深海提督、ワンピース世界で生きる(?)   作:菅野アスカ

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深海提督、着任。

「あれえ…?」

 

私の名前は「田辺浅葱」。どこにでも居るようなにわかミリオタ大学院生である。

目覚めると、そこは見知らぬ軍艦の甲板でした。まるで意味が分からんぞ。

 

私、いったい何をしていたんだっけ…?

ええと、確か、寮の私室に戻って…ワンピース読んで…艦これやって、寝たはず…

 

【その疑問には、私たちがお答えしましょう!】

「へ?」

 

女性の声。

振り向くと、そこには―――

 

「歴代エラー娘ええええええええええええええええ!?」

 

そう、妖怪猫吊るし、妖怪猫土下座、妖怪猫パンチ、妖怪猫垂らしが勢ぞろいしていたのである。ちなみに、最初に発言したと思われるのは初代エラー娘だ。

 

【…びっくり、しますよね…】

 

静々というのは、4代目エラー娘。

 

【あの、説明するので、その、聞いていただけますか?】

 

ぺしぺしされつつ、3代目エラー娘が言う。

 

「お、オッケー」

【はい、ありがとうございます】

 

これは初代。初代が1番はきはきとものを言う。3代目は、若干おっかなびっくりという感じ。4代目はぽけーっとした不思議ちゃん系。じゃあ2代目は…

 

【ううっ…こちらの不手際ですぅ…ごめんなさいぃ…】

 

はい、見ての通りの低姿勢。こっちが申し訳なくなってくるほど。

 

【あのですね…ここは、ワンピースの世界です…】

「え、艦これじゃなく?」

【はい…】

 

【えっと、その、我々は艦これ時空の住人なのですが、その…世界のバグで…】

「バグで?」

【あなたの異世界の同一存在、我々の世界の提督が、まだ死ぬ運命ではないのに、死んでしまったんです!】

「は?」

 

【ほら、よく小説とかであるでしょう?平行世界の自分みたいな。あれが異世界にもあって、我々の世界の提督は、観測者時空のあなたと同一のものだったんです】

「は、はあ…」

 

SFはよく読むし、まあわからんでもない。

 

【ひっく、ぐず…それでですね…それを修正し…提督を復活させるべく…あなた方を死なせて身代わりにすることになってしまって…】

「身代わりかい…って、待て。あなた『方』?私以外にもいるの?」

 

【この世界のあなたの同一存在のことです。身代わりにしたっていうのは…運命力を分けてもらった、みたいな?死者蘇生はコストがちょっとあれで、2人分必要だったんですよー】

「あー…私と私を生け贄に私復活、みたいな?」

【…まあ、その感覚でいいです】

 

「でも、私死んだなら、どうしてここにいるの?」

【…お詫び、です。我々がしっかり見張っていれば、今回の事件は起きなかったので。ですので、比較的フレキシブルな、こちらの世界の意思に頼んで、復活させてもらいました。…完全復活ではありませんが…】

「へ?」

 

【ええとですね、その体は、こちらのあなたの体がベースです。でも、精神と魂のベースはあなたで、こちら側の方は記憶やスキルのみにとどまっています。サルベージできたのがそれだけだったんです…すみません】

 

…つまり、この世界の私の体の大部分と記憶とスキル、この私の精神と魂の大部分だけがどうにか持ってこれたと…

 

【それで…種族は…人から船幽霊になっています…。この船…ぷかぷか丸が轟沈しない限り…あなたは生存することができます…。水中でも呼吸が可能で…水圧につぶされることもありません…。暗視もできます…】

「あ、これぷかぷか丸だったの?」

 

【はい。それと、交渉の結果許可が出たので、未使用の部分に深海鎮守府的な物を作っておきました。妖精さんもいますよ。資源も採れるようにしておいたので、大丈夫です。深海棲艦と艦娘、どちらでも建造可能。まあでも、位置が位置だから、深海提督になっちゃいますね】

「えっ?」

 

