百合の伝道師   作:ちんだまんぞう

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本当はここまで来るのにもうちょいストーリーがあったんですが、早いとこ主人公をどん底に突き落としたかったので短くしました。


死体蹴り

「おい、なんか発表があるんじゃねぇのかよ!」

 

 

「無駄な時間取らせるんじゃねぇ!」

 

 

「引っ込んでろ!」

 

 

俺は今、猛烈なバッシングの嵐の中心に立っている。こんなに人に注目されたのは初めてだな。なんとも嬉しい限り....いやちっとも嬉しく無い。正直泣きそうだ。

 

 

俺が何も言えないでいると、生徒たちは痺れを切らしたのか、ゾロゾロと帰り始めた。中にはポピパのメンバーの電話番号聞きそびれたーとか言ってる輩もいる。

 

 

「おい、なんか言うことあるんじゃ無かったのか?」

 

 

生徒達が帰って行ったあと、俺に声をかけてきたのは先生だった。

 

 

「いや、まぁその、よく考えたら無かったなと思いまして」

 

 

「アァ?しっかりしてくれよ全く....」

 

 

うるせぇな。テメェらが勝手に俺を実行委員にしたんだろうが」

 

 

「オイ、なんだ先生に向かってその口の聞き方は?」

 

 

やべっ、声に出てたか。

 

 

「いえ、何も言ってませんが」

 

 

「....まぁいいや。次からは頼んだぞ」

 

 

そう言うと、先生は去って行った。

 

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誰もいなくなった体育館にて、ライブに使われた照明だとか諸々の器具を一人で片付けていたところ、奴が帰ってきた。

 

 

「一人で惨めに片付けお疲れ様」

 

 

百合野だ。

 

 

「なんで俺の作戦が分かったか、って顔してるね。まぁ君のような低俗な人間の考えることなんて大体分かるんだよ」

 

 

「そうですかい。それでお前の方はどうだったんだよ?」

 

 

「アナウンスを聞かずに....まぁ実際には行われてないアナウンスだが、脱出したものが一人だけいた。君と同じクラスの....なんだったかな、仮にA男としておこう」

 

 

「またアイツなのか....?」

 

 

ここで言う俺と彼のA男が同じ人物かどうかは分からんが何故か同じ気がした。

 

 

「彼、非常に分かりやすい人間だからね、扱いやすくて助かったよ。ポピパメンバーの前で見事にナンパ男を撃退したさ。それに比べ君はどうだい?」

 

 

「....わざわざ確認するまでもねぇだろ。それを言いにここまで来たのかよ?」

 

 

「当たり前だろ?証明するって言ったんだからね」

 

 

性格悪すぎんだろ....だがそれをバラす方法も持ち合わせてないのも癪だ。

 

 

「まぁそういうことだから。片付け頑張りたまえ。安心しろ。先生に車は手配してもらってる」

 

 

「いやお前も手伝えや」

 

 

「何を言ってるんだ?負けたものが後処理をするのは当然の事だろう?」

 

 

「....そうですね」

 

 

「その通りだとも。僕はできる男だからね」

 

 

「じゃあもう実行委員もお前一人で十分だろ。会議も全部一人で行ってくれ」

 

 

「駄目だよそれは。まだまだ君の醜態を見せつけてはいないからね」

 

 

「....死ね」

 

 

ボソッと言ってやった。多分聞こえてない。

 

 

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さて、俺は自信を完全に喪失してしまった訳だが、まだ百合カップルを守ろうという意思は残っていた。いや、残っていたというのは少し語弊がある。何故なら心からそう思ってる訳では無いからだ。

 

 

じゃあどんな理由かと言うと、単純に百合野を見返してやるためである。そのために百合カップルを守ろうとしているのだ。手段は同じだが、目的が大きく変わろうとしていた。

 

 

そんなこんなで、俺はストーカー活動を以前より活発にしていた。バレかけているかどうかは怪しいが結局乗り越えて来たし、大丈夫だろう。

 

 

しかし、来る日も来る日も、なんの成果も得られなかったのだった。

 

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「それでは、第三回目の定例会議を始めます」

 

 

そうこうしてるうちに、3回目の会議が始まった。

 

 

「今日の議題は、ステージ企画についてです。やはり文化祭と言えばステージ。それまで必死に練習して来たものを皆さんに見てもらえる絶好の企画です。それをサポートするためにもこの話し合いが無駄なものとなってはいけません」

 

 

「そうですね。ステージに立って何もできなかった、なんて事があっては我々の失態に他なりません」

 

 

そう発言したのは百合野だ。コイツマジ性格悪いわ。先日の俺の事を指している発言だろう。

 

 

「ええ。という事で、今日は羽丘からも実行委員を連れて来ました。入ってください」

 

 

「どうも〜モカちゃんです~よろしくね~」

 

 

「氷川さん、チェンジでいきませんか?」

 

 

「およよ~ひどいですな~」

 

 

「いや、どう考えても適任とは思えない・・・」

 

 

「大丈夫です。青葉さんはやる時はしっかりやる人なので」

 

 

「それ大体はサボってるってことですよね?俺の仕事増えるだけですよね?」

 

 

「安心して下さい~モカちゃんと貴方は仲間、ですよね~?」

 

 

「仲間・・・・あぁそういうね」

 

 

