あべこべ?! ソードアート・オンライン 俺の受難な日々   作:あるく天然記念物

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ビックリついでに次の話を投稿です。
次は気長にお待ちを。


逆の立場

 朝。

 心地の良い音楽が耳に入り、目を覚ます。

 上半身を起こそうとしたところで、不意に違和感を感じた。

 視線を違和感の感じる方へ向けたら、そこには……腕を俺の腰あたりに巻き付けて寝ているキリトがいた。

「えへへぇ……オルフェお兄様ぁ」

 今回もだらしのない笑みを浮かべて。

 というか寝言どうにかしろや───って、あれ? おっかしいなぁ~、キリトのベッドは客間に用意してたんだけどなぁ~……どうしてここで寝ているの?!

 俺の買ったプレイヤーホームは2LDKの一階建て。そのために部屋は俺の部屋と友人が来たときようにと客間があり、キリトは基本的にそこに寝てもらっていたはず。しかも全財産をはたいて買った家なだけあり、基本的に部屋には解除が不可能に近い鍵がつけられている。そして俺は寝るときには部屋の鍵を閉めるタイプの人間だ。

 謎が深まっていくばかりだ。どうやればキリトがこのベッドに潜り込めるんだ? 考える俺、そして俺は遂にある一つの可能性に気が付いた。

 トレジャーハントスキルならワンチャンあるかも……はっ! こ、こやつ……カンストさせやがったな!!

 トレジャーハントスキルというのは文字通りトレジャーハントに関するスキルで、その中には鍵やトラップの仕掛けてある宝箱開けるスキルがあるり、カンストすれば全ての宝箱をあけることができる。

 全ての宝箱ということは、全ての鍵をあけられるということになる。

 つまりキリトは、俺の部屋の鍵を開けるためだけにスキルを一つカンストさせてしまったということに?!

 もういやだよ、こんなアインクラッド望んでねぇよ……おい。

 その執念か、欲望か、或いはどちらかを攻略に使ったらもうソードアート・オンラインクリアしてんじゃね? とか思いつつキリトの手をどかして起きる。

 朝から無駄な気力を使ってしまった。

 とりあえず俺は見なかったことにしよう。そうしないと精神がもたない。あぁ、胃薬が欲しいよ。

「さて、朝御飯でも作ろ」

 ベッドでの出来事をわすれるかのように部屋を出てリビングへ行き、キッチンに立つ。

 エプロンを着用し、人差し指を上から下にスライドしてアイテムウィンドウを表示させる。

「ん~《ビリーバードの卵》と《ネストポークのベーコン》があるから、簡単なベーコンエッグにするか」

 必要なアイテムを実体化させ、調理に取りかかる。と言っても、メインヒロインであったアスナが言っていたように、ソードアート・オンラインにおける料理はかなり簡略化されていて、やることなど殆どないに等しい。そのためか俺には物足りなく感じてしまう。基本的に個食な俺であるが、別に料理が嫌いというわけではない。むしろ趣味と言えるほどに得意な部類だ。お父さんから家事全般を教え込まれ、特に料理が楽しいと感じてしまい趣味に転じた形だ。だから暇があれば作ったりもしてて……気が付いたときには料理スキルもカンスト済みになってた(白目)。なんか、着々とこの世界に馴染んでしまっている気がしてならないぞ──んんっ! さーて、料理して忘れよう!

 心機一転、フライパンをコンロに置き、ベーコンと卵を入れたら後はメニューウィンドウを表示させて焼く時間を設定して終わり。ホントに物足りない料理である。

 後はサラダを用意したら朝食の準備は完了だ。

「今日は確かあの日だよな。飯食ったら行こうかな──っと」

 ぴぴっ、ぴぴっ。

 ベーコンエッグが焼ける音を聞きつつ、今日の予定を思いだしながらサラダを作っていたら設定時間終了のアラームが流れた。

 完成したベーコンエッグをお皿に移し、適当に用意したサラダと一緒にリビングへ持って行く。

 やはりと言うべきか、料理を運んだそのテーブルには既にパンと食器が揃っており、黒髪の少年が席に着いていた。

「お兄様、パンの準備はしておいたよ。それと朝ご飯の準備も起こしてくれたら俺がしたのに……まあ、お兄様のエプロン姿が堪能できたのである意味役得だったけど」

 俺はその言葉で損してるよ、主に胃痛的な何かでな。

 しかし、思惑はどうであれキリトが朝食の手伝いをしてくれたことには違いはないため、ありがとうと感謝の言葉を伝えておく。その時にキリトが「そんな、お兄様からありがとうだなんて」とかなんとか言って身悶えしていたのは見間違いだろう。

