魔法を題材としたウィザードとサノバウイッチ
吸血鬼が元となったキバとDRACU-RIOT!
田舎を舞台とした響鬼と千恋*万花
どちらもJokerが使われているWとRIDDOL JOKER
まぁ、ブレイドもJokerが使われてるんですけどね…
そういえば天色*アイルノーツって主人公が教師だったよな?
そういえば教師になった仮面ライダーの主人公がいたよな……あっ……
「今日で退院だね、おめでとう」
入院してから二日経ち、ようやく入院生活とおさらばになる。
「今までありがとうございました」
頭を下げて診察室から出ていく。
さて、これから住む場所を探そうと思うと、これから長居することになるのだから、それに…
「あれ…?」
僕が病院から出ると見知った人が僕の方を見て立っていた。
「あれ、美羽ちゃん。どうしたの?」
「ちゃん付けはいいわ。"美羽"でいいって言ったでしょ?」
「そうだけど…」
あまり呼び捨ては僕には似合わないと思うけど…
「けど、ここで何をしているの?」
それはそれとして僕が一番に疑問に思っていることを口に出す。
「アナタを待っていたのよ。あの事件の件で」
「あの事件がどうかしたの?」
「ほら、この都市の秘密を触れてしまったんだもの。どうなったか教えておかないと」
どうやら美羽ちゃんのお偉いさんが僕の判断を決めたらしい。
「ここの事を口外しなければこちらは何もしないって…」
「そう、なら良かった…僕はそのつもりはないし」
「なら、良かったわ……ところでアナタ、これからどうするつもり?」
少し安堵したような表情をして、こっちの予定を聞いてくる。
「う〜ん……とりあえず住める所を探さないとって…」
「住める所…?ホテルじゃないの?」
「ちょっと色々あってね、ここに長居することになったんだ」
「ふ〜ん、なるほど…」
あまり深入りはしないようでそれ以上は何も聞かなかった。
「満足した?」
「えぇ、けどアナタどうやって探すの?不動産屋の場所もわからないでしょ?」
「あ……」
確かに言われてみれば僕はここの都市のことをよくわかってない。
今から探そうとしても迷うだろう。
「そうよね、私が案内してあげてもいいわよ?」
「え、いいの?」
「だって私があの事件に巻き込んだんだもの。それに気軽に声をかけられそうなのって私しかいないでしょ?」
美羽ちゃんが痛いところを突いてくる。確かに初対面ではなく何度か話したことのある人物は美羽ちゃんと元樹先生だけだ。
「そうだね……お願いするよ」
僕は気を落としながらそう言った。
それを見て美羽ちゃんはクスッ、と笑った気がした。
「じゃあ、付いてきて」
美羽ちゃんが踵を返しどこかへ向かう。僕は言われたとおり後を付いていった。
歩いて数十分、とある不動産屋に着いた。
「渡ってどんな家を望んでるの?」
「なるべく安いところで自分の部屋が広いところがいいかな…?」
当然、そんな場所はあるとは思っていない。ほとんどそんな物件はないだろう。
「あるとは思わないけど…まぁ、聞いておきましょう」
当然、そういう物件がなかった…他の物件は少し悩むところだった。
「う〜ん……」
僕は思わずしゃがんで頭を抑えた。どうして良いところがないんだろう…
美羽ちゃんは少し離れた場所で誰かと電話しているし…
美羽ちゃんが電話を切るとこっちに戻ってきた。
「ごめんなさい、待たせてしまって」
「う、うん…気にしなくていいよ。僕の問題だし…それに本来は美羽ちゃ―――えっと、美羽は無関係だし」
僕が美羽ちゃんを呼び捨てするのに違和感を覚えるけど、流石に二度目は怒られそうな気がしたので呼び方を変える。
「私のことは気にしなくていいわ。私が勝手にやっているから」
「そうだけど……流石に悪い気が……」
