今回からは短めで行きます
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ファンガイア、13の魔族を統べると主張していた魔族で人間達を道具と見ていた存在だ。
僕はかつてファンガイアと戦ってきた、ブラッディローズと呼ばれる父さんの作ったバイオリンに従って。だけど、ファンガイアの人達と触れ合ったことで、ファンガイアも人間と同じ心を持っているのがわかっていった。
そしてファンガイアの王である兄さん・登 太牙と死闘を繰り広げた。そして死闘の末兄さんと和解を果たし、人間とファンガイアの共存の道を歩み始めた。
「―――ん…」
ふと、僕は目を覚ます。柔らかいものの上に仰向けで倒れていた身体をゆっくり起こすように動かした。
見に覚えのない部屋に首を傾げながら辺りを見渡す。
清潔感が感じられる白を基調とされた部屋が目に余る。さらには部屋中に消毒液の匂いが漂っていた。
「ここって病院…?」
近くにいた女の子に目を向けて自然とそう呟いた。
意識を失う前に僕が助けようとした子だった。
「随分と冷静ね。それはいいわ。昨日のこと、どこまで覚えているの?」
昨日……僕は頭に手をやりながら昨日?のことを思い出そうとする。
もし、今が誘拐事件の次の日だとしたら昨日のこととは誘拐事件のことなんだろう。
「えっと…僕が君を助けようとして捕まって、その後にこれが囮捜査って事がわかって…」
「……それで?」
女の子が続きを促すように僕を見た。
「それで、僕があの女の人に人質にされてなんとか抜け出したけど炎が出てきて…今度は炎が消えたと思ったら女の人が吹き飛んで」
「要するにアナタが気を失うところまでね」
「そう、なるのかな…そういえば昨日の出来事って…」
「どこから説明すればいいのかしらね…とりあえず詳しい説明は先生を呼ぶからちょっと待って」
女の子はそう言うと僕のところのナースコールを鳴らし先生を呼ぶように促す。
僕はベッドから立ち上がり、身体の調子を確かめた。
軽く腕を回したり、屈伸したりしたが何も異常はなかった。
だが、ここで気になった事があった。キバットだ。
そういえば炎が消える直前に倉庫の外に飛んでいってからどこに行ったかわからない。僕の元にも帰ってきていない。どこに行ったんだろう?
「失礼するよ」
そんな疑問を持っていた傍ら、一人の男性が病室に入ってくる。
僕は振り返って誰が入ったのか確認する。
長身で黒縁メガネをかけており、スーツの上に白衣を着こなした優しそうな男性だった。
「君が紅 渡君かな?」
僕の方に近づき顔を見てそう問いかけてきた。
「はい、そうですけど。アナタは?」
「僕は扇 元樹。この島で医者をやっている者だ、よろしく」
「よろしくお願いします」
元樹先生の挨拶に僕も返す。
「それで彼女は……いや、彼女とはもう知り合いだったかな」
元樹先生は隣に立つ赤い女の子を見て僕にそう言ってきた。
「知り合いですけど…名前は聞いてないです」
そう言って僕は女の子を見た。
「まだ自己紹介はしていなかったわね。それじゃあ、改めて…私は矢来 美羽よ。美羽でいいわ、よろしく」
「僕は紅 渡です。よろしくお願いします……」
僕も彼女…美羽ちゃんに軽い自己紹介をした。少し敬語になってしまったけど。
「さて、自己紹介も済んだところで、本題に入ろうか」
その言葉が発せられた瞬間、場が重くなったような感じがした。
「君は昨日の不思議なことの数々、疑問に思っているはずだ」
その言葉に僕は小さく頷いた。少しだけキバットから聞いたけど全て聞いたわけでもない。
「君の首筋を噛んだ、女性の正体…それは吸血鬼だ」
「吸血鬼……」
「ああ、そう簡単には信じられないとは思うけど」
確かに普通の人ならば信じられないと思うだろう。それを笑い事で済まされるかもしれない。けど、僕としては無視できない発言だった。
「君は吸血鬼についてどれぐらい知っているんだい?」
「あくまで一般的に知られているところまでは…」
「やっぱりか……けどいくつか偽りが混じっているんだ」
