白騎士物語 StrikerS   作:新たなる愚者

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第13章 強さ

 クロードの膨大な魔力の奔流に動揺するヴィータ!

 

 「いくぞ」

 

 クロードが一歩目を踏み出した瞬間!クロードは、ヴィータの目の前にいた。

 

 「なっ!」

 

 「顎砕き!」

 

 クロードは、ダークストーカーを横に倒してヴィータを下からかち上げる!

 

 ブアッ!

 

 「うわっ!」

 

 そのまま、上空に打ち上げられるヴィータ!

 

 「クッ!」

 

 そのまま上空で体勢を立て直すヴィータ・・・だが、そのヴィータの後ろには、すでにクロードの影があった!

 

 「悪ぃが、終わりだ」

 

 「!!!」

 

 「ヘビースタンプ!」

 

 ガンッ!・ドシャッ!

 

 ヴィータがクロードに気づいた瞬間!クロードの振りかざしたダークストーカーがヴィータを地面に打ち付けた。

 

 「くっ!あっ!」

 

 地面に大きなクレーターを作り、その真ん中でもがくヴィータ・・・

 

 タンッ!

 

 「ヴィータ!」

 

 クロードが地面に降り立ってヴィータのもとに向かう。

 

 「大丈夫か!?」

 

 「クッ!」

 

 声をかけるが、ヴィータの返事がない・・・

 

 (やっべぇ・・・完全にやりすぎた・・・)

 

 その時、何処からか人の声が聞こえた。

 

 「どうした!」

 

 「あっ!」

 

 「ん?クロードか・・・ヴィータ!!」

 

 そこに現れたのは、シグナムだった。

 

 「クロード!どういう事だ!」

 

 「いや、これは、その・・・」

 

 クロードが、返答にしどろもどろしていた時、ヴィータが目を覚ます。

 

 「あたしが悪いんだ」

 

 「「ヴィータ!」」

 

 二人は、目覚めたヴィータに目を向ける。

 

 「あたしが悪いんだ、く、クロードは、別に悪くねえ」

 

 「ヴィータ、どういうことだ?」

 

 「俺が説明する」

 

 クロードは、一連の成り行きをシグナムに説明した・・・

 

 「なるほど、それでお前とヴィータが」

 

 「まあ、そんなとこだな・・・ヴィータ、立てるか?」

 

 地面に倒れるヴィータに手を差し出すクロード。

 

 「あ、ああ・・・」

 

 クロードの手を取ろうとして少し迷うが、少し赤くなりながらクロードの手を取る。

 

 「いっ!」

 

 片足を痛めたのか、右足のバランスを崩し前のめりに倒れるヴィータ、だが、そこには、クロードの胸があり、そのままクロードの胸に飛び込むように倒れる。

 

 とんっ

 

 「おっと、本当に大丈夫か?」

 

 抱きあうような形になっている二人、クロードは、ヴィータを心配するが、ヴィータは耳まで真っ赤になっていた。

 

 「だっ!大丈夫だ!だから、離せ!」

 

 「あ、ああ、わかった」

 

 クロードは、訳がわからず、ヴィータを離す。

 

 「二人ともそこまでにしとけ」

 

 二人を見ていたシグナムが口を開く

 

 「取り敢えず隊舎に戻るぞ」

 

 「「わかった」」

 

 シグナムに連れられ、その場を後にする三人・・・

 

 「ところでシグナムは、どうしてあそこが分かったんだ?」

 

 クロードが問いかける。

 

 「先程エリオから、お前とヴィータが戦っていると報告を受けたのでな」

 

 それを聞いてクロードは、「なーるほど」と納得する。

 

 「それにしても・・・ヴィータ、お前はあれだけの状況で、よくそれだけで済んだな・・・」

 

 シグナムが先ほどの状況から足をくじいただけの負傷で済んだヴィータを訝しげに見る。

 

 「それが、コイツの攻撃は、まるであたった感覚がしねぇんだよ、まるで・・・何かに押される様な感覚・・・それも強烈な何かにな・・・」

 

 「押される?クロード、お前はまた何か小細工を使ったのか?」

 

 シグナムが薄ら笑いを浮かべながらクロードに問いかける。すると、クロードは、「ハハッ」と笑いながら答える。

 

 「いいや、そうだな・・・例えば、外で強い突風に煽られると、体がよろけるだろ?・・・つまりは、そういう事だ」

 

 クロードの話を聞いて目を見開くヴィータとシグナム!

