あべこべ?! ソードアート・オンライン 俺の受難な日々   作:あるく天然記念物

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何年ぶりだろうな、新作書くの。適度に楽しんでください


受難な日々の始まり

 拝啓

 前世のお父さん、お母さん。

 先立つこの身をお許し下さい───って、こんなキャラじゃないな。

 改めて、先に死んでしまってごめん。

 いやー、まさかトラックに引かれそうな幼女をこの目で見る日が来るなんて思ってなくてさ~。気が付いたら勝手に走り出して身代わりになってしまったよ。ほんと、トラックの運転手には悪いことしちゃったな~。とりあえず責めるのだけは駄目だからね、絶対だからね! どっかのお笑い芸人よろしく振りじゃないからね!! あと、葬式は地味でいいから。というか、ニュースに出るレベルとか勘弁やで!!

 さて、こうしてサクッとマ○オがごとくあっさり死んでしまった俺ではあるが、なんと嬉しいことに来世があるようだ!

 「死んでしまったな~」とか思っていたら、目の前に後光がやべー爺さんがいきなり出てきて、「実は、お主はあのとき死ぬべき運命では無かったのだ。いや~、誤ってお主の人生が載せられた書類にカフェオレこぼしちゃって……ごめんね! お主の希望に合わせた来世に送り出してあげるから、ね! 許してちょ!」とか言われたのだ。

 とりあえずお父さん、お母さん、コイツは責めていいと思う。というか、コッチにいつかはくると思うので、その時には容赦なくキャメルクラッチでもやっちゃってください。

 そんなわけで来世への切符を手にした俺は喜んだ。

 だって、自分の希望した世界に行けるんだよ? 志望校がハーバードだろうと合格確定だぜ? テンションは有頂天にもなるってもんだ。

 あれやこれや考えた末、転生する世界はソードアート・オンラインの世界に決めた。

 なぜデスゲームの世界なのか? とか思うかもしれないが、これには理由もちゃんとある。

 何故なら、爺さんに聞いたところ、テンプレがごとくオマケ要素をくれるそうなのだ。

 つまり、デスゲームだろうが余裕でクリアすることも不可能ではないし、主人公に惚れるかわいい女の子達も、俺の頑張りしだいなら惚れてもらえる可能性だってある。ついでに俺の好きな作品でもあるし。あっ、最新ゲームは遊べなくなってしまったのは心残りです。発売、おめでとうございます。

 と言うわけでお父さん、お母さん。俺は来世で楽しく暮らしていくから心配しないでね!!

 敬具

 

 追伸

 なんか、転生する前に見た後光がやべー爺さんの顔がゲスかったのは気のせいだよね?

 

…………

 

……

 

…

 

 《ソードアート・オンライン》

 稀代の天才が生み出した最新のVRゲーム。

「これは、ゲームであっても遊びではない」

 希代の天才はそう言った。

 事実ソードアート・オンラインは現実と何一つ変わらないくらいに凄かった。

 衣食住はもちろんのこと、戦闘においての臨場感は現実ではとうてい味わえないほどに手汗握るもの。

 そしてそのゲームが、遂に、遂に今日配信なのだ!!

 待った。

 待ち焦がれた。

 待ちに待ちすぎで発狂してしまうかと思うほどに待ち望んだ!!

 前世と今世を含めて三十数年。

 ようやく待ち望んだ瞬間が来たのだ!!

 どうも、転生した俺こと吉田です。

 正式名称は吉田真琴(よしだ まこと)。

 現在ピカピカの高校一年生です。

 後光のやべー爺さんとの会談によって転生した俺は無事、ソードアート・オンラインの世界に生まれることができた。

 嬉しいことによく見る転生物の二次小説で発生する幼児プレイはカットされ、五才児からのスタートだったし、下手なTS要素もなく息子も無事だった。

 また前世とは違う両親に対してうまくやれるか心配だったが、どうやら身体に精神は左右されるようで、特にこれといった障害なく馴染めた。

 というかもてはやされた。

「どこの小皇帝かよ!」

 というツッコミを入れたいレベルで溺愛された。

 そんでもって両親が美形だこと。あれだね、アニメに出てくるレベルだわ。あっ、この世界アニメの世界だったわ。お父さん──はいいとして、お母さんは有数なIT企業に勤めるほどで、家庭は前世よりも豊かだった。どれくらいかと言えば一人の部屋に対してテレビと冷蔵庫があったくらいだ。