「そう?」
「うん……」
僕が頷くと美羽ちゃんが不敵に笑ったようにも見えた。
「じゃあ、お願いがあるのだけれど」
「何、かな…?」
「一杯奢って頂戴。近くにいい店を知っているわ」
「それぐらいならいいけど……なるべく安いので…」
僕は美羽ちゃんの後に付いて行ってとある店に入った。
中は見た感じバーと言う感じがする。ただ一つ除けば。
「いらっしゃいませ。アレキサンドへようこそ」
ウェイトレス衣装を来た小柄の女性がこっちを見てニッコリと笑い、声をかけた。
「こんばんは、大房さん。席は空いてるかしら」
どうやらこの人は大房さんと言うらしい…けど、店のウェイトレスとしては背が低いような…
「あっ、矢来さん。こんばんは」
「今日はいつもみたいにカウンターでいいですか?」
「いえ、今日は連れが一人いるから、テーブルでお願いできる?できればでいいのだけれど」
大房さんがこちらをチラッと見てきた。誰かを確認しているのだろう。
「はい、畏まりました」
大房さんに案内され、テーブル席で美羽ちゃんと対面するように向かい合って座った。
「珍しいですね、矢来さんが誰かと一緒だなんて」
「ちょっとあってね」
何やら意味が深そうにそう答えた。
「ご注文はどうしますか?」
「そうね……私はチャイナブルーを」
「チャイナブルー?」
美羽ちゃんの口から出てきた言葉に僕はよくわかってない。
「ライチリキュールとグレープフルーツジュースにトニックを適量、ブルーキュラソーで綺麗な青色に仕上げたカクテルですね」
カクテルってまさか…
「それはお酒?」
「はい、お酒ですが……矢来さん、もしかしてこの方は普通の?」
「えぇ……彼にはジュースか何かを」
「なるほど、そういう事ですか。わかりました」
そういうと大房さんがカウンターの方へ足を運んで行く。僕はそれを見ながら美羽ちゃんを見た。
「美羽って、見たところ未成年だけどお酒なんて飲んで大丈夫なの?」
「えぇ、大丈夫よ」
まるで自信あるかのようにハッキリと答えてきた。
「言い切ったね……」
「吸血鬼はね、アルコールに酔う事ができない。まるで水みたいに受け入れてしまうのよ。他にも煙草や麻薬といった中毒性のある嗜好品も用をなさないわ。全部、無効化してしまうのよ」
ここに来て新事実がわかってしまう。だからお酒を飲んでも大丈夫というわけなんだ…
「お待たせいたしました、矢来先輩」
僕が美羽ちゃんの話を聞いていると、僕達の席に先ほどとは別のウェイトレスがやってきた。
「稲叢さん、こんばんは」
稲叢さんと呼ばれた女性は美羽ちゃんを見た。
どうやら、美羽ちゃんの知り合いらしく…美羽ちゃんはその常連さんらしい。
「常連さんなんだね」
まるで恵さんや嶋さんを思い出す。
「事情があるのよ。あと彼女は、学院の後輩だから」
美羽ちゃんは学生らしい。そこで僕はここでもう一つしておくべきことを思い出す。
本土の方でも民生委員から勧告を受けていた。それは高校を卒業することだったはず…ここに長居するならこの都市の学校に入学しなければならない…
「稲叢さん、彼は紅 渡よ」
そんなことを考えていると美羽ちゃんが僕を稲叢さんに紹介した。
「初めまして、稲叢 莉音です」
「は、初めまして……」
初対面の人と話すとやはり緊張し、思わず動揺しながら頭を下げてしまう。
「紅 渡さん……ふふ、もう、矢来先輩ってば、そういうことはちゃんと言っておいてくれないと」
「……何のこと?」
莉音さんが僕と美羽ちゃんを見てクスッと笑い何かを察したように言ってくる。
流石にこれは僕も美羽ちゃんもわかってない。
「男の方と二人っきりでデートだなんて……言ってもらえればちゃんとお祝いを用意したんですよ?」
デ、デート…?僕と美羽ちゃんが?