 

 「では、まさか・・・」

 

 「あたしが受けたのは、武器を振ったときに出来る『風圧』か!?」

 

 「まあ、そんなとこだな」

 

 クロードが、笑いながら答えると、シグナムが呆れたように笑う・・・

 

 「フフッ・・・どこまでも規格外なやつだな、お前は・・・」

 

 「ひでぇなぁ、まあ、俺もこっちの世界に来て少し驚いてるがな・・・」

 

 「お前が!?何に驚いたんだ?」

 

 ヴィータが驚きながら聞く。

 

 「『マナ』だな」

 

 「「マナ?」」

 

 「ああ、大気中のマナがかなり低いんだ。あっ、マナってのは、空気中にある魔力の元みたいなもんで、普段息をするだけでも俺は、魔力の回復が出来るんだが、同時に魔法の威力や、効果にも影響してくるものなんだ」

 

 「マナについては知ってる。あたしらは、仮にも魔導師だ・・・だが、お前の魔法については、まだ主なものは見たことがねえな」

 

 「そういえばそうだ、まだ私たちは、お前の『白騎士』と『換装』と言う、大まかなものだけしか見せてもらってない」

 

 それを聞いたクロードは、二人に対峙するように立つ。

 

 「そうか?それじゃあ、見てみるか?」

 

 クロードの言葉に興味津々の二人・・・それを感じたクロードは、別の方向に掌を向ける・・・

 

 「見てな・・・<ファイヤーボール!>」

 

 ゴオオォォォォォッ!

 

 「ッッ!」

 

 「こ、これは・・・」

 

 クロードが唱えながら掌を一瞬握りこんで開くと、一瞬にして人一人が包めるほどの火球ができ、それが十メートルほど先の地面にぶち当たる!

 

 ッドォォォォォォンッ!

 

 「くぅっ!」

 

 「うっ!」

 

 十メートル離れているクロード達にまで吹き荒れる砂煙に目を閉じるヴィータとシグナム!

 

 「・・・・まあ、こんなもんか」

 

 クロードの言葉を合図にシグナムとヴィータが目を開ける・・・

 

 「う、嘘・・・だろ」

 

 「なんて威力だ・・・」

 

 クロードのファイヤーボールは、十メートル先の地面で爆ぜただけかとおもいきや、爆ぜた場所を始点に数十メートルにわたり扇状に焼き払っていた!

 

 「これが俺の世界で最初に覚える炎系統の精霊魔法、<ファイヤーボール>だ」

 

 「「・・・」」

 

 クロードが説明するが、心ここにあらずの様子の二人。

 

 「お~い、大丈夫か?」

 

 「あ、ああ・・・」

 

 「お、おう・・・」

 

 受け答えもあまり儘ならない二人・・・だが、シグナムは、ひとつの疑問を感じた。

 

 「先程、お前は『マナ』によって、魔法の威力や効果が左右されると言っていたな・・・」

 

 「ああ、そうだ、俺の世界が濃すぎるのか、それともこの世界が普通なのかは、よくわからねえがな」

 

 「それがどうしたってんだ?」

 

 いまいちシグナムの質問の意味が理解出来ないヴィータ。

 

 「いいか、クロードは、先程こういった『マナは、魔法の威力や効果に影響する』と」

 

 「だから、それが・・・・ま、まさか!」

 

 質問の意図が読めたのか、ヴィータの表情が驚きに変わる!