 さて、何の障害もなく第二の人生を謳歌できた俺は、遂に憧れたソードアート・オンラインをプレイする事ができる。

「さぁて、ここからだ。ここから俺の物語が始まるんだ」

 手にしているのは頭をすっぽりと納める大きさもあるヘッドギア。

 ナーヴギアだ。

 これをかぶり、あの言葉を言えば、あの世界へと足を踏み入れることができる。

 デスゲームではあるが、前世ならきっぱりと諦めるしかなかった世界。何も知らない人からは怒られてしまうだろうが、爺さんから貰った特典も大丈夫。なら、あとは全力で楽しむだけだ。

 実のところ、ソードアート・オンラインの世界に行くのは初めてである。

 なにしろ体験版であるβ版は落選してしまい、正式版も苦労して早朝からゲームショップに並んで買うしかなかったのだ。

 まあ幸運が重なったことにより無事に買えたのは幸いだった。

 さすがにせっかく転生した世界の代名詞とも呼べるゲームに不参加とかあり得ない。

「おっと、もうこんな時間か」

 時計を見るとこれまでの人生に対して感傷に浸りすぎたのか、時刻は既に一時を迎えていた。

 正式サービス開始時刻である。

「ふぅ────よしッ!!」

 意を決し、ベッドへ体を預けた後、ナーヴギアを被った俺は口にする。

 空中の城。

 アインクラッドへの扉を今こそ────開ける!!

「リンク────スタート!!」

 目の前が一瞬白くなった後、色とりどりの線が目の前を通過していき、あの文字が目の前に浮かび上がった。

 《Welcome to Sword art Online》

 いよいよだ、遊びではないゲームの世界。

 ここから、俺が夢にまで見た冒険が始まる!

 待っていろよ、俺の世界、ヒロインたちよ!!

 

…………

 

……

 

…

 

 あれ?

 

「あの、一緒に狩りに行きませんか?」

「すみません! 私とそこの喫茶店でお茶しませんか?」

「このゲームには馴れました? よろしければβテスターの私が色々と教えてあげましょうか? そう、イロイロと」

「ちょっと、私が先に声をかけたのよ。邪魔しないでくれない?」

「はぁ? そっちこそ、私が目を付けた彼にいきなり声をかけたのでしょうが」

「はいはい、βテスターの私と比べた二人ともどっこいどっこいなんだから、私に譲ったら?」

「「はぁ?! あなたこそでしゃばらないでよ、βテスター如きが!!」」

「なっ?! 何ですってー!! ねぇ、君も私と一緒に行動した方がいいよね?」

「わ、私の方だよね!」

「お茶しよ! お茶!」

「「「だから、あなた達は黙って!! というか、私とフレンドになりませんか!!??」」」

 

 目の前で広がるキャットファイト…………いや、ドッグファイトか。

 ソードアート・オンラインが始まって、二年が過ぎた。

 現在の攻略層は74層。

 未だにゲームはクリアされていない。

 そして、目の前で起こっているこういった争いは日常茶飯事。

 内容は男の俺を巡って女性達が我先にと誘おうとしての軋轢。

 どう考えても逆。

 そう──“逆”なのである。

 はい、ここで衝撃の真実。俺は皆さんに嘘付いてました。

 何の問題もなく人生を謳歌したって言ったけど、あれは間違いです。

 問題だらけの人生でした。というか、今も問題だらけです。

 

 拝啓

 前世のお父さん、お母さん。

 どうやら転生直前に見た後光のやべー爺さん顔がゲスかったのは気のせいではなかったようです。

 俺、あこがれの世界に────あべこべで転生しちゃったようです。

 何故にこうなったし。

 

…………

 

……

 

…

 

