KIVACU-RIOT!   作:Million01

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特に言うことは?

ないです(長くてすみません)


変身・仮面の戦士

美羽ちゃんと布良さんの後を付いていきとある場所へと向かった。

警察署と似て非なる場所で部屋の雰囲気もそこはかとなく似ていた。

 

「あら、似合ってるじゃない」

 

美羽ちゃんが僕の服装を見てそう言った。

僕の服装は普通の警察の服といったものじゃなく、どこかの軍服みたいな格好だった。

 

「そう、かな……?」

 

あまりこういうのを着たことがない僕としては好きではないけれどこれが風紀班の服らしい…

 

「けど、美羽だって似合ってるよ」

 

着こなしているかのように軍服がとてもお似合いだった。

 

「あっ、2人とも着替えるの早いね」

 

そう言ってこっちに駆け寄ってきたのは、ヒラヒラとした服を着た布良さんだった。

 

「そう……?それより、布良さんのその格好は……それになんでこんな格好を」

 

僕は自分の服を見ながらそう言った。

 

「ここは観光都市でしょう?だから、こうしてコスプレ的な制服であまり物騒な感じを出さないようにしているのよ」

 

確かにこういう格好って何かしらのイベントでよく着られているというのを何度か耳にしたことがある…

 

「まぁ、治安維持のために多少の威圧感は必要だからこれにされたのだけど」

 

確かにこういうのならあまり騒ぎというものがないようにも思える…

 

「えっと、じゃあ布良さんは……?」

 

「そうだよね、そこは私も凄い気になるんだけどサイズがないんだよね」

 

「作ってもらえないの?」

 

有り体な疑問を布良さんに問いかけた。

 

「あとね、上の人の命令なんだよね。本当に変な命令でしょう?」

 

上の……?どんな意味があるんだろう…

僕は命令の意図がわからず首を傾げた。

 

「あのね、渡。こう言っては失礼だと思うのだけれど……彼女、軍服が似合うと思う?」

 

その僕を見て美羽ちゃんが僕に耳打ちでそう言ってきた。

確かにあまりそれらしくないっていう感じはするけど。

 

「少し見てみたい気持ちはあるかも」

 

「渡、どういう感覚をしてるのよ。言っておくけど布良さんの服装、上にその手の趣向を持っている人がいるらしくて、彼女に巫女服を着るように命令したの」

 

どうやら布良さんの服装は巫女服というらしく、この服装は上の人の趣味でもあるらしい…

 

「その方が萌える。観光に来たお客さんも喜ぶって、ちょっとしたマスコット的な扱いかしら?」

 

「燃える……?布良さんが?」

 

「……はぁ、まぁいいわ」

 

何かを諦めたかのように半眼でジッと僕を睨みつけてきた美羽ちゃん……何か間違えたのだろうか?

僕は布良さんを見た。ヒラヒラとした長い袖や長いスカートは僕的には動きにくそうにも見えた。

 

「どうかしたの、紅君?」

 

「な、なんでもないよ」

 

けど、布良さん本人はそんな様子を見せていない。それほどこの服は慣れてるんだろう……自分でそう思い聞かせた。

 

「よし、揃ってるみたいだな」

 

と、そこで枡形さんがやってきた。枡形さんも学院の時に着ていたスーツ?らしきものではなくどうやら風紀班では軍服を着ているようだ。

 

「遅いですよ、主任」

 

「こっちはお前と違って、色々大人の仕事があるんだ」

 

枡形さんが布良さんを見た後、僕を見て口を開いた。

 

「さて、紅 渡。この支部では俺が主任で、お前は俺の下につくことになっている」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

「風紀班の仕事はその名の通り、この海上都市における風紀の取り締まりだ」

 

「今日からお前にも仕事をしてもらう。欠かすことのできない非常に重要な仕事だ、いいか?」

 

一体、どんな仕事なんだろう……真剣な表情で話す枡形さんを見て僕は頷いた。

 

「その仕事は……」

 

「巡回だ」

 

「巡回……ですか?」

 

「ああ、そうだ。まずお前にはこの都市を見回りしてもらう。その風紀班の制服を着て、街中をうろつくだけでいい」

 

巡回……確かにこれも必要な仕事なんだろう。

 

「新人が仕事を覚えるには丁度いい内容だろう?」

 

枡形さんの言葉に僕は素直に納得してしまう。

 

「犯罪を未然に防ぐためには、巡回は欠かせない重要な仕事だが心配するな、一人で行って来いとは言わん。教育係が必要だからな」

 

確かに一人で行っても、僕が下手にやらかしてしまえば風紀班の顔に泥を塗るかもしれない。

 

「しかし……かといって、新人の教育に二人はもったいない。お前、矢来と布良だと、どっちと一緒に仕事をしたい?」

 

枡形さんがそう聞いてきた……美羽ちゃんと布良さん……非常に難しい選択肢を与えられた。

 