 

 「その通りだ・・・クロード、お前的にこの世界と、そちらの世界とは、どれほどのマナの差があるのだ?」

 

 「マナの差か?そうだな・・・先刻のファイヤーボールの反応からして、約10倍近くは違うな・・・それがどうした?」

 

 クロードも質問の意味がわからず訝しそうな顔で聞き返すが、それを聞いたシグナムとヴィータの顔が完全に驚きの表情で固まっていた。

 

 「じゅ、十・・・」

 

 「倍・・・」

 

 「な、なぁ、それがどうしたんだよ?」

 

 ヴィータとシグナムが驚いていることから若干の不安を覚えたクロードが動揺しながら聞くと・・・

 

 「で、では、お前の世界では、今の十倍の威力が出るということか?」

 

 シグナムが問いかけると、クロードは、平然なかおをして答える。

 

 「そうなるな、だが、今ので全力じゃねぇから、実際のとこは、わからねぇ」

 

 「い、今ので・・・」

 

 「て、手を抜いていたと・・・」

 

 「そりゃそうだろ、もし本気でやってたら、お前らもぶっ飛んでたぞ」

 

 さもそれが普通かのように、話すクロード。

 

 「なっ!・・・」

 

 「嘘だろ・・・」

 

 クロードの話に二人が驚いていると、シグナムに通信が入る。

 

 ピピッ・・・

 

 「は、はい・・・こちらシグナム」

 

 シグナムが答えるとはやての声が聞こえた・・・

 

 『あっ、シグナム、うちなぁ、今からナカジマ三佐の所に行くんやけど、クロード君の事、頼んでええか?』

 

 「はっ!お任せ下さい、主はやて」

 

 『ありがとな、シグナム』

 

 そう言ってはやては、通信を切る。

 

 「主はやてからお前を頼まれた」

 

 「俺を?」

 

 「ああ、主はやてが帰還するまでお前を監視することになる」

 

 「はやて、何処かに行ったのか?」

 

 ヴィータが質問する。

 

 「ああ、ナカジマ三佐のとこにな」

 

 シグナムとヴィータが話していると、クロードが質問する。

 

 「ナカジマ三佐?」

 

 「ああ、『時空管理局・陸上警備隊・陸士・108部隊、ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐』だ」

 

 それを聞いたクロードは、難しそうな顔で

 

 「な、なんかお前らの肩書きっつーのは、長ったらしいな」

 

 それを聞いてヴィータが答える。

 

 「ああ、あたしも元は『特別捜査官補佐・本局航空隊・第1321部隊』って所属だ」

 

 「かぁ~長ったらしいっ!」

 

 クロードとヴィータの話を聞いていたシグナムが一つ疑問を持つ。

 

 「クロード、今お前は、『お前らの肩書きは』と言ったな?」

 

 いきなりのシグナムによる核心を突くような質問にクロードがわずかに揺れる。

 

 「あ、あ?そんなこと言ったっけか?」

 

 「ああ、お前は確かに言った・・・クロード、お前まだ私達に隠して居ることがあるのではないのか?」

 

 更なるシグナムの追求によって、クロードの回答がしどろもどろになる。

 

 「そうかぁ?い、言った覚えはないがなぁ~」

 

 「どういうことだシグナム?」

 

 ヴィータがいまいちつかめずにシグナムに問いかける。

 

 「クロードは、先程『お前らの肩書きは』と言った、裏を返せばクロードにも何かしらの肩書きと言うものがあったと考えられるだろ?」

 

 「なるほど・・・どうなんだ?クロード・・・」

 

 シグナムの観察力によって核心が顕になろうとした時、クロードが答える。

 

 「・・・分かったよ」

 

 クロードの回答は、ヴィータとシグナムの興味を引いた。

 

 「それでクロード、お前はなぜ、先ほどの言い回しをしたのだ?」

 

 シグナムの質問に対して、クロードは・・・

 