僕達は一切そんなつもりはないのに、どうやら勘違いさせてしまったらしい。
「デートじゃないわよ。彼とはそんな関係じゃないわ」
「そうですよ!ぼ、僕が女の人とデートだなんて……」
少し声を上げて、自然と声が小さくなってしまいながらも反論する。
「連絡したでしょう?彼が、そうよ」
「あっ、この方がそうなんですか。なるほど」
二人して僕について意味有り気な話をしているが僕はさっぱりわからない。
そして、莉音さんが僕をジロジロと見てくる。
僕は人にじっくり見られるのには慣れておらず、顔を俯かせる。
「稲叢さんはどう思う?」
「んーと…、はい!わたしはいいと思います。悪い人じゃないと思いますから」
その言葉を聞いて、どうやら品定めらしからぬ人定めをされたらしいことが分かった。
「いいの?見た目だけで決めちゃって」
「だって、わたしは矢来先輩の事を信じてますから。だから矢来先輩が大丈夫と思って相談したならわたしも大丈夫だと思います」
余程、美羽ちゃんの事を信用しているらしい。僕はあまり話に割り込んでも邪魔だと思ったから、話を聞くだけにした。
「そう。ありがとう、稲叢さん」
「いえ、お礼を言われるようなことはないです。それよりも、矢来先輩」
「渡は私の恋人ではないけれど何か用?」
「……先輩、つれませんね」
「あのね、本当にデートだとしたら知り合いが働いてる店に来たりしないわ」
「わたしに彼氏さんを自慢しに来たのでは?」
デートではないって言ったはずなんだけど…もしかして勘違いされてる?
「……稲叢さん、私のことをどういう目で見ているわけ?」
「いえ、別に……」
「そう、ならいいけど……」
美羽ちゃんは何か言いたげに莉音さんを見た。
「それで注文は?」
「あっ、すみません。チャイナブルーのお客様は?」
「私よ」
「こちらがチャイナブルー、こちらがグレープフルーツジュースとなります」
どうやら僕はグレープフルーツジュースらしい。僕も何かとそちらのほうがいい。お酒は飲まないし。
「ありがとうございます」
僕はグラスを自分の目の前まで持っていきながら頭を下げる。
「…………」
そんな僕を見て莉音さんがじっと見つめる。何か悪いことをしたのだろうか。
「えっと、どうしたんですか?」
「あ、いえ。あまりこの付近ではお見かけしたことがないので」
「えっと、実は僕…ここに入ってきたばかりなんです」
莉音さんの言葉に苦笑しながらそう答えた。
「ああ、だから……なるほど、そうなんですか。今後ともよろしくお願いします」
「えっと、よろしくお願いします」
ペコリ、と頭を下げる。今日だけで何回頭を下げたんだろう…自分でも覚えていないぐらいだ。
「それではごゆっくりどうぞ。あっ、それから矢来先輩。わたしは今回のお話、特に問題ないと思いますから、頑張ってくださいね♪」
今回のお話?なんのことを言っているのだろう…僕自身よくわかってない。
「ありがとう、稲叢さん」
美羽ちゃんのお礼の言葉を聞いて、莉音さんはカウンターの方へと戻る。
「全くあの子は……まぁ、いいわ。飲みましょう」
何か少し呆れたように美羽ちゃんは呟いた。
「う、うん…」
僕は美羽ちゃんに促されてグレープフルーツジュースを喉に流し込んだ。
素直に僕の知っているグレープフルーツジュースであったことがなぜか嬉しかった。
「僕、これからどうしよう……色々とやることが増えたし」
少しだけ心の声を漏らしてしまう。いきなり、こんなことが起きてしまえば兄さんに申し訳ない。
それにこんな場所だとつい緩みきってしまう。
「……ねぇ、渡。渡は一人暮らしがしたいの?」
「え、僕はできればの話…あまり他人に迷惑をかけたくないし……」
「そう……あの一人暮らしというわけじゃないんだけど……」
