複数人が同時に話しているのは《》で表現します。
あれから数週間。
全力で資材を集めまくった結果、資材不足が解消したばかりか、建造がある程度できた。しかも、1回だけだが大型艦建造も。
おかげで、ずいぶん戦力が充実した。
「わあ、すごくいいお砂糖…え、こんなにお安いんですか!」
「お、嬢ちゃんわかってるね~。必死に値切って仕入れてその値段に抑えてるのさ。品質に問題はないぜ!」
「これならあっちも買えそう…このお砂糖2袋ください!」
「よし、2袋だから…」
現在、私たちがいるのは、ある島の商店街。
そして、今、店のおっちゃんと話していたのは…何を隠そう、給糧艦「間宮」である。まさか建造できるとは思わなかった。
なお、街にいるときは私のことを極力「提督」と呼ばせないことにしている。一般市民の方に勘違いされても困るからね。
「ネエ、次ハドコ行ク?」
「私ハ向コウノ古道具屋ガ気ニナル」
この2人は、ゲーム内では見たことのない子たち。「駆逐雨潮棲姫」、種別は名前からもわかる通り駆逐艦。2人合わせて1つの艦だ。
白黒のセーラー服の上に冬物の軍服を羽織り、下にはこれまた白黒の横じまパレオを着用。頭には灰色の角が2本生えているのだが、かなり長いためうさ耳のようで可愛い。髪も灰色で、双方ともにセミロングにしている。
今は出していないが、艤装として、深海仕様の連装砲ちゃんのようなものを1人1体(つまり2体)連れている。かなり目つき悪い。通称ヤンキー連装砲。
呼びわけのために、はおっている軍服が白い方を雨、黒い方を潮と呼んでいる。
17か18くらいの見た目に反して、2人そろって少々子供っぽいところがあり、それでいて人付き合いは若干苦手な模様。ただ、間宮さんには結構懐いているから、こうして一緒にお出かけもする。
「じゃあ、そこ行ってみようか。面白いものありそうだし」
間宮さんの買い物も終わったしね。
~移動中~
その古道具屋は、種類を問わずとにかく大量の品が無造作に置かれていた。
ざっと見ただけでも、照明器具、本、舵輪など統一性がない。というか最後の1つは何故ある。
「あら、包丁。これくらいなら研ぎ直せばまた使えそう」
間宮さんは製菓包丁を見つけてご機嫌である。
「スノードーム…」
「綺麗ネ」
雨潮は端の方に埋もれていたスノードームを発掘、何度もひっくり返して眺めている。
私はというと…
「錨に…これは、ボイラー室のパイプ?船の部品がずいぶんあるんですね」
「おう。処分に困ったもん何もかも俺に押し付けてきやがる。どうにもならねえだろ、それ」
ならばくず鉄屋にでも売ればいいのでは、とは思うのだが、黙っておく。
折れてフジツボに覆われた錨に、元はパイプだったのであろう曲がった破片。そのほかにも、船の何かしらの部品らしきものがわんさかあった。港町だから仕方ないのかもしれないけど…
「じゃあ、これとこれとこれと、あと向こうの鎖ももらいます」
「何に使うんだ?」
「そこは秘密ということで」
普通は鋳溶かして作り直す程度しか使い道の無さそうな物ばかりだが、深海棲艦を建造するのに結構重要なのだ。
3人にねだられた包丁とスノードームも買って、さあ帰ろうとしたその瞬間。
「シシィ!!!生きていたんだね!!!」
叫び声とともに、肩を掴まれた。
振り向いたら、そこには1人の男が立っていた。
顔立ちは、結構整っている。ビジュアル系バンドのベースっぽいと言えばわかるだろうか。朱色とまではいかないものの黄色っぽい赤の髪に、深い紫色の瞳。右耳には豪奢な金のピアスを、左耳には宝石がちりばめられたプラチナのイヤーカフをしている。首筋や腕には薔薇のタトゥーもあり、とにかく派手な見た目だ。
私のことを迷わずシシィと呼んだということは、ローレライの知人だろうか?
「あの、人違いではないでしょうか」
「何を言っているんだい?俺がシシィを見間違えるわけがないじゃないか。ああ、ひょっとして照れているとか?会うのが久々だからって恥ずかしがる必要はないじゃないか、素直になりなよシシィ。そうだ、戻ってくればまたずっと一緒に居られるよ!さあ、シシィ、海軍に戻ろうよ。大丈夫、君を移動させようとした無能はみんな排除しておいたから。ほら、早く!!」
…あれこれヤバい人?
「ちょっとあなた、その人は私たちの知人のメリィさんです。シシィさんという人ではありませんよ」
「なんだお前たちは?俺とシシィの感動の再会に水を差さないでくれ。ここにいるのはシシィだ。シシィ、君からも言ってくれ」
「いえ、この子たちの言っていることは正しいです。私はメリィと言います。ですので離していただけますか?」
「シシィ、なぜそんな酷いことを言うんだい?君はシシィじゃないか」
「ですから人違いで…」
「そうかわかったシシィそいつらが君をたぶらかしたんだねそいつらがいるから一緒に来れないんだね戻ってきたくても戻ってこれないんだね大丈夫だよシシィ今俺が助けてあげる俺が守ってあげる君がもうこんな奴らにつかまらないようにしてあげるもうあんな無能に傷つけられないようにしてあげる君は俺だけのものだシシィ大事なシシィ誰よりきれいな俺だけのシシィ」
アカン(確信)。
「…間宮さん、雨潮、退却するよ!!」
《了解!!!》
男の顔に本気のパンチを叩き込んで肩から手を無理やり離し、雨潮が出したヤンキー連装砲に乗って逃亡する。さすがに姫級の艤装なだけあって、下手な駆逐艦よりずっと早く動けるのだ。雨潮自体、俊足だしね。
「シシィ…?なんで逃げるの…?」
怖いからに決まってんだろうが殺すぞ。
「逃げないでよ…どうして俺から逃げるんだよ…シシィ!!!!!!!!!」
そう叫ぶと、男は恐ろしいほどの速度で追って来る。さらに速度を上げる間宮さんと雨潮とヤンキー連装砲。
最高速度で、逃走した。
~逃走中~
「何だったんだあいつ…」
現在地点、ぷかぷか丸内部。これから帰還する。
「提督のもとになったという、ローレライさんの友人か何かでしょうか…?」
「私アイツキラーイ」
「私モ」
「もうあの島行くのやめようかな…」
あそこが最寄りの島だったんだが…
聞こえてるか、あの世のどこかにいるであろうローレライ。私に受け継がれた記憶にはちっとも残ってないが、あれはお前の彼氏か何かか。
もし違ったとしても、これだけは覚えといてくれ。
あんな置き土産は要らん!!!!!!!!!