 「少し前に俺の世界で酒屋の手伝いをしててな・・・まあ、その時なんだが、王国の城にワイン配達の依頼があってな、その時に王国の兵士たちが階級についての話をしていたのを偶然に聞いてな、それで俺の世界の肩書きとは、全く違うなぁ~ってな・・・」

 

 クロードが顔をひきつらせながら答える・・・

 

 「ふーん、なるほどなぁー」

 

 と、ヴィータ、シグナムというと・・・

 

 「うむ・・・」

 

 手を組みながら、クロードの顔をじっと見つめていた。

 

 「ど、どうした?・・・俺に惚れたか?」

 

 何とか、ふざけた顔でシグナムをごまかそうとするクロード・・・

 

 「フッ・・・まあ、深くは追求すまい、そう言う事にでもしておこう」

 

 完全に見破られるクロード。

 

 「な、なぁ、それよりもメシにしようぜ、俺腹減ってるからよ!」

 

 冷や汗をかきながらクロードが話しの路線を変えようとする。

 

 「フフ・・・ああ、そうだな、私も一緒しよう」

 

 「あたしも行くぜ」

 

 何とか路線を変えれたことに胸を撫で下ろすクロード。

 

 「さ、さぁ、俺は、先に行ってるぞ!」

 

 そこから逃げるように隊舎に向かい、いそいそと歩き出すクロード・・・と、その時、クロードがピタリと止まる。

 

 「「??」」

 

 ヴィータとシグナムが不思議な顔でそれを見ていると、後戻りするようにクロードが戻ってくる。

 

 「<ヒールⅠ>」

 

 クロードがヴィータに向かい手をかざしながら、呪文を唱えると、ヴィータの周りを心地よい風が通り抜け、ヴィータの足の痛みが風にさらわれるように抜ける。

 

 「最低限の礼儀だ、次は全力でぶつかろうぜ」

 

 いたずらっ子のような顔でヴィータに向かい回復魔法をかけるクロード、するとヴィータは、顔を赤くしながら

 

 「あっ!当たり前だ、バカが、次は、あたしが・・・勝つ!」

 

 目に確かな光をたたえながらヴィータが答える。

 

 「それでは隊舎に戻るぞ、そろそろ午前の訓練が終わる時間だな」

 

 「ああ、そうだな」

 

 そのまま、クロード達は、隊舎にもどって行った・・・

 

 

 

 

 所変わり、時空空間・・・ここでは、バランドール一行の入国手続きが行われていた・・・

 

 「・・・・では、これでお聞きしたいことは全てです。入国パスの作成と登録がこれから行われますのでそれまでしばらくお待ち下さい。お疲れ様でした」

 

 シズナに管理局本局の係員が入国審査を済ませ、クラウディアから本局に戻る。

 

 「ふぅ~っ」

 

 数時間に及んだ審査で疲れた肩を自分で揉むシズナ

 

 「お疲れ様・・・はい」

 

 コト・・・

 

 シズナの前に置かれたのは、さわやかな香りのするハーブティー・・・

 

 「ありがとう、ユウリ」

 

 「いいのよ、それよりも・・・どうだったの?」

 

 不安な顔で語りかけてくるユウリに対して、シズナは、そっと微笑むと

 

 「何とかなりそうです」

 

 シズナの一言を受け、ほっとするユウリ・・・

 

 「よかった・・・それで、マリナの方は?」

 

 「ええ、あの子は、部屋で休んでいると思うけど・・・」

 

 「そう・・・少しあの子と話してくるわ」

 

 ユウリは、そのまま振り返り、マリナの部屋へと足を運ぶ・・・

 

 

 

 ここは、バランドール号内のマリナの部屋、そこにはマリナとミウが紅茶を飲みながら話していた・・・

 

 「ミウ様、私はどんな顔でクロードと再会すればいいのでしょうか?」

 

 かなり考え込んだ顔で聞いてくるマリナにミウは、少し微笑みながら答える。

 

 「マリナちゃん・・・あなたは、クロードが自分の事を恨んでいるとでも思っているのですか?」

 

 ミウが答えるとマリナは、うつむく・・・

 

