KIVACU-RIOT!   作:Million01

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ニコ動で上がっていたアレです(
文章ゴミなんでそれでもいい人はどうぞ

ちなみにまだ解き放ちません


序曲・運命の鎖

海の見える窓を眺めながら赤い大型バイクを走らせながら僕…紅 渡はとある場所へ向かっていた。

 

海上都市…通所アクア・エデン。その名の通り海の楽園、海の上の都市と呼ばれる人工島だ。

 

特にバイクを運転するには問題ないけど、少し不安を感じてくる。

理由は色々あるけど…と、考えていると目的の場所へ着くようだ。

 

ただ、その島に入るには"入島審査"を受けなければならないのだ。

 

名前や年齢を公的身分証を介して確認し荷物検査、簡易的な血液検査などと外国へ行く時みたいな厳重な検査が行われる。

他には公共交通機関であるモノレールでも行けるには行けるのだが、僕としてはバイクで行った方が早い。

 

"入島審査"を終えると、とりあえずホテルでチェックインをしたいのでホテルに向かおうと思った。

けど、僕はここは初めてなので土地勘もなく場所がわからない…

とりあえず周りの人に話を聞こうかなと思い、バイクを停めて辺りを見回した。

 

そこで目に入ったのは一人の女の子だった、赤い髪の少女だ。

珍しい髪の色だ、と思いながら女の子を見る。ただ、他の人はおらずこの辺には赤い髪の女の子しかいなかった。

 

「……?」

 

眺めていた女の子と目があった…思わず僕は目を逸らしてしまった。すると女の子が僕の方に近づいてきた。

 

「ねぇ、どうかしたの?

さっきから私のことをジッと見ていたでしょう?」

 

うっ、普通に気付かれてた。ここで何でもないですと言ってしまえばいいのかもしれないけど僕はホテルを探している。それにここで話を切ってしまうと時間を無駄にするかもしれない…

僕は勇気を出して話を切り出そうとする。

 

「確かに見ていました…」

 

すこしオドオドしている感じを出してしまっていないか不安を感じてしまう、けど僕はそれでも話を続けた。

 

「実は道に迷ってるんですけど…」

 

「もしかして旅行者なの?」

 

当然のように気付かれるけど仕方がない、なにせ本当のことだから。

 

「あっ、は、はい、一応…けど、初めて来た場所だから土地勘がなくて…」

 

「そう、だからそんなに挙動不審だったのね。それで、道を聞きたいのね」

 

やっぱり挙動不審だったんだ…僕の悪い癖だな。

 

「それでどこに行きたいの?」

 

「えっと…明確な名前とかはなくて、えっと、その…とりあえず僕は宿泊先を探してるんです、なるべく安いところの…」

 

あまり明確な場所を言えなくて申し訳ないと思いながら答えを待つ。

 

「ああ、なるほど…宿泊先ね、それは当然よね」

 

「えっと…それで…」

 

若干、女の子は難しい事を考え始める。僕としては明確な場所を言えてないので話を切られても仕方がないと思いながら待ってみる。

 

「ここらへんだと…あそこらへんね、付いてきてくれる?」

 

まさか教えてくれるとは思わず少し驚いたが女の子の言葉通り付いていくことにした、当然バイクを引いて。

 

 

 

 

あまり人気のない歩道をバイクを引いて歩きながら女の子に付いていく。

 

「貴方、バイクに乗るの?」

 

多分、純粋に気になったんだろう…

 

「はい…そんなに自慢することではないんですけど…」

 

「けど、足があると便利よね」

 

「まぁ、そうですね…」

 

気不味い雰囲気が漂う中、女の子が立ち止まった。

僕は首を傾げる。

 

「ここの真っ直ぐ行けば直ぐに着くわ」

 

目の前の道路の奥にあるビルを指差してそう言うと、

女の子は踵を翻し僕とは反対方向を向いて顔を合わせた。

 

「ここまで来れば、もう迷うことはないと思うわ。それじゃ、私はここで」

 

そう言うと女の子は僕が向かう反対方向へ歩いていき

 

「あ、ありがとうございます!」

 

深々と頭を下げて僕はお礼を述べる。

 

「それじゃあ、良き一日を」

 

女の子は去り際にそう言い歩いていく。僕はそれを見守る。

 

「良かったな、渡。良い人に出会えて」

 

見守っていると僕の懐から声が聞こえた。

 

「うん」

 

僕は当たり前のように男性の声に返事をした。キバットバットⅢ世、それがこの声の正体だ。

蝙蝠のような外見の、金色の身体と大きな赤目が特徴的な生物で僕はキバットと呼んでいる。

"入島審査"が終わるまではキバットは外で待ってもらい、そのまま終えるとそのまま戻ってきてもらったのだ。

 

キバットは知能などが高く、こういうことには気が利くからありがたい。

 

さて、僕もホテルに向かってチェックインしようかな、と思ったその時だった。

 

キキィーー!

