白騎士物語 StrikerS   作:新たなる愚者

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第10章 訓練その2

 「ここは・・・」

 

 クロードは、暗闇にいた。

 

 『また来たのか、我が器よ・・・』

 

 そして、暗闇から聞こえる声・・・その声を聞くとクロードは、強烈な頭痛に襲われる。

 

 「ぐっ!・・・」

 

 『なぜお前に我が声が届かぬ・・・』

 

 「うる・・・せえ・・・」

 

 頭痛がひどくなるに連れ、謎の映像がクロードの前に映し出される・・・

 

 (何だっ!?これは・・・戦場?)

 

 クロードが見ているのは、業火に焼かれる戦場・・・その中に一人の青年が立っていた・・・

 

 (これは・・・俺?)

 

 そこにいたのは、紛れもなくクロードであった。

 

 『フン、我が記憶だけは、お前に届いておるようだの・・・』

 

 「だ、誰なんだ・・・一体俺に何の用があるんだ!」

 

 『・・・・・・・・』

 

 「何を言ってるんだよ!」

 

 『未だにわが声が届かぬか・・・なれば、用はない、早々に立ち去るが良い・・・』

 

 「待て!お前は、一体誰なんだ!・・・ぐっ!」

 

 言葉を発すれば、頭痛がさらにひどくなる。ひどくなるに連れて、クロードの意識がだんだんと薄れる・・・

 

 「クソッ!・・・」

 

 そのそのまま意識が途切れる・・・

 

 ガバッ!

 

 「はぁ、はぁ、はぁっ・・・」

 

 気がつくとクロードは、白い寝室に寝ていた。

 

 「ここは・・・夢じゃねえんだな・・・」

 

 (クソッ!どうなってんだ!訳がわからねえ!)

 

 先日に続いての状況に悪態をつくクロード・・・

 

コンコン・・・

 

 その時、クロードの部屋の扉がノックされる。

 

 (こんな朝早くから誰だ?)

 

 クロードの世界には、時間の概念がないので時刻より外の明るさで判断している。だが、外を見てもまだ日が登ってそんなにたってない様子なので、クロードが警戒する。

 

 「誰だ?」

 

 『おはようございます!エリオです!』

 

 (エリオか・・・そういえば約束してたな)

 

 「ああ、入っていいぞ~」

 

 ガチャン

 

 扉が開いてエリオが入ってくる。

 

 「おはようございます!クロードさん!」

 

 「おお、おはよう」

 

 挨拶を返すクロードだが、エリオが何かに気づく・・・

 

 「大丈夫ですか?顔色が悪いみたいですが・・・」

 

 「いや、大丈夫だ、少し悪い夢をな・・・」

 

 「悪い夢ですか?」

 

 「ああ、別に体調に問題はない、じゃあ、行くか?」

 

 「えっ?」

 

 「えっ?じゃねえよ、するんだろ?訓練」

 

 「はっ!はい!お願いしますっ!」

 

 そう言って、エリオは深くおじぎをする。

 

 「では、早速準備してきますね!」

 

 そのまま部屋を出て行くエリオ・・・

 

 「さて、俺も準備しますかね・・・ん?」

 

 クロードがベッドを出ようとした時、一瞬強い魔力を感じるが、すぐにその反応は消えた。

 

 (何だったんだ・・・)

 

 おかしいなぁと首を傾げるクロード

 

 「ま、何かの勘違いだろう・・・っと、急がねえと・・・」

 

 着替えようと部屋にかけてあるアルビオンロリカを見るクロード。

 

 「ちょっと気分転換でもするか・・・」

 

 そうつぶやいて、部屋の真中に移動するクロード。すると、換装魔法を紡ぐ・・・

 

 「換装・<シュートガープセット!>」

 

 そう唱えると、クロードの着ている服が発光して新たな服が装備される。こちらも、白をベースにしたつくりで、動きやすさを重視したガープセットである。

 

 「さて、行きますかね」

 

 そのまま、部屋を出るクロードだった・・・

 

 

 

 「ほんまか!クロノくん!」

 

 所変わってここは、機動6課部隊長室、そこで驚きの声を上げるのは、勿論はやて・・・

 

 「クロード君の世界の人達が見つかったってホンマなん?」

 

 空中に映るディスプレイに向かって驚きの声を上げるはやて。

 

 『ああ、本当だ、今から本局に移動してもらって、色々と手続きをしてもらうことになるが、5日ほどでそちらに送ることが出来るだろう』

 