 「ミウ様、今から十年前に迷いの森で起きた事件について覚えていますか?」

 

 「え、ええ、マリナちゃんとクロードが遊んでいた時にトレントが襲ってきた話ですよね?」

 

 「はい、あの時、私は背中に大きな傷を負い、クロードも重傷でした、ですが・・・当時の私たちの体があんな大きな傷に耐えられると思いますか?」

 

 マリナの言葉に何か意味があると察したミウが、問いかける。

 

 「マリナちゃん、もしかしてあの時、何か別の事が起こっていたのですか?」

 

 問いかけられたマリナは、ゆっくりと話しだす・・・

 

 

 

 

 あの時、私は確かに、大きな傷を負いました・・・

 

 「くぅっ!」

 

 トレントの攻撃によって、マリナが地面に倒れ込む!

 

 「マリナッ!」

 

 クローがマリナに向かって走ってくるとマリナを抱きかかえる。

 

 「マリナ!・・・マリナしっかりしろっ!」

 

 「ク・・ロード・・・様」

 

 私は、そのまま意識を失いました・・・ですが、その後、私は意識を取り戻しました・・・

 

 「・・・・クソッ!マリナ!お前は、俺が絶対に護ってみせる!」

 

 木の棒を振り回しながらトレントを牽制しようとするクロード、だがトレントは非情にもクロードに向かい、巨大な腕を振り下ろす!

 

 ッドオォォォォォンッ!

 

 「キャッ!」

 

 トレントの振り上げた腕がクロードを直撃する!あたりには激しい砂埃の嵐が吹き荒れる!

 

 「ク、クロードッ!」

 

 マリナが叫ぶようにクロードを呼ぶ・・・すると

 

 ゴォォォォォォォォッ!

 

 「うっ!・・・」

 

 トレントが腕を振り下ろした場所からとてつもない嵐が吹き荒れる!

 

 「・・・ゥォォォォオオオオオオッ!!!」

 

 ズガンッ!・・・グアァァァアァァァァッ!

 

 突然の事だった!クロードをたたきつぶしたはずのトレントの腕が聞いたこともない『雄叫び』と共に、吹き飛んだ!

 

 ァァァァァアアアアアアッ!

 

 トレントは、腕が吹き飛んだ痛みに耐えきれず、断末魔の叫びを唸り散らす!だが、そんなトレントの叫びを打ち消すかのように、静かに鋭い声がマリナの耳に入ってくる。

 

 『貴様・・・我に触れるか・・・』

 

 「えっ・・・!」

 

 マリナは、その声が何処から聞こえてくるのかを突き止めた・・・それは・・・トレントの腕があった場所・・・クロードのいた場所からだった。

 

 ブンッ!ザァァァァァッ!

 

 そして、何かを振るう音が聞こえた後、マリナの目に飛び込んできたのは・・・

 

 ガシャンッ!

 

 大きな鎧を纏った騎士とその後ろに立つ小さな姿・・・マリナは、その影を見るとクロードの名を呼ぼうとするが・・・何か様子がおかしいことに気づく。

 

 『ん?起きたか、娘・・・』

 

 それは、マリナのよく知るクロードの声ではなく、幼いマリナには恐怖を感じさせる声だった・・・そして、マリナはこの男がクロードはないと直感で感じた。

 

 「ひっ!」

 

 『そう怖がるでない・・・我は、貴様を助けたのだぞ』

 

 眼の前でおどける男は、姿もクロードのそれとは、違っていた。

 

 肌は薄黒く、髪はくすんだシルバーとオレンジのツートーンに染まり、着ていた服も違い、上半身は黒い篭手だけが装備され、下半身は黒い袴を装備した姿だった。

 

 「あ、あなたは誰?」

 

 怖がりながらもその男に問いかけるマリナ。すると男はマリナを見ると、少し驚きの表情を見せる。

 

 『貴様は・・・ふっ、そう言うことか・・・ふふ、面白い』

 

 マリナは、男がなぜ笑い出したのかもわからず、困惑する。

 

 『我が名を知りたくば、貴様の記憶に問うがいい・・・』

 

 「私の・・・記憶・・・」

 

 マリナは、自分の記憶を蘇らせながらこの男を探す。すると目の前がいきなりスパークするように真っ白になった・・・

 

 『フッ・・・『壁』に当たったか・・・』

 

 男がそれを確認すると目前のトレントに向きあう・・・

 

 グフッ・・フウッフウッ!

