☆1評価をしてくださったハーフシャフトさん、ありがとうございます!
「『歌う亡霊』ねえ…」
海軍元帥のコングは、報告書を読み、そう呟いた。
その報告書は、ある町で発生した事件について書かれたものだ。
海賊がその町で略奪を始めて少ししてから、世にも妙なる歌声が町中に響き渡り…次の瞬間、亡霊のように青白い肌の女性が、その海賊団の船長の首をはねていたという。
目撃者が描いた、その女性の似顔絵が…
「つい先日、殉職したローレライ准尉に瓜二つ、と…」
黒髪であったローレライと違い、白髪だったが…同じ外見なのである。
誰かの嘆きには手を差し伸べずにいられず、略奪を行う海賊には鬼のように苛烈だったローレライのことだ。無念のあまり亡霊になっていたとしても、不思議ではないな…と、同僚たちは思っていたが、つい先ほど、それが変化した。
原因は、匿名で届けられた、とある小荷物である。
内容は、鍵付きの日記帳、手紙、そして
日記帳の鍵は
手紙は、ローレライの同僚の男性に宛てられたもので、3重の封筒の中に入れられた挙句それぞれにしっかりと封がされていた。
「几帳面なローレライらしい」と思っていた海軍の面々だったが、
『これはきっと、私ことローレライ・エリーザベトの遺書です。
私は、海軍の准尉です。これを拾った方、もしもあなたがお尋ね者なのでしたらごめんなさい。どうか、これを海軍に届けていただきたいのです。
理由は単純。真実を伝えるためです。
私は(雑音によってかき消された)支部へ、異動することになっていました。そのため、この海域を通ることになったのです。この辺りは嵐がよく発生する海域だと聞いていました。実際、外はひどい嵐です。でも……ああ、神様…。
(しばらく、すすり泣きと怒号と雨音)
でも、でも!!一緒に来てくれた人たち…仲間だと、思っていた、のに…!嵐になったのは私のせいだと言って、私に…うう…海に、飛び込め、と…。
それを、拒否、すると…今度は、無理やり放り込もうとして…。
私は今、私に与えられた船室でこれを記録しています。きっと、見つけられたら、壊されてしまうでしょう。ですから、これは、私の日記や手紙と一緒に樽に入れて、流すことにします。筆跡や声で、わかっていただけるでしょうから…。
最後、に…。
itrshbd enqdudq.
ああ、もうあの人たちが入ってきます。もう、終わります…(「出てこい!」「逃げ場はないんだぞ!」などの怒鳴り声が聞こえる)』
これが、内容である。
最後の「itrshbd enqdudq.」は、彼女がよく合言葉に使っていた「Justice forever.(正義よ永遠なれ)」を1つずらしたもの。
そして、声も筆跡も、間違いなくローレライのそれなのである。
そのため…「海軍に恨みを持ったまま死んだローレライが、怨霊になってしまったのでは?」と、考えた人物が大多数になってしまったわけである。
「亡霊だの怨霊だの、馬鹿馬鹿しい…」
ぽつりとつぶやいたコングは、数週間後、その考えを撤回させられることとなる。