美羽ちゃんが少し躊躇ったような口ぶりでこっちをじっと見つめる。
「私と一緒に暮らさない?」
「え?」
思いもよらない言葉が美羽ちゃんの口から発せられてきた。思わず僕の体が硬直した。
「えっと、酔ってる?」
「言ったはずよ、吸血鬼はアルコールに酔うことはない。それに私は大真面目よ」
僕の言葉をキッパリと否定してきた。どうやら美羽ちゃんは本気で言ってるらしい。
「けど、何で急に……」
僕自身、話の流れがよくわかっていない。
「えっと、実家なの?」
「いいえ、部屋を借りているわ。私は渡となら一緒に住んでも構わない、そう思ってるわよ」
僕と一緒に……僕は今まで女の子と一緒に住んだことはない。ただ、ちょくちょく僕の家にとある女の子が世話を焼きに来るぐらいだった。
「流石にそれは……」
―――と言いつつも僕は来てしまった。
とりあえず見てみる程度には気になった。
見るからに大きい建物だ。普通の一軒家よりは一回り大きく見える。
「えっと、ここが…?」
「ええ、私が住んでいるところよ」
けど、緊張する。それもそうだ、今まで女の子の家になんて一度もお邪魔したことはない。
手に汗を握りながら建物に入っていく美羽ちゃんを追いかける。
ガチャリ、ととある部屋の扉を美羽ちゃんが開ける。
僕は固唾を呑んで部屋に入った美羽ちゃんの後を付いていく。少し長い廊下を歩き、リビングと思わしき扉を開けた。
「ただいま」
「あっ、おかえりー」
美羽ちゃんの帰宅の挨拶に誰かが返事をした。
当然、僕でもキバットでもない第三者の声。その声はとても可愛らしかった。
「え?」
僕はその声の発生源である一人の小さな女の子を見た。
「いらっしゃーい」
恐らく僕の腰辺りだろうか、それぐらいしかない身長の少女を見て驚きを隠せない。
「話は聞いてるよ、これからよろしくねー」
えっと、いまいち状況を飲み込めてない。この女の子は何か僕のことを知っているような言い方で話してくる。
「え?」
僕はもう一度首を傾げた。
「あれ?美羽ちゃん?例の人じゃないの?」
僕の反応に流石に女の子も疑問を浮かべた。
「いいえ、合っているわ。彼が紹介したかった、新たな入寮者よ」
新たな入寮者……?いまいち理解ができなくて、頭が痛くなりそうだ。
「えっと、どういうこと?」
「だから言ったでしょ?私と一緒に暮らさないかって」
「確かに言ったけど、この子は?」
今にも視界から外れそうな小さな女の子を見て僕はそう言った。
「布良さんのこと?ここの寮長よ」
「寮長……つまりここは寮?」
「そう。ここは、私が通っている月長学院の寮なのよ」
学院と言うことは学院が設立した寮なんだ……少し僕は安心する。
「美羽が言っていた一緒に暮らすというのは、この寮で生活するということ?」
「ええ、そうよ。他にどんな意味があったと?まったく一体何を勘違いしていたのかしら」
美羽ちゃんが僕を見ながら苦笑する。さすがに勘違いしていた僕は何も言えず目を逸らした。
「それでどうするの、渡?ここならアナタでも暮らす事ができるわよ?」
確かにそうかもしれない。ホテルで生活するよりこっちの方が安いし。それにここが学院の寮ならチャンスだ。
だけど、僕が気になる点が三つあった。
「えっと、そもそも僕は男だし。第一学院に通っていない人がここに住むわけには……」
「あれ?紅君、編入しないの?学院に通わないの?」
小さな女の子、布良さんはなぜか学院に通う前提で僕に話しかけてくる。
なぜ、そういう前提で話しかけられているかはわからないけど、個人的にはありがたかった。
「えっと、卒業しておきたいから、できれば編入したいんだけど……」
「だったら大丈夫よ。まぁ、吸血鬼が通えるのは月長学院だけだけど普通の人間でも一応、通えるから」
その言い方だとその学院に吸血鬼がたくさんいるらしいけど…