 

突如、僕の背後で甲高いスキール音が響いた。

 

「なんだ?」

 

流石にこれには少し驚いたのか、キバットが少しだけ頭を出す。

 

「さぁ?」

 

僕は状況がわかってないので曖昧に答えた。

 

「まさか事故じゃないだろうな…けど、その割には衝突した音もしなかったしただの急ブレーキか?」

 

キバットが喋りながら僕の懐から出ようとする。僕は出ようとするキバットを押さえる。

 

「やっぱり、こいつで間違いない」

 

「ちょっと、アナタたち―――」

 

「大人しくしろっ!」

 

先程、女の子が歩いていった方向から、聞いたことのない二つの声と聞いたことのある声が聞こえてきた。

流石に気になり僕は声のする方へ向かった。そこには…

 

「この手を離しなさいっ」

 

「騒ぐんじゃねぇっ!」

 

複数の男が、先程の女の子を力づくで拘束しようとしていた。

 

そこからはもう僕の体が思考よりも早く動いていた。

 

「あ、あの…」

 

僕は近づいて複数の男のうちの一人の肩を掴んだ。

 

「あん?チッ…邪魔するんじゃねぇ!」

 

ドン、と振り向いた男が突き放すように僕の体を吹き飛ばした。

もちろん、なんの抵抗もなく吹き飛ばされ地面に手を付けてしまう。

 

「チッ…早くその女を乗せろ!」

 

「わかってるよ!いい加減おとなしくしろぉっ!!」

 

僕を突き飛ばした男はもう一人の男に指示を出す。

 

「キャアッ!」

 

女の子を拘束しようとしていた男は強引に女の子を車に乗せ乗り込んだ。

誘拐犯と思わしき人達は車のエンジンを噴かすとそのまま車を出した。

 

「くぅっ…」

 

僕は体を起こし事態を確認する。警察に連絡をするかそれとも…

 

「なぁ、これは警察に通報したほうがいいんじゃないのか?」

 

キバットがそう提案してきた。確かに一理ある…けど…

 

「あ〜まぁ、渡だからそういう選択を取るよな」

 

だが、キバットは僕の顔を見て全てを理解した。何も言わなくても僕の考えが大体わかる…それほど長い付き合いなのだ、僕とキバットは。

 

僕は直ぐに自分のバイクに跨り、ヘルメットを被る。そしてエンジンキーを解除し、ハンドルを回しエンジンを噴かす。

 

よし、ガソリンもまだ大丈夫…

 

ガッ、とペダルを思い切り踏み僕はバイクを走らせた。よし、これなら車を見失うことはない…

 

車を追跡するといっても、バレて拳銃を発砲されたりしたらたまらないので距離を開けてバレないように追跡した。

 

 

 

ただ、かなり遠くへ行ったようで日は落ちる時間となっていた。車を追っているととある倉庫に停止した。

僕はバレないように少し遠くのところにバイクを停めて、慎重に倉庫に近づいた。

 

僕に気付いた様子はなく少し安堵してしまう。

さて、どうしよう…僕はどうやって女の子を助けようか悩む。

 

「ここは変身して助けるか?」

 

キバットが小声で話しかけてきた。

 

「変身してもいいけどあまりキバのことはまだ知られたくないかな…それに―――」

 

そこまで喋った時だった、僕の背後から殺気を感じた。

だが、遅かった…振り向こうと体が反応するも強い衝撃が僕を襲った。

 

「―――っ!?」

 

僕の意識はそのままブラックアウトしてしまう。

 

 

 

誰かに体を引っ張られる感覚が僕の目を覚まさせた。

 

「ちょっと、外にこんな奴がうろついてたわよ」

 

誘拐犯の仲間と思わしき女性が後ろ手に手錠されたままの僕を乱暴に突き飛ばした。

当然、受け身を取ることもできず、顔を地面に擦り付けるように叩きつけられた。

 