 そう思いながらキリトの用意してくれたパンにベーコンエッグを乗せて一口。

 もきゅもきゅ……うん。簡略化されていることから分かってはいたが、ソードアート・オンラインの料理はなんか味気ないな。どことなくインスタントな感じがしてならない。

「俺はお兄様の作ってくれた料理はソードアート・オンラインであろうとなかろうと至高だよ!」

「んなもん誰も聞いてねぇよ、つーか俺の思考を読むな」

 今日もキリトは通常稼働のようだ。

 

…………

 

……

 

 

 もはやいつも通りとなりつつある二人での朝食を終えて食器などの洗い物をすませた後、俺はホームを出てとある街に向けて出かけた。

 大抵はキリトと行動をともにする──勝手に着いてくる──のだが、今日は珍しく一人で行動できていた。

 というのも、最初俺について行きたそうにしていたが、何やらメッセージを受け取ったかと思えば「定例会議の日でした。急ぎ行ってきます」と言うやいなや風のように何処かへ行ってしまったのだ。

 一体全体何があったのやら。ただ、定例会議ということは何かしらの集まりだと推察できてしまうのだが、その集まりの正体を知ったら胃がさらなる追い打ちを受けると気がしてならないため気にしないことにする。

 ホームをでて数分。転移門へと到着し、目的の街へと向かう。

「転移、《リンダース》」

 全身が淡い水色の光へと包まれると同時に、視界がホワイトアウトする。

 

 だんだんと目の前が白い色から変化していく。

 数秒後、目の前には《メロディーフロンティア》とはまた違った趣のある街並みが広がった。

 四十八層主街区《リンダース》。

 この街に目的地が存在する。

 転移門から歩いて十数分。ようやく見慣れた水車が視界に入ってきた。

 俺のホームと同じようにあまり大きくないが、水車が特徴的な建物。

 《リズベット武具店》

 それが俺の目的地であり、目の前の建物の名だ。

 本来であればキリトが二刀流でつかう《エリュシデータ》の対となる名剣《ダークリパルサー》が生まれた店であり、原作ヒロインの一人、リズベットが運営する施設だ。

 店のドアを開けて中へはいる。

「はーい、いらっしゃいま……せ……」

 入ると同時に言われるお店では定例文と化してる挨拶が途中で途切れた。

 武具店にはカウンターに一人のプレイヤーが立っている。

 ウェイトレスに近いピンク色の服装を身につけ、ゆるふわなこれまた服装と同じようなピンク色のゆるふわなショートヘアが特徴的。

 こちらを唖然とした顔で見つめており、俺は片腕を軽く上げ、そのプレイヤーに向けて挨拶を返す。

「よっ、来たぜ、リズベット」

「──えっ?! オッ、オルフェ?! ひひ、一人で……えっ、えぇっ?! ちょっ──えぇー!!」

 この俺の登場程度でヤバいほど取り乱しているのが原作ヒロインの一人、リズベット本人だ。というか、リズベット武具店にはリズベット一人しか働いてないから絶対に本人に会える。

 リズベットと俺の出会いについてだが……まあ簡単に言うなら、武器を強化してもらうにはリズベットが一番と思い、店がオープンしたと同時に会いに行った、ということになる。それからは男と言うこともあってどぎまぎされながらも、原作キャラと親密になりたいという下心ありまくりな俺は自分から色々話しかけ、リズベットとフレンドになったのである。

「あ………あぁ───ッ!!」

「おいおい、俺が一人できただけで驚きすぎだろ。おい、大丈夫か?」

 確かにいつもは一人ではない。頼もしいセ⚪ム(キリト)が強制で同伴だ。

 今回初めて一人で訪ねて来たわけだが、これは異常なまでな驚き方である。なんか、心配になってきた。

 顔を真っ赤にして口をぱくぱくと金魚のように開けて放心しかけたリズベットに、俺は近づいて軽く背中をさすってやる。

 そのかいもあって少しは落ち着いたリズベットは顔を赤らめたまま咳払いを二回ほどした後、挨拶を改めて返してきた。

「い、いらっしゃいませ。というか、いきなり来ないでよ! ビックリしたじゃない! というか、ちち、近い! 近いってば!!」

「ああ、わり」

 リズベットに言われて背中をさすっていた手を戻し、少し距離を開ける。

 ついついあべこべなのを忘れて彼女の背中をさすってしまったが、これって結構ヤバかったりする。だって、さっき俺がしたのを前世の価値観に変えたら、女の子が「大丈夫?」って言いながら優しく異性の背中をさすってあげてるというシチュエーションになるからだ。全く持ってややこしすぎるわ。