 

 切り落とされた腕をかばいながら男と騎士に向き直るトレント。

 

 『なんだ?貴様まだいたのか』

 

 グォォォォォォォッ!

 

 男と騎士に向かい、トレントが突っ込んで来る!

 

 グガァァァァァァァァッ!

 

 『見苦しい・・・殺れ』

 

 男が騎士に向かい手をかざすと騎士が剣を振りかぶる!

 

 グオォォォォォォォッ!・・・ザンッ!

 

 トレントは、騎士の一撃により真っ二つに切り裂かれ、息絶えた・・・

 

 『フンッ、脆いものよ、所詮は下等の種族、苦しまずに死ねたのがせめてもの手向けだ・・・』

 

 そう言うと男は、気絶したマリナに向き、足を運ぶ。

 

 『まだ幼子とは言え、我が道の妨げになりうるからな』

 

 スッ・・・

 

 男が右手を横に伸ばすと、黒い杖が現れる・・・男は、それを垂直に上げ、マリナの心臓めがけ一気に突き刺す!

 

 ドクンッ!

 

 『グッ!』

 

 杖がマリナの心臓を突く寸前、男の様子が変わる!

 

 『なっ!なんだ!なぜ動かんッ!』

 

 男の身体は、杖を持ったまま硬直していた、そして男の頭の中で声が響く!

 

 「てめぇ!俺の身体からさっさと出ていけ!」

 

 『なっ!馬鹿な!貴様の意識は我が支配したはずッ!』

 

 その声の主は、クロードだった!

 

 「意識?まだ習ってねぇ言葉言ってんじゃねーよっ!」

 

 『何故だっ!たとえ意識があったとしても我の力を止めるなどできぬはず!』

 

 「しるかっ!それよりお前、マリナに手ェだそうとしやがったな!覚悟しやがれ!」

 

 クロードと謎の男の意識が激しくぶつかり合う!

 

 『グッ!グアァァァァァァッ!』

 

 ドオォォォンッ!

 

 男の身体が激しく揺らぐと、体中から黒い光が溢る・・・光が消えると、元のクロードの姿に戻っていた。

 

 「ハァハぁっクッ!」

 

 ドサッ・・・

 

 そのまま、クロードも意識を失っていった・・・・

 

 

 

 

 「そ、そんなことが・・・」

 

 今の話を聞き、衝撃を受けるミウ・・・マリナは、ミウに自分の記憶の限りの話をしていたのでその後のクロードと男のことは、伝えきれていなかった。

 

 「はい、恐らくあの時の私たち・・・いいえ、私はクロードに助けられたのです!クロードがあの伝説の騎士様と聞くまでは、核心は得られませんでしたが、それ以来次は、私がクロードを助けると心に誓っていました・・・」

 

 「なるほど・・・それであの子を助けられなかった自分が悔しいの?」

 

 突然聞こえてきたのは・・・ユウリの声だった・・・

 

 「えっ!ゆ、ユウリ様!」

 

 「ユウリさん・・・」

 

 ユウリが、ゆっくりと歩み寄りながら、近づく・・・

 

 「マリナ、あなたの考えてることは、私にもよぉーくわかるわ・・・前にも言ったけど、私もそんな時期があったの・・・だけど、月姫に出会ったことで私は、強くなってレナードたちを支えることができたの」

 

 「アークですか・・・ですが、私は騎士でも、ましてはお母様のようにミューレアス様の力も持たない私がどうやってクロードを支えたらよろしいのでしょうか?」

 

