百合の伝道師   作:ちんだまんぞう

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キバの真骨彫どこにも売ってねぇ!


その光明は天使の階か悪魔の誘いか

「ねぇ、聞いてんの?アンタに言ってんのよ、ストーカーさん」

 

 

あぁ、聞こえてるよ。

 

 

「人の言ってることをなんでも真に受けて、随分と自分で真実を吟味しようともしないおめでたい頭の持ち主なんだな、お前は」

 

 

「は?何言ってんの?」

 

 

「あ?聞こえなかったか?お前に言ってんだよ、頭花畑さん」

 

 

「何様のつもり?サイテーなことしといてのこのこ被害者の前に顔出すなんて、どういう神経してんの?」

 

 

被害者・・・そうか。氷川さんは被害者ということで話が広まっているのか。というかバンドウーマン全員が被害者ってことになってるのかもしれん。

 

 

「・・・じゃあどうしろと?俺はここに元々もう来るつもりは無かったがそこの百合野ってヤツに無理やり連れて来られたんだよ。俺に帰れっつーならアイツを説得してくれ」

 

 

「アタシはそういうこと言ってんじゃないわよ!」

 

 

「じゃあ首を掻っ切って死ねばいいのか?何すりゃ満足するんだ?結論を言え」

 

 

「・・・・・そ、それは・・・・」

 

 

「はぁ・・・結局お前は根も葉も無い噂に振り回されてるだけなんだよ。そこに自分の意思は無くて、だから俺に求めてることもないのにいちいち突っかかってくる。恥ずかしくないのか?ま、言っても分からんか」

 

 

「うるさい!口応えするな!このストーカー!」

 

 

「・・・そこまでにしておこうか。二人とも」

 

 

加熱していく口論を制したのは、百合野であった。

 

 

「彼を連れてきたのは僕の責任だ。謝るよ」

 

 

「そ、そんな・・・百合野君は何も悪くないよ!悪いのは全部コイツなんだから!」

 

 

「てめぇが目くじら立てなけりゃこんなことになってねぇんだよ。責任転嫁か?ますます人間性が疑われるな」

 

 

「キミも、そこまでにしたまえ」

 

 

「あ?そうやってまた好感度稼ぎですか?」

 

 

「・・・・見逃せない発言だが、今はいい。とりあえず落ち着いて」

 

 

・・・・誰が落ち着くものか。お前が手に負えないくらい喚き散らしてやる。

 

 

「うるせぇな。てめぇ大体何なんだよ?夏休み前からことあるごとに俺に突っかかりやがって」

 

 

「・・・その話は今はいいだろう。仕事をしよう」

 

 

「あぁ?俺の都合は無視して話を進められるとでも思ってんのか?自分が命令できるほど偉いとでも?」

 

 

「頼む。一旦やめてくれ!」

 

 

「黙れ!何なんだよ気持ち悪ィな!あれだけ俺を排除しようとしていたヤツが何のつもりだよ!?」

 

 

「それはさっき言った通りじゃあないか・・・」

 

 

「あんなふわふわした理由で納得しろと?お前も随分めでてぇな?」

 

 

「・・・・・・」

 

 

黙ってしまった。そうか。俺は遂に勝ったのか。この猫被った悪魔を完全にぶちのめしたのか。

 

 

ーこんなに簡単に。

 

 

「あほくさ。帰らせてもらいますわ」

 

 

時間の無駄っと。さっさと帰ってダラダラしよう。

 

 

 

 

「待ちなさい」

 

 

 

 

この期に及んで俺を引き留めるヤツがいるのか。

 

 

 

 

「貴方を返すわけには行かないわ。ふたりで話をしましょう。百合野君、進行は任せました」

 

 

 

 

そうか・・・・まだ残っていたか。氷川紗夜。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「話ってなんですかね?手短にお願いします」

 

 

「今井さんから聞きました。貴方と接触したことを」

 

 

「・・・・それで?」

 

 

「貴方は、本当に今のままで良いんですか?」

 

 

・・・・何を言っているんだ。良いに決まってる。

 

 

負け犬の俺が、ここまで強くなれた。それは全部アンタたちが俺に味わせてくれた屈辱のおかげだよ。

 

 

「そんなどうでもいいことを聞きたくて引き留めたんですか?答えはイエスですよ」

 

 

「ならばこう言いましょう。その考えは間違っています」

 

 

「はぁ・・・なんで赤の他人にそんなことが分かるんですかね?というか、なんで僕なんかに構うんですか?大人しくあの天才妹と仲良くしてりゃいいじゃないですか」

 

 

「・・・・ライブです」

 

 

「はい?」

 

 

「ライブに貴方が来た時、すごく印象に残ったんですよ。いまいち楽しみきれていない。楽しいのかどうかよく分からない。自分を押し殺しているようにも思えました。それが、見てて可哀想だったんです」

 

 

「また訳の分からない理由ですね・・・」

 

 

「貴方は我慢しているのではないですか?理由は何にせよ、自分という存在に自信が持てない。私も、同じだったので」

 

 

俺と氷川さんが同じ・・・?ますます何を言っているのか分からん。

 

 

「僕は貴方とは違いますよ。貴方のような天才と一緒くたにしないでください。努力しても凡人にすらなれない負け犬なんです。所詮。だから虚勢を張ることは正しい」

 

 

「・・・それは、本当に努力したと言えるのですか?」

 

 

「ええ。小さい頃から。でも何やってもダメで、普通の人がこなせるレベルにも到達できない。貴方はいいですよね。やればできるようになるんですから」

 

 

「・・・・そんなことはないわ。私はいつもあの天才の妹と比べられてきた。そのたびに自分が劣っていることを感じて、努力しても追いつけなくて・・・それでも今まで諦めなかったわ」

 

 

「そりゃあの天才と比べるからそう見えるだけで、貴方は世間一般から見れば十分天才なんですよ。俺なんか比べられる天秤にも上がれやしない」

 

 

「・・・・貴方は努力なんてしてないわ」

 

 

「流石に聞き捨てなりませんね」

 

 

 

 

「貴方は、努力する前からどうせ俺には無理だろう、とそう考えてるのではありませんか?」

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

言葉に詰まる。

 

 

どうせ俺なんか。そう考えるのが俺の癖だ。

 

 

俺がやってきた努力も、すべて上手く行かないという考えの前提のもとに行われていたものだとしたら、俺は全力を出せてはいなかったのではないか。そう言いたいのだろう。

 

 

揺らぐ。地下何百メートルの場所にある、暗い暗い場所に、ほんの少しだけ地上の光が差し込んだような、そんな感覚。

 

 

俺は何としても、この光を届かせてはならない。

 

 

今までやってきたことが、すべて無駄となるから。

 

 

ポジティブにとらえれば、これからは全力で努力すれば、何か実を結ぶかもしれないということ。

 

 

ネガティブにとらえれば、俺のこれまでの人生すべてなかったことになる。

 

 

人生を、負け犬の一生だったとしても、否定されたくはない。

 

 




GWがあと一年くらい続けばいいのに・・・


ってそれGYになるやん
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