 その報告を受け、嬉しそうにするはやて。

 

 「分かった、じゃあ早速クロードくんにも教えてあげなあかんね」

 

 『ああ、たのんだ・・・それとだが、そのクロードと言う青年に早速上層部が、難色を示しだしたみたいだぞ』

 

 それを聞いたはやてが、少しの間を置いて推理する。

 

 「上層部っちゅうことは、レジアス中将?」

 

 『正解だ、ゲイズ中将が「保護した人間をこちらに引き渡せ」だそうだ・・・』

 

 「なんで、クロードくんをレジアス中将に渡さなアカンの?」

 

 『そのあたりは、僕でもわからないが、恐らくクロードと言う男が、そちらの新メンバーだとでも勘違いしてるんじゃないか?』

 

 「なるほどなぁ・・・」

 

 はやてが、「はぁ」と溜息をつきながら、腕を組んで考える・・・

 

 『でも、そのあたりの心配はないと思う・・・』

 

 「えっ?なんでなん?クロノくん」

 

 はやてが、不思議そうな顔をする。

 

 『実は、そちらに向けて、ヴェロッサを向かわせてある』

 

 「えっ!アコース査察官を?」

 

 『ああ、ヴェロッサなら査察官として文句ない働きをする。彼なら、局での評価は優秀だ。だからヴェロッサにこの件を調査してもらい、上層部への報告をしてもらおうと思ってる』

 

 「なるほど・・・」

 

 『じゃあ、僕はこれから、本局に手続きの申請などがあるから、そろそろ通信を切るぞ』

 

 「うん、わかった」

 

 『恐らく、明日あたりには、ヴェロッサがそちらに向かうだろう。僕も明後日そちらに一度向かおうと思ってる』

 

 「うん、待ってるな」

 

 『じゃあ、僕は、これで・・・』

 

 「分かった、じゃあな、クロノくん」

 

 そのまま、通信を切断して、席をたつはやて。その時、部屋の扉が開く・・・

 

 ガチャン

 

 「はやてちゃん、ただいまです~」

 

 扉から入ってきたのは、リインだった。

 

 「おかえり、リインフォース、検査?」

 

 「はいです、ハヤテちゃんは、どこか行くですか?」

 

 「うん、ちょっとクロードくんに用事があってな」

 

 「そうですか、私もいいですか?」

 

 「ええよ、じゃあ一緒に行こ」

 

 「はいです」

 

 そのままはやてとリインは、部屋を出て行った・・・

 

 

 

 タッタッタッ!

 

 エリオは、クロードとの訓練に胸を踊らせながら、体を温めていた。

 

 「おっ!やってるな!」

 

 「クロードさん!」

 

 エリオがクロードのもとに来ると、あることに気づく・・・

 

 「今日は違う服なんですね」

 

 「ああ、訓練だからな、俺も動きやすい服装だ」

 

 「なるほど・・・」

 

 一度頷くとエリオは、改めて姿勢を正す。

 

 「今日から、よろしくお願いしますっ!」

 

 そして、深く礼をする。

 

 「そんな硬っ苦しい挨拶はいいよ、俺が勝手に教えるだけだからな。だが、お前の強くなることに対するその姿勢は、お前のいいとこだ」

 

 「はいっ!ありがとうございます!クロードさん!」

 

 「でも、今から訓練して、この後の訓練に支障はないのか?」

 

 クロードは、この訓練よりもこの後のなのはの訓練に気を回した。それは、クロード自身の経験で、自主訓練で疲れては、戦闘の要である『集団訓練』に於いて、全力を発揮できないからである。

 

 「それなら、大丈夫です!僕自身もそれには、気を使ってやってますから」

 

 「じゃあ、ひとつだけ、覚えていてくれ」

 

 「はいっ!」

 

 クロードに向かって真剣な眼差しを向けるエリオ。

 

 「『ひとりだけで強くはなれない』これだけ覚えててくれ」

 

 「ひとりだけで強くはなれない」

 

 エリオは、自分の中に吸い込むように繰り返す。

 

 「よし!じゃあ始めっか!」

 

 「はいっ!」

 

 「じゃあ、まずは基礎からだが・・・まずは、お前の最大値を知りたい」

 

 「最大値ですか?」

 

 「ああ、体力・魔力は勿論、今のお前の限界点だな」

 

 「限界点・・・ですか?」

 

 「そうだ、今の自分の限界を知ることでその範囲ではなく、それを広げる訓練をしてみようと思ってる」

 