「ったく、しっかりしてよ。後をつけられてるじゃない」

 

「じゃ、じゃあ…もう通報されたんじゃ…」

 

「いえ、それは大丈夫よ。そんな様子はなかったから」

 

「それは良かった…」

 

「これで誘拐は成功ね」

 

誘拐犯二人と女性一人が僕の目の前でそんな会話をしている。

それに女性が何故か自信げに成功と言ってるのに少し疑問を持ってしまう。

 

「それで受け渡しは?」

 

「クライアントにはもう連絡を入れてある。すぐにここにくる。だが、気を抜くなよ」

 

「わかってる」

 

受け渡しにクライアント…話から察するに便利屋か何かだと予想できる。

やっぱり旅行先ってこういう事もあるんだ、と思わず思ってしまう。

 

「クライアントがくるまでは休憩だ。お前はこいつらを見張ってろ」

 

誘拐犯の一人がそう言い、僕達を顎で示してきた。

 

「えー俺がかよ?面倒くせぇな」

 

「黙って働け」

 

「傷付けないでよ、大事な商品なんだから」

 

「わーってるよ。けどよ、こっちの奴はどうするんだ?」

 

そう言って僕を睨みつける誘拐犯の一人。

 

「わかりきったことを聞くな。始末するに決まってるだろ」

 

「今すぐに殺るのか?」

 

男はそう言いながら懐からナイフを取り出してきた。僕は特に怯えることはしないのだがここは怯えたほうがいいのかな?という疑問が浮かんできてしまう。

けど、こういう一大事に懐のキバットが動こうとする。

 

「いや、もうちょっと後でいいだろう。取引が終わってからで」

 

その言葉がキバットに聞こえたのか動きを止めた。けどなんとか免れたから安心だ。

 

「それじゃ、しっかり見張ってろ。油断するなよ」

 

「へいへい」

 

誘拐犯一人とその仲間の女が外へ出ていった。見張りの男は少し離れた位置で荷物に座り込んでいる。

あまり、下手なことはできない。なにせ隣にはあの女の子がいるのだ。

 

「…………」

 

先程の女の子と目が合い、僕が思わず苦笑しながら頭をペコリと下げてしまう。

 

「アナタ、あの時の……どうしてアナタがこんなところに?」

 

「それは…」

 

貴女を助けたかったから、と言いたかったけどあまり言える立場ではない。現に捕まっているし。

 

「…………」

 

思わず僕は黙ってしまう。情けないと自分で思ってしまう。

 

「まさかとは思うけど、私のことを助けようとしてこんな目に遭ったの?」

 

「は、はい…けど…結局、捕まっちゃって…」

 

多分、今の僕は苦笑いをしているんだろう…鏡を見なくてもわかってしまうのが嫌になってしまう。

 

「けど、私を助けようとしてくれたこと、私のことを心配してくれたこと、それに関しては素直に嬉しい」

 

なんとも言葉が出ない。なんて言葉も返せばいいかわからない。

 

「だから、ありがとう。それと……巻き込んでしまってごめんなさい」

 

「い、いえ…僕が勝手にやったことだし捕まったのは僕の責任です…」

 

「それどころか、自身の命が危ぶまれる事態になったのだけどね」

 

女の子は半目で僕を見てきた。けど、僕はその言葉に思わず笑ってしまった。

 

「い、いえ…こんなのいつもと比べればまだマシな方です」

 

僕は笑顔を見せて女の子に言った。

 

「あら、ずいぶん余裕そうね」

 

「え、いや…まぁ…」

 

僕は言葉を濁らせながら曖昧に答えた。

 

「けど、大丈夫です…何があっても僕が守りますから」

 

そう何があっても…もう失いたくはない。彼女や母さん、父さんのように。

拳を強く握りしめる。

 

「!?」

 

僕の台詞に女の子は驚いたかのように目を見開いた。

 

「ふぅん、まさかアナタの口からそんな台詞が出るとはね」

 

「まさか出るとは思わなかったんですか?」

 

「えぇ、見るからに気弱そうな感じだもの」

 

確かに気弱そうとよく言われてしまう。

 

「けど、強がらなくていいわ。私が守ってあげる」

 