「え、えっと……」

 

「とにかく片方を選べ」

 

これは迷っている暇もなさそう……僕は意を決した。

 

「じゃあ、美羽で……ここに来て一番長い付き合いなので……と言っても布良さんと一日しか変わらないですけど……」

 

「ん、わかった。おい、矢来、お前もそれで問題ないな?」

 

「私は問題ありません」

 

「それじゃあ、あとのことは任せる。いつものルートを回りながら適当に説明してやれ。行くぞ、布良」

 

「あい・さー!それじゃあ、紅君、頑張ってね」

 

「うん、ありがとう」

 

僕がそう言うと枡形さんに続いて布良さんも部屋を去っていった。

 

「それじゃ、私たちも行きましょうか、渡」

 

「うん」

 

僕は美羽ちゃんを追いかけるように後を付いていった。

 

 

 

 

 

 

公園を通っていき、ある程度道路を歩くと商店街まで来た。

 

「特にこれといった感じはないね……」

 

「これでも観光地だもの。歩いているだけで事件が起こるほど治安が悪いと、観光客が来ないわよ」

 

僕がここに来て早くも歩いているだけで事件が起こった様な気がしたんだけど……そこは口にしなかった。

 

「おいっ、こらぁ兄ちゃん。人にぶつかっておいて謝りもしねぇとはどういうつもりだ」

 

「ぶつかってきたのはそっちだろう?」

 

そんな事を思っていると、どこからか酔っ払いの喧嘩が聞こえてくる。

酔っ払った声と若々しい男性の声……

 

「アレって止めにいかなくていいの?」

 

「止めるに決まってるでしょう。ということで私は酔っ払いの相手をするから若い方は任せていい?」

 

「う、うん……」

 

僕に人を止めることができるかわからないけど、これも仕事の一つ…こなさないと。

 

「えっと、落ち着いてください」

 

と、僕は若い男性の前に立ち、落ち着かせるように近づいた。

 

「なんだァ?てめェ…」

 

「いいから関係ない奴は引っ込んでろ」

 

「そうだ、お前らは関係ない」

 

そう言って酔っ払いの男が若い男性の体を突き飛ばした。

手に持っていた荷物を落とし、男性は顔を歪めた。

 

「なにすんだ、こらぁっ!」

 

「だから、落ち着いてください!」

 

「うるせぇなっ!いいからすっ込んでろ!」

 

怒りに身を任せて僕の声を聞いていない……う、どうしよう…

 

「そういうわけにもいかないの。ほら、離れなさい」

 

そこで美羽ちゃんも止めに入ってくれた。

 

「なんだ、特区管理事務局の連中か」

 

と、酔っ払いの男性が美羽ちゃんの服装を見てそう口にした。

 

「はい、風紀班の者です」

 

「―――ッ」

 

その言葉を聞いた男性が額に汗をかきながらさらに顔を歪めた。

 

「揉め事は困ります。落ち着いてください」

 

「うるせぇな、集まってくんなよ、うざったい」

 

「それなら集めるようなことをしないで欲しいのだけれど」

 

美羽ちゃんが酔っ払いの対応をし始める……僕は僕で若い男性の方を向いた。

 

「お、俺は別に何もしていない。そっちのオヤジがぶつかってきただけだ」

 

この若い男性はあの酔っ払いの男性とは違ってどうやら素面らしい。

 

「ここには、その……人と待ち合わせをしていて」

 

「なるほど……それならここを立ち去った方がいいですよ?」

 

これ以上の揉め事はされても僕としても対応が困るだろうし、美羽ちゃんの手を煩わせてしまう……僕は男性にここを立ち去るように促した。

 

「わ、わかった。こっちだって好きで酔っ払いを相手にしたいなんて思わないからな」

 

どこか慌てた様子で喋る男性、何かあるのだろうか?

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ」

 

男性は短くそう告げると荷物を拾ってアッサリと引き下がっていった。

 

「これでこっちは大丈夫―――ん?」

 

僕の足元に何かが落ちていた。拾ってよく見ると何か小さな袋…多分、先程の男性の持ち物なんだろう。

 

「あ、あの……ってあれ?」

 

立ち去ってから数秒なのに男性の姿が見えなくってしまった。よっぽど早足でここを立ち去ったんだろう……

 

「う〜ん……まぁ、これは美羽に渡しておこう」

 

「なぁなぁ、嬢ちゃん。よく見りゃ可愛い顔してるじゃないか」

 

僕が美羽ちゃんの方に近寄ると、酔っ払いの男性がまるで僕の父さんみたいにナンパをしていた。

 

「それはどうも。ほら、喧嘩相手もいなくなりましたよ」

 

「せっかくの気分が台無しなんだ。これから飲み直そうと思ってるんだがどうだ?一緒に飲まないか?」

 

けど、こう言っては酔っ払いの男性に申し訳ないけどまだ僕の父さんの方が上手く見える……自慢でも何でもないけど……

自慢することでもないし……

 

