百合の伝道師   作:ちんだまんぞう

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あれ?なんかどんどん暗くなってる気が・・・


キミがいなくても

俺の目の前ではいつの間に用意したものであろうか、スポットライトに照らされたハロハピのメンバーが簡易的なライブを行っていた。といってもステージがあるわけではないので、弦巻や北沢なんかは倉庫内を縦横無尽に駆け回っていた。

 

 

「アレか?我々が用意したのだ」

 

 

ぬっ、と俺の背後から先ほどの黒服が登場した。あぁ、確かにこの人たちなら不可能を可能にしてしまいそうだ・・・てかナチュラルに俺の思考を読むな。

 

 

ただまぁなんと言うか、流石はハロハピである。先ほどまで怒り狂っていたホームレス共がライブを楽しんでいる。

 

 

「はい!北沢精肉店の特性コロッケ!美味しいよ!」

 

 

北沢は倉庫内を走り回りつつ、ベースを弾きつつ、コロッケをホームレスに配っていた。確かにこれはある意味で笑顔になるかもしれない。

 

 

流石にドラムセットは用意できなかったのか、松原さんは首からぶら下げるタイプの小太鼓を叩いていた。でもまぁこっちのほうがマーチングっぽいしある意味合っているのかもしれない。なんかふぇぇふぇぇ言ってるけど。

 

 

瀬田さんはずっとなんかポーチングしている。だがしっかり自分のパートをこなしている。というかいちいちポーチングが様になるから何とも言えないのが悔しい。

 

 

DJセットもドラムセット同様持ち込んではいないみたいなので、ミッシェル(奥沢)はなんか側転とかしてた。・・・・お前は何を言ってるんだと思うかもしれないが俺は事実を言ってるだけだ。

 

 

弦巻はもうバク転とかしてた。というかそんだけ動いていてよく息が上がらねぇな。歌声にも全くブレが感じられない。

 

 

一見するとバラバラな事をやっているように見えるのだが、これが高度なパフォーマンスへと昇華されているからすごい。俺も今の自分の状況を忘れ思わず見入ってしまった。

 

 

それと同時に、感じてしまったのだ。

 

 

ーハロハピは、助けられる側の存在ではなく、人々を助ける側の存在であるのだと。

 

 

勿論それは、黒服さんや弦巻家の金の力のおかげだと言う輩もいるのだろう。だが、彼女達なりに人々を笑顔にする方法を必死に模索し、頑張って活動していることが嫌でも分かった。

 

 

俺は、また要らぬちょっかいを出したのか。そんでもってサンドバックにされてるんだから手に負えない。

 

 

俺は、複雑な微笑みをたたえながら、ライブを見ていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「「「「うぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」

 

 

ライブが終わり、倉庫内は歓声に包まれていた。俺も拍手とかしたいんだけど手が・・・てか誰かこれほどいてくれよ・・・・

 

 

「ほどいて欲しいのか?ちょっと待ってろ」

 

 

黒服さんがほどいてくれた。そろそろこの人のことが怖くなってきた。

 

 

「ちゃんと仕事見つけるのよ!」

 

 

なんかすげぇ言葉が聞こえた。言葉を発したのは弦巻であった。意外な人物からの意外な発言だ。でもそれ聞いたホームレスが皆やる気になってるからすげぇわ。

 

 

「それと・・・あとは貴方ね」

 

 

弦巻がこちらへ向かってくる。

 

 

「さっきは助かったわ!」

 

 

何を言われるかと思いきや、謝辞であった。

 

 

「お、おお・・・こちらこそどうも・・・」

 

 

「それで聞きたいんだけど、貴方は今のライブで笑顔になれたかしら?」

 

 

何を言う。とても楽しませてもらったよ。

 

 

「ああ、すごく楽しかった」

 

 

「ウソね」

 

 

弦巻から飛んできたのは、俺の発言を否定する発言。何故そんなことが言える?俺の感情が一番分かるのなんて俺だろうに。

 

 

「いや、ウソじゃないよ。凄かった。ほら、おじさん達だってあんなに・・・」

 

 

「おじさん達は、今は関係ないわよね?」

 

 

言葉に詰まる。俺は本当に楽しんでたはずだ。はずなのに。何も言葉が出てこない。

 

 

「私たちを助けた時も、貴方よく分からない目をしていたわ。本心から助けたいと思った行動なのか、それとも、嫌々”何か”に動かされているのか」

 

 

弦巻がさらに追い打ちをかける。俺はあの時ほぼ黒服さんに発破をかけられ動かされていたのは事実だが、ここで言う弦巻の”何か”がそれではないことが何故だか分かってしまった。

 

 

だとしたら?それは何だ?そもそも本当に俺は、したくもないことをしてるだけなのか?

 

 

「ともかく、あたし達のことは心配しなくても大丈夫よ。なんだか貴方、結構必死みたいだったけど。あたし達にはこころ強い仲間がいるわ!」

 

 

必死、とは何に対してか。ひょっとしてストーカー活動もバレてたのだろうか。そんなこと今はどうでもいいか・・・

 

 

ー何故なら俺は、またもやお払い箱行きだから。

 

 

ハロハピのメンバーとホームレスのメンバーが去って行った。俺はその場から動き出せずにいた。

 

 

「お嬢様は強いお方だろう?」

 

 

俺に声をかけたのは黒服さんだった。あぁ、その通りだよ。俺なんか必要なかった。

 

 

「ホームレスからお嬢様と奥沢様を助けたのは事実だ。素直に褒めてやる。だが、お嬢様から直接厄介を申し込まれた以上、貴様を近づかせるわけにもいかないからな。まぁ、それだけ信用に足らなかったということだろう」

 

 

「俺の目が、そんなに駄目でしたかね?」

 

 

「あぁ。今の貴様は、一体どこを見ているのか全く分からないよ」

 

 

「・・・・」

 

 

何も言い返せない。俺も薄々気がついているのではないだろうか。今の自分がやっていることは全て無駄だということに。

 

 

恐ろしい考えを強引に振り払い、俺は立ち上がる。

 

 

「どこを向いているのかは俺も良く分かりませんが、やることは一つだけですよ」

 

 

それが何とは言わないけれど。

 

 

俺さえ分かっていればいい。俺のやることはこれからも変わらず、百合カップルを守ること・・・である、はずだ。

 

 

あとから聞いた話だが、例のホームレス生活区域からは、ホームレスが綺麗さっぱりいなくなったらしい。やっぱりすげぇな、ハロハピは。俺とは違って。

 




元々ハロハピ回ははぐみメインに話を考えていたのですが、なかなか上手いこと話しが作れなかったのでこんな感じになっちゃいました。メンバーの中でこころ以外唯一セリフがあるのはその名残です。
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