ここに来て強がりと思われてしまった。確かにそう見えてしまってもおかしくない。

そしてまさかのそっくりそのまま言葉を返されてしまった。

 

「普通、そういうのって男性が言うんですけどね」

 

僕はまた苦笑しながら言った。お互い謎のプライドの譲り合いが発生していなくもなかった。

 

「あっ―――」

 

「……?」

 

「コホン―――アナタは死なないわ。私が守るもの」

 

キリッ、と凛々しい顔で僕にそう言ってきた。僕を落ち着かせようとしているんだろうと思ってしまう。

 

「えっと…ありがとうございます?」

 

とりあえず僕はお礼を言っておいた。いや、多分違うんだろうけど。

 

「何か調子が狂うわね。これほどツッコミ易いネタをこう返されるとは。鈍いわね、アナタ」

 

ツッコミ?ネタ?そう言われると僕にはわからない。あまりそういうのには詳しくない。それは自分でも自覚している。

 

「おい、うるせぇぞっ!いつまで呑気にペラペラ喋ってんだよっ!」

 

流石に痺れを切らしたのか見張りの男が僕たちに怒鳴りつけてきた。

 

「…………」

 

「よーしよーし、いいから大人しくしとけ」

 

ここで下手に刺激して怪我はしたくないので、僕は相手の指示に従った。

 

「ちょっと、どうかしたの?」

 

「別に気にすることはねぇ。それよりそっちは?」

 

「ああ、クライアントのお出ましだ」

 

男の声と同時に倉庫の外から車のエンジンが聞こえてくる。

エンジンが止むとそのまま誰かが降りてくる音が聞こえてくる。そして足音と共に一人の男性が倉庫に姿を現す。

 

逆立った短い黒髪と無精髭が特徴的なスーツ姿の男性が誘拐犯を見た。

 

「それ以上近づくな。金は?」

 

「まだ本当に依頼した"商品"かどうか、ちゃんと確認してないんだが?」

 

「金は用意してあるのか?」

 

いかにも取引現場って感じの雰囲気で話す二人。

 

「金ならある。ここにな」

 

クライアントである男は持っていたトランクを地面に置き、中を開いて見せた。

 

そこにはいくつもの一万円札の束があった。そして、クライアントは束の中から数枚引き抜き、ひらひらとちらつかせる。

 

「すげーな!」

 

「二千万、女一人を攫っただけで二千万だ。フイにはしたくないだろう?さっさと女を確認させろ」

 

「いいだろう、もう少しこっちに来い」

 

その言葉と同時に二人が近づいてきた。だが、それほど近いと言うわけではなく若干、距離があった。

 

「おい、そこら辺で十分だろう」

 

「あー、確かに似ているな。だが、本物か?」

 

クライアントは女の子を見るなりそう言い出した。

 

「んだこら。いちゃもんつけるつもりか」

 

当然と言えば当然の反応のように男ががんを飛ばした。

 

「噛み付くなよ。そんなつもりはない。が、こっちも似ている別人を掴まされたら、たまったもんじゃない」

 

「なら、どう取引するの?そっちが用意した金、全部本物だって一枚一枚確認するまで取引成立を遅らせてもいいのよ?」

 

クライアントの言葉に反論するかのように女性がある提案をしてきた。

 

「そっちはどんな確認をしてもらっても構わないがな」

 

「…………。OK。わかった、前言を撤回しよう」

 

「こいつはビジネスだ、ビジネスには信用が欠かせない。"商品"と"金"お互いに信用しようじゃないか」

 

クライアントは続けるようにそう答え、話を進めた。

 

「ちっ、最初からそう言えってんだ」

 

「ところでそっちの男はなんだ?」

 

クライアントが女の子の隣にいた僕を睨んできた。

 

「些細なトラブルだ、気にするな。それよりも早く済ませよう。サッカー共に気付かれると、お互い面倒だろう?」

 

サッカー?サッカーって言えばあのサッカーかな?

