あ〜キバのデッキを組みたい(
なんでハイパームテキやブラスターフォーム、ジーニアスフォームは二、三枚くるのにエンペラフォームは一枚も来ないんだっ!
おのれディケイドぉ!
今回の新弾も注目を集めやがって……まぁ、激情態の方が強いけど
主任や美羽、布良を含めた九人は吹き飛んだファンガイアを追っていた。
と言っても吹き飛ばされたファンガイアは分が悪い、とでも思ったのか…そのまま起き上がると警察官達から逃げるように走り始める。
「逃げるつもりか……布良!やつの足を狙えるか!」
「さすがに私でも無理です!」
距離が離れているためか……動いている足を狙い撃つという芸当はさすがにできないらしい。
「このまま奴を逃がすわけにもいかん!追え!」
主任が大声でそう声を上げる。だが、人とファンガイアでは当然走力も違い、差は広まる一方…
誰もが諦めかけていたその時……
「っ!?」
ファンガイアが足を止めた。
「なんだぁ?」
さすがにファンガイアの不可解な行動に首を傾げる一同。
「主任、ファンガイアが逃げるその先に人影が」
「なに!?」
主任が目を細め、ファンガイアのその先にいる人影を見た。全身が鎧で覆われた謎の戦士―――すなわち『キバ』がファンガイアの前に佇んだのだ。
「あれはっ……!」
美羽が何かを察したかのように声を上げる。
『お前は!?』
ファンガイアも体の表面にいくつもの人間態の時の顔を浮かばせながら驚いた。
「…………」
キバは何も言わずファンガイアの方へと歩いていく。
ジャラジャラ……とキバが歩くたびに、所々にある鎖がキバの鎧と擦り合う音が闇に響く。
『くっ!』
ファンガイアはキバに自身の爪を振り下ろす。だが
「っ!?」
ファンガイアの攻撃は綺麗に避けられ、そのままキバのパンチをモロに喰らう。
「…………」
そこからさらにキバは容赦なくパンチを叩き込む。そしてそのままパンチ、さらにパンチと連続パンチを食らわしていく。
最後の一撃を食らったファンガイアはそのまま後方に吹き飛び、そのまま転がっていく。
予想外の事態に主任たちは迂闊に動けず、その様子をただ見ていることしかできなかった。
「…………」
キバがファンガイアを静かに睨みながら、右腰からとあるものを取り出した。
それは赤いホイッスルであった。そのホイッスルを持ち正すと、そのままベルトのバックル部分に宙吊りになっている蝙蝠のようなものの口に差し込んだ。
『ウェイクアップ!』
その声と共にベルトのバックルにいた蝙蝠が動き出し、独特な音が響いた。
「…………」
キバが腕を小さく広げゆっくりと腕を交差するように目前にやってきた。
ザッ!と腕を広げ、キバは右足を高く上げた。蝙蝠が高く上がったキバの右足に付いている鎖を断ち切ると、まるで力を開放するかのように、拘束されていた右足の翼が大きく羽ばたく。
大きな月を背に、ファンガイアをキバは見た。
「…………」
そのまま左足を曲げ、思い切り跳躍した。キバは身体を縦に回転させ、上空で敵を背に向け逆さまになった。
跳躍した頂点に達したかと思うと、キバは身体を回転させ、そのままファンガイア目掛けて右足を突き出し、急降下。
「ハァっ!!」
ドッッ!!というとてつもない蹴りの衝撃がファンガイアを襲い、そのまま地面に叩きつけられる。
その衝撃は全て受け止めきれず、そのまま地面にも余波が来る。
そのままファンガイアはキバに踏み潰されるかのようにステンドグラスのように割れた。
だが、それだけでは終わらない。ファンガイアの魂ともいえるライフエナジーがその場に浮遊した。
ギャァァァァァ!と何かの雄叫びにも聞こえる声がその場に響き渡る。
キバは空を見上げる……建物にドラゴンの頭部と翼を生やした何かが飛んでくる。
それは巨大としか言いようがなかった……だが、その存在に気付いている者はほんの一部…このドラゴンは人間には見えないのだ。
ドラゴン…キャッスルドランと呼ばれる城を意味するドラゴンは、ファンガイアの生命の塊でもあるライフエナジーを飲み込んだ。
キャッスルドランは満足したかのように翼を羽ばたかせどこかへ飛んでいく……
「…………っ」
その光景を近場で見てしまった美羽は足を震えさせた。
「…………」
キバはその場にいた九人を一瞬だけ見て立ち去ろうとする。
「待て!お前は何者だ!」
主任はキバに向かってそう叫んだ。だが、キバは聞く耳を持たず、キバの紋様の形をしたクレーターを地面に残し、その場から去るように消えていった。
