デート回中盤です
満員電車に押し潰されながらつぐみちゃんを守り、なんとか目的の駅に降りることができた。つぐみちゃんはまだ僕の袖を掴んでいた。しかも手が震えてる。相当怖かったんだな。
「大丈夫?つぐみちゃん」
「だ、大丈夫だよ」
いや、手が震えてる時点で大丈夫じゃない。僕はつぐみちゃんを休ませるために公園のベンチに座ることにした。こんな時、どうしたらいいんだろう?どうすればつぐみちゃんを安心させられるかな?
「ねえ、葵君」
「な、なに?」
「さっきはありがとね」
「なんのこと?僕、なにかした?」
お礼を言うなんてつぐみちゃんどうしたんだろう。確かに僕は痴漢や人混みから守るためのことはした。もしかしてそれを気づかれたのか?
僕の顔に冷や汗が滴る。しかも心臓も少しながら鳴っている。それはお礼を言われたから鳴っているのか、それとも二人きりであることにドキドキしているからか、今の僕には鳴っている理由がわからなかった。
「したよ。さっき私のこと守ってくれたんでしょ?」
「そ、そうかな?」
「葵君、惚けても無駄だよ。私には葵君のやってたことわかってるからね!」
隠しても無駄みたいだ。つぐみちゃんは凄いな。僕が守ろうとしていたことをわかっていたなんて。この子に隠し事をしても意味ないと僕は思った。うん、正直に言うか。
「本当だよ。確かに僕はつぐみちゃんを守るためにやったよ」
「やっぱりね」
「やっぱりって......。なんでわかったの?」
「葵君、さっき電車の中で私のこと心配そうに見てたでしょ?」
そこまで見られてたのか!?気づかなかった。なんかカッコ悪いな。
「まあ、心配だったよ。大丈夫かなって心配だった」
「そんなに顔赤くしなくてもいいよ。さっきの葵君......」
――充分カッコよかったよ!
つぐみちゃんは笑顔で言った。けど、その笑顔は僕には眩し過ぎた。こんなこと言われるなんて思わなかった。
「あ、葵君!?どうしたの!?」
「え?」
「なんで、泣いてるの?」
「泣い......てる?僕が?」
あれ、なんでだろう?目が霞んでるような。もしかして涙が出てるのか?いや、そんなことない。そんなことないはずだ!
「ち、違うよ。これはゴミが目に入っただけだよ」
「え、そうなの?大丈夫?」
「大丈夫だよ。大したことないから、つぐみちゃんは心配しなくていいよ」
僕はポケットからハンカチを出して涙を拭くふりをした。そう、僕の行っていることは嘘だ。本当は少しだけ泣いていた。けど、ここでつぐみちゃんを不安にしたくないし、カッコ悪いところを見せたくない。だから、敢えて嘘をついたんだ。ごめんね、つぐみちゃん。
「つぐみちゃん、もう大丈夫?」
「私は大丈夫だよ。葵君は平気なの?」
「もう平気だよ!とりあえず、どこか出掛ける?」
「そうだね。じゃあ、デパートに行かない?服とか見ていこうよ!」
「いいね!じゃあ行こうか」
僕とつぐみちゃんはベンチから立ち上がり、デパートに向かうことにした。その時、つぐみちゃんから手を繋ごうと言われ、僕は了承して手を繋ぐことにした。今更だけど、大丈夫かな?僕達付き合ってないのに手を繋ぐなんて......。
▼▼▼▼
私と葵君は二人で服を見ることにした。これから夏だから何か流行りのファッションってないかな?ファッションとかならひまりちゃんがすごく詳しいけど、私と葵君で探してもなかなか見つからなかった。
「ファッションって難しいね」
「そうだね。バリスタ一筋で生きてきたけど、情けないや。なんかごめんね」
「そんな、葵君が謝ることないよ!私も詳しくなくてごめんね」
二人して謝ってしまった。葵君は若干顔が赤くなっていた。私も顔が熱い。なんでだろう?