 そんなハプングにみまわれたためだろう、未だにリズベットの顔は赤い。トマトと同じくらいに赤い。マジで誰得だ。

「えっと……とりあえず落ちついたか?」

「えっえぇ。なんとかね」

 どうにか落ち着いてくれたようだ。

「それと、あっ、ありがとうね、背中さすってくれて。でもオルフェ、さすがに無防備すぎるわよ。わ、私だったからよかったものの他の女の人だったら……お、襲われていたわよ?」

「そうだな、反論したいのに材料がないのがつらいな」

 リズベットの言うとおり、これがリズベットではない人であったら俺は何度使ったか覚えてないハラスメントコードを使用する結果になっていただろう。それだけこの世界においての女の子は狼なのだ。

 しかし、目の前の女の子はそうじゃないのは知っているから安心だ。

「でも、リズベットは大丈夫だろ? それにかわいい女の子が取り乱したら心配するのは当たり前だろ」

「かわっ?! っ───?! だ、だからっ、そういうことを言うのが無防備なんだって!! …………だいたい、私にだって我慢の限界ってものが」

「えっ、なに?」

「う、うぅん! 何でもない!!」

 万能スキル、えっ、何だって(難聴気味)? をとっさに使ってしまった。というか、えっ? 難聴気味な主人公スキルで受け流したけども、バッチリ聞こえてたからね?! 嘘だろおい、リズベットもドッグファイト軍団と同じなのか? えぇ、それ困る。いや、事にいたっても嬉しさしかわいてこない自分に困る。ついでに腹が立つ。その、俺も下心マックスで転生したけど……せめて初体験ぐらいは相思相愛がいい……ってぇ、俺何言っとるねん!!

「えっと…………あぁ! と、ところでオルフェは今日何をしに来たの?」

「あっあぁ、言い忘れていたな」

 先ほどの会話を断ち切る勢いでリズベットが話題を振ってきた。

 俺としても渡り船であったためその話題に乗る。

 これ以上ボロを出すのは俺の操的にもヤバかったからな!

「今日は武器を受け取りに来たんだよ。つーか、今日来いって言ったのはリズベットだろ?」

「武器? …………あぁ、そう言えばそうだった」

「忘れてたのか?」

「そそ、そんな訳ないじゃない! 武具店としてあり得ないわ!」

 そういって胸を張るリズベット。しかし、その目は俺ではなく明後日の方に向けられていた。

「はぁ……。で、終わってるのか?」

「だからちゃんとしてるって! ちょっと待ってなさい」

 ずかずかという効果音が出てきそうな勢いで店の奥へ消えていった。

 どうやら納期は忘れていたようだが、仕事は覚えていたようだ。安心である。

 十秒か、二十秒か、もしかしたらそれ以上待ったのかもしれない。

 ガリガリ、ガリガリガリ──!!

 まるで黒板を爪で引っ掻いたかのような不協和音を奏でながら、リズベットは刃を上に向けて引きずるようにその武器を持ってきた。

「全く、男の子なのにどうしてこんなに馬鹿でかい剣が必要なのよ──っと! あぁー重かった~」

 ドスンッ! と重厚な音と上げながらカウンターに載せられた剣。

 その大きさはリズベットとほぼ同じ。

 大剣。

 そう部類されるこの剣こそ、俺がリズベットに依頼した武器であり、攻略において唯一無二の相棒の《バスターソード》だ。

 あっ、いきなりで悪いが俺が爺さんから受け取ったオマケ要素について教えておこう。もっとも《バスターソード》の時点で察せるようにF○7の○ラウドの能力がその特典だ。そのため現実世界の俺の姿はまんま○ラウドだ。

 ○ラウドの持つ驚異的な身体的能力の再現だけがソードアート・オンラインにおいて発揮され、リミットブレイクの技の数々はユニークスキル《剛剣》として発動することができる。ただ、原作同様大剣を自由自在に扱う性質上ステータスは筋力に極振りする結果になってしまった。しかし、そこはユニークスキルの凄いところ、敏捷を犠牲にした分の戦闘力は保証されている。

 しかし、予想外だったのは○ラウドの容姿であべこべの世界に来てしまったことだ。俺にとってのイケメンである○ラウドはこの世界にとっては美女として扱われる……つまりはコスプレ○イトニングさんですね! 分かります! …………嬉しくねぇよ。