「何なんだ、アイツは……」
主任は手で額を抑えながらそう呟いた……謎の戦士の登場……これは大きく、そして吸血鬼にとっては重要な出来事でもあった。
僕は美羽ちゃん達がいる現場へと向かった。
ファンガイアは倒しこれで一段落だろう…そう思っていた。
「しゅ、主任……」
「おう、紅か……」
どこか枡形さんが気を落としているように見えた。
「えっと……大丈夫ですか?」
「どうもこうもあるか。対象も売人もいなくなっちまったんだから」
「え?」
その言葉を聞いて僕は目を見開く。
「これで手かがりなしだ……しかも次から次へと……」
「何があったんですか…?」
僕は思わずそう聞いた。
「変なやつがファンガイアを倒しやがったんだ」
「変なやつ?」
「そうだよ。何なんだアイツは…」
『主任、見張りをしていたと思われる男を確保しました』
そこで無線が入ってきた。
「なに、本当か!?」
『はい、なんでも変なやつに捕まったらしくて……』
「変なやつ……?」
『この男の証言からするにファンガイアを倒した奴と同じようです』
枡形さんが一段落のため息を尽いた。
「よし、これで安心だな……だけど死人が…」
無事に解決したようで何よりだ…確かに人を救えなかったのは僕も悔しかった……
もっと早く変身しておけば…そう思ってしまう。
「よし、布良、矢来!引き上げるぞ」
「え、あ……はい!」
「あれは……けど……どうしてこんなところに」
枡形さんの言葉に布良さんは返事をするも、美羽ちゃんだけ聞こえていなかったみたいだ。
「美羽……?」
「っ!?」
僕は美羽ちゃんの肩を掴んだ。その時、美羽ちゃんの身体が跳ね上がるように反応し、素早くこちらを向いた。
「わ、渡……?ど、どうかしたの?」
「いや、引き上げるから……反応がなかったから声をかけたんだけど、大丈夫?」
「う、うん……大丈夫よ。少し考え事をしていただけよ」
「そう、なんだ……」
僕には少し怯えているようにも見えた気がした。
「それにしても紅、あの時は無茶をしすぎだ。いくら布良が危ないからと言って……」
「す、すみません…けど、あのままじゃあ布良さんが……」
死んでいたかもしれない、そんなの僕は見過ごすわけにはいかなかった。
「それもそうだがお前、ファンガイアがどれだけ危険な存在か知らないだろう?」
「…………」
「いいか、ファンガイアっていうのは吸血鬼とかそういう生易しいもんじゃない……ファンガイアは、昔はなりふり構わず人間を食物にしか思っていなかった怪物だ」
「だが、最近ではどういうわけか穏健なファンガイアもいるんだが……ここでは悪さをするファンガイアばかりなんだ。理由は知らんが」
やっぱりここにもファンガイアはいるんだ……今、枡形さんから聞いた話だとそれも二体や三体ではないって感じだけど……
「今の俺たちではあのファンガイアに対抗する力を持っていない。吸血鬼だってファンガイアにも勝てる見込みがない」
枡形さんはキバの紋様のクレーターを見下ろしながらそう言った。
「だけど、アイツは一体何なんだ……」
「―――キバです」
枡形さんがそう呟いたとき、美羽ちゃんがハッキリとそう言った。
「牙?」
「はい。吸血鬼の中でも有名で、キバはファンガイアの王であり、他の魔族を滅ぼす程の力を持っています。かつて吸血鬼はキバの力にほぼ壊滅状態でした」
……それほど、キバは名があるということなんだ……
「―――奴は危険です」
それは違う!僕はそう言いたかった。キバは……キバは……
「だが、ファンガイアを倒してくれる。ありがたい話だ」
「…………」
僕は何も言うことができなかった。
僕は風呂に顔半分を隠す。
「はぁ……ねぇ、キバット」
「どうした、渡?難しい顔して悩んで」
キバットが気楽そうにそう答えてくる。
「吸血鬼にとって、キバってそんなに危険な存在なのかな……」
「まぁ、ヴァンパイア族は昔、先代キバに滅ぼされかけたからな……ヴァンパイア族にとっては恐ろしい存在なんだろうな…」
「……そう、なんだ…」
「ヴァンパイア族からキバの恐怖を取り払うのは、一筋縄ではいかないと思うぜ」
キバットが僕の考えてることをまるでわかっているかのように答えた。
僕は平和に暮らしている人達に害を与えるファンガイアを倒すだけなのに……
「そう落ち込むなって。そのうちわかってくれるさ」
それならいいんだけど……
結局、あの事件から一日が経った。
あの時販売されていたのは、クエン酸シルデナフィル?とかいう薬らしい。