まだAfterglowのメンバーの中では俺=同性愛者、ってことか。

 

 

「って仲間だからって仕事と何も関係ないだろ!?」

 

 

「固いこと言わないでくださいよ~」

 

 

「・・・メンバー間の意思疎通は大丈夫みたいね」

 

 

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氷川紗夜は気づいていた。青葉モカの出したパスに。

 

 

仲間。それはすなわち同性愛者という意味を持つことは先ほど紹介した通り、読者の皆様も理解しているであろう。

 

 

よく思い返してみてほしい。同じAfterglowのメンバーである羽沢つぐみは、ストーカーのことを何の可能性があると氷川紗夜に伝えていたか。

 

 

そう、ホモだ。勿論、ホモが女性をストーカーするなんてあり得るかよ、なんて考えがよぎるだろうが、ここまで幾多の作戦を負犬野へ展開してきた氷川紗夜が、果たして本当に負犬野のことをホモだなんて鵜呑みにするだろうか?

 

 

青葉はそれを見越した上で氷川紗夜へヒントを送ったのだ。

 

 

この時点で、負犬野がストーカーであるという事実は決定的となった。すなわち、氷川紗夜の言う観察も、終わりを告げることとなる。

 

 

「そう・・・やはり貴方がね・・・・」

 

 

さぁ負け犬よ、どう吠える?

 

 

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さて、次の日である。

 

 

今日は特に何も予定が無い。昼休みであるのだが、俺は一人で携帯をいじっていた。

 

 

今日も今日とて、百合野を見返すためのストーカー活動である。

 

 

最近俺がやっているのは、アイドルバンドであるPastel*Palettesのスレ監視だ。

 

 

少しでも不穏な書き込みをした奴に対し、直接制裁を加えてやるのだ。

 

 

でも今日も特に収穫も無しかね・・・今日も何も出来ずに終わっていくのか・・・

 

 

俺が百合野を見返すのはいつになるやらねぇ・・・・・・

 

 

惰性で書き込みを更新していると、思わぬ情報が俺の下へ飛んできた。

 

 

 

”メンバーの氷川日菜の高校と住所特定した。今日ちょっとナンパしてくるわwww”

 

 

・・・・これしかない。コイツを利用して俺の汚名を完全に払拭してやる。

 

 

俺はこの書き込みに対しこう返す。

 

 

”そんなことはさせん。彼女にはもう心に決まった女の子がいるのだ”

 

 

待ってろストーカー。必ず捕まえてやる。

 

 

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放課後になった。いよいよ決戦の時だ。今思えば、放課後は何かと氷川日菜に関わる事件が多い気がする。・・・まぁまだ二回目だから何とも言えんが。

 

 

例の書き込みには「俺にも住所教えて!」とか「ワイも混ぜてクレメンスwww」とか様々な反応があった。

 

 

まぁ書き込み主は一切答えてなかったが。

 

 

ちなみに俺の書き込みには「百合豚さんチーっすwww」とか「日菜ちゃんがレズとかありえねーからwww」とか「オウフwwwwやはり日菜ちゃんのカップリング相手は麻弥ちゃん以外有り得ないですぞwwwww」とか返信されていた。いや最後の本当に誰だよ。聞いてねぇよ。

 

 

まぁそんなこんなで羽丘へまたやってきたのであるが。俺は今回も自転車でやってきた。でかまぁ学校から直で来てるし、自転車通学してるからそれ以外方法なんて無いんだが。

 

 

・・・・おぉ。校門から今氷川妹が出てきたぞ。さて、バレないように後を付け回していくか。

 

 

俺は20m程後ろを適度に物陰に隠れながら氷川を追い回していった。・・・いや改めて俺のストーカー技も洗練されたものである。全く気付かれていないようだ。

 

 

自分はマジで探偵とか向いているんじゃないかと思っていると、氷川が狭い路地へと入って行った。

 

 

・・・近道か?いつも通っていく道なのか?しかしそんなところ入ってしまってはマジで例の書き込み男に襲われてしまうではないか。

 

 

俺は少し急ぎ足で後を追った。

 

 

そして狭い路地に差し掛かり、そこへ目をやると、そこには誰もいなかったのである。

 

 

 

おかしいな。路地の長さから行って消えるなんてことはあり得ないのだが・・・・

 

 

ひょっとしてマジで襲われたか?

 

 

ヤバい。これでは本当に示しがつかなくなってしまう。とりあえずこの路地へと侵入して、何か情報を・・・!

 

 

「やっぱり貴方だったのね。少し残念だわ」

 

 

侵入しようとした直前であった。後ろから声をかけられたのだ。俺は後ろを振り返る。

 

 

そこに立っていたのは、黒いフードを被った、顔の良く見えない、恐らく女性であった。

 

 

「アンタ、ストーカーか?男かと思ってたけど」

 

 

「それはこちらのセリフよ。”負犬野”さん」

 

 

「なんで俺の名前を知ってやがる・・・」

 

 

「・・・何度か会ってるからかしらね」

 

 

そう言い放った謎の女性は、フードをめくり、素顔を晒す。

 

 

「観念しなさいストーカーさん。貴方の悪事もこれまでよ」

 

 

「・・・氷川・・・・さん?」

 

 

そこに立っていたのは、実行委員として何度か顔を合わせたことのある、氷川紗夜であった。

 

 

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