こちらに様々な事情があったのは事実ですが、待たせてしまったことに変わりません。自惚れかもしれませんが、時間がかかろうと完結を目指す姿勢は続けていきます。
では、本編です。
*修正入りました
さて、落ち着いたところで話を始めよう。
周囲の状況からだ。
廃工場で、隣に2人の少女・・・いや、美少女が縛られている。"恐らく"自身と同い年だろう。
とは言っても私は自分の年齢が分からない。
私は、柴崎楓。多分6歳。現在の住所はここ、この廃工場である。2歳くらいの時に、気味悪がられて捨てられて以来この廃工場に住んでいる。
ちなみに、名前は自分で決めた。本来の名前、というより、両親から呼ばれる名前があまり好ましくないのである。まあ、捨てられていい思いをする方もいないだろう。
さて、話を戻そう。周囲の状況、これが一番重要事項である。前方では、武装した大人数人、そして軽薄そうな笑みを浮かべたスーツの大人が一人。先程から、聞いてる話によると、氷村?というらしい。男は夜の一族と呼ばれる吸血鬼なのだそうだ。選ばれた人種だの、なんだの言いつつ隣の二人の美少女の片方、髪が長い子は自身の同族なのだ、と声を張り上げていた。
流石、吸血鬼。美人になるもんだな・・・と、私は思う。私?生まれてこの方顔を数度しか見たことがありませんか、煤で汚れてなんとも言えません。
「隠していれば、なんとかなるとでも思っていたのかい?どうにもなるわけないんだよ・・・お前も僕と同じさぁ!」
下卑た笑みをこちらに向ける。金髪の少女は、キッと睨みつけながら、声を張り上げ
「ふざけんじゃないわよッ!この根暗男ッ!どう見てもすずかとあんたは同類じゃないわッ!私の親友をバカにしないでッ!」
と、気丈に声を張り上げていた。かっこいいと言うか、男前である。
私は、それを聴きながら逃げる準備をしている。こっそりと自身を縛る縄を工場に落ちているガラスの破片を使って切って"もらう"。傍から見れば、ガラスの破片が独りでに浮いている怪奇現象状態であるが、気づかれなければどうということは無い。
「こんな関係ない子を巻き込んで・・・あんた最低よッ!」
待った、私に視線を向かせないでくれ。ほんと、待って。氷村は、私を見て機嫌が悪そうに唾を床に吐き散らした。
縄を切ろうとしているのに、気付いてはいないが・・・
「なら・・・君達に絶望をあげよう・・・やれ」
と、こちらに銃を向ける。狙いは・・・私だ。美少女2人の顔が青ざめていく。
「や、やめて叔父様ッ!?」
「な。なんでよ・・・本当に関係ないじゃないッ!やめ・・・やめなさいよッ!」
しかし、武装した男達は此方に銃を向け
「やれ」
撃ち放つ。2人には、蜂の巣になる私を容易に想像出来るだろう・・・そうならない。
私は、こういうのが嫌いだ。大の大人が、寄って集って子供相手に大人気ない真似をする。
「クラフトワーク」
気に入らない奴は、とりあえず・・・ぶっ飛ばせばいい。
瞬間、クラフトワークが迫り来る弾丸を弾いて地面に叩き落としていく。チャリ、チャリ、と地面に寂しげな音を立てて弾丸が落ちていく。
誰も一言も喋らない。そして、先程から静かにクラフトワークで静かに切り続けた為に、縄はもう子供の私の力で解ける・・・否、切れる。
ブチッという音ともに、縄を切り解き立ち上がる。
静かにガラス片が音を響かせる。
「あなた"覚悟"出来てるんですよね」
1歩、また1歩、相手側に踏み込む。
「攻撃した、ということは・・・殺そうとしたということは・・・やり返されてもいいって言うことですよね?」
武装した大人達が一斉に銃を向け撃ち出すが、そうなることは分かっている。クラフトワークが、迫り来る銃弾を全て弾き飛ばし、受け弾く。
氷村という男は、足をガクガクと震わせながら唇を震わせている。隣に佇んでいるメイドは驚いたように固まっている。
「ィ・・・イレインッ!こいつを殺せーェッ!」
その瞬間、嫌そうにしながらメイドがこちらに攻撃を仕掛けてくるが、クラフトワークには悪手である。
人らしからぬ音を立てながら、クラフトワークによって腹を殴り上げられてメイドは"固定"される・・・空中でじたばたと動いても、私には当たらない。
「クラフトワーク」
そのまま静かに近づき、氷村の口を・・・顎をクラフトワークで殴りあげ固定する。
顎が固定したなら喋ることは出来ないだろう。つまり、
「命令することは、出来ない・・・あなたは、助けも呼べない」
空中で声にならない呻きをあげる哀れな男に、クラフトワークを構える。ここにいる誰もが私を見ていて、クラフトワークを見ていない・・・いや、見ることは出来ない。
「クラフトワークで固定したものに触れるとエネルギーが溜まる・・・例えば石を固定している場合、その石を優しくノックするだけで・・・固定を解除した瞬間に石は溜まったエネルギーによって、吹き飛びます」
わかりやすく教えながら、クラフトワークは腕を引き構える。普通では見えることのない、スタンドによる攻撃。
「あなたをボコボコに殴ったなら・・・どんな風に吹き飛ぶんでしょうね・・・」
ニッコリと、工場のホコリで煤だらけの顔を上げる。処刑人とはこういう気持ちなのかもしれない。
「絶望を返してあげますね」
瞬間、空気を撃つような音が連続して響き始める。氷村の顔が歪んで行くのが見える。建物から脱出しようと腰を抜かした大人達が逃げていく中、砕けるような音を響かせていく。
「さようなら」
解除されると同時にイレインと呼ばれたメイドは地面に落下し、氷村という男は凄い勢いで壁にぶち当たり、壁を軋ませめり込んだ。
「・・・あ、あなた・・・なん、なの・・・よ・・・」
金髪の少女が漏らした言葉にゆっくり振り向きながら、微笑みかける。
「ただの子供ですよ・・・お嬢さん」
誰かが、駆け込む音がした
如何でしたでしょうか?楽しめるものであったなら幸いです。