「お誘いはありがたいのですが仕事中ですから。お断りさせて下さい」

 

「つれないことを言うなよー。オジさんの奢りだよ?それにもしお金に困ってるんだったら、その先だって―――」

 

これは止めたほうが良さそうかも……言ってることはよくわからない部分もあるけど、これ以上は美羽ちゃんも嫌がってる。

 

「あの、そこまでにしてください」

 

僕が二人の間に割り込んで酔っ払いの男性を止めに入る。

 

「なんだ、邪魔すんのか?」

 

酔っ払いの男性が僕を睨みつけてくる。

 

「あ、あの僕たちは風紀班です。アナタが何を言ってるのか自分でもわかっているんですか?」

 

そんな言葉を言いながら酔っ払いの男性に忠告した。

 

「お、おい、本気になるなよ。ちょっとした冗談じゃねーか」

 

風紀班という単語を聞いて酔っ払いの男性の顔が青ざめる……どうやらさっきまで僕達が風紀班だということを忘れていたらしい。

 

「わかったわかった。もう行く、それでいいだろう?ったく……これだから冗談の通じない奴は」

 

そう文句を呟きながら店の中へ入っていく男性。

世の中、大変なんだな……と僕は思わずそう考えてしまう。

 

「大丈夫?」

 

「……ええ、平気よ。あの程度の酔っ払いは、慣れているから。中にももっとひどい酔い方をする人だっているもの」

 

「そうなんだ……」

 

確かにこういう仕事をやっているとこういう事は必ず一度は経験するものなんだろう。

 

「あれぐらいでいちいち腹を立てていたらこの風紀班はやっていけないわ。相手が酔っ払いなら渡もあまり真面目に取り合わない方がいいわよ」

 

「わかった……」

 

「でも……ありがとう、渡。その優しさには感謝してる」

 

「う、うん……」

 

どう返したらいいか分からず変な返し方をしてしまった。

 

「それで渡の方はどう?ちゃんと問題なく治まった?」

 

「まぁ、一応……?ただ、その人がコレを落としてそのままどこか行っちゃって……」

 

と、僕は先程拾った小さな袋を美羽ちゃんに渡した。

 

「落し物?」

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達が戻るとその落し物を枡形さんに見せた。

 

「で、これがその怪しげな男が落としていった袋か」

 

「は、はい……ただ、その人、妙に焦っていて……」

 

「中身は……錠剤か?」

 

袋から取り出された物はクリアケースで小分けされたタブレット状の白い塊だった。

ケースの表面には何も記されておらず、なんの薬かもわからなかった。

 

「なんのお薬だろうね」

 

「ただのサプリなら問題ないけれど……違法ドラッグという可能性もありうるわね」

 

「ふむ……」

 

確かに怪しげな感じはする薬だ。

 

「この街でもドラッグって流行っているの?」

 

そこらへんは僕はよくわからず隣にいる布良さんに聞いた。

 

「んー、流行るというほどのことはないかな。吸血鬼さんには、覚せい剤とかって効果がないみたいだから」

 

「そうなんだ……」

 

確かそんな事を美羽ちゃんに聞かされたような気もするけど……

 

「市場としてはリスクが大きいくせに、メリットは少ないんじゃないかな?」

 

確かにそうかもしれない……吸血鬼がたくさんいるこの都市でもあまり売れるものじゃないだろうけど。

 

「でも、ここに普通の人も住んでるし、旅行に来た人が羽目を外して……ってこともたまにあるみたい」

 

「完全になくなることはないんだね……」

 

「それに吸血鬼も、全てのクスリに耐性がある、と言うわけではないの。だから、そのうち吸血鬼に合わせて精製されたドラッグが出てきたりしたら……どうなるかわからないわね」

 

吸血鬼も万能と言うわけではないんだ……いや、吸血鬼にも弱点はあるんだっけ?

 

「不審な薬物として、調べられるだけ調べてみるか。既存のドラッグかどうかだけなら、すぐに判明するだろう。成分分析と同時にその落とし主を探すぞ」

 

僕が持ってきておいてなんだけど少し大事になってきてしまった……

 

「流石に売人がそこまで間抜けだとは思えないが、下手すりゃ盛大なパーティーが計画されてるかもしれん」

 

けど、見逃すこともできないらしい……こうも怪しげな薬を落としていったのだからやれることのことはやるらしい。

 

「とにかく、このまま放置はできん。新人には多少荷が重いかもしれんが、紅も調査に参加しろ」

 

「わ、わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた……」

 

白い入浴剤を使った風呂に入りながら僕は体を解す。

あの後、薬を落とした男性を探したが見つからず、とりあえず今日の仕事は終わりとなった。

 

「渡、お疲れさん」

 

バイオリン型の桶を風呂に浮かばせながら、それに乗っているキバットが労いの言葉をかける。

 

「ありがとう」

 