ここまでファッションに詳しくなかったのはまずかったかもしれない。もう少しファッションについて調べればよかったかな。
「いいよ、そんなに謝らなくても」
「でも......」
「じゃあさ、お互いに選ばない?好きなようにするとかなら大丈夫だと思うけど......」
葵君は好きなようにしたらどうか、と提案をしてくれた。そうか、その手があったか!好きなようにする、それなら私にだって選べるかもしれない!
「わかった、その提案にするよ。ありがとう葵君!」
「そんなお礼を言われる程でもないよ。でも、どういたしまして」
葵君は微笑んで言った。眼鏡を掛けているせいか、私から見た葵君はとてもカッコよかった。葵君って眼鏡似合うんだな。
「どうかした、つぐみちゃん?」
「な、なんでもないよ!なんでもない!」
「そう?なんか顔赤いけど、熱はないよね?」
葵君は熱を測ろうとしたのか、私の額に手を置いた。待ってよ葵君!人前、人前だよ!そんなことされたら余計熱くなっちゃうよ!
「熱はないか、よかった」
「あ、葵君......。ここ、人前......」
「え、人前?」
私は葵君にわかるように人前でやってるよと言った。その瞬間、葵君の顔は赤くなった。葵君、私を恥ずかしがらせたお返しだよ!
「ご、ごめん!つぐみちゃんごめんね!」
「葵君、やってくれてるのは嬉しいけど、もう少し場所選ぼうね」
「わかった!次は気を付けるから!」
ふふっ、葵君可愛いなあ。眼鏡がズレてるよ。私は葵君に近づいてズレてる眼鏡を直してあげた。葵君ってこんなに焦る時があるんだ。私はまた一つ、葵君の一面を知ることができた。
「つ、つぐみちゃん?」
「眼鏡、ズレてたよ」
「え、嘘!?」
「今直してあげたから大丈夫だよ」
「あ、ありがと」
どういたしまして、私は口を微笑ませて言った。葵君は顔を赤くし、目を逸らしながら「ありがとう」と言った。なんかいいな、こういう雰囲気。私達は付き合ってはいないけど、付き合っている感じに見える。
よくわからないけれど、私にはそう感じてしまうんだ。葵君はどう思ってるのかな?葵君の想いがすごく気になる。そうだ、今は服を選ばないといけない。せっかくのデートなんだ、時間を大切にしないと!
▼▼▼▼
最終的に服は僕はつぐみちゃんに白いワンピースを、つぐみちゃんは僕に黒い半袖のジャケットを選んでくれた。お互いに満足できたからよかったからいいかな。
僕はつぐみちゃんにアクセサリーショップに行こうと誘った。その時、つぐみちゃんは喜んでくれた。どうやらつぐみちゃんも何か探そうとしているみたいだった。何を探してるんだろう?
「つぐみちゃん、何を探してるの?」
「それは秘密だよ!」
「ああ、秘密なんだ。じゃあ、楽しみにしてるよ」
「そうそう、楽しみにしててね!」
秘密なら仕方ない。僕は何度か思っていた。つぐみちゃんには向日葵が似合ってるんじゃないかと。そう、何故僕がアクセサリーショップに誘ったのかというと、つぐみちゃんに向日葵の髪飾りをプレゼントするためだ。
「えーと、どこにあるかな......」
「なに探してるの?」
「へ?ひ、秘密だよ!」
「秘密なんだ。なんか残念だなあ」
つぐみちゃんは残念そうに言った。ごめんねつぐみちゃん。今はバレる訳にはいかないんだ。とにかく探さなきゃ!
向日葵の髪飾りを探して数分が経ち、ようやく見つけた。僕はすぐに会計を済ませ、つぐみちゃんと合流することにした。
「葵君、何を買ったの?」
「それは後のお楽しみだよ。そういうつぐみちゃんは何を買ったの?」
「私も秘密だよ。楽しみにしててね!」
つぐみちゃんも秘密か。やっぱり教えてくれないか。まあお楽しみって言ったんだ。待とうかな。さあ、次はどこに行こうかな?
今日で平成が終わり、令和を迎えました
これからもよろしくお願いします
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