そういえば私、全然周囲を見ていなかった。

立ち上がってくるっと1回転すると…なんと、ぷかぷか丸はシャボン玉に包まれており、深海に向けて突き進んでいるではありませんか…

 

「…気づくの遅すぎんだろ私…!!!」

【まあまあ、テンパってたんだから仕方ありませんよ。あ、時間軸は本編開始の20年前です。ええと、何か質問は?】

「1つだけ…」

【はい、なんでしょう?】

「ここ…どこ…?」

 

【あ、大事ですねそれ。ここは偉大なる航路(グランドライン)前半の海。目的地はとある放棄された海底都市ですよー。他はないですね?】

「無い」

【よし。では、ごきげんよう…】

 

そう言うと、エラー娘たちは、大気に溶けるように消えていった。

 

「…さて、私はつくまでどうしていようか」

 

自動操縦機能でもあるのか、はたまた彼女らや世界の意思の能力か、ぷかぷか丸は勝手に目的地へと進んでいる。であれば、私がすることはないわけで…

 

「んー…こっちの私の記憶でも見ていようか?」

 

情報確認は大切だ。とりあえず、どんな人物なのかだけでも見てみよう。

 

…名前は「ローレライ・エリーザベト」。海軍准尉…どの世界の私もそっちの道に進んだか。私も、おじいちゃんに止められなかったら、海上自衛隊にでも入ってたんだろうなあ…

名前が名前だし、歌が上手だったから、仲間からは本物のローレライじゃないかって言われてて…うん、歌がうまいっていうのは言われたことないけど、歌うの好きだし、美声とは言われた。

子供のころ、海賊に自分が住んでた街を焼き払われて、正義を求めて海軍に入ったけど、「何か違う」と思い始めた矢先に別の支部に左遷されて、移動中に今回の件で乗ってた船が沈んで1人だけ死亡…うーむ。幸薄い一生だな…

あ、ぷかぷか丸はもともとこの沈んだ船だったのか。それをエラー娘たちがこの形にまで仕立てたと…

 

というか、この記憶だと、黒髪だけど…今の私、白髪っぽいよなあ。しかも、健康的に焼けた小麦色の肌だったのが水死体のごとく青白いし、着てる服も、あっちこっち擦り切れてるけど大日本帝国軍のそれに近い黒と銀の詰襟軍服…

鏡があれば、見られるんだけどな。長門型は居住空間が大きいし、探せばあるかなあ?

 

それにしても、エリーザベト、かあ。名乗るのに、ちょっと…勇気がいる。それに、海軍関係者にバレるかもしれないし…名前は自分で考えよう。

名字は、ローレライみたいなニュアンスで行こうかな。歌う伝説上の生物となると、代表格はセイレーンやハーピー…うーん、ハーピーの原型のハルピュイアが名字っぽいかなあ。うん、いいの思い浮かばないからハルピュイアでいいや。名字はハルピュイアで決定。

名前…エリーザベトのもじりだと、どうしてもエリーとかエリザとかになるよなあ。人名にはそんなに詳しくないし…あ、どこかの王妃のエリーザベトの愛称が「シシィ」だったな。ハルピュイア・シシィ…しっくりこない。かといって、エリーやエリザでもなんか違う。

んー…じゃあ、「メアリー・スー」と「マーティー・ストゥー」、「シシィ」をもじって…「ハルピュイア・メリィ」…あ、これいいかも。

よし、なんか個人的にしっくりくるし、これにしよう。

 

「うん?」

 

ふと前方を見ると、巨大なサンゴのドームに包まれたような都市が見えた。あれが目的地だろうか?サンゴの隙間をシャボン玉の膜が埋めている。中には空気があるようだ。…あれなら、人間でも住めそう。

さらに近づく。

あ、待ってあれ結構綺麗。イタリアとかにありそう。誰かカメラ持ってきてカメラ。できればポラロイド。駄目か。この世界にポラロイドはないか。

 

そんなこと考えているうちに、サンゴドームの下部の門の1つ(あっちこっちに門があるが、その中で最も大きい)が開き、ぷかぷか丸はその中へ進む。

 