「それで、どうだ?こっちでやっていけそうか?」

 

「うん、なんとかね」

 

「それなら、よかったぜ。渡は人見知りが多いしな」

 

「余計なお世話だよ……それにしてもファンガイアなんて本当にいるのかなぁ」

 

あまりそういう話を枡形さんたちから聞かないし……ほとんど吸血鬼の話ばかり。

 

「どうだろうな……けど、太牙の話だといるんだろう?」

 

「うん、あまり……兄さんを疑いたくない……」

 

「なら、太牙を信じろよ」

 

「うん……」

 

そう言って僕はお風呂を上がった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が学院に編入して二日が経った……なんとか授業についていけているものの、まだ不安が残る。

それに学院が終わると風紀班の仕事もあるんだ……少し大変だ。

 

「えっと……ここでいいんだよね?」

 

僕はこの間、美羽ちゃんと一緒に来たバー"アレキサンド"に来た。

なぜここに来たのかというと昨日の薬の件が絡んでいる。

あの薬は正規で販売されているものではなく、病院で出されるものではないとまでわかったらしい……そこまでしかわかっておらず、詳しいことはわからないらしい。

そこで萌香さんという"アレキサンド"のオーナーに会うらしい。

その萌香さんというチャイナ服を着た人は陰陽局に所属しているらしく、色々なことに詳しいという話だ。

つまりその人にこの錠剤を聞きに来たのだ。

 

「けど、本当にわかるものなの?」

 

「あの人は手掛かり一つで本人が忘れているようなところまで調べ上げるから」

 

「本当、怖いよねぇ。あ、紅君も萌香さんは敵に回さない方がいいよ。脅迫されちゃうよ」

 

「え、脅迫…?」

 

「うぅぅ〜、本当、思い出しただけでも恐ろしい…」

 

一体、布良さんは何を脅迫されたんだろうか……思わず気になってしまった。

 

「とにかく、必要以上に自分の情報を漏らさない方がいいってこと」

 

「うんうん。自分が何歳までオネショしてたかで、からかわれる羽目になるよ」

 

お、オネショ……?

 

「まぁ、そんなとこまで調べ上げても不思議ではない相手ということよ」

 

「な、なるほど……気をつけるよ……」

 

少し会うことが怖くなってきた……その人はもしかしたら僕の事を知っているかもしれないし。

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー。あっ、来てくれたんですか?」

 

店に入るとウェイトレス姿の莉音さんが笑顔で迎え入れてくれた。

 

「えっと…飲みに来たんじゃないんだ…その、この店のオーナーさんに会いにきたんです……枡形さんと約束があったはずなんですけど…」

 

「わかりました。今、オーナーは事務所の方でお仕事をされているので、呼んできますね。ちょっと待っていて下さい」

 

そう言って、莉音さんがどこかへ行ってしまう。

 

「どうも皆さん、いらっしゃいませ」

 

とそこで青い髪の少女がこっちに声をかけてきた。

 

「えっと……確か……」

 

この子……僕と美羽ちゃんが最初に店を入ってきたときに…

 

「大房 ひよ里です。これでもアナタと同じクラスですよ?」

 

「大房さん……同じクラス……あっ!」

 

少しだけクラスでも見たことある、と思い声を上げてしまった。

 

「どうも、紅 渡です……」

 

大房さんに軽い自己紹介をして頭を下げる。

 

「これからよろしくお願いします。ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「えっと……今日はそんなつもりじゃあ……」

 

「いいじゃない、飲み物ぐらい。風紀班の制服を着ているわけでもないし」

 

え、いいのかな……?

 

「そうだね、少し喉が渇いちゃったよ。私、シュプライト」

 

と、僕が一人だけ首を傾げていると布良さんが注文する。

 

「えっと……じゃあ、何にしようかな……コーヒーで甘めのを」

 

布良さんも頼むらしいから僕も気を許して頼んだ。

 

「私はブルームーンを」

 

「シュプライト、コーヒー、ブルームーンですね、畏まりました。少々お待ちください」

 

大房さんが注文を繰り返すとそのままカウンターに戻った。

 

「美羽ちゃんってば、またお酒なんて飲んで」

 

「酔えないし、依存症もないのだから、ジュースもお酒も変わらないでしょう」

 

吸血鬼からしてみればそうかもしれないけど…

 

「いらっしゃいませ、矢来さん、布良さん、それから……」

 

二人がそんなことを話していると、とある女性が僕たちに話しかけてきた。チャイナドレスを着た女性が美羽ちゃん、布良さん、僕という順番で見てきた。

 

「あ、僕は―――」

 

「初めまして、紅 渡君」

 

「え?」

 

まだ名乗ってもいないのに名前を言われた。流石にこれは僕も驚きを隠せなかった。

 

「例の事件で、君のことは聞いているわ」

 

僕の頭の中の疑問に躊躇いなく答えた。

けど、この服装……布良さんが言っていた萌香さんという人に一致している。

 

「えっと……まさかとは思いますけど、名前以外に知ってることってありますか?」

 

少し不安を持ちながらも、どこまで知っているのかを聞きたかった。

 

「あはは、特筆するようなことは知らないわよ。知っているのは精々名前と……」

 

名前と?