偽り…それは昨日、キバットから聞いた話だ。
「例えば、こういう話を聞いたことはないかい?"吸血鬼に血を吸われた者は吸血鬼になる"」
「はい、有名な話ですから…」
「だけど、それは間違っているんだ。"吸血鬼の血を飲んだら吸血鬼になる"」
僕はその言葉を聞いて女性の真っ赤に染まった腕を思い出す。
「まぁ、君は吸血鬼にならなかったようで何よりだ」
そこは知っているけど、こう素直に話されると少し疑問に思う。
「あの…こんな話を僕にしていいんですか?」
「もう巻き込まれたしそのまま疑問持たれたまま帰ってもらっても困るからね、本土に変な噂が立つとここの評判が悪くなるでしょう?」
僕の疑問に美羽ちゃんがキッパリと答えた。
「けど、僕がその事実を知り合いに話してしまう可能性が…」
「あら、私はアナタが秘密をバラすような人には見えないけど…?」
僕の言葉を遮るように美羽ちゃんが返答してきた。
まぁ、確かにそうかもしれない。けど、僕だったら…
「けど、色々とあったから上の人と話し合いが必要かもね」
上の人……恐らく美羽ちゃんが所属している組織のお偉いさんなのだろう。
「下手したらどうなるかわからないわ」
思わず僕はその言葉に固唾を飲む。
「まぁ、その話はまた後日として、まだ君にはこの病院で暫く安静にしてもらうよ」
「えっと…それは入院ってことですか?」
元樹先生の言葉に僕は少し嫌な顔をしてしまう。
「そうだね。けど安心してくれ、明後日ぐらいには退院できるから」
僕の顔を見て思ったことを察したのかそう言ってくれる。
「ちなみに聞きたいですけど…ここに吸血鬼がいてもおかしくない場所なんですか?」
『ほらね、無駄な抵抗じゃないでしょう?』
『吸血鬼が混じってるなんて聞いてないぞ、くそ』
『別に珍しくもないでしょう、吸血鬼なんてこの都市じゃ』
昨日、あの女性が言った台詞が脳内で再生される。
「ああ、この都市はね、吸血鬼という存在が居住することを国家に認められた、国内唯一の場所なんだ」
国家に認められた…?
人間と吸血鬼が共存している…?
「人間と吸血鬼が共存しているんですか…?」
「う〜ん…まぁ、一応ね」
僕の問いに曖昧な台詞を返す元樹さん。何かあるのだろう…
「だいたい、わかりました。教えてくれてありがとうございます」
僕は深々と元樹先生に頭を下げる。
「まぁ、色々と頭が混乱しているかもしれないから僕はここで失礼するよ」
「わざわざ、すみません。僕のために」
「いいよ、気にしなくて。それじゃ」
もう一度、元樹先生に頭を下げ感謝する。
その言葉を聞いて元樹先生は僕に笑顔を見せて病室を出ていく。
「…………」
僕は何か言いたげそうな美羽ちゃんの方を見る。
「えっと…どうかしたの?」
「えっと……いえ、何でもないわ」
美羽ちゃんは何か言おうと口を開くが直ぐに顔を俯かせて、そう言い病室を出ていった。
「…………?」
吸血鬼が住むことができる街、か……
それはある意味、僕達の目的に近い道なんだろう…
人間と吸血鬼……
「そういえば、この都市に来てまだ兄さんに連絡してないや」
僕は自分の携帯を開き電話をかける。
電話をかける相手は僕の兄である、登 太牙だ。
兄と言っても両親ともに同じというわけでもなく、僕と兄さんは異父兄弟なのだ。
『もしもし』
携帯越しに兄さんの声が僕の耳に聞こえてくる。
「もしもし、兄さん?」
『その声、渡か?随分と連絡が遅かった気がするが…』
「うん、ごめんね。初日に色々とあって…」
本当に色々とあった。誘拐事件を目撃するし、助けに行って捕まって。
囮捜査に巻き込まれて吸血鬼に血を吸われて…本当に色々とあった。
『それで何か分かったか?』
「えっと……」
思わず僕は言葉が詰まる。頭の中に吸血鬼の事を話していいんだろうか?そう思ってしまった。
『一応、確認しておくがお前の仕事はこの都市に身を潜めているファンガイアを探すこと。もちろんキバの正体も知られてはならない』
「うん、わかってる」
今は和解をしたファンガイア。だけど、それでも人間達に手を出すファンガイアがまだ数多くいる。