 13:1

 この数値が何を表すのか、察しのいい人は分かるだろう。

 これ、俺の生まれた世界においての…………男女比率だ。

 どっちがどの数値かは言わずもがな、男が“1”の方だ。

 この比率がどれだけヤバいのか想像するのは難しいかもしれないから、たとえ話をしよう。

 現在の日本の人口を少子化を無視して一億四千万だと仮定しよう。

 この内、一億三千万もの数が女性となり、残りの一千万が男性となる。

 ほら、この時点でヤバいのが伝わるだろ。

 もう圧倒的なまでに男が少ないのである。

 そのためか、あるいは神の悪戯か遊びなのかは定かではないが、価値観も前世に比べて大きく変わってしまっている。

 男が家を守り、女が外で働く。

 これが今の世の風潮だ。

 いやむしろ、家を守るどころか国や市町村総出で男を守る、というのが正しいかもしれない。

 この世界において男というのはものすごく貴重な存在として扱われていた。数が少ないことを筆頭とし、まるで無限の成層圏で扱われる女性レベルで男性が国から手厚く守られている。

 どれほどかと言えば満員電車の中、俺がテキトーな美女を指差して「この人痴漢です」と一言でも言ってしまったら、どんな後ろ盾があろうとも指された人は一生日の光を浴びることはないし、そうした冤罪対策で男性専用車両(十分毎に一台くる)もあり、女性は女性で両手で吊革を掴むスタイルが一般的だ。

 ホントにおかしな世界に転生したものだ。

 いや、ソードアート・オンラインにログインする前に気づいていたよ? この惨状についてさ。

 冒頭の今世においての両親の話だってボかしてしまったけど、家のお父さんがなよなよしてて専業主婦ならぬ専業主夫をしてたんだから。

 転生した当初は「うわぁ、家のお父さん女々しすぎ(笑)」としか思ってなかった。

 でも、日を過ぎる毎にお父さんどころか世界がおかしなことに気づかされたよ。

 テレビニュースを見たら女性アナウンサーが「本日のニュースです。男性に対し連続強漢を働いた女性が、本日遂に逮捕されました」というようなニュースを読むのが当たり前。漢字が間違いだろ、なんで漢なんだよ! 姦だろうが! と思ったのは多分、世界において俺一人だけだろうな。

 他にもコンビニへ行ったとき、店員は女性しかいない上に俺をガン見してきたし、成人誌のコーナーには前世だったら吐くのは間違いないであろう解放しきったガチムチの男が表紙の本しか置いておらず、極めつけは買い物をした後、お釣りを店員からもらう際に異様なまでにじっくりと手を握られた(その時の店員さんは美人だった)。

 それくらいこの世界において男は貴重であり、それ相応に扱われた。

 俺が両親から溺愛されたのは男である事が大きいのかもしれないが、妹(美人です)も俺と同じくらい溺愛されていたから、その可能性は低い。普通にあれが両親のスタンダードだろう。

 ともあれ、そんな世界でもソードアート・オンラインには変わり無いため、茅場晶彦はちゃんといた。

 稀代の天才“美男子”だったけど。

 ちなみに面倒だけど美女はこの世界だと美男子になる。覚えておくように。

 さて、そんなあべこべ世界のソードアート・オンラインだが、このような世界故なのだろうか、原作からかなり乖離しちゃっている。

 男女比率から察せる人は気づいちゃっただろう。

 ソードアート・オンラインだと、男女比は現実世界よりもひどい物になってしまっている。

 ソードアート・オンライン。その正式版の初回ロットの数──一万本。

 さーてここで簡単な算数の時間だよ~。一万を十四で割ったら幾つになるかな? はい、正解です。約七百十五となります。

 よって、このアインクラッドには男性が“七百十五”人以下しか存在しない!!

 だからこそのあの、キャットファイトならぬドッグファイトになるわけだ。

 それだけに女性──じゃなかった、男性を取り合う争いは醜いのだ。

 しかも悲しいことにソードアート・オンラインには現実の法はあまり機能しない上に警察もない。辛うじてハラスメントコードが一線を守ってくれるが、多少強引に迫ろうとも誰も咎めないのだ。だからこそ、女性はこれを好機としてハメをバカみたいに外し、狼となるのだ。

 茅場……いや、かやばーんよ! これが……これがお前が作りたかったのはこんなアインクラッドなのかよぉおおおおおおおおっ!!!!