 

「本土では古びた館に住んでいて近所の人から"お化け太郎"と呼ばれているとか」

 

昔の僕のあだ名を普通に喋りだす萌香さん。

 

「よく"カフェ・マル・ダムール"に顔を出すけどあまり人付き合いは良くない。所持している免許証は大型二輪免許証、ワザワザ大型なのは趣味なのかしら?」

 

「え、いや……取っておいて損はないかと……」

 

「ああ、そうそう。アナタ、本土では一度も学校に通っていなかったわよね。だからみんなよりも年上なのよね」

 

「え、そうなんだ?……ていうか紅君、一度も学校に通ったことがなかったの!?」

 

「う、うん……色々とあって……」

 

まさかそんなことまで知っているなんて……さすがに僕は動揺してしまう。

 

「あとそれにアナタの父親はあの幻の天才演奏家の紅 音也。君は本土ではバイオリン職人をしていたそうね」

 

「なっ!?」

 

ぼ、僕の父さんの事まで……さすがに今まで僕と父さんの関係を結びつける人はほとんどいなかったけど、そこまで知っているとなるとさすがに気まずい。

 

「渡、それ本当なの?」

 

美羽ちゃんが横目でこちらを見て、布良さんは目を見開いた。

 

「う、うん……紅 音也……知らない?」

 

「う〜ん……名前くらいならどこかで聞いたことはある」

 

「私も……」

 

名前くらいは……それでも僕は父さんの名前を知っていてくれて嬉しかった。

 

「あの、陰陽局で情報部にでも所属しているんですか?」

 

「陰陽局にそんな班はないわよ。アタシが働いているのは、監督班。主に風俗街の監督を受け持ってるわ」

 

「なんでそんな人が僕の情報を…」

 

「ちょっとした趣味?ほら、近所の事情にやたら詳しい人って昔からいるでしょう?」

 

そういう問題じゃないと思うのだけれど……

 

「ね、怖いでしょう?」

 

「改めて、初めまして。アタシは淡路 萌香。さっきも言ったように陰陽局の監督班で働いているわ」

 

「紅 渡です。よろしくお願いします……」

 

確かにこれなら美羽ちゃんや布良さんが言っていた事がわかる。確かに怖い…

 

「飲み物はもう頼んでる?」

 

「ええ、大房さんに」

 

「大房さーん」

 

「はい、オーナー。なんですか?」

 

「今日は特別サービス。この子達の代金は店持ちで構わないわ」

 

「はい、わかりました」

 

萌香さんがどうやらサービスしてくれるらしい。何か申し訳ないけど。

 

「それではこちら、シュプライト、コーヒー、ブルームーンとなります」

 

「ありがとうございます」

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

大房さんはそのまま仕事に戻り、僕は萌香さんの方を見た。

 

「それで、稲叢さんから話があるって聞いたんだけど、なんの用かしら?」

 

「ウチの主任から連絡がいってませんか?調べてほしい事があるって」

 

「ああ、何かの薬のこと?」

 

「何かわかりました?」

 

「とりあえず、現物を見せてくれる?」

 

布良さんと萌香さんの話がどんどんと進んでいく。

 

「えっと、これです」

 

僕はポケットからその錠剤を取り出し萌香さんに渡した。

 

「ん……MとかSとか刻んであるとわかりやすいんだけど……」

 

「有名どころのドラッグではない、って話だそうです」

 

どうやら萌香さんでも詳しくはわからないらしい。

 

「何か新しいドラッグについて、心当たりありませんか?」

 

「そういえば、新作を流したがってる奴がいるっていう与太話なら聞いたことがあるかも」

 

「もっともそっち系の話はそんなに詳しくないから。とりあえず何かわかったらまた連絡するわね」

 

「お願いします。それじゃ、私たちは報告に向かいましょうか」

 

「うん…」

 

 

 

 

とりあえず僕達は陰陽局に戻り、聞いたことを枡形さんに伝えた。

 

「情報待ちか……仕方ない、こちらはこちらでできることをやっていこう」

 

「できることと言うと?」

 

僕が思っていた疑問に布良さんが先に口を開いた。

 

「紅はクスリを落とした男の顔、まだ覚えているか?」

 

「はい、少し印象的だったので……」

 

確か黒髪をワックス?か何かでセットしているような感じだったから。

 

「けど、ちゃんと顔を見ないと……」

 

「見ればわかるってやつか。それで十分だ」

 

枡形さんがそう言いながらパソコンで何かのファイルを出していく。

 

「入島審査の時の防犯カメラだ。昨日の条件に入りそうな相手を抜き出してもらっている。カメラの位置的に恐らくお前の見た角度とは違うだろうがある程度ならわかるだろう」

 

入島審査のときの…?