「それに性別の事は気にしないわ。嫌なら最初から誘ったりしない」
「性別に関しては若干気になるけど……まぁ、事情を考えると仕方ない部分もあるから。それに、プライバシーはちゃんと守れるしね、この寮」
「各部屋に鍵はもちろん、トイレ・バス、小さいけれど冷蔵庫も付いているわ。さすがにキッチンはこの部屋にしかないけれど」
いや、それでも十分に広いと思うけど…
「元々、宿泊施設として作られた建物なんだよ、ここ。でも人気がなかったみたいで。結局学院が買い取って寮にしたんだって」
なるほど…だから建物自体もそれほど大きいんだ。
「だから、その気になれば他の人とあまり接触しないことも可能なのよ」
「他にもこの寮で暮らしている子はいるけど、ちゃんと確認済みだよ。とりあえず、みんな暫定的に了解はくれたよ」
いつの間にそんな確認をしたんだろう…
「暫定的に?」
「んー、実際に会ってみて、あまり変な人だったらNGだって。でも、私は大丈夫」
「NGが出るほど変な人じゃなさそうだし、他の人も多分NGを出さないと思うよ」
そうだといいんだけど、僕って生活が他の人と比べると変なんだけど……いや、自分で変と言うのもあれだけど実際、世話を焼いてもらっている子にそう言われてるし。
「他の住人にはさっき店で会った、稲叢さんもいるわ」
あの莉音さんもここの住人だったんだ。
「改めて自己紹介させてもらうね」
そんなことを思っていると布良さんが口を開いた。
「私は布良 梓って言います。今後ともよろしくね」
「あ、はい。僕は紅 渡です。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げてこちらも布良さんに名乗った。
「ちなみに私は美羽ちゃんと同じ風紀班に所属しているんだよ。だからね、紅君の事も聞いてるよ」
風紀班……つまり布良さんも美羽ちゃんと同じ組織に入っているということらしい。
「そう、なんだ……」
「あ、けど安心して私も紅君と同じ人間だから。困ったことがあったら相談してね」
その言葉が少しだけ心に刺さった。少し騙しているようで罪悪感を感じてしまう。
「渡、言っておくけど彼女は私と同い歳よ」
そんな僕の考えを気にせず美羽ちゃんが予想外な事実を口にした。
どうやら、人は見かけによらないらしい…
「それで渡、アナタはどうするの?ここで私達と暮らす?」
実に悩む事を美羽ちゃんが聞いてきた。確かに設備は文句がないほど完璧だ。それに個人の部屋も付いてくる。
けど、少し問題なのは女性もいるということ。そこは時間をかけて接していれば問題ないし、僕が変なことをしなければ問題ない。
良いかもしれない、だけど僕の中は最大の重要な事を聞いていない。
「その個人の部屋って防音対策ってされてるの?」
僕の質問に二人はキョトン、と首を傾げた。
なぜ、こういう質問をしたのかわかってないらしい。
「一応、されているけどそれがどうかしたの?」
「まさか渡、部屋で変なことをしようとしているんじゃないでしょうね」
「べ、別にそんなことはないよ!ただ気になっただけだから!!」
なぜか美羽ちゃんに変な勘違いをされていたので慌てて誤解を解こうとする。
「それなら、いいけど……どうするの?」
なぜかまだ半信半疑な目をこちらに向けながら答えを待つ美羽ちゃん。
「えっと、それじゃあ世話になってもいい?」
「うん、もちろんだよ!よろしくね」
「ええ、よろしく」
二人は受け入れてくれて少し安心した。
「他の住人は?できれば早めに挨拶しておきたいけど…」
「この時間に、誰かいるかしら?みんな、仕事を抱えているから」
「そうだねー。まだ深夜の2時だし、絶賛営業中じゃないかな」
こんな時間になっても仕事って一体、どんな人たちなんだろう?
