すまん
乗り越えられたらきっと楽になるのであろうが、やはり乗り越えるまでが憂鬱な出来事というのはあるだろう。高校生で言えば定期テストとかであろうか。終われば「あの教科全然進んでねぇ...」とか「赤点取ったら叱られる...!」だとか、頭の中を埋め尽くしていた不安が例えテストの出来の感触がイマイチだったとしてもなんとなく払拭されるものである。
俺は高校生だが今俺の頭の中にある不安はテストではない。そう、今日はプロモーション当日。今まで明言されたことは無かったが、ポピパが我が猿並みの理性しか持ち合わせていない生徒ばかりが在籍する羽丘北高校へとやって来る日だ。
そんな連中がポピパに何かやらかしてしまえば、俺の成績が下がるばかりか、下手したら文化祭中止とかになりかねない。だが、それを止める役割を担うのが俺では正直言って効果も薄いと思うのだ。そこが不安ポイント1。
じゃあ2は何かと言えば、皆さんご存知百合野守である。アイツが俺を勝手に敵対視しているために糞くだらねぇ張り合いを展開してくるので、今日なんかは特にそれが飛んでくると思うともう嫌で嫌で仕方ない。
3は、強いて言えば俺自身のことだろうか。百合カップルを守るという名目のもと活動していた俺ではあったが、ここ最近はその成果が振るわない。今日のプロモーションでまた何か失敗するとなれば、俺の自信も完全に喪失するだろう。
だからここで一発決めないといけないのだ。俺の不安を一気に解消するために、百合野をぶちのめした上でポピパを守り抜く、それこそが俺のやるべきことであった。
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プロモーションは放課後行われる予定であったが、もうその放課後になってしまった。早くねぇか...来て欲しくないと思うものほど早く来るよな。
まぁ心の準備は出来てるつもりだ。絶対にやり抜いてみせるぜ。
もう一度気合を入れ直しているところに、アイツがやって来た。
「今日のプロモーション、分かってるよね?僕が君よりも優れていることを、必ず証明してあげよう」
そう、百合野の登場だ。相変わらずうるせぇ奴だ。
「あ、ハイ。そうですか」
適当に返しておこう。コイツはこんなもんの扱いで大丈夫だろ。
「ふむ....まだ力の差を理解してないみたいだね....まぁ、直ぐに分かることか」
なんか呟いてるみたいだったが、どうでもいいことだろうと思い、特に気にかけなかった。
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ポピパの登場までは、生徒は特に何も知らされていないため、舞台裏へ誘導するのは簡単な仕事だった。だが問題はプロモーション終了後であろう。間違いなく出待ちする奴が現れるに違いない。そう、つまりそこで俺がどうするかなのだ。俺の採る策は特別なものでもなんでもない。先生にプロモーション終了後には実行委員からのお知らせがあるから座っとけ、と全校生徒の前で伝えておいて貰うというものだ。まぁ当然このアナウンスに従ういい子ちゃん達ばかりではないだろう。そこを俺がカバーするのだ。多分一人や二人ならイケる。ちなみに百合野はその実行委員からのアナウンスに行ってもらう。「百合野、あとは頼んだ」とでも言い残してさっさとその場から離れてしまえばアイツがやるしかなくなるからな。それでアナウンスする事のないアイツは全校生徒の前で赤っ恥を書いて無事終了。俺の評価はうなぎ登り。
.....恐ろしいほど完璧だ。今度こそうまく行く気しかしない。
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「Poppin' Partyでしたー!三校合同文化祭、盛り上げて行きましょー!」
「「「ウオオオオオオオオオオ!!!」」」
凄い盛り上がりっぷりだ。流石だなぁ。あの日ライブハウスでも思った事だが、彼女たちの演奏には唯一無二のものがある。他の4バンドとはまた違った意味で。
と、感心してる場合では無い。もう百合野への伝言とかどうでも良い。今のうちに舞台裏を抜け出して待ち構えておこう。
そう思いステージのある体育館を後にしようとした時だった。俺を呼び止める声がした。
「おい負犬野、どこ行くんだ?実行委員からのアナウンスがあるんだろ?」
声をかけてきたのは先生だった。
「すいません....少し催してしまいまして。もう一人実行委員居るんでソイツに頼んどいてください」
まぁ催したなんて嘘だが。
「何言ってる?アナウンスはお前がやるからって百合野がさっき出て行ったぞ?」
.....なんだと?
何故奴がアナウンスの存在を知ってる?
そもそも何処へ出て行った?
俺は、俺は何をアナウンスすればいい?
色々な考えが頭をよぎり、最後に出てきたのは。
ー俺は、また負けたのか?
自信もプライドも、繋がれていた細い糸が千切れようとしていた。