 

 俺の悲痛な叫びに答えてくれるGMなんていなかった。

 それが、俺が生まれた世界、並びにアインクラッドの実情だ。

 もう一度言おう、何故にこうなったし。

 

………

 

……

 

…

 

「あぁ、今日もひどい目にあったもんだ」

 あのドッグファイトを命からがら──(いきなり三人が血迷って俺の服を脱がしにかかったためにハラスメントコード使用)──抜け出した俺は自分のホームのある層へ転移し、帰路についていた。

 現在の層は三九層。

 《メロディーフロンティア》と呼ばれる主街区だ。

 適度な気候と音楽が特徴なこの層は、街が音楽の都であり、中心の街では至る所でNPCによる演奏が毎日定期的に流れる。

 《メロディーフロンティア》は円を二分割したような構造をしており、この街の中心にある転移門から前後に延びる大きな道。この大きな道を中心線として左右で居住区と商業区に分けられる。

 転移門から出てきて右手の方に居住区が存在し、左手に商業区が並び立つ。

 そして大きな道、この道を真っ直ぐ進めば大きな建物が存在する。この建物はこの層を象徴する《コンサートホール》で、ここでは毎日シェイクスピアを筆頭とする多くの劇やオペラ、オーケストラの演奏を公演しており、NPCの演奏とはいえ本物と遜色のない物を見ることができることもあって、日々の争いを忘れることのできる俺の数少ない心のより所でもある。

 そしてこの《コンサートホール》の反対方向へ進めばこの層のフィールド、迷宮区に向かうことができる。

 音楽が象徴的なこの層は特にこれといった攻略における問題や強敵はおらず、僅か十日で突破してしまうほどに緩い層だ。

 転移門から続く道を《コンサートホール》へ向かって十分ほど直進した後、住民区の右へ曲がり、更に少し直進したところにある小さめの家、ここが俺のホームだ。

 中二病を前世で煩ったことからシェイクスピアにハマり、今世でも暇があれば劇を見たりしてたことや、娯楽の少ないアインクラッドにおいて劇をすぐに見ることのできるこの層に心引かれた俺は、当時持っていたレアアイテムと有り金を全てはたいてこの家を購入した。後先考えずに無一文になってしまったが、いい買い物をしたと今でも思っている。

「ただいまー」

 ドアを開け、中に入る。

 リビングへ向かうとそこには一人のプレイヤーがいた。

 これが赤の他人であれば即刻ハラスメントコードの使用も躊躇わないが、あいにくの知り合い、というか数少ない心を許せる“男プレイヤー”だ。

「お帰り、オルフェお兄様」

 黒色の少し長め髪。

 身体はどこか少女のようでありながらも肉質は男のそれで、しっかりとした印象を受ける。

 盾を装備せず、背中に背負う一本の黒色の直剣を片手で扱い戦う。

 そのプレイヤーの名は──キリト。

 この世界の本当の主人公だ。

 本来ならメインヒロインのアスナとちちくりあっている筈なのであるが、この世界だと出会い方を間違えたのか、俺の前世の価値観だとこの世界のキリトは俺に付き従う妹的存在だ。だからこそお姉様ならぬお兄様となっている。お兄様って呼び方、どっかの魔法がはびこる高校でしか存在しないと思ってたよ。まさか俺自身が呼ばれる日が来ようとは。

「なんだ、まだいたのか。てっきり最前線の層で宿を取ってるもんだと思ってたぜ」

「えぇー? だって、俺がいないと晩御飯適当に済ませちゃうでしょ、お兄様は。それと言葉づかい。また荒くなってる。少しは直そうよ」

 せやな、言葉づかい以外は全く持ってその通りや。未だに俺は一層から食べ慣れたパンを延々と食べ続けているため、キリトに対して反論ができない。仕方ないやん、食べ慣れたら癖になったんだもん。だがしかし、やっぱり言葉づかいは無理だわ。だって男だもん……あっ、この世界男だから荒いの駄目やん。あぁもう、面倒な世界だな!