 「限界を広げる・・・ですか」

 

 「ああ、まずはそれでお前の基礎値を上げて行く」

 

 「なるほど・・・ですが基礎の訓練では、なのはさんの訓練でしていますが・・・」

 

 それを聞いたクロードは、腕を組む・・・

 

 「なるほど・・・」

 

 そしてエリオを観察するように見やる。

 

 「じゃあ、いっちょ模擬戦でも俺とやってみるか!」

 

 「えっ!ほ!本当ですか!」

 

 エリオが、目を見開いて驚く!だが、それも無理はない、先日クロードの『変身』を見て模擬戦しようなんて思う人間は、どこを探してもいないだろう。

 

 「ああ、気にするな、白騎士で戦うわけじゃねーからさ」

 

 「で、ですよね・・・」

 

 それを聞いて一気に安心するエリオ

 

 「だが、安心にはまだ早いぞ」

 

 「はい?」

 

 「白騎士で戦わないってことは、俺がお前を全力で叩きのめすってことだ。大丈夫、手加減して殺るよ」

 

 「クロードさん!文字がちがぁぁぁう!」

 

 「じゃあ、行くぜ!<ライトスピア!>」

 

 クロードが紡ぐと、右手にスタンダードスピアが出てくる。すると、すかさずエリオの脇腹に向かって柄を叩きつける!

 

 ドゴンッ!

 

 「グッ!」

 

 ズシャァァァァァッ!

 

 いきなりのクロードの攻撃に耐え切れず吹き飛ぶエリオ!そのまま地面に突っ伏せる!

 

 「がはっ!はっ!」

 

 息が詰まるエリオ!・・・だが、クロードは容赦しない・・・

 

 「どうした?手加減したんだ、立てるだろ」

 

 「くっ!」

 

 ググ・・・

 

 なんとか立ち上がるエリオ。

 

 「早く装備を出すんだ!俺が待つと思ったか?」

 

 「は、はいっ!ストラーダ!」

 

 エリオがセットアップを済ませ、クロードの前に立つ。

 

 「いいか、戦いに於いて、敵の前に立つってことは、敵も、お前も油断はできないってことだ。覚えとけ!」

 

 「は、はいっ!」

 

 「今の一撃は、お前の油断が生んだスキだ・・・わかるか?」

 

 「はいっ!」

 

 そのままクロードがライトスピアを構える。

 

 「それじゃあ、朝飯までにお前を虫の息にする!」

 

 「えっ!」

 

 「覚悟は出来てるか・・・行くぞっ!」

 

 「は、はいっ!」

 

 ダンッ!・・・シュンッ!

 

 クロードは、エリオに向かって突っ込み、スピアを振り下ろす!

 

 ガキィィィンッ!

 

 エリオは、かろうじてクロードのスピアを受け止める!

 

 「くっ!」

 

 「いいぞ、良い反応だ・・・だがっ!」

 

 シュッ!・・・ドゴッ!

 

 エリオが受け止めたスピアを返して石突きでエリオの脇腹を横殴りにする!

 

 「ぅぐっ!」

 

 ズシャァァァァァッ!

 

 クロードからの一撃を受けてエリオが吹き飛ばされる!だが、クロードはそれを見てもなお、容赦はしない。

 

 「よく相手を見るんだ!」

 

 「はっ、はい!」

 

 バッ!

 

 言葉を受けて立ち上がるエリオ・・・

 

 ダン!・・・ドゴッ!

 

 「ぐっ!」

 

 立ち上がりざまにさらなる一撃を打ち込まれるエリオ!

 

 「まだ甘い!常に相手を見て、スキを見せるな!」

 

 「はいっ!」

 

 クロードの訓練は、なのはの訓練や、ヴィータの訓練の比ではなかった。だが、クロードはまるで何かを祈るようにエリオを攻め続ける・・・

 

 

 

 「クロード君何処やろか?」

 

 「中々みつかりませんですねぇ」

 

 部隊長室を出たはやてとリインは、クロードを探していた・・・と、そこになのはとフェイトがやってくる。

 

 「おはよう、はやてちゃん、リイン」

 

 「おはよう、はやて、リイン」

 

 「おはよう、なはちゃん、フェイトちゃん」

 

 「おはようございますです」

 

 「どうしたの?さっきから行ったり来たり」

 

 なのはとフェイトは、少し前からはやてを見つけていたが、謎の行動をしていたのでしばらく様子を見ていた。

 