けど、それだと文章がおかしいし…

 

「違いない」

 

クライアントはトランクを閉めて、こちらに向かって歩いてくる。

クライアントは特に怪しげな行動はせず

そして誘拐犯の男の一人にトランクを投げ渡す。

 

「ほら、持ってけ」

 

そしてクライアントは女の子の腕を取り、無理矢理立たせる。

これで取引は成立しあとは僕が殺されるだけ。

けど、僕には抵抗する術はあるのでこの状況を打開するのは容易い。けど、あまり他の人には見られたくないのだ。

ここはクライアントが倉庫の外に行き、僕が殺される直後に動いた方が良さそう、と思い始めた。

 

僕はとりあえず女の子の様子を見た。

 

「――――」

 

無言で僕を睨みつけて首を横に振る。何もするな、という合図なのだろう。

だが、当然僕は何かしようとは思ってはない、今は。

 

「しかし手錠を無理矢理切るのは手間だな。鍵はもらっておこうか」

 

「これよ。でも、ここで手錠を外すのは止めておいた方がいいわね」

 

「言われなくてもわかってるよ」

 

誘拐犯の男達がトランクの中身を見てはしゃぎ始めた。

クライアントはどう動くんだろう、と思いながら動きを見た。

 

「うれしいか?それならなによりだ。さて、それじゃあ気分もいいところで本題に入ろうか?」

 

本題?クライアントの口から予想外の台詞が出た。

取引は終わっているはずなのに本題に入る…いや、僕が知らないだけかもしれない、そう思う。

 

「取引は終了したはすだ。俺たちはもう引き上げる」

 

だが、その本題というものに入らず誘拐犯達は引き上げようとする。

 

「いやいや、そういうわけにもいかないんだよ。これがなんせコッチはお前らを捕まえなきゃいなんのでな」

 

捕まえる?もはやクライアントの言ってることが僕には理解できなかった。

 

「はぁぁ?」

 

その時だった。十数人もの謎の集団がこの倉庫に押しかけてきた。

拳銃を構え、誘拐犯達に銃口を向けた。

 

「全員動くな!抵抗は無駄だ、大人しくしろ!」

 

「貴様らを逮捕する!その場に膝をついて、手を頭の後ろに!」

 

逮捕?こういうのってドラマとかで見たことがあるんだけど、まさか警察?

僕は唖然としながら冷静に状況を確認する。

 

「うぉぉぉ!?な、な、な、なんだぁ!?」

 

流石にこれは誘拐犯達には予想外らしく叫ぶ。

 

「動くな、大人しくするんだ!」

 

よく見れば軍服?らしきものを着ている人達もいる。

 

「罪状は誘拐だ。人身売買をおまけでできるかどうかは……俺が決めることじゃないから知らん」

 

クライアントの男が誘拐犯達にそう告げる。

いや、まさかとは思うけど…

 

「嵌めたわね!」

 

「取引自体はちゃんとしたもんだったろ?それにだ、お前らが金額次第で何でも請け負うことは知ってる」

 

やっぱりということは…このクライアント、警察?

 

「聞きたいことは山ほどあるんだ。どの件から調べてほしい?希望があれば言っていいぞ、なるべく沿ってやる」

 

「……くそっ。お前ら、陰陽局の連中か?サッカー共を守ろうなんてどうかしてるぞ」

 

「そいつは差別用語だな。あんまり乱暴な言葉を使ってると取り調べのときに痛い目見るかも知れんぞ?」

 

「一つアドバイスをしてやろう。心証を良くしておくことに越したことはない」

 

若干、言ってることがわからない。そのまま三人は拘束された。

 

「よう、お疲れさん。矢来」

 

「無事に成功したようで何よりです」

 

矢来と呼ばれた誘拐された女の子は素っ気なくそう答えた。

 

「仕込みに時間がかかったからな。これで失敗したら上が五月蝿い」

 

主任(チーフ)、犯人確保。倉庫内には他に人影なし」

 

「そいつはいい。なら、この件はこれで綺麗スッパリ解決じゃないか」

 

現れた女性が状況を説明した。

 

「ああ、矢来さん。お疲れ」

 

そして女性は矢来と呼ばれた女の子にそう声をかけた。

 

「お疲れさまです」

 

「これ、そこの彼の手錠の鍵。任せてもいい?」

 

そう言って女性は僕を見るなり女の子に鍵を渡した。話から察するに僕の手錠の鍵なんだろう。

 

「えぇ、大丈夫です」

 

「それじゃあ、よろしく」

 

いつの間にか手錠が外されている女の子は僕に近づいてきた。

 

「えっとまさか、これって仕組まれてたの?」

 

「えぇ、気付かなかったの?まぁ、気付かなくて当然よね」

 

「君は一体…」

 

何者?と聞こうとするよりも先に女の子が口を開いた。

 

「私は特区管理事務局。通称、陰陽局の風紀班。治安維持のための特殊な組織なの」

 

そう言って身分証らしきものを見せてくる。

えっと…特殊組織の一員ってことなのかな?

