さて、いよいよ自分の文化祭委員活動が本格的に始まる訳なのだが。
「・・・あーあいつ来たよ・・・」
「マジでなんで顔出せるんだろうね・・サイテー」
この有様である。早速心が折れそうだよ!
まぁ文句を言える立場にもないので、とりあえず仕事を探そうか。えーと俺の仕事は・・・俺の仕事・・・俺の仕事って何なんだ?
「あら、来たんですね」
仕事を探し求めてさまよっていた俺のもとに紗夜さんが来た。しかしこう・・アレだな・・改まって話そうとなると少し気まずいな・・・
「あ、はい。アレだけやってもらって来ない訳にはいきませんので」
「貴方が何をすればいいのか分からないと思ったから、リストを作成してみたわ」
「おお・・・・!」
渡されたリストには、簡潔に、だが分かりやすく、俺が本来担当するはずだった仕事が示されている。なんというかアレだ。この人のやさしさにはどこまで行っても頭が上がらん。一生この人に足向けて寝られないな。
「足を向けるかどうかは貴方の匙加減でしょう?」
「・・・え?なんで俺の考えていることが分かったんですか?」
「早く仕事に行ってください。貴方のおかげで仕事が滞ってるのだから」
「いや俺がいなくても・・・」
そこまで言いかけてハッと気づく。いかんいかん、いつもの自虐癖が出そうになってしまった・・特にこの人に対してはそんなこと言えないだろう。
だから、訂正しよう。
「・・・そうですね。サボった分は取り返します」
そう言うと、紗夜さんはうっすらと微笑んだ。
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先程渡されたリストを見てみると、どうやら自分の担当はステージのようだ。
ステージは、文化祭の目玉イベントに当たる。勿論のことバンドや、自分たちで考えてきた出し物が披露されるものだ。誰がステージに立つかはもう面接審査や実際に演目をやってもらって決まっているらしい。前も説明した気がするな・・・
というか俺もその審査やってみたかったな・・・これも前言った気がするな・・・
とにかく、まず文化祭に向けてステージ担当のやる仕事は、演者のタイムスケジュール作成、ステージの飾り付け、音響器具等の発注などだ。ただ、この仕事に関しては文化祭最中の方が忙しいものになるだろう。スケジュールによっては、ドラムセットやアンプ等の移動が大変だからな。まぁ気楽にできる仕事だろう・・・
そう思っていたのだが。
スケジュール作成にあたり、演者一人一人に電話をかけて都合のつく時間を聞く仕事。これが俺の神経をゴリゴリ削ってきた。
「私!トリがいいです!」
「なるほど。他のポピパメンバーもその意見には同意なんですか?」
「はい!私ちゃんと聞きましたから!」
「了解しました・・・ポピパは最終日の最後と・・・」
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「あたしたちがトリで。よろしく」
「え?いや申し訳ないんですが最後はもう埋まっちゃってて・・・」
「何?アンタあたしたちにどれだけ迷惑かけたか分かってんの?」
「いや・・・それはそうなんですけど今はそうじゃないっていうか・・・」
「そういうことだから。よろしく」
ツーツー
「・・・・・・・・」
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「あたし達がトリね!」
「アンタもかよ!」
「あら?アンタも、ってどういうことかしら?」
「いや、もう最後は埋まっていr・・・」
「そうなの・・・それは残念ね・・・あら?黒服さんどこへ行くのかしら?」
「是非文化祭のトリをよろしくお願い申し上げます!」
ツーツー
「・・・・やっちまった」
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「・・・はぁ・・・この仕事は少し難しかったかしら」
「・・・・本当に申し訳ないです」
一通り電話し終えた後、俺はひどく落胆していた。俺は本気を出せば意外と有能なのではないかと思っていたのだが、思ったより無能だったのだ。
「まぁ、一癖も二癖もある方達ですから・・・とりあえずこの仕事は他の方に任せますから、ステージの飾りつけに行ってきてください」
「了解しました・・・」
いや何と言うか、本当にガッカリだ。これは俺だけではなく紗夜さんにとってもそうだろう。暫くよう分からん無双状態でいたので忘れていたが、俺は本質的にはコミュ障なのだ。電話でやり取り、それも相手が女子となれば躓くことは容易に想像できた。しかし紗夜さんは俺のコミュ障を知らない。何故なら自暴自棄に陥っていた俺しか見てきていないのだから。
しかしこのまま終わってはそれこそマズイ。せっかく与えてくれた期待を、汚名返上のチャンスを、そして俺の第一歩を踏み出すスタートラインを、無駄にしてしまうわけにはいかない。そうと決まれば飾りつけを、プロの如く行うしかあるまい。安心しろ。小学校のクリスマス会とかで延々雑用やらされた俺にこの仕事はうってつけだ。度肝を抜いてやるぜ・・・・
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「あのーお願いした場所と違うんだけど?」
「その飾りはそこじゃなくて・・・・」
「何無駄なアレンジメントしてんの?決められたとおりにやってよ」
完全に計算外であった。飾りつけを俺一人に一任してくれるなら確かに俺は惜しみなくその才能を発揮できたであろうが、この仕事にもコミュニケーションが発生するのである。考えてみれば当然。紗夜さんも俺一人にこの馬鹿でかいステージの飾りつけをしろだなんて言うことは有り得ないし、何より俺が来る前から飾りつけは始まっていたのだから、当然担当の人間がいるはずなのだ。
結果、ここでも俺は生来のコミュ障が祟って、ロクに仕事もできずに疫病神となった。どんだけ仕事できないんだ俺は。
「・・・これは少し時間がかかりそうね」
「・・・・本当にすいません」
いやもう本当にね。何やってるんだろうね。
そうか、やっぱり無理なのかな。
俺に何かを成すなんてことは。
最初から、到底。
高望みだったのか。
結局ここでも俺は失敗するのか・・・
「負犬さん?」
「・・・・へっ?」
「いえ、なんだか調子が悪そうだったので」
「あ、あぁ少し考え事をしてましてね」
「・・・・またどうせ自分は、とでも考えていたのでしょう」
・・・・当たりだ。
「どうして分かっちゃうんですかね」
「・・・・貴方は以前の私に似ている。それだけよ」
確かにそうなのかもしれない。この人にも挫折する時期はあったのかもしれない。でも、基本この人は高スペックで、前ぶちまけた時にも言ったけど俺とはもともとの才能の差があるのだ。この人の挫折は言わば羨ましい悩みというもので、それは俺が多分人生かけたところで手に入らないものだ。
この人はその悩みをさらに努力で打ち破れる才能をも持つ。二重の壁が俺とこの人の間にはある。
じゃあ、俺は?
俺の明日は、どっちへ転がるだろうか。
まぁでも、頑張るしかないのか。