 「いやな、クロード君に用事があるんやけど、これがなかなか見つからんのや」

 

 「クロード君?」

 

 「何かあったの?」

 

 こんな朝早くから探すので疑問に思う二人。

 

 「それがな、なんと!クロード君の世界の人達が見つかったんや!」

 

 「えっ!クロード君の?」

 

 「本当なの?はやてちゃん」

 

 「ホンマや、先刻クロノくんから連絡が来たんや」

 

 「クロノくん?どうしてクロノくんから?」

 

 なのはは、昨日のはやてとフェイトの話を知らないのでさっぱりわかってない。

 

 「はやては、昨日なのはの訓練の時にお兄ちゃんに連絡して、クロード君の世界の人達を探してもらってたんだよ」

 

 「なるほど、だからクロノくん」

 

 「まあ、そんなとこや」

 

 はやてとなのは達が話していると、リインが「音」に気づく。

 

 「はやてちゃん」

 

 「ん、どないしたん?リイン」

 

 「何か聞こえませんか?」

 

 『・・・・・』

 

 はやて、なのは、フェイトは、リインが聞こえたという「音」を探るために耳をすます・・・すると近くにある広場の方から確かに音が聞こえた。

 

 バシィィィン!・・・ズシャァァァァァッ!・・・ガキィィィンッ!

 

 「何の音やろか?」

 

 「エリオかな?朝練とかよくやってるから」

 

 「エリオ?だけど、この音は武器同士がぶつかる音だよ?」

 

 「シグナムがエリオの練習相手になっているかもですよ」

 

 「皆、行ってみよ」

 

 『うん』

 

 なのはを先頭に音がする現場に行ってみる・・・すると!そこには、ボロボロになったエリオと槍を構えたクロードがいた。

 

 「エリオ!」

 

 ボロボロのエリオを見てかけ出すフェイト!

 

 「ん?フェイトじゃねえか」

 

 「クロード君!何かあったの!?」

 

 ボロボロのエリオを抱えながらクロードに問いかけるフェイト。

 

 そこになのはたちが駆けつける。

 

 「フェイトちゃん!どうしたの?・・・エリオ!」

 

 「敵襲か!」

 

 「エリオどうしたですか!」

 

 すると、フェイトの腕の中にいたエリオが声を出す。

 

 「フェ、フェイト・・さん?」

 

 「エリオ、ここにいるよ」

 

 「クロード君、何があったの?」

 

 なのはがクロードに問いかけるとクロードは、何もなかった顔をして

 

 「何も無いぞ」

 

 「なにもって、エリオはこんなにぼろぼろなのに?」

 

 フェイトが聞き返すと、エリオが口を開く・・・

 

 「違います・・・ッ!」

 

 「エリオ、違うって、何が違うの?」

 

 フェイトが困惑する。

 

 「僕が、クロードさんに訓練の指導をお願いしたんですよ」

 

 『し、指導!?』

 

 四人が驚く!

 

 「どういう事?クロード君」

 

 フェイトがクロードに問いかける。

 

 「ああ、一応エリオの限界点が見たくてな・・・」

 

 「限界って、これじゃあ、訓練じゃなくて唯の暴力だよっ!」

 

 フェイトが堪らず声を荒げる。

 

 「大丈夫だ、これがあるからな」

 

 そう言ってクロードは、懐から小さな小瓶を2つ取り出す。

 

 「クロード君、それは?」

 

 「ん?これは、<マナポーションⅣ>と<ヒールポーションⅣ>だ」

 

 そう言ってクロードがフェイトの傍に行ってエリオの口に二つを流し込む。

 

 「飲め、エリオ」

 

 「うっ!ぐっ!」

 

 コク・・・

 

 小さく喉を鳴らしてエリオが飲むとすぐに効果が現れる。

 

 パァァァァッ!

 

 エリオの体が光りだし、体にあった傷などがどんどん消えて行く。

 

 「あれ?痛くない」

 

 そのままフェイトの腕を離れるエリオ。

 

 「ちょっと、エリオ?大丈夫なの?」

 

 タッ!タッ!タッ!