 

「なるほど…これは全て作戦の内だったんだ…」

 

「まぁ、犯人も確保できたわけだし、そういうことになるかしら」

 

「つまり、僕が助けに行っても無駄だったんだ」

 

「…………まぁ、結局何もできずに捕まりに来たようなものだったけど」

 

「まぁ、そうだよね」

 

「けど、助けに来たことは嬉しかったし、格好はよかったかもね」

 

何故か僕はこの言葉を聞いて安堵したかのように力が抜けていった。

 

「という私の本心はどう?」

 

「…………」

 

えっと、どういう反応すればいいかわからない。

 

「改めて礼を言うわね。危険を冒してまで私を助けようとしてくれて、ありがとう」

 

「いや、気にしなくていいよ。僕が勝手にやったことなんだから」

 

「ただ、物語の王子様みたいにちゃんと犯人から救い出してくれたならもっと格好良かったのだけれど」

 

「いや、それは遠慮しておくよ」

 

苦笑いを浮かべながらそう答える。僕にはそういうのには向いてないと思ってる。

 

「ほら、後ろを向いて。手錠を外すわ」

 

僕は彼女の言葉に従って背を向けた。そして彼女が僕の手錠をはずした。

両腕が開放されて少しは気が落ち着いた。

 

「おい、矢来。ちょっといいか?確認しておきたいことがあるんだが」

 

「了解」

 

クライアントだった男性に呼ばれそちらの方に向かっていく彼女を眺めた。

 

「一件落着だな、渡」

 

僕の懐に息を潜めていたキバットが周りには聞こえない声の大きさでそう言った。

 

「うん、そうだね」

 

思わず僕の顔に笑みが溢れた。

 

「ほら、さっさと来いっ!」

 

「うるせぇっ!引っ張るな、自分で歩く!」

 

「……チッ」

 

「…………」

 

目の前で誘拐犯達が警察へ連行される中、誘拐犯の女性が僕を睨みつけた。

 

「…………?」

 

僕は思わず首を傾げた。その時だった。

 

「気安く触るなっ!離せっ!」

 

女性が暴れ始めたのだ。

 

「貴様っ!大人しくしろ!」

 

連行していた男の腕を振り払い、女性は手錠されたまま僕の方に走ってくる。

 

「え!?」

 

流石に予想外の行動に僕は声をあげる。

 

「こっちに来い!」

 

そして女性は僕に組み付いてきた。思わず組み付きから逃れようとするも、相手の力が予想以上に強かった。

これでも力には自信があるのに振りほどけないのに疑問を持った。

 

「くっ!?」

 

僕の首に手錠をあてるように女性は後ろから組み付いてくる。

流石にこの状況では助けてもらえそうもない、なにせ下手に撃つと僕に当たってしまうのだ。

 

「近寄るな!こいつの首をへし折るよ!」

 

「っ!?」

 

その言葉に僕は驚いて目を見開いた。

 

「ちっ、面倒なことに。おい、そっちの二人は逃がすな!お前らは早くそいつらを連れて行け」

 

「りょ、了解」

 

クライアントを演じていた男性は誘拐の二人を連れて行くように促し、僕達を睨みつける。

 

「本当に人の話を聞かないな。さっきも言っただろ、心証はよくしておけと」

 

「無駄な抵抗は寄せ!」

 

「無駄かどうか、試してみなきゃわかんないだろう?」

 

警察官の言葉に怯える様子もない誘拐犯の女性。

 

「この囲まれた状態でどうするつもりだ?何ができるんだ、お前に」

 

「そうね。例えば―――こういう事ができるわ」

 

クライアント役だった男性の言葉に苦笑しながら次の行動に出た。

ガブッ、と誘拐犯の女性は僕の首筋に噛み付いた。

 

「……え?」

 

流石に首筋には噛まれたことがないので少し痛く感じた。

そしてジュルル、と血液を綴ってくる。流石に血液を吸われるなんて言うことは初めてだ。

 

「くっ…!」

 

必死に抵抗するもどうしてか常人ではありえない力で身体を抑え込まれる。

まさか…ファンガイア!?

