく見守っていこうかと
ギャグ路線だと、銀魂みたいな成功例もあるし。ね?
そして主人公の石上君も登場し、益々面白くなってきたアニメ。第七話も楽しみです
それからラジオの更新も楽しみ・・・今日だ・・・
あ、センチメンタルクライシスのCD買った!やばい!素晴らしい!ひゃっほう!(深夜テンション)