今回はすごくつまらないかもしれないです。
「楠木君、猫はいないの?」
「湊先輩、何度も言いますがうちの店に猫はいませんよ」
「友希那、もう諦めようよ。猫はいないんだからさ」
「いいえ、諦めないわ」
また変な客が出てきてしまった。それもおたえさんと匹敵するほどの人である。といって学校の先輩なんだけどね。
湊先輩と今井先輩はつい最近うちの店に来たばかりだ。なんで湊先輩が猫を探しているのかというと......。
――この人は無類の猫好きなんだ。
何故僕がそのことを知っているのか。それは一昨日に遡る。
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「つぐみちゃんは生徒会だし、蘭ちゃん達は練習か。みんな忙しいんだな。って僕も店のことあるから人のこと言えないか」
僕はつぐみちゃん達と一緒に帰ろうかと誘ったが、つぐみちゃんは「ごめんね。生徒会で忙しくて帰れそうにないんだ。また今度にしない?」と断られてしまった。残念だけどまた今度にするかと僕は諦めることにした。
つぐみちゃんから断られた時は、頭から水を浴びせられて冷たくなった、そのくらいにショックだった。仕方ないんだ。つぐみちゃんは生徒会で忙しい、そう言われたら何も言えない。
蘭ちゃん達も「今日は練習があるけど、途中までならいいよ」と言われて蘭ちゃん達と帰ることになった。その後、ライブハウス前に着いてから別れ、一人で帰ることになった。
公園を通りかかったところで見覚えのある人がしゃがんでいるのが見えた。その見覚えのある人こそ僕の先輩でもあり、かの有名なガールズバンド「Roselia」のボーカル、湊友希那先輩だ。
僕は何をしているのか気になり、湊先輩に気づかれないように覗くことにした。何をしているんだろう?僕は気になって覗いて見ることにした。
――なんと、湊先輩は猫と戯れていたのだ。
意外だ、あのクールな湊先輩が猫好きなんて......。しかも癒されてる。可愛い。
「誰かいるの!?」
あ、気づかれた。これは名乗り出るしかないかな。本当に忘れられないくらいの衝撃だったし、湊先輩の印象が変わりそうだな。
「ど、どうも湊先輩」
「あなたは、楠木君?どうしてここに......」
言えない!気になって見てましたなんて言えないよ!ここは誤魔化すかしかない!
「帰ってた途中なんですよ!偶々公園を通りかかったものでして......」
「本当にそうかしら?怪しいようにしか見えないわ」
「ほ、本当ですよ!」
僕が大声を出した瞬間に、一匹の猫が頭を出した。あ、終わった、バレたなこれは。
「楠木君、見たわね?」
「ミテマセンヨ?」
「カタコトということは見たのね」
「み、見ました。ごめんなさい湊先輩、足を踏まないで下さい!痛いです!」
素直に言った瞬間、湊先輩に足を踏まれてしまった。相当お怒りのようだ。まあ僕も猫好きだから気持ちはわかる。知られたくない人に知られるとなにがあるかわからないからな。
「まあいいわ。楠木君、このことは他言無用にしなさい。わかったわね?」
「わかりました、湊先輩。黙っておきますので、もう足を踏まないで下さい」
湊先輩怒らせると怖いな。昔の姉さんを思い出してしまった。思い出した瞬間に背筋が凍りそうになった。トラウマだからあまり思い出したくなかったんだけどなあ。
「ところで楠木君」
「なんでしょう?」
「あなた猫は好き?」
「え、ええ。好きですよ」
湊先輩に猫が好きだと答えた瞬間、湊先輩の目が輝いた。あ、なんかヤバいスイッチ押したかもしれない。嫌な予感がする、気のせいではなさそうだ。
「そう、なら話が早いわ」
「え?話が早いってどういうことですか?」
「今から猫について語ることにするから、聞きなさい」
湊先輩は猫について約2時間に渡って語り、僕から見た湊先輩の印象は変わってしまったのだ。猫好きの歌姫にしか見えなくなった。本当に残念だよ、湊先輩。
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以上が湊先輩が猫好きだと知った理由だ。あんなにクールな人だったのに、猫が出てくると人が変わる。もう僕は湊先輩が同じ歳の女の子にしか見えなくなってしまっている。どうしてこうなったんだ。
「楠木君、猫は本当にいないのね?」
「何度も言いますがいませんよ。それにうちは猫カフェではなく、ただの喫茶店です」
「言ったじゃん友希那。葵、なんかごめんね。後でよく言っておくから」
それとなんで湊先輩がさっきからこんな状態かというと、喫茶カーネーションは猫カフェなのでは?という変な噂が流れたのだ。湊先輩はその噂に騙され、結果今の状況ができたのだ。
「葵、なんか大変だね」
「姉さん他人事のように言わないでよ」
「あんたのところの先輩でしょ?私は羽丘は管轄外だから無理だよ」
「えぇ......」
姉さん逃げたな。つまり花咲川の客は姉さんが、羽丘の客は僕がなんとかしろってことか!?なんとも酷いなうちの姉は!
