百合の伝道師   作:ちんだまんぞう

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負け犬の遠吠え

「オイオイ・・・どういうことだよ・・・」

 

 

困惑。疑問。何故ここに氷川紗夜がいる。俺は例の掲示板にナンパ宣言をしていた奴を追いかけていたはずだ。

 

 

「教えてあげましょうか?あの書き込みをしたのは私です」

 

 

 

「は?え、なんで?」

 

 

「ストーカーなら、情報収集するのは当然でしょう?」

 

 

「・・・はっ、そういうことかよ・・・」

 

 

俺はまんまと釣られたのだ。氷川紗夜の投げ込んだ美味そうな餌に。俺はめでたく実行委員からストーカーへと格下げとなったのだ。

 

 

「で、それでなんで僕をおびき寄せたんですかね?」

 

 

「それはねー、キミを今ここで断罪するためだよ?」

 

 

ひょこっと現れたのは、妹である氷川日菜だ。

 

 

「断罪って、そんな大袈裟な・・・」

 

 

「大袈裟でもなんでもないわ。貴方、私たちを付け回してどうするつもり?」

 

 

ここで言葉に詰まったら負けだ。

 

 

「貴方の書き込みへの返信、見てませんかね?」

 

 

「ええ、見たわ。確か俺にも住所教えろとか言ってたわね」

 

 

「それじゃあない・・・」

 

 

「・・・心に決まった女性がいる云々ってヤツかしら」

 

 

「そう。それだ。俺がストーカーをしてるのは、ストーカーから貴方たちを守ってやるためだ」

 

 

「ストーカー防止のためのストーカーってこと?全然分かんなーい」

 

 

口調こそ軽いが、目が笑ってない。

 

 

「そんな戯言を信じろとでも言うのかしら?ただでさえ貴方はストーカーというだけで信用度なんてゼロに近いのに」

 

 

「じゃあ、確かに貴方たちは今までストーカーされていたかもしれないが、実害を被ったことはありますかね?それは僕が何もしていないという証拠に他ならない」

 

 

「そんなのたまたまでしょ?これから被害があるかもしれないしね」

 

 

「・・・ならどうすりゃ信じてくれるんだよ」

 

 

「だーかーらー、信じることなんて最初から出来ないんだよ?もう諦めようよ」

 

 

諦めたらどうなる。学校除籍なんてまだ良い方だろうか。ひょっとして警察に被害届とか出されるだろうか。

 

 

なんでだ?俺は何もしてない。俺なんかより彼女たちに手を出そうとしてきた奴を俺は沢山見てきた。何故奴等が罰を受けずに俺が全部ソレを被らなきゃいけないんだ?

 

 

理不尽だ。間違ってる。なんでいつもいつも俺ばっかり負けなきゃいけねぇんだ。

 

 

名前の所為?運が悪いだけ?それとも

 

 

 

”俺が気後れして強く反発できない性格だからか?”

 

 

くだらねぇ。なんでそんなモンのために俺が苦労しなきゃならねぇんだよ。

 

 

ふざけんな。A男も喫茶店のストーカーもホームレスも百合野も。

 

 

全員ぶっ潰してやる・・・!

 

 

「・・・・・諦めろ、だと?」

 

 

「ええ。観念なさい」

 

 

「それはガールズバンドメンバー全員の総意か」

 

 

「ええ。その通りよ」

 

 

「・・・・ふざけんじゃねえ」

 

 

「・・・なんでキミが怒ってるのかな?」

 

 

「うるせぇ・・・・俺が守ってやってんのによ・・・・感謝の言葉くらい聞かせてほしいもんだがな」

 

 

「貴方、ホントにクズのようね」

 

 

「じゃあ聞くぜ。氷川日菜よ。男三人組が羽丘に来たアレあったろ」

 

 

「・・・それが何?」

 

 

「確かにお前は口こそ回るかもしれんが、身体能力で無理やり男子三人に押さえつけられていたらどうなってたと思う?勿論いくらお前が天才とは言えムリだよなぁ!アレは俺があの場に来てなかったら解決できないモンだったんだよォ!」

 

 

叫ぶ。俺の、俺は負け犬じゃねぇ。俺の存在の有難さを、証明してやる・・・!

 

 

「喫茶店のことだってそうだ!あの時俺が機転を利かせてなけりゃあのクソストーカーはいずれAfterglowの連中を次第に襲っていったに違いねぇ!事実アイツらストーカーの存在を俺と勘違いしやがったしなァ!」

 

 

「貴方、そこまでにしておきなさい・・・!」

 

 

「プロモーションだってそう!ナンパを阻止したのは百合野だがなぁ!作戦自体を考えてんのは全部俺なんだよォ!全部全部全部俺のおかげなんだよ!」

 

 

「少し黙りなさい!」

 

 

「俺がいねえと、どいつもこいつも何もできねぇだろうがァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

酷い妄想だ。自分がいないとだなんて、最も自分勝手で、最低な思い込み。

 

 

見ろ。目の前の二人の少女を。怒りと呆れが感情を支配している。

 

 

でも、それでも、俺は俺を、肯定してやりたかったんだ。

 

 

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