 とまぁ、なんちゃって○ラウドの俺は一層から爺さんの粋な計らいで手にしていた《バスターソード》を扱い、今の今までずっと強化し続けながら闘い続け、今回で通算八回目の強化をリズベットにお願いしていたというわけだ。

「さぁ、持ってみてよ」

「りょーかい。よっと……うーむ────ッハァッ!!」

 鍛え終わった《バスターソード》を片手に持ち、軽く地面に向けて斜めに振り下ろす。

 ブォン! という重厚でありながらも風を両断するかのような鋭利な音を店内に響かせる。

 この一振りでわかった。また、強くなったみたいだな、相棒。

「どう? 今回の出来は?」

 《バスターソード》を背中に背負い、俺率直な気持ちを伝えた。

「いい仕事だ。感謝しか言葉にできないな」

「へへっ、どういたしまして」

 リズベットが満面の笑みを浮かべて喜ぶ。その様子から今回の仕事にどれだけ力を入れていたのかがわかる。大変な仕事を押しつけてしまったな。武器の強化は回数を重ねる毎に成功率を下がっていき、八回目ともなれば異世界の境地だっただろう。それでも成し遂げるとは、さすがは原作でも随一だった鍛冶の腕だ。

 

 この後の俺は、相棒が強くなったことに喜びすぎて、どこかテンションがおかしかったのだろう。

 

「本当に最高だ。なんか、代金とは別にお礼がしたい気分だ」

「そんな、大げさだって」

「いやいや、謙遜するなって、マジで感謝してるんだから!」

 

 こんな事を言ってしまったのだから。

 

「俺ができることなら何でもするよ!」

「────え?」

 

 空気が凍った。

 

「なん……でも?」

「あぁ! 俺にできることならなんだって──」

 「するさ」と言う前に俺の身体は壁に押しつけられた。

 壁どん、と言うヤツであろうか。

 私だけを見てとばかりにリズベットの顔が目と鼻の先にある。少しでも顔を傾けたらキスでもできそうな距離だ。互いの吐息をかんじてしまう。そして退路をふさぐようにリズベットの手が俺の顔の横につけられている。

 はて? 一体何が? どうして俺はリズベットから壁に押しつけられているんだ? というか壁どんだと?!

「オルフェ……あんたさぁ、わざとやってるの?」

「え?」

 どこか氷をイメージさせる冷たい声。その声を発していたのは目の前のリズベットであった。

 その声の変化に対して驚きが大きく、今一状況が掴めない。

「あ、あの……そのぉ……」

「私も女の子なんだよ? それなのにオルフェは躊躇わずにかわいいとか言ってくるし、挙げ句の果てにはお礼に“何でもする”ってさ。いくら私でも──我慢の限界だよ」

 リズベットの顔は俺が突然声をかけてたときと同じぐらいに朱くなっていた。だが、あのときとは違ってリズベットはあわてる様子もなく、目に至っては真剣な眼差しそのものだ。なんか、決意した顔をしてらっしゃる。

 アカン、これはガチでヤバいヤツや。

 どうしてこうなったのかは、深く考えてみたら直ぐに気が付いた。

 先ほど俺の言った「何でもする」と言う言葉。

 これは麻薬にも等しい悪魔の囁き、絶対にこの世界で男性が女性に対して言ってはならない禁句ワードスト一位であった!!

 この世界は何度も言うが女性は淑女ではなく狼。俺がしでかしたのは、自身を調味料で味付けして「食べてください」と狼たちに言っているようなものである!

 ということは…………しまったぁ! 原作キャラであることや、相棒の進化で浮かれすぎたぁぁあぁっ!!! かつてない程の危機を自らて招いてしまったぁぁあっ!!!!!

「ねぇ、オルフェ。お礼に欲しいものがあるんだけど、くれるんだよね?」

「えっ?! えぇっとぉ……」

「さっき、“自分にできるのは何でも”ってさ」

 すでにキスしてしまいそうな距離にも関わらず近づいてくるリズベットの顔。

 ちょっ、ちょっとまってぇぇ!! アカン……アカンて!! さすがにこれ以上は!! これ以上はぁッ!!

「だったら──」

 俺とリズベットの距離が縮まっていく。

「私は──」

 三センチ。

「オルフェが──」

 二センチ。

「──欲しいな」

 一センチ。

 こ、心の準備がぁぁぁっ!!!!

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