それに日本では未承認の製造元の薬を格安で売っていたらしい。
しかも販売しているのはそれだけじゃなく、違法な物まで取り扱っていたらしい……
けど、ファンガイアがあんな売人をしていたなんていうのは驚きだった……しかもここに来てすぐに出会うなんて……
ファンガイアの事はこの都市でもそれなりに知られているらしい……中では風紀班たちでも知らないところで人間達を食べているとか……
「ここでも頑張ってやっていけるかな……」
僕は部屋に飾ってあるブラッディ・ローズを眺めた。
父さんが残した最高傑作のバイオリン……このバイオリンを買い取りたいって人も多くいるけど手放したくなかった。それにこのバイオリンには大きな秘密がある……
コンコン、と誰かが僕の部屋をノックする。
「うん…?」
僕はドアの鍵を解除して、少しだけドアを開けて誰が来たか確認する。
「やっほー、ワタル。遊びにきたよ!」
エリナちゃんが笑顔で僕にそう言い、半ば強引に扉を開けると、するりと僕の脇を通り抜け、部屋に入る。
「あ、遊びに来たって……特に面白いものなんてないよ?」
僕はエリナちゃんにそう言った。だが、エリナちゃんは聞く耳を持たず、ベッドの下を覗いたりしている。
「エリナちゃん、何してるの?」
「ワタル、エリナでいいよ。ワタルも男の子だからそういうのとか隠しているのかなーって」
「そういうのって……?」
ベッドの下に手を入れて何かを探っているエリナちゃん……特にベッドの下には何もないのに、エリナちゃんが何をしているのか全くわからなかった。
「エッチな本とか……?」
首を傾げながら僕にそう言ってくる。
「そ、そんなのはないよ……」
僕は生まれて一度もそういうのは持ったこともなかった……
ていうか、女の子が探すようなものじゃないと思うけど…
「なんで急にそんなことを……」
「男の人ってどういう生活をしてるのかなーって気になってね。だからワタルの部屋に来たの」
「そ、そうなんだ……」
「けど、そういうものも見られないしつまんない……」
なんでエリナちゃんは生活=大人向けの本みたいな言い方をしているんだろう……
「あっ―――」
そこでエリナちゃんがとあるものに目をつけた。
「ワタシ、これ知ってる!バイオリンって言うんでしょ?」
そう、エリナちゃんは部屋に飾ってある父さんのバイオリンでもあるブラッディ・ローズに目を付けた。
「うん、ブラッディ・ローズ……」
「ブラッディ・ローズ……"血塗られた薔薇"……?」
何かエリナちゃんが嫌な顔をしているようにも見えた。少し悪い印象を教えちゃったかも……
「えっと……ブラッディ・ローズは父さんが残したバイオリンの中でも一番の傑作なんだ。色んな人が欲しいって言って買いに来るけど、それだけは売らない。たとえ一億出すって言われても」
必死に僕がフォローをして、悪い印象を与えないようにした。
「一億!?」
「うん、そのくらいの値打ちはあるんだって……」
僕がそう言うと、エリナちゃんがブラッディ・ローズを間近で見つめている。そして、エリナちゃんがクルリと僕の方を振り向いた。
「ワタルのお父さんって有名人なんでしょ?アズサから聞いたんだけど」
「うん……幻の天才演奏家って言われてたんだ……」
「ワタルのお父さんって凄いなー。ワタシ、会ってみたい」
「残念ながら父さんはもう……」
いない……あの戦いで父さんは最後の変身をして……
「ご、ごめんね……変な事を言って……」
僕の様子からエリナちゃんは察したのか、申し訳なさそうに謝ってくる。
「気にしなくていいよ。けど、会ってみたいって言われると僕としては凄く嬉しい」
けど、父さんが生きていたとしてもあまり会わせるのはオススメしないかな……性格が少しアレだったから……
「……あ、そうだ。ワタルもお父さんみたいに演奏できるんでしょ?ワタシ、聞いてみたいかも」
「え、僕の……?」
「まさかとは思うけどワタル、弾けないの……?」
僕の反応を見て、疑うような目でそう問いかけてきた。
「いや、弾けるよ……ただ、父さんのようには上手く弾けないから」
「ワタシはワタルの演奏が聞きたいんだよ?それに、ワタルのお父さんの演奏は一度も聞いたことがないから、比べることなんてできないよ」
そのまま正論を言われて僕はぐうの音も出なかった。
「そう、だよね……じゃあ……」
僕は飾ってあったブラッディ・ローズを手に持ち、構えた。
「…………」
「…………」
真剣な目で僕を見てくるエリナちゃん。あまりエリナちゃんのこういう顔は見たことがない。