 オルフェというのは俺のプレイヤーネーム。真琴という名前から琴、ハープ奏者のオルフェウスを連想し、そのオルフェウスから取ってオルフェ。前世で大ファンだった鉄○のオルフェンズからもモジっていたりもする。

 しかしキリトよ、攻略よりも俺の飯の心配か。原作の攻略大好きだったのを知ってるこっちの身としては何だかなぁ~ねぇ、と思ってしまう。

「キリトよぉ、何度も言うが、別に頼んだわけじゃない。だから、無理して俺の世話をしてくれなくても──」

「そんなことないよッ!!」

「わっつぁっ?!」

 俺の言葉に声を荒げるキリト。

 見れば手を思い切り握り締め、力強く俺を見つめていた。

「だってお兄様は、俺を身を挺して守ってくれた! 第一層の頃からずっと……それこそ俺がβテスターを守ろうと孤独になりかけた時だって俺の味方になって、キバオウさんやディアベルさん達に堂々と言い返してもくれた! だからこそ今でも俺を含めてβテスターの風当たりは悪くなってない! 俺はお兄様に感謝しかないし、憧れてるんだ! だからお世話してるの! 全然無理なんてしてないんだ! だから、そんなこと言わないでよ……お兄様」

「あっ、あぁはい。了解です。いつもありがとうございます」

 キリトの気迫と最後の方の消え入りそうな言葉に思わずたじろいでしまう。

 仕方ないやん、主人公の台詞だぜ、今の。どこのヒロインだと言いたい。まあもっとも、この世界だとキリトは正真正銘ヒロイン当たるからあながち間違いでもない。というか、腐った人が喜びそうなシチュエーションだなぁ。おぇっ、吐き気がしてくるぞぉ~。

 ちなみにキリトが言っていたことは半分は当たっている。

 というのも、第一層攻略時、俺は事前に知識や特典もあってそれなりに強いプレイヤーだった。原作通りにアスナとパーティーを組んだキリトたちとパーティーを組み、そんで攻略の際、一人でツッコんでいったディアベル(男)を特典を力に余裕で助け、キリトと共にボスを倒した。んで、キバオウ(男)がキリトや俺を糾弾し、βテスターへの風当たりが悪くなるのを察したキリトが悪役となろうとした──のを、俺が正論で負かしてやった。

 ふっふっふ、伊達に二度目の人生をしているわけではない。原作知識や男としての発言力を大いに活用して討論してやったぜ。結果は当然俺の大勝となって、見事キリトはビーターになることなく、βテスターは今でも全体的に悪い噂は立っていない。

 何故ここまでしたのかと言えば、ディアベルが生き残り、なおかつキリトがしたビーターといった軋轢を一切無くしたら攻略のスピードが上がるのでは? と思ったからだし、それに原作主人公に肩入れしたらヒロインの一人くらいおこぼれ貰えるのでは? というゲスな理由もあったからだ。だからこそ、キリトの言うことが半分当たっているというわけ。

 そしてそういうゲスな理由もあったからこそ、俺はキリトの献身的なお世話を未だに素直に受け入れにくいのだ。もっとも、俺が受け入れようと受け入れまいと、その一層での活躍からいろいろ噂が尾鰭やら胸鰭がついて周りのプレイヤーからもてはやされ、挙げ句の果てにキリトは俺を兄さんと慕うことになってしまったから、どうしようもないんだけどね! 完全に自業自得です。俺のバカ!!

 もう、現実がキツいよ。

「はぁ、なんか疲れた」

「大丈夫、お兄様?」

 心配そうに声をかけてくれ、近寄ってくるキリト。

 ごめんな、主人公らしいその優しさは買うが、やっぱり思考回路がこの世界とは180度違う俺にはキツすぎるんだ。特に男から真顔でお兄様は無理だよ…………前世でお姉様と慕われ困っていたビリビリの人の気持ちが今ならよくわかる。が、やってしまった物は仕方ない。いつかはゲームクリアして忘れよう。

「まあ気にしても今更だし、飯にしようか。だからキリト、もう少し離れてくれ、近い」

「あっ、ごめんお兄様。それとご飯はもう用意してあるよ。一緒に食べようね」

 屈託のない笑みを浮かべて俺の手を引いてテーブルに向かうキリト。だから近いって言っとるだろうが──あっ、もの凄くだらしない笑みを浮かべてらぁ。これって、ここの世間だと百合になるのかね? 俺はどうしてもそっち系にしか感じれない……うーん、ジレンマやな。

 ほんとにかやばーんよ、おまえの作りたかったアインクラッドってこんなんなの?

 だれか、答えを教えてくれ。

 

 当然、答えてくれるGMなんていなかった。

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