 

「主任はあの落とし主を旅行者だと思っているんですか?」

 

「聞き込みで情報がなかった以上、あまり出入りしている奴ではないんだろう。なら、可能性は十分にある。それに、手慣れているやつならワザワザ目立つ場所で揉めたりしないだろうからな」

 

その言葉で僕は納得してしまう。さすがは本場の職業は違うんだな…そう思ってしまう。

 

「根拠としては弱くないですか?」

 

「だが、捜査の基準を決める判断の一つになる。例のクスリさえハッキリすればもう少しやり方もあるんだろうが今は情報が少なすぎる」

 

「聞き込みを続けるとしても他の方面からアプローチは必要だ。旅行者がダメなら、また他の方法を考えるさ」

 

そう言うと枡形さんがこちらを見てきた。

 

「とにかくお前はビデオ鑑賞だ、紅」

 

「は、はい……」

 

そう言って僕はなんとなくでファイルを開く……あまりこういうのは触ったことがない。

そのままファイルの中の動画が再生され、入島審査の様子が流れた。

顔も綺麗に見えるようになっており、映像でもわかり易かった。

 

「これなら……」

 

見つけやすい……そう思って映像を眺める。

 

「違う…」

 

僕はそう呟きながら段々と映像を飛ばす。十数人もの人が映るが全然ハズレを引くばかり。

 

「違う…違う…違う…」

 

段々と僕が機械のようになっていく……そんなときだった。

 

「あれ……?」

 

とある人物に違和感を感じた……目を細めてよく見てみる。

 

「似てる……」

 

服装は違うけれど顔立ちや髪型が似ていた。

 

「枡―――主任、これを……」

 

枡形さんを呼んで一応、報告しておく。

 

「なんだ、もう見つけたのか?」

 

「えっと…この人かなり似ています」

 

「……ふむ」

 

「……確かに面影は重なるわね。調べてみる価値は十分にあると思います」

 

実際にその場にいた美羽ちゃんもこう言っている。これはあたりかもしれない。

 

「あの場にいた二人が揃って言うのなら、調べてみる価値は十分にある。紅、その映像の日付は?」

 

「えっと…4月6日 14時47分です」

 

「わかった。その時の相手を問い合わせておく。お前は引き続き映像を確認しろ。その間に他に似ている人物がいないかどうか。いなければ、さらに可能性は高くなりそうだからな」

 

「は、はい…」

 

「警察にも連絡を入れて、応援の手配をしておけ」

 

なにかかなり大事になってきた様な……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、映像を見続けていたけど、他にあの男性に似ている人はいなかった。

そしてその間に、僕が似ていると言った人のプロフィールや宿泊先が調べあげられていた。

 

「各自、写真には目を通しているな?対処は『金脇 健介』。4月3日に二十歳を迎えたばかりだ。昨日の昼に入島、ホテル『グラッシュラー』に宿泊中。あのホテルだ」

 

僕を含め総勢で十人もの警察や風紀班の人が、ホテルの目の前にある広場に集まっていた。

 

「それでどうするんですか?」

 

警察官の一人が冷静な声で枡形さんに聞いた。

 

「一気に踏み込む。と、言いたいところだったんだが、まだ対象が落とし主だと決まったわけじゃない」

 

「そういうわけで紅、まず部屋を訪ねて顔を確認しろ。俺も一緒に行く」

 

へ、部屋を……

 

「わ、わかりました」

 

ここで断るわけにもいかないから枡形さんの指示に従う。

 

「で、もしもの際に備えて、他は全員配置についてくれ。よろしく頼む」

 

枡形さんの声とともに、みんなが決められた持ち場に付き始めた。

 

「あの主任、私たちは?」

 

「配置場所、聞いてないんですけど……」

 

けど、その中でどうやら美羽ちゃんと布良さんは配置場所を決められてないらしい。

 

「お前らも一緒に来い。もし荒事が起きた時には、誰かが紅の面倒を見ることになる。俺に余裕があるとは限らん」

 

『主任、予定外の事態です』

 

突如無線から声が聞こえる。今のセリフを聞く限りあまり良さそうには思えないけど。

 

「どうした?」

 

『対象が部屋の外にいます。どこかに移動するようです』

 

「こんな時間にか?朝の5時前だぞ?」

 

対象がどこかへ向かうらしい……

 

『エレベーターを降りて、正面口に向かっています。服装はチェックシャツにジーパン』

 

「確認した。ひとまず全ユニット、いつでも動ける準備をしておけ、台本を変更する」

 

台本……つまりは作戦を変更するんだろう。

確かにこれは予定外の事態だ……一体対象はどこへ向かうんだろう。

 

「台本変更ってどうするつもりなんですか?」

 