『来ましたよ~!!』

『深海提督が深海鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮に入ります!』

 

妖精さん(衣装やカラーリングが深海仕様)たちが出迎えてくれている。可愛い。

 

『いやー、何事もなくついてよかったです!』

『本当に!』

「歓迎ありがとう。…ところで、ここって、なんていう都市?」

『名前はないみたいですよ?』

『魚人さんたちが作りかけのまま放置しちゃったのを、エラー娘さんと私たちで頑張って直したんです!』

「あ、そういえば放棄されたって言ってたな。理由とかわかる?」

 

さすがに立地条件最悪な場所に人呼んだりはせんだろうけど、万が一ということもある。

 

『えっとですね。この辺は嵐になりやすくて、よく船が降ってくるんです』

『それで、作業がいちいち中断されるから、嫌になってほっぽり出したみたいです!』

「…それ、大丈夫なの?」

『大丈夫です!処分に困る大き目のやつはサンゴで引っかかって入ってこないし、小さいのなら何とかなります!』

「そ、そう。じゃあ、大丈夫かな。…でも、名無しは困るな」

 

まさか全体を深海鎮守府と呼ぶわけにもいかないし、かといって名もない都市というのも…

 

『では、提督が名付けたらどうでしょう?』

「…え?」

『あ!!いいですねえ!!』

『だってここ、提督が来ることになったから蘇ることになったんですもん』

 

確かにそうだけど、私のセンスとかたかが知れてる。

アトランティスとか、レムリアとか…あ、そうだ。

海底にできた都市、というわけではないけど。あっちこっちに門があって、水路でつながっているところが何だかそれっぽいし。

 

「じゃあ…イースで」

『イースですか!』

『かっこいいと思います!』

 

はしゃぐ深海妖精さんの可愛さよ…

 

~しばらく後~

 

『それで、ここが提督のお部屋になってます!』

 

この都市、イースの全体と、鎮守府全体を案内してもらった。…と言うと語弊があるか。イースはとにかく広いから、一部だけ見せてもらってざっと説明してもらった。

イースは、丸い都市を4つの太い水路が×の形に区切り、それぞれ、北と東は居住区、西は鎮守府、南は訓練場になっている。

イースの中央には水路が集結…というよりすべての水路の始点があり、イースを包んでいるのと同じサンゴを一部に使用した小舟が数艘ある。これらのサンゴは「ジャイアント・バブリーサンゴ」というものであるらしい。このジャイアント・バブリーサンゴ、ヌタウナギのように表面に自己保護用の粘膜張ってるだけらしい(じゃあなんでバブリーなんて名前付いてんだよ)が、なら酸素はどうなってるのかというと、地上から空気を引いてくるホース(岩礁とかに偽装してあるらしい)があるから大丈夫なんだそうだ。この小舟は空気タンクを乗せているため、コーティング船同様の効果が得られるそうだ。ぷかぷか丸?あれは私が望めば大体何でもなっちゃうそうだよ。船幽霊ってそういうものだっけ?

水路は、太い4本の水路がどんどん枝分かれして、100を超える水路になっている。それぞれの水路の先には門があり、そのまま外に通じている。

訓練場は、よっぽどのことがなきゃ壊れない(らしいけど深海棲艦や艦娘にどれだけ通じるかなあ…)高い壁に囲まれており、鎮守府や居住区に被害が出にくいようになっている。

鎮守府は…アニメの鎮守府とだいたい同じだ。色合いが深海棲艦風だけど。

 

「案内ありがとう」

『今日はお疲れでしょう。もう20時ですし、お休みになりますか?』

「うん、そうする」

『それでは、おやすみなさい』

「おやすみ」

 

深海妖精さんが出て行った後、タンスの中を漁って寝間着を出す。まさか軍服で寝るわけにもいかないし。

さっさと着替えて、眠ろうとして…私は、自分の顔を確認していないのに気づいた。

 

「鏡あるし、確認しちゃおう。」

 

呟いて、私は化粧台の鏡をのぞき込んだ。

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