僕は馬の尾で作られた弓をバイオリンの弦で摩擦させ、ブラッディ・ローズの胴内で反響させた。
僕はそこから何も考えずにバイオリンを弾いた。奏でる音楽は僕がいつも弾いているもので、曲名やテーマも何もない演奏だった。
「…………」
僕はいつの間にか目を閉じて演奏をしていた。部屋中にバイオリンの音が広がり、僕自身の心も安らかになる気持ちだった。
以前、僕が布良さんにこの部屋は防音対策をされているのか聞いたのも、このバイオリンが弾けるかどうか確認するためだった。
幸い、防音対策はされていて、こうして安心してバイオリンは弾けるから良かった。
そしていつの間にか僕の演奏は終わった。弓をバイオリンから離し、僕は目を見開いてエリナちゃんの様子を伺った。
「…………」
目を見開きながら口をパクパクさせているエリナちゃんが少し可愛く見えた。
「えっと……どうかな……?」
「ハラショー!凄いよ、ワタル!ワタシ、音楽とか芸術はあまりわからないけどワタルが凄いっていうことはわかるよ!!」
エリナちゃんが興奮しながら声を上げてそう言ってくれる。
「ありがとう」
僕はエリナちゃんがそう言ってくれてとても嬉しかった。
「エリナにも弾けるかな?」
興味深そうに、エリナちゃんが近くにあったバイオリンを触る。
「さすがに練習しないと無理だよ……」
「ワタシも弾いてみたいなー」
そう言って、エリナちゃんがバイオリンの弦を弓で摩擦させる。当然、初心者が上手く弾けるはずもなく、ぎこちない音が部屋に響き渡る。
「よければだけど、教えようか……?」
僕の言葉にエリナちゃんの手がピタリ、と止まる。
「え、いいの?」
「エリナがいいなら……」
目を輝かせながら僕を見上げるエリナちゃん。
「けど、途中から投げ出しちゃ駄目だよ……?」
その言葉を聞いてエリナちゃんは少し戸惑ったものの表情をもとに戻した。
「うん、ダイジョーブ。投げ出さないって約束するよ」
「それならいいけど……」
「それでどうやって弾くの?」
「えっとね、まずはバイオリンはこうやって持って……」
エリナちゃんがそうやってバイオリンに興味を持ってくれたのは嬉しかった。
暗い小道を何かから逃げるように走る女性。
度々、後ろを見ては息を切らしながら走っていた。
「はぁ……はぁ……キャッ!」
だが、走っていた女性はナニカにぶつかるとそのまま尻餅を付いた。
「い、いやっ!」
女性はぶつかったナニカを見て身体を震えさせた。人間より一回り大きいステンドグラスのような模様をした身体の巨体、ファンガイアだった。
ファンガイアが自身の背後に吸命牙を出現させ、女性に狙いを定める。
「や、やめて……来ないで!」
ファンガイアはそんな女性の聞く耳を持たずそのまま牙を射出した。
ザシュッ!
「い、イヤァァァァァァっ!」
女性の悲鳴がその場に響き渡る。だが、牙は女性に命中する寸前に消えてしまった。
「っ!?」
背後から何かに斬られたような一撃を食らったファンガイアは、咄嗟に後ろを振り向いた。
『白い……キバ!?』
ステンドグラスの表面から人間態の顔を出現させながらそのものを見た。
白い鎧で全身を覆い、蝙蝠のような形をした赤い眼。そしてキバよりも細い身体だった。
チャキ、と白いキバは白いサーベルを正面に構えた。
『くっ……』
ファンガイアは白いキバに襲いかかる。だが、その攻撃はいとも簡単に躱され、そのままサーベルで斬られてしまう。
「…………」
白いキバはそのまま何度も何度もサーベルで斬りつけた。
「っ!?」
ファンガイアは一旦、距離を取ろうとするも、白いキバの方が一手早かった。
白いキバはそのまま力強くファンガイアを後方へ蹴り飛ばした。
ダンッ!とそのまま壁へ叩きつけられファンガイアは地面に転がった。
「…………」
白いキバはそのままファンガイアを睨みサーベルに力を込める。
白いサーベルの刀身が紫の光を放ち始めた。
ファンガイアは身の危険を感じ、慌てて起き上がるも、手遅れだった。
「……!」
白いキバが瞬時に懐に飛び込み、渾身の突きを放つ。サーベルはファンガイアの身体を貫き、白いキバはそのままゆっくりとサーベルを抜いた。
パリン、とファンガイアの身体がステンドグラスのように砕け、その場に何も残っていなかった。
「ひ、ひっ……!」
その光景を見ていた女性は怖くなり、その場から逃げ出す。白いキバはその女性を気にすることはなく、どこかへ去っていった。
白いキバ……イッタイダリィナンダァ…