さて、夏休みに突入した。
さらに、夏休みに突入して半月程経過した。
この間にも恐らく実行委員の活動はあったのであろうが、俺は全て不参加であった。
氷川紗夜と会いたくないのもそうだが、正直単に面倒という感情が不参加の理由の大半を占めていた。学校側からは成績を下げると脅されていたために参加していたが、多分本当は最初から面倒臭がっていたと思う。
ただ、最近の俺は実行委員の活動のために花女に行かないばかりか、外出すらしなくなっていた。だが家で何をしているということでも無い。死んだように日々を過ごし、一日一日を無駄にしているのだ。つい数か月前までは休みの度に出かけていたものだが、今はもうソレをする気が起きない。何か、とはもう説明しなくても分かるだろう。
しかし今日の俺は違った。あまりにも暇すぎて外をブラつこうと思い立ったのだ。映画かアニメでもレンタルしてきてコンビニで氷とコーラでも買ってキンッキンに冷えたソイツを飲みながら鑑賞会でも開くとしますかね。うん、最高だ。
俺は着替える気も特に起きなかったのでパジャマ、というかパジャマ的な扱いにしているジャージそのままで外へ出た。髪も整ってなし、寝癖直ってない、長さの揃ってない無造作に生やされ剃られていない髭、そしてジャージ。完全にヤバい奴である。
最初にレンタルビデオ店を目指そうと自転車に乗り、漕ぎだす。漕ぎだしたところ、自分の身体からものすごい量の汗が流れてきた。何日も外に出ずクーラーをガンガンに効かせた部屋で引きこもっていた所為か、夏の暑さの耐性がすっかり消えていたのだ。
少し道中の公園で休もう。その公園の近くにある自販機で冷たいもんでも買って・・・
そう思っていると、都合よく公園を見つけた。丁度いい感じの日陰もある。セミとか居たら嫌だな・・・と思いつつも背に腹は代えられんのでそこで休むことにした。
自転車を止め、日陰の下で休む。ベンチが丁度日陰の下にあったのはすごいありがてぇ。まぁ飲み物はいいか・・・あんま金無いし・・・
それにしても快適だ。日陰最強。日陰が最強すぎて日陰者も最強説もあるな。そう、最高の日陰者と言えば勿論俺!・・・・くだらねぇ
「にゃー・・・・・」
くだらないことを考えていると、近くから声がした。にゃー・・・・猫か?
声の方へ目をやると、なんと言うべきか、彼女の名誉のために名前は伏せておくべきか、Roseliaのボーカル、湊友希那が猫に喋りかけていたのだ。ばっちり名前は伏せられてない。
・・・・この前までの俺なら何かしらのアクションを起こしていたかもしれない。だが今の俺には特に何をする気も起きない。もうちょい休んだらレンタルビデオ店行くか・・・
なんかこう、リラックスしてる時って、異常に伸びがでかくなるよな。伸びってのは授業終わった後とかによくやる「あ~疲れた!」みたいなやつ。日陰に来てすげぇ気分の緩んでいた俺はソレをやってしまったのだ。そう、やってしまった。コレが今日を面倒臭いものにするトリガーとなったのだ。
すげぇでかい伸びをした俺は、ベンチもろとも後ろに倒れてしまった。当然、これは大きな物音となる。
「誰かいるの?」
そう言って湊さんはこちらの方を見る。ヤバい、気づかれてしまった。・・・いや、別に気づかれても問題ないか・・・てか逆に今まで気づいてなかったのか・・・
「・・・貴方は確か」
「ストーカー、とでも言いたいんですね?」
ガールズバンドの情報網恐るべし。
「私になんの用かしら」
「用なんて無いですよ。この公園に休みに来たら貴方がいたってだけ」
「・・・怪しいわね。ストーカーなら可笑しくないわ」
「んじゃもう行きますよ。俺も勝手に怪しい人間扱いされちゃ居心地悪いんで」
そう言い自転車に跨ろうとした時。
「待ちなさい。紗夜が学園祭の会議に来ないと言ってたわ。しっかり顔を出しておきなさい」
「俺はストーカーですよ?そんな人間が同じメンバーに近づくことを貴方は良しとするんですかね?」
「私たちは頂点を目指しているの。くだらない事で悩んでいるならそれを早く払拭してもらわなくてはならない」
「じゃあ尚更行かない方がいいでしょ。どうせ行ったって何の役にも立たねぇんだし」
「・・・・貴方にプライドというものは無いのかしら」
「あん?」
「私が音楽をやっているのは、父の音楽を否定した人間を見返すためよ。貴方はどう?自分を否定する人間を、見返してやろうとは思わないの?」
「無理でしょ。説明したって聞かないんだし」
「・・・・・貴方、いつかの私たちのライブに来ていたそうね。紗夜が言っていたわ。心底楽しそうな顔をしてライブを見ていてくれた人だったから印象に残ったそうよ。だからとてもストーカーなんてするようには見えないと。」
「・・・・それで?」
「でも、どこかソレを良しとしない表情も見えたと。貴方、自分に自信が無いんでしょう?」
「・・・・そんなことないっすよ。めでたいことに今じゃ言えないことも言えるくらい」
「それは自信とは言わない。自暴自棄よ。見れば分かる」
・・・・なんなんだ?初対面だろ?俺の何を知った上でこんなこと言ってんだ?
大体、俺がライブで楽しそうな顔をしていた?いいや違う。俺ははっきり聞いている。その日ライブに出演した人間全員が俺の事が気持ち悪かったと言っているのを。まぁ、それを確認するにも女子トイレで聞いたことだし聞き出せはしないが。
「デタラメ言うんじゃねぇ。とにかく帰りますわ。貴方も俺なんかと喋ってると時間が無駄でしょ?」
今思えば、俺が百合カップルを守ろうと決めた直接の原因はこの人だ。その所為で苦しい目に遭ってきたんだ。責任転嫁?いいや違う。コイツが俺のことを突き放したんだよ。
頭に血が上る。それが原因で気づいてなかった。そうだ。湊友希那あるところに今井リサ在り、という不変の事実に・・・・
「あっれー友希那じゃん?こんなとこで何してんのー?」
俺のトラウマが、勢揃いした。
過去の話を書きなおしたくなってきた。
完結したらやると思います。