ドアの鈴の音が鳴った。また新しい客かな?
「いらっしゃいませー」
「あら、紗夜じゃない」
「ここにいらしてたんですね湊さん。あら、楠木さんじゃないですか」
「あなたは氷川さんね。あと私は澪でいいわよ。弟も同じ名字だから二人いると反応しちゃうしさ」
「では改めて澪さん。学校では問題は起こしていませんね?」
あれ?姉さんまたなんかやらかしたのかな?それに氷川さんっていう人は姉さんと面識あるのか?
ん、待てよ。氷川っていうと......。なんか聞き覚えがある。この前の天体観測の時に日菜先輩と会ったよな、日菜先輩の名字は氷川、姉がいるって言ってた。
ということは姉なのかあの人は!?それに顔も似ている。日菜先輩とは双子ってことか!
「あら、あなたお名前は?」
「僕ですか?僕は楠木葵です。葵でいいですよ。そこの澪姉さんの弟です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。私は氷川紗夜、紗夜でいいですよ。そうですか、あなたが日菜の言ってた方ですね」
やっぱりそうだ。日菜先輩の言ってた通りだ。今日菜って名前が出たから姉なのかもしれない。
「はい、そうです。なにかありましたか?」
「いいえ、ただどういった方なのか気になったので、それと日菜は私の双子の妹ですので、お間違えのないように」
「は、はあ......」
なんだろう。紗夜先輩からは委員長みたいなオーラを感じる。それに姉さんとも面識があるみたいだから何かあるのかもしれない。
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まさか紗夜がここに来るなんてね。予想していなかった。紗夜とは深雪と同じく中等部の頃からの知り合いで、私の黒歴史を知っている。私は紗夜からはあまりいい目で見られてはいない。
きっとあの黒歴史が原因で悪い印象しかないのかもしれない。それは私がやったことだから仕方ないけど、紗夜はいつまで私のことをそんな目で見ているんだろう?私の言えることではないけど、過去を引きずりすぎだと思う。
「姉さん、紗夜先輩となにかあったの?」
「まあ色々とあるのよ」
「葵さん、知らなくてもいいことですよ?」
「紗夜!そんなに冷たく当たらなくても......」
空気が一変した。今は私達しかいないからいいけど、他の客がいたら迷惑がかかってしまう。さすがにここで騒ぎを起こしたくない。私はもう中等部のあの黒歴史と同じようなことはやらないって決めたんだ。
「どうした?なにかあったのかい?」
「お父さん、別になんでもないよ。特に何もないから」
「そうか。あまり騒ぎを起こさないでくれよ。もしここで事を大きくするなら......」
――身内でも客でも許さないよ?
お父さんはそう言ってカウンターの方に戻った。危なかった。今のお父さんは相当怖い。お母さんよりも一番怒らせてはいけない人だからね。特に営業中に事を大きくしたら空気が凍るくらいに雰囲気が変わる。
過去にそういう客がいたけど、その人はお父さんにコテンパンにされ、店を出禁にされたらしい。それほどまでにお父さんはこの店に思い入れがあるんだ。
「だ、大丈夫なの?」
「皆さん、すいません。空気を壊してしまって。あまり騒ぎを大きくしないようにお願いします。父さんも今日は珍しく機嫌が悪いみたいなので......」
葵はそう言って紗夜達に謝った。なんか情けないな、葵のこんな姿を見せてしまったのが姉として情けない。
「こちらこそ、すみません」
「いいよ紗夜。これは私が悪いからさ」
「ですが澪さん!」
銀髪の女の子、もとい湊さんが紗夜の肩に手を置いた。
「湊さん!」
「澪さんだったかしら?紗夜のことは謝るわ」
湊さんは頭を下げて謝罪をした。
「そ、そんな湊さん。これは私の問題だからさ、頭を上げてよ!」
「ね、ねえ。今日は帰らない?友希那も紗夜もさ一旦帰ろ!」
その後、湊さん達は帰っていった。なんでかな?今日の私はおかしい。一人の客に頭を下げさせるなんて、パティシエとしても、店員としても失格だ。
せめて紗夜には誤解解かないとなあ。これ以上過去のことで争いたくないからね。
つまらない回でしたが、読んで下さってありがとうございました。
今回は紗夜と澪の関係についての説明みたいなものです。
さらに伏線も張りましたので。
感想と評価お待ちしてます。