そのファンガイアを倒すために僕はここに来た。兄さんは本土の方でファンガイアを統一するのに忙しいし、名護さんは本土の方で人間達に害を為すファンガイアを倒してもらっている。
だから僕が来た。僕も兄さん達の役に立つ為に、人間とファンガイアの共存を目指すために。
『なら、いい…それでどうだ?そっちで上手くやっていけそうか?』
「どうだろう……ちょっと面倒ごとに巻き込まれちゃって…」
『面倒ごと…?』
「うん、それで今入院中なんだ」
『なに、大丈夫か!?怪我とかはしてないか!?』
兄さんが執拗に聞いてくる。たまに兄さんは過保護なところがある。
「う、うん、大丈夫だよ。直ぐに退院できるしそんなに心配しなくて大丈夫だよ」
『……そうか、あまり無茶はするなよ。渡』
「うん、ありがとう。それじゃあ切るね」
僕は電話を切り、溜息を付いた。
僕がこの
それだけだ、けどどれだけここにファンガイアがいるかわからないけど…長居することは確実だと思う。
ここでいつまでも離れない疑問が大きくなる。
キバット、一体どこにいるんだろう…
コンコン、と突如窓を叩く音がした。
「…………?」
僕は気になり窓に近づきカーテンをめくった。
「おーい、渡ー!」
そこには翼で窓を何度も叩くキバットがいた。
「キバット!?」
僕は窓を開けてキバットを中へ招き入れる。夜特有の冷たい風が僕の体を突き抜けるが、キバットが入ってきた瞬間に直ぐに窓を閉めた。
「うー寒いぜ」
「キバット、今までどこいたの!?」
キバットがそう言いながら僕のベッドの中に入って体を温める。
「あー少しここの都市を見て回っただけだ」
「そうなの?」
「ああ、それに渡に何かあるかもしれないから離れたんだ」
「何かある時は一緒にいてほしかったんだけど」
「そうはいかないぜ。実際、渡は入院したろ?もし俺があそこでバレたら溜まったもんじゃない。キバの事を他人にバレたくないだろ?」
「うん…」
僕はキバットの台詞に頷いた。
「それでそれでどうなったんだ?」
「どうなったって?」
「吸血鬼のこと、何か知れたのか?」
「う〜ん…キバットが教えてくれた以外にこの都市は吸血鬼が住める場所って分かったよ」
「なるほどな…吸血鬼が住める都市か」
キバットが何か考えるように呟く。
「そういえばキバット、聞きたいことがあるんだけど」
「ん、なんだ?」
「昨日の続きなんだけど、何で吸血鬼にそんな詳しいの?」
「あーそれはだな」
「それは?」
僕は首を傾げながらキバットの答えを待つ。
「いいか、魔族はファンガイアを含め13種類も存在している。だけど、その中に吸血鬼…つまりヴァンパイア族はもういない」
「もういない?"もう"ってことは…」
「ああ。ヴァンパイア族は昔、ファンガイア族によって滅ぼされたんだ」
「じゃあ、なんで…」
存在しているの?と僕は言いたかった。
「ここからは俺の推測なんだが…ヴァンパイア族は絶滅したんじゃない。絶滅していた事にしたんだ」
「絶滅していた事にした?」
「そう、そしてファンガイアの手に届かないところ…ここに身を隠したんだと思う」
「確かにそう言われてみれば合点がいくかもね…」
「だろ?ヴァンパイア族はそれほど強くない種族だったんだ。元々、人間の血を吸わないと能力を発揮できないし使える能力は一つだ」
「けど、人間たちよりは強いんじゃないの?」
「それは昨日の出来事でもわかるからな。にしても、ファンガイアを探しに来たのにまさかヴァンパイア族と出会うなんてな」
キバットが呑気にそんなことを言う。確かにヴァンパイア族の存在は僕でも驚きだ。
これはファンガイアだけじゃなくヴァンパイア族にも気を付けないといけなくなる…
元樹先生は医者……宝生 永夢ゥ!
なぜ君が適合手術を受けずにエグゼイドに変身できたのか…
なぜ、変身後に頭が痛むのか…
なぜガシャットを生み出せたのか…
ソレイジョウユウナー!
その答えはただ一つ…
ヤメロー!
ハァー…君が世界で初めてバクスターウイルスに感染した男だからダーアッハッハハハハハハハハハ!
アーッハッハハハハハハハハ!