そうだとしたらなんとかしないと…そう思い始めるのと同時に僕の視界が歪み始めた。更には四肢の力が抜けていく感じになり始める。

 

「こ、こいつ!血を吸ってる、血を吸ってるぞ!吸血鬼だっ!」

 

吸血鬼?ファンガイアではなく…?

ガキンッ、と目の前の手錠が引きちぎられた。恐らく先程の力で引きちぎったんだろう…

 

「この野郎!」

 

警察官の一人が腰元の拳銃に手を伸ばし、素早い動作で銃口をこちらに向ける。だが、女性の方の反応も早く僕の身体で銃口から身を隠しそのまま男に向かって突撃した。

 

「なっ、卑怯なっ!?」

 

そのまま戸惑った警察官から拳銃を奪い取り、その身体を蹴り飛ばし距離を取った。

 

「全員動くなっ!動けば、こいつの命はないよっ!」

 

「…………」

 

僕を人質に取られ皆が思うように動けないらしい。

 

「ほらね、無駄な抵抗じゃないでしょう?」

 

「吸血鬼が混じってるなんて聞いてないぞ、くそ」

 

どうやら本当にファンガイアじゃないらしい…吸血鬼、確かに聞いたことはあるけど。

 

「別に珍しくもないでしょう、吸血鬼なんてこの都市じゃ」

 

珍しくもない?まさか、この都市にはまだ吸血鬼がたくさん…

その思考をやめさせるかのように僕の側頭部に銃口を押し当てられる。

流石に下手な動きはできなくなる。

 

「それで、どうするつもりだ?このままじゃ、どうせジリ貧だぞ」

 

確かにクライアント役の人の言う通りだ。このままでは膠着状態だ。

 

「言ったでしょう?こいつの命を奪うって」

 

流石にこの言葉には驚きを隠せないし冷や汗を隠せない。

 

「そうしたらもう終わりだ、それこそ逃げ場がない」

 

「そうね。確かに完全に殺せば、こいつは無視するでしょうね」

 

まるで策があるかのような言い方をする。

 

「けど、無視できない状況なら?これなら、足止めぐらいにはなるでしょう」

 

すると、女性は笑いながら僕から少し離れるのがわかった。

拘束が少し緩むもそれでも僕でも抜け出せない力で拘束されている。

そして僕の側頭部に突き付けられていたはずの銃口が別のところに向けられ―――

 

パァンッ!乾いた銃声が倉庫内に響き渡り、血が撒き散らされる。

それは僕の血ではなく僕を拘束していた女性の血だった。

 

「……くぅぅ……さすがに痛いわね……」

 

そんな感想を述べながら女性は自身の左手を見る。先程、女性は右手に持っていた銃で、左手を掠めるように発砲したのだ。

肉を抉った手の甲から血が零れ、左手が真っ赤になっていく。

 

「なっ…」

 

さすがに僕はこの光景に絶句した。

なぜ、自分の腕を撃ったのだろうか?その疑問が頭から離れなかった。

 

「まさか、お前っ!?」

 

クライアント役の人が警戒しながら叫んだ。

 

「そうよ!これなら、助けざるを得ないでしょう!アンタたちが無視するわけがないわよねぇっ!」

 

僕の見えないところで話が進んでいく。ますます訳がわからない。

 

「ちっ、この野郎!」

 

クライアント役の人が素早く銃を構えた。

 

「はんっ、撃てるの?こいつごと」

 

「ちっ」

 

真っ赤に染まった腕で再び強めに拘束し、楯にした女が脅しをかける。

くっ、どうすれば…これは本当にマズい…打開策はあるにはあるけど、あまり人には見られたくない。

そもそも、力比べでは拘束はできない…ならば、相手の拘束を強制的に解かせるしかない。

だから…

 

「あーもう!これはまじでやばいぜ!」

 

突如、僕の思考を止めざるを得ない状況が起きたのだ。

そう、懐のキバットが叫び出し飛び出てきたのだ。

 

「なっ!?」

 

その場にいた僕もこの状況に驚いた。

まさか、キバットが勝手に懐から出てくるなんて僕でも予想はしていない。

 

「この吸血鬼女!渡を離しやがれっ!」

 

キバットが女性の持っていた拳銃に噛み付くと無理矢理引き離し宙へ投げ飛ばす。

 

「な、なによっ!こいつ!」

 

