「友希那じゃん、どしたのー?」
戦慄した。震えた。この声は俺を拒絶する声。
湊さんもそうだと言えばそうなのだが、二人揃えば俺にとっての最大打点となる。
「・・・・キミは?」
滅茶苦茶冷たい視線がこちらへ向く。聞かなくても分かっているだろう。そのことが余計に体を震え上がらせる。
「友希那に、何してるのかな?」
俺のことをストーカーと認識した上でのこの発言、どう答えても逃げ場は無いように思える。
でも違う。今までの俺じゃない。逃げ場がないなら強引に創ってしまえばいい。
「何もしてませんよ。ただ良く分からん説教喰らってただけです」
まぁ本当なのだが。
「ふーん・・・」
「疑ってますね」
「当たり前でしょ?キミ、ストーカーで有名だから」
「ついに俺も有名人ですか。光栄ですね」
ホントこれまでの負け犬人生なんだったんだろうな。
「ふざけないでくれるかな?実際被害だって出てるんだしさ」
「どっちがふざけてるんですかね。勝手にストーカー認定して、少しでも何かあれば被害が出ただの何だの・・・・」
ヒートアップしていく口論。てか被害出たってなんだよ。俺は何もしてない。これだけはガチだ。
「大丈夫よリサ。私は何もされていないわ」
熱くなりつつある争いを止めたのは、湊さんであった。
「そう?ならいいんだけど・・・・」
「相変わらず心配性ね。リサは」
「だってー、友希那ってすごいカワイイじゃん?なのにちょっと抜けてるトコあるから心配なんだよねー」
「カ、カワイイなんて・・・やめて頂戴」
・・・・流石であるッ!ストーカーがいるというのにそれを差し置き百合百合空間を作り上げてしまうとはッ!もう俺帰っていいよなコレ。よし帰ろう。
「何処に行くのかなー?話は終わってないんだけど」
気づかれたか・・・
「いや、もう俺どう考えても要らなかったでしょ。二人でどうぞ続けてください」
「駄目よ。紗夜のためにも、貴方は更生させるわ」
「更生て・・・今あったばかりでしょ僕ら。お言葉ですが、烏滸がましいですよ」
「ストーカーしてたんでしょ?なら何か月かの付き合いじゃん?」
・・・・何だよさっきからストーカーストーカーうるせぇな。大体アンタらに何ができるんだ?こんなもん俺が適当言って「ストーカーやめて実行委員の活動しっかりやります」って言えば全部済ませられちまうだろうが。
でもそれだと彼女らの望む根本的な解決にはならない。ならば何をもって俺が更生したと言い切れるのか?行動で示しても何も信用しねぇ癖に。
「無駄でしょ。俺がどんだけストーカーじゃないって言い張っても信じないでしょ?何やったって意味無いですよ」
「・・・・・」
ほれ見ろ。何も言い返せない。俺の言ってることは全て正しい。
「・・・・おかしいね」
「・・・・はい?」
可笑しいだと?どこが?俺の生き様か?
「キミ、一回私たちのライブ来てたでしょ?」
「良く覚えてますね。相当僕が気持ち悪かったんですかね?」
「なんでそうマイナスに捉えるかな・・・・違うよ。すっごく楽しそうにしてた。一人で参戦してたと思うんだけど、それでもあれだけ輪に入って盛り上がれるってホントに楽しんでくれてるんだと思ったから、印象に残ってるの」
・・・・さっきから何を言っているんだ、この人達は。
「でも、一曲一曲終わるごとに、夢から覚めたように、中心からは離れていって・・・・自分が楽しむことを良しとしないようにも見えた。これは紗夜も言ってたことだよ」
違うだろ。あの日俺は確かに聞いたんだよ。
「でも、あの姿を見るに、君はストーカーなんてする人には見えないんだけどなぁ・・・何か理由があるの?」
「デタラメばっか言いやがって・・・・本当は微塵もそんなこと思ってねぇ癖によ・・・」
「・・・・何が言いたいのかしら」
「楽しそうだった?盛り上がってた?ああ確かにそうだよ。俺はあのライブを全力で楽しんでた。俺と全然年も変わんねぇのに、負け犬の俺とは違って輝いて見えたよ」
「でしょ?ならなんで・・・」
「でもそう思ってたのは俺だけだッ!!!」
だってそうだろ。俺は聞いてるんだよ・・・
「気持ちワリィヤツがライブに来てたって言ってただろうがァ!!!」
あの時と同じだ。精一杯吠えて、スッキリしよう。
「き、気持ち悪いなんてそんな・・・・」
「くだらねぇ・・・・もう帰りますわ」
本当にくだらない。そんなに俺を騙して、何が目的なんだ?そんな安い裏の見えた励ましで、俺の傷ついた心が癒されるとでも?アンタらは知らないだろうが、俺は知っている。アンタらの本音を。
だから俺だけはせめて本音を言ってやるのだ。俺の思ってること全部。我慢はしない。
そうして負け犬は、独りだけ勝った様に錯覚していくのだった。