「あー、でも、エリナちゃんは今日はお休みだったような」
「なら、部屋にいるかもしれないわね」
「そうだね。とりあえず確認しにいこうか」
「悪いけど、渡はここにいてもらえる?」
「うん…」
僕は特に何も言わず頷いた。その言葉を聞いて二人は部屋を出ていった。
「にしても大丈夫か、渡ー?」
懐にいたキバットが心配そうに、そして少し面白そうにそう聞いてきた。
「どう、かな……けど、なんとか上手くやっていけそうな気はするよ」
「それならいいんだけどなー」
「それってどういう意味?」
「さぁな……おっと誰か来たみたいだぜ」
その言葉と同時にキバットは再び息を潜めた。
ガチャリ、ととある一室の扉が開いた。
「はぁー、いいお湯だったー」
美羽ちゃんや布良さんでもない長い銀髪の少女が、服を着ずに体にバスタオルを巻いてリビングに入ってきた。
世間で言うバスタオル一枚、という格好だった。
「!?」
さすがにこれは見てはいけないと素直に判断し、僕はその少女に背を向けた。
「あり?えーっと……」
何か疑問に思ったのか……いや、疑問に思うところがあるんだろう。
「え、えっと……その僕は何も見てませんから」
少し情けないと思うけど、これでも精一杯の弁明だ。
「あの、僕……紅 渡って言うんですけど。今日からこの寮にお世話になることになりました、えっと……」
相手の顔を見ずに話すのは申し訳ないけど、さすがにこのまま振り返るのはまずい。
「クレナイ ワタル……?あー、思い出した、ミューがそんなこと言ってたね。寮に人を増やしていいかどうかって」
話は聞いているのならありがたかった。けど、この状況どうしよう…
「あり?ミューの紹介じゃないの?ヤライ ミュー」
「あ、合ってるよ。美羽ちゃんの紹介でここに来たんだ」
なぜか危機感を持たない少女ではあるが、僕としては危機感を持ってもらいたかった。
「あ、やっぱり。ワタシはエリナ・オレゴヴナ・アヴェーンって言うの」
エリナ・オレゴヴナ・アヴェーン……名前からわかるようにどうやら外国人らしい。
「エリナも吸血鬼だよ、よろしくね、ワタル。えっと、ワタルはこの発音であってる?」
「う、うん、合ってるよ」
若干、発音が違う気がするがあまり気にするような差ではなかった。
「ワタシのことはエリナって呼んで。エリナもワタルのことはワタルって呼ぶから。いいよね?」
「勿論、構わないよ」
少し他人を呼び捨てするのはあまり気が気じゃないけど…
「エリナちゃ―――エリナはお風呂上がりなの?」
「うん、お風呂上がりに肌を晒しながらアイスを食べるって最高だと思うから」
そういうものなんだ…
「というか、ワタル、ツッコミ遅くない?早いだけの男はダメだけど、遅いのもどうかと思うよ?」
いや、僕ってそういうボケやツッコミとか得意ってわけじゃないけど…
「あとね、ちょっと確かめておきたくて」
「えっと、何を?」
「ワタルが女の子だらけのこの寮に入ってダイジョーブかどうか。そこをちゃんと見極めた方がいいかなって」
「偶然、こんなシチュエーションになったから、ついでにと思って」
ついでにって…どういう考えをしたらそうなるのか僕にはわからなかった。
「ワタルは合格。至って普通だったからね」
僕にとって普通はよくわからないけどOKをもらえて安心した。
「えっと……服は着ないの?」
「えーだって髪が乾く前に着ると、服が濡れちゃうよ。ワタシ髪が長いから、ある程度乾かして着ないと」
髪が長いって大変なんだな、と僕はそう思う。
「二人して何やってるの?」
いつの間にか入ってきたかわからないけど美羽ちゃんの声が聞こえた。
「ちょっと、訳あって……」
「ふ〜ん、どういう訳?」
「こ、ここで二人を待っていたらその姿のエリナが入ってきたから見ないように背を向けたんだけど……」
「そう、ならいいけど……」
「とりあえずエリナちゃんは服を着てきて、これは寮長命令」
「はーい。それじゃあワタル、またあとでねー」
後方で扉を開閉する音が聞こえて、ようやく僕の肩の荷が降りた。
「とりあえず何もなかったようで安心したわ」
美羽ちゃんが僕の目を見てそう言ってきた。
「やっと一段落つけるなー」
僕は部屋の鍵を布良さんからもらって直ぐにその部屋を開けた。
鍵を締めると同時にキバットが僕の懐から飛び出してきた。
「そうだね、とりあえず出すものは出そうか」
今まで背負っていた大きな荷物であるバイオリンケースを床に置いて、中身の安全を確認する。
ブラッディ・ローズ……父さんが作ったバイオリンで、幻のバイオリンとも言われるほど凄いものだ。
かつてこのバイオリンを一億円で売ってくれとも言った人がいたが、これは大事な父さんの形見のようなもの、当然売るわけがなかった。
僕は父さんのバイオリンを超えるようなバイオリンをこの手で作りたい、そう思っている。
未だに父さんのバイオリンを超えるようなバイオリンはできていないけど、母さんに教えてもらいながら作っている。
「いつか、父さんを超えないと……」
自分の意思を確かめるように呟く。
けど、今はそれよりもこの仕事を頑張らないと。
これから先は長くなりそうだ。
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