更にはキバットは女性に何度か爪で攻撃をし始めた。

ファンガイアを怯ませる程の力を持つキバットの攻撃はさすがに耐えきれないのか女性が拘束を緩め突き飛ばされ、僕が開放される。

 

「ふぅー…これで安心だな」

 

そうするとキバットが倉庫の外の方に出ていった。

 

「チッ…次から次へと何なのよ!」

 

女性は悔し紛れなのかパチンッ、と指を鳴らした。

ボウゥゥッ!と突如目の前に炎が現れた。

 

「!?」

 

さすがに目の前の光景には信じられないが炎と距離を取る。

目の前の炎と煙が邪魔で周りが見えず、何が起こってるかわからない。

 

「渡ー!」

 

一旦、倉庫の外に出ていったキバットが戻ってきた。

 

「キバット!なんで出てきたのさ」

 

「なんでってそれはお前を助けるためだよ」

 

「その気持ちはわかるけどなんであのタイミングで?」

 

「渡、吸血鬼って知ってるか?」

 

僕の質問に答えずキバットが質問で返してきた。

 

「人間の血を吸って生きる、魔族でしょ?本当にいるかどうかはわかんないけど」

 

「そうそう、他には?」

 

「日光や十字架、ニンニク、水が苦手で…確か吸血鬼に血を吸われた人間は吸血鬼に……」

 

「ああ、一般的にはな」

 

「一般的には?」

 

「色々と説明を省いて重要なことだけを言っておくぜ、さっき吸血鬼に血を吸われた人間は吸血鬼になるって言ったよな?」

 

「うん」

 

「あれは間違いだ」

 

「間違い…?」

 

「そう、逆なんだ。吸血鬼の血を吸ったやつは吸血鬼になる可能性があるんだ、それに少量でも飲むとヤバい」

 

「えっと…それと何が関係が…あっ!」

 

「そう、気付いたようだな。渡、お前は下手したらあの吸血鬼女に血を飲まされそうになったんだよ、俺が助けに行かなきゃ今頃どうなってたかわからないぜ」

 

「なるほど…ありがとう、キバット」

 

「へへーん、いいってことよ」

 

「それにしてもよく知ってるね」

 

「ああ、実はな―――ってヤベッ」

 

「……?」

 

キバットが突如話の途中で何かに気付きどこかへ飛んでいく。

それと同時だった。まるで元から燃えていなかったかのように炎が消え倉庫も元通りになっていた。

 

「な、なにが…」

 

思わず状況を確認するために周りを見回した。

 

「この、クソッタレ!そんな力があるくせに人間なんか助けやがって!」

 

「人間との共生、それがこの都市に住む吸血鬼の原則のはずでしょ?知らないとは言わせないわ」

 

見ると誘拐犯の女性と女の子が対峙するかのように向かい合っていた。

 

「ふざけないでっ!サッカー呼ばわりされて、いつまでも見下されたままで、黙ってられるわけないでしょっ!」

 

「なんともしまらない主張ね。それはね、ただの僻みと言うのよ」

 

「私に言わせれば、アナタのようなファッキン・サッカーがいるからいつまでも経っても私達はサッカー扱いなのよ」

 

「うるさい!うるさァァァいっ!」

 

女性の叫びをかき消すように、女の子が腕を振るう。

するといつから停止していたかわからないが、空中で停止していた無数の弾丸が動き始めた。

それは女の子ではなく女性に向かって。

 

「きゃっ!?」

 

一瞬の隙をついて、女の子は地面を蹴って女性に肉薄し距離を詰めた。

そして、女の子が手を振り払ったその時だった。突如、密度ある圧力が倉庫内で吹き荒れた。

その力に耐えきれず女性の体は宙を舞い、叫びながら回転する女性はそのまま地面に衝突。

更にはバウンドしながら数メートル先の木箱に突っ込んでいった。

 

「んがおっ!?」

 

情けない声を上げながら気絶する女性。これで事件が解決したと見える。

そう思うと力が抜けてくる。瞼が重くなり光が小さくなり周りが暗くなっていく…

 

「対象は沈黙。人質の確保に―――マズい、意識がありませんっ!」

 

「クソッタレっ!早く車を回せ!」

 

遠いところから声が聞こえてる…だけど、それよりも意識が…

 

 




檀 正宗「もはや君(美羽)には商品価値はない」 

檀 正宗「『DRACU-RIOT!』は絶☆版DA」

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