 

 軽く飛び跳ねて体の様子を確認するエリオ・・・

 

 「・・・だ、大丈夫です」

 

 その様子を見て、本当に大丈夫なのを確認した四人が驚く・・・

 

 「嘘・・・」

 

 「そんなまさか・・・」

 

 「す、すごいです・・・」

 

 「ほ、本当に大丈夫なの?エリオ」

 

 「はっ、はい!何だか、魔力まで完全に回復してます!」

 

 何度も体を動かして確かめるエリオ。

 

 「まあ、これがなけりゃこんなハードな鍛錬なんてしねえよ」

 

 クロードが軽く言うが、フェイトが注意する。

 

 「だけど、クロード君!エリオには、まだこの後に皆との訓練が残ってるんだよ!こんなコトしてたらエリオの体が持たなくなるよ!」

 

 それを聞いたクロードは、少し罪悪感を覚えるが、冷静に応答する。

 

 「悪ぃ・・・だが、コイツの強くなろうとする想いを感じたら、少し嬉しくなってな・・・」

 

 あまりいい雰囲気ではないと判断したなのはとはやて、リインが話しかける。

 

 「えっと、そうだ!朝御飯食べに行こう」

 

 「そうやな、エリオも訓練してお腹へったろ?ささ、食堂行こうか」

 

 「そうですね、行きましょう!」

 

 「は、はい!僕、もうお腹ぺこぺこです!」

 

 「う、うん・・・」

 

 「お、おう・・・」

 

 そのまま広場を離れて、食堂に向かう六人だった・・・

 

 

 

 薄暗い廊下・・・その壁には、番号を振り分けられた生体カプセルが順番に先の見えない彼方まで並べられている。そのカプセルの中には、大小様々な人間が浸かっており、今にも動き出しそうだが、その体は魂を抜かれたように動かない。

 

 コツコツコツ・・・

 

 その廊下を白衣を着た男が歩いて行く・・・

 

 コツ・・・コツ・・・コッ!

 

 男が立ち止まると、そこは広い半球状のドームになっていた。

 

 ヒィン・・・

 

 立ち止まった男の前に大きなディスプレイが空中に映しだされる。

 

 『ジェイル殿、調子は如何かな?』

 

 そのディスプレイに映るのは・・・レダムであった。

 

 「これは、これは・・・レダム卿・・・」

 

 ジェイルと呼ばれた男は、ディスプレイに映るレダムに向かって優雅に一礼。

 

 『兵士達は、どうですかな?』

 

 レダムがジェイルに向かってほくそ笑みながら問いかける。

 

 「あなたの兵士達には、感服しました、そして、この技術・・・」

 

 ジェイルが片腕をあげると、その手に青く光るカードが現れる。

 

 『フフフ・・・それはお喜びいただけて、何より・・・』

 

 相変わらず、耳にかかるような笑いを上げながらレダムは言う。

 

 『だが、ジェイル殿、その力を侮っては、いけませぬぞ・・・人には、過ぎた力、くれぐれもお気をつけて・・・』

 

 「フフ・・・分かっています」

 

 そして、レダムの声音が変わる・・・

 

 『我らの技術も良いですが、「例」の件は、お忘れなく・・・』

 

 「分かっております。もうじき、貴方のもとへと届くでしょう」

 

 『それはそれは、仕事が早い・・・』

 

 「ありがとうございます」

 

 ジェイルがニヤリと笑う。

 

 『では、私はこれで・・・』

 

 「はい・・・」

 

 ジェイルが応答すると、ディスプレイが消える。

 

 「フフ・・・」

 

 ディスプレイが消えた静寂を響かせるのは、ジェイルの笑い声。

 

 「これで、私の計画も・・・」

 

 その時、ジェイルの前に再びディスプレイが映しだされる。

 

 『ゼストとルーテシア、活動を再開しました・・・』

 

 そこには、薄紫色の長い髪をした女性が写っていた。

 

 「フッ・・・クライアントからの指示は?」

 

 その女性からの報告を受け取ったジェイルが問いかける。

 

 『彼らに無断での支援や協力は、なるべく控えるようにとメッセージが入っております』

 

 「自律行動を開始したガジェットドローンは、私の完全制御下と言うわけじゃないんだ、勝手にレリックのもとに集まるのは、多めに見てほしいね・・・」

 

 『お伝えしておきます』

 

 「彼らが動くなら、ゆっくり観察させてもらうとするよ・・・彼らもまた、貴重で大切なレリックウエポンの実験体なのだからな・・・」

 

 そして、通信が切れる・・・

 

 

 

 ブゥゥゥゥン・・・・・

 

 夜の街を車が行き来する中、歩道の方には大男と小さな少女が肩を並べながら歩いている。途中、少女が振り向くと男が、先を急ぐように促す・・・その少女が男のコートを小さく握ると、その手には、紫色の水晶が光っていた・・・

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