 ユウリは、肩を落とすマリナを見て優しく語りかける。

 

 「よく聞いてマリナ、女にとっての大切な物ってなんだと思う?」

 

 「女性にとってですか?」

 

 「そう、何だと思う?」

 

 マリナは、少し考えた後

 

 「やはり、優しさではないですか?」

 

 それを聞いてユウリは、少し微笑んだ後にミウにも同じ質問をする。

 

 「ミウは?どう?」

 

 「えっ、わ、私は・・・」

 

 少し戸惑うミウだが、すぐにユウリの目を見て

 

 「昔の私でしたら、今のマリナちゃんみたいに優しさと答えますが、今の私なら『度胸』です!」

 

 それを聞いたユウリは、フフッっと笑うとミウとマリナを見る。

 

 「そうね、確かにマリナとミウの言う通り、優しさや度胸なんて答えもあるわね」

 

 ユウリの質問の意図がつかめず訳がわからないマリナとミウ、そしてユウリが答える。

 

 「確かに二人の回答もあながち間違ってないと思うわ・・・いい、私はね、強さだと思うの」

 

 「強さ・・・ですか?」

 

 マリナが口を開く。

 

 「そう、強さ。勿論、大事なものは、人それぞれだと思うわ、だけど・・・私はどんな人でも大切な物を守るためには強さが必要だと思うの」

 

 ガタンッ!

 

 ユウリの話を聞くとマリナが勢い良く席を立ち上がる!

 

 「ですが!先程も行ったとおり、私には何の力もないんですよッ!私はっ!私にはっ!どんなにあがいても、ユウリさんみたいに強くもなれませんし!ミウ様みたいに人々を先導することなんて出来ませんッ!そんな私にっ!」

 

 「違いますっ!」

 

 「えっ!」

 

 マリナが言い終える前にミウが叫ぶように吐き出す!

 

 「違いますよマリナちゃん」

 

 「ミウ・・・さん」

 

 「マリナちゃん・・・ユウリさんは、そんな意味でマリナちゃんに言ったわけじゃありませよ」

 

 「では、ミウ様にはわかるのですか!?」

 

 マリナの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。それを見たミウは、優しく口を開く・・・

 

 「マリナちゃん、先程ユウリさんが言った通り、私たちは二人とも最初は唯の何もできない・・・こう言ってはなんですが、唯の小娘でした。私は、父上の・・・フォーリア国大公殿下の娘。ユウリさんは、町娘。私たちは、地位こそ違えど唯の小娘だったことには変わりないのです。それが今やミウ大公殿下、ユウリ妃殿下と呼ばれていますけど、そう呼ばれるまでに得た強さは、何も力だけではないと言うことですよ」

 

 マリナは、ミウの言わんとする事があまりよく理解できずにいた。

 

 「それは、どういう事ですか?」

 

 そう尋ねられるとミウは、人差し指でマリナの胸元をトントンと叩く・・・

 

 「それは、心です」

 

 「心?」

 

 「はいっ、心です。先程も言った通り唯の小娘が妃殿下や大公殿下なんて呼ばれると戸惑うだけです。ですが、心を強く持つと自分の中から『よしっ!今日も一日頑張るぞっ!』って勇気が湧いてくるんです!私が思うに、この心の強さが今のユウリさんや、私の支えになっているからこそ、今の私達が居るんだと思います」

 

 ミウの話を聞き終わるとマリナは、自分の胸に手を当てる。

 

 「心の強さ・・・・・・ミウさん、ユウリさん・・・」

 

 顔をマリナとミウの方向に向けると問いかける。

 

 「私は、強くなれるでしょうか?クロードを守れるくらいに強くなれるでしょうか?」

 

 涙で頬を濡らしながら、ミウとユウリに問いかける。ミウとユウリは、互いに顔を合わせると小さく笑いマリナに答える。

 

 「うんっ!」

 

 「はいっ!」

 

 この日、マリナは少しだけ強くなれた気がした・・・・・

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