ロリコン☆ドラグーン   作:王蛇専用ガードベント

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勢いのままに書いてしまった作品です。
いささか読みづらい所もあるかもしれませんが楽しんで読んでくれれば幸いです。


プロローグ

遥か太古ーーーーーー二種の人類がこの世界に存在していた。

片方は異能の力を持ち、永遠とも呼べる寿命を誇り、己の魂の形である≪魂龍(ドラ・ニムス)≫と呼ばれる龍を顕現出来る、蒼穹を翔け抜ける「天の種族」。

そしてもう一つが異能や長い寿命は持たないものの、千差万別の道具を作り出すことの出来る技術力を誇る「地の種族」。

彼らは互いの長所を理解し、手を取り合って共存していた。

……しかし、この世は万物流転。死人が尽きないように、溺れる魚がいないように、その共存はいつまでも続くことはなかった。

年月を経るごとにその関係に軋轢が生まれ亀裂が入り、やがて種族同士の存亡を賭けた戦争が起き、何千何万もの命が奪われ、数多の都市が劫火の中に崩れ去り、筆舌に尽くし難い惨劇が繰り広げられた。

当初は圧倒的な力を持つ「天の種族」が戦争を優位に進めていた。だが、それに綻びが生じ始めたのは一人の「天の種族」の男の裏切りが契機であった。

彼は「地の種族」の女に恋慕をしていた。それ故に仲間達の元を出奔し、種族の禁忌を破って彼女と交わり、そして一人の息子を授かる。

その息子は、両方の種族の力を持っていた。

やがて成人した息子は父と共に「地の種族」の側に付き、戦争において多くの戦果を挙げ、彼らと共に10年もの歳月を費やして「天の種族」を悉く滅ぼしたのであった。

……そして、現在。

彼の子孫は世界中に散らばり、その子孫達は「天の種族」の≪魂龍(ドラ・ニムス)≫を顕現する力と異能を脈々と受け継いでいった。

「天の種族」と「地の種族」両方の血を受け継ぐ彼らを、人々は……≪龍騎士(ドラグナイト)≫と呼んだ。

 

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ーーーーーーー闇が深林を満たす中を、僅かな月明かりを頼りに少女は必死に走り続ける。

服装はどこかの山脈地帯の民族のようなポンチョを纏い、胸には金色のペンダントを着けている。見た目はまだ10にも満たない幼女。何故彼女は夜の森を駆けるのだろうか。

 

「探せッ‼︎まだ近くにいるはずだ‼︎≪龍の巫女≫はまだガキ、そう遠くは逃げられねぇ‼︎虱潰しに探し回れェッ‼︎」

 

その訳は、森の中に響き渡る怒声と、数多の星が瞬く夜空を飛び回る数匹の≪魂龍(ドラ・ニムス)≫の姿にあった。

その背中には全て人間が騎乗しており、龍と共に地上へと眼を向けて幼女の姿を見つけようと探し回っている。

地上からはランプの光が遠くから蛍のように入り乱れ、森を真昼の如く照らし出していた。

その警戒網を灰銀色の髪を翻しながら潜り抜け、幼女は長い草の茂みの中に隠れてから暫しの休憩を取る。

 

「ッ、はっ、はっ、はっ、はっ、はぁっ……‼︎」

 

底知れぬ恐怖に体の震えと涙が止まらない。

息を潜めたくてもその意思とは真逆にどんどん呼吸は荒くなっていってしまう。彼女は自らの身体を強く抱き抱いて、震え掠れる声で小さく呟いた。

 

「なんで……なんでわたしが……こんなめにあわなきゃ……?ぐすっ……さむいよ……こわいよぉ……‼︎」

 

彼女は今自分を襲っている男達が何者なのかさえ知らない。それ故に恐怖も倍増し、彼女の魂魄を縛り付けてゆく。

 

「……キュルルル……」

 

それを和らげたのは、一匹の小さな金色の蜥蜴であった。

幼女の着ていたポンチョのフードから姿を現し、安心させるように優しく彼女の頰に擦り寄る。

それでようやっと幼女も恐怖と緊張を和らげることが出来たらしく、段々と呼吸も落ち着いてきた。

首にかけられたペンダントを握りしめて、少女は肩にちょこんと座っている蜥蜴に僅かながらも笑いかける。

 

「ありがと、リト……わたし、もうだいじょうぶだから……」

 

その様子で平静を取り戻したと分かると、蜥蜴は再び彼女のフードの中へと潜り込んだ。

 

「にげなきゃ。どこかとおいところに、みつからないところににげて……かくれないと」

 