「C班はそのまま対象の尾行を。他は車を使え。相手は徒歩のようだからな、気付かれないようにな」

 

「僕達は…?」

 

「当然追う。こんな時間に移動するとなると、例のドラッグの可能性もある。引き締めていくぞ」

 

枡形さんの指示に従い、僕達は対象が向かった方に足を運んだ。

 

 

 

 

対象を尾行してから十五分ぐらいが経った。まだ、あたりは暗く、対象は歩道を歩く。

 

「あっ、止まった」

 

突如、対象が曲がり角のところで止まった。

 

「でもこんなところなにもないわよ」

 

幸い人影はくっきりと見えており、対象がキョロキョロとしている。

 

『南から灰色のセダンが近づいてきます』

 

「ちっ、やっぱりか。車の中で取引するつもりだろう」

 

車の中で……確かにそれだとあまり怪しまれないかもしれない。

車が対象の目の前で止まると後部座席のドアを開け対象が中に乗り込んだ。

 

「対象が車を降りたら、売人はそのまま立ち去ろうとするはずだ。その前に現行犯で押さえる。車で相手の進路を塞げ。準備はいいな?」

 

『問題ありません』

 

『いつでもいけます』

 

警察官のやる気のある声が無線を通して聞こえてくる。

 

「誰か車内の様子を確認できる位置へ移動できるか?」

 

『自分がいけます』

 

「よし、後は実際に何かを渡す瞬間さえ見えれば」

 

手慣れている感じで事を進めていく枡形さん……凄いな……

 

『車が3台きりなのは少し不安ですね。せめてあと1、2台あると、前と後ろをきっちりと防げるんですが』

 

「ないものねだりをしても仕方ない。それよりも車内の様子はちゃんと見えてるか?」

 

『ええ。手元まではハッキリ、とは言えませんが、それでもブツのやり取りぐらいなら問題ありません』

 

「そいつは結構。全ユニット、突撃の準備を始めておけよ」

 

その言葉と同時に、枡形さんがこちらに視線を送る。

 

「矢来は吸血する準備をしておけ」

 

吸血……美羽ちゃんも吸血するのか……

 

『金銭を確認。パックを代わりに受け取った模様っ!』

 

布良さんの血を吸血している美羽ちゃんを他所に無線が入った。

一気に空気が一変し緊張が走る。

 

「よし、ならっ―――」

 

『いや、待って下さい。売人の方が誰かと電話を始めました』

 

「さらに追加の取引でも行うつもりか?」

 

『わかりませんが、何かを話し込んでいるようです……っ!?ヤバい!こっちを見た!気付かれたか!?』

 

「くそっ、見張りがいたか!ええい、このまま突っ込むぞ!全ユニット突入だ!GO、GO、GO!」

 

警察官の車がサイレンを鳴らし僕達は現場へと駆け込んだ。

咄嗟に売人が逃げようとするもこちらの方が早く、3台の車が身動きを取れないように固めてしまう。

 

「動くなっ、警察だ!」

 

外に飛び出した警察が拳銃を手に大声で叫ぶ。

 

「車を降りろ!降りるんだ!」

 

「ひっ!う、撃つな!今、降りる!」

 

警察に怯えて対象の男性が車を降りた。

パァン!と乾いた銃声が金脇の動きを凍りつかせた。どうやらその銃声は売人が持っていた拳銃らしく売人が車を降りた。

 

「チッ……」

 

売人が舌打ちをすると、普通ではありえない光景を目のあたりにした。

 

突如、売人の体からステンドグラスのような模様が広がり、空中に謎の物体が二つ現れた。

 

「なっ!?」

 

ファンガイア!?さすがにこれは僕でも驚いた。早くもファンガイアと出会うなんて……

この状況に警察はもちろん枡形さんや美羽ちゃん、布良さんも迂闊には動けなかった。

 

グサッ!と謎の物体は男性の体に突き刺さると男性は抵抗することなく倒れ姿が消えていった。

 

「あれは……!?」

 

あの謎の物体は吸命牙と呼ばれるもので、ファンガイアが人間の命をライフエナジーに変えて吸い尽くすための牙だ。

 

「フン……」

 

そのまま売人の本当の姿を顕にした。ステンドグラスのような模様の体を持つ何か獣のような姿にも似た存在。

人はみんなこう言う……怪物と。

 

「チッ、よりにもよってファンガイアに当たるとは……」

 

枡形さんがそう呟いた。どうやら風紀班の方でもファンガイアの存在は知られているらしい… 

 

「…………」

 

タイガーに似たファンガイア……恐らくタイガーファンガイアなのだろうが、一歩ずつゆっくりと警察官に近づく。

 

「う、動くな!」

 

警察官も怯えているのか一歩ずつ下がりながらそう警告する。

 

「おい矢来、お前の能力でなんとかできるか?」

 

「距離がありすぎます、そもそも吸血鬼の能力でもファンガイアに勝ち目はありません」

 