涙を拭い、冷静さを取り戻した幼女はゆっくりと周りを警戒しながら立ち上がる。

だが、

 

「いいや、もうその必要はないぜお嬢ちゃん」

 

声と共に、幼女の上から影がかかる。

 

「ひっ……ッ‼︎」

 

唐突な声に彼女は引き攣った悲鳴を上げ、再び噴き出した恐怖に足を取られて尻餅をつく。

周りには気を張り巡らせていた。それなのに見つかったのは、声の主が気配を完全に絶っていたのもあるが、なによりも明かりを点けずにいたのが一番の理由だ。

明かりは辺りを照らすにはうってつけだが、どこにいるのかも分かってしまう。声の主はそれを察して明かりなしで幼女を探していたのだ。

 

「……本当にまだガキじゃねェか。こんなのが本当に“(かなめ)”になるのか?」

 

幼女の背後から現れた男は、身を竦ませている彼女を睥睨する。

 

「……まぁいいさ。生死問わずに捕まえろって命令だが……反抗するなよ?死にたくなきゃァな……」

 

完全に怯えている幼女を見て、男は無造作に襟首を掴もうと右手を伸ばす。

もはやまともな抵抗は出来ないと確信しているが故に彼は慢心し、油断していた。

そして、難なく男の右腕が幼女の服の襟首を掴んで持ち上げてーーーーーーー。

 

「グルルァァッ‼︎」

「ッ⁉︎」

 

同時に彼の右腕を伝って這い上って来た一条の金の光が彼の顔に向けて躍りかかった。

確かに幼女は身を竦ませ、まともな抵抗など取れる状況になかった。しかし、彼女以外なら話は別。例え、それが矮小な蜥蜴であったとしても……。

 

「リトッ‼︎」

 

幼女の声に応えるかのようにリトは男の顔に張り付くと、その鼻に小さな顎門で喰らい付いた。

 

「ッッッ⁉︎()ッだァァァァッ⁉︎」

 

予想外の抵抗に男は痛みに叫びながらもリトを引き剝がしにかかる。

だがリトも小さいながらもそれに見合わぬ力で男の顔に張り付き、瞼を引きちぎらんと顎門の力を強める。

 

「クソッタレが、離れろっ、この、小せえ癖によぉっ‼︎クソッ、畜生がッ‼︎とっとと離れろって……言ってんだろうがよォォォォォォォォッ‼︎」

 

男も必死だ。小さいとはいえこのままでは鼻を喰い千切られる可能性が高い。そうなる前に外さなくては。

その焦りが、ミスを生んだ。

リトを剥がそうと片手で試みていた男が、両手で蜥蜴を引き剝がそうとした。彼はあまりの焦りのために、手を持っていたもの……即ち、幼女を投げ捨ててしまったのだ。

 

「ぇ」

 

幼女の体は勢いよく夜の空に投げられた。

それを見て、リトが男の顔から離れて主人の後を追う。続いて鼻を抑えた男も、幼女を捕まえんと猛然と走る。

幼女は実に10m弱も空を舞った。

その間に生い茂る木々に当たらなかったのは奇跡とも呼べるだろう。

しかし、その着地点は不幸にもーーーーーーー30m近い落差のある断崖の先であった。

 

「やばいっ‼︎」

 

男が足を速め、少女を掴もうと手を突き出す。

だがもう遅く……その指先は少女の胸元を掠め……空を切った。

 

「きゃあああああああああああああ‼︎」

 

つんざくような悲鳴と共に、幼女は崖から落ちて行き、その下にある深い川へそのまま転落。

男が慌てて川の様子を確認するが、彼女が浮かび上がる様子はいつまでたっても現れなかった。

 

「……なんてこった。面倒なことになったなぁ」

 

浮かび上がってくる様子がないのを悟り、男はため息を吐いて立ち上がる。

 

「うまく川底に引っかかってくれりゃいいんだが」

 

そう言いながら、男は先程突き出した手を開く。

そこには、幼女が首にかけていたペンダントが収まっていた。胸元を掠めた際に引っ掛けたのだろう。

 

「早く見つかってくれよ?≪龍の巫女≫。俺達の≪帝≫の復活の為にはあんたが必要なんだからなァ……シシシシッ」

 

夜天を仰ぎ、男は体を震わせながら哄笑した。先程噛まれた鼻からだらだらと赤い血が流れ出ているのも気にせずに。これから巻き起こるであろう、波乱の時代の幕開けに心を躍らせて。

龍達が舞う夜はまだ、終わりそうにはなかった。


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