「そうだな……布良はどうだ?」

 

「狙えなくもありませんが……」

 

「よし、何度も撃ってファンガイアを怯ませろ」

 

「その間に矢来が近づいてファンガイアを押さえる」

 

枡形さんたちがそんなことを話し合っている……僕としてはどこかで変身してファンガイアを倒さないと…けど、キバットは部屋だし。

あれは普通に人を襲った、それに違法な商売もしている……これは倒しておかなければ害となってしまう。

 

「―――っ」

 

そこで布良さんが奇妙な物を取り出した。見た感じ銃にも見える物をファンガイアに狙いを定める。

ファンガイアは一歩ずつ警察官に近づいていく。

どうやら警察官を恐怖に陥れたあとに食べるつもりらしい。

こんな時にキバットがいれば!

 

「ひ、ひぃっ!」

 

ファンガイアが静止し吸命牙を出現させた直後だった。

パァン!と自分の耳元で銃声が響いた。

 

「っ!?」

 

突如、襲いかかった銃撃にファンガイアは身体をよろめかすも、すぐさま体制を立て直しこちらを見た。

パァン!と再び銃声、だがそれはファンガイアには当たらなかった。

 

「なっ!?」

 

ファンガイアは銃弾が放たれると同時に跳躍で避けて、道を塞いでいる車を軽々と飛び越えた。

だが、それでも布良さんは撃つことをやめなかった。三度目の銃声……

ギンッ!

 

「っ!?」

 

三発目の銃弾をタイガーファンガイアは自身の爪で弾いた。

さすがに布良さんもこれには動揺をせざるを得なかった。

 

「布良さんっ!」 

 

四発目の銃弾を放つ準備をするけど、布良さんとファンガイアの距離が近い。

ファンガイアは布良さんに爪を振り下ろそうと腕を上げていた。

 

僕は布良さんを覆うように抱き押し倒し、なんとかファンガイアの爪を免れる。

 

「チッ……」

 

ファンガイアが舌打ちをしてこちらにやってきた。

 

「紅君…?」

 

「布良さん、逃げて」

 

僕は起き上がり布良さんを隠すようにファンガイアの前に出て、逃げるように促す。

 

「で、でも……」

 

「いいから!」

 

僕が叫ぶ。こういう時にキバットがいれば……

ファンガイアが再び腕を振り上げた。どうやら爪を振り下ろすつもりらしい。

 

「っ!?」

 

けど、その直後ファンガイアの身体が横に吹き飛んだ。

僕は何が起こったかわからず目をパチクリさせてしまう。

 

「なんとか間に合ったわね」

 

美羽ちゃんがこちらに駆け寄ってくる。どうやら美羽ちゃんの能力でファンガイアが吹き飛んだらしい。

 

「無茶しすぎよ」

 

美羽ちゃんが僕を睨みながらそう言った。

 

「でも、ああしてないと布良さんが」

 

「言い訳は後で聞く、それよりもファンガイアを追うぞ!」

 

枡形さんの言葉に警察官が吹き飛ばされたファンガイアの方へと足を運んでいく。

 

「了解、渡はそこで休んでなさい」

 

「紅君、その、ありがとね?」

 

美羽ちゃんも布良さんもそう言うとファンガイアの方へと向かった。

 

「…………」

 

この場に僕一人だけとなる……美羽ちゃんの能力と布良さんの射撃でファンガイアがどうにかなるとは思えない…

それはファンガイアと戦っていた僕が一番よくわかっている。

 

「渡!ファンガイアが現れた!」

 

そんな中、キバットがどこからか飛んできた。

 

「遅いよ、キバット。もう美羽達がファンガイアと戦っている」

 

周りに人影はない……これなら……

 

「いくよ、キバット」

 

「よっしゃ、キバっていくぜ!」

 

僕は飛んでいるキバットを右手で掴んだ。

 

「ガブッ!」

 

そのままキバットの牙を左手に突き刺した。左手からステンドグラスの模様が広がり、そのまま体中へと広がっていく。

キバットから流れてくる魔皇力がベルトを出現させた。

何本もの鎖が腰に巻き付き、それが収束すると赤いベルトが形となった。

 

「……変身」

 

顔にステンドグラスの模様を浮かばせながらそう呟いた。

誰にも聞こえることなく囁かれた言葉は虚空へと消える。

左手から離したキバットを前に突き出し、そのままベルトへと持っていく。そしてベルトのバックル部分にある止まり木に、キバットを宙吊りにセットした。

 

そして見えない何かが徐々に形を成していき、渡を覆った。

その見えない何かが砕けると、そこには渡の姿が変わっていた。

赤い鎧を身に纏い、まるで蝙蝠を連想させるような目、肩や右足には鎖が巻き付く謎の戦士がそこにはいた。

 

 

その名は―――仮面ライダーキバ。

 

 

 





強引に戦闘シーンの寸前まで持っていきました、すみません
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