恋は喫茶店から始まる   作:ネム狼

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七夕回後半になります
今回は長いので、ご注意下さい


七夕に願うは恋情、二人の想いは願いと共に

 七月七日、七夕当日。朝はいつも通り、でも夕方から忙しい。昨日は学校があったから疲れが溜まっているかもしれない。今日はつぐが来るんだ、良いところを見せないと!

 

「葵、今日は気合い入ってるね」

「まあね。つぐが来るから頑張らなきゃって思ってね」

「そう。頑張り過ぎて倒れないようにしなさいよ」

「そこは気をつけるよ。倒れたら元も子もないからさ」

 

 僕もそうだけど、姉さんも妙に気合いが入っている。もしかして、紗夜先輩と日菜先輩が来るから嬉しいのかな?

 

 変なことを聞くのはまずいかもしれない。下手をしたら余計な体力を使うかもだからここは黙っていた方が身のためだ。

 

「そろそろ行こうか」

「だね。深雪も準備できたみたいだしね」

 

 僕と姉さんは仕込みのために厨房へ向かった。その時、向かう前に姉さんに話掛けられた。

 

「葵!」

「な、何!?」

「今日はつぐみちゃんに良いところを見せられるように頑張りなよ!」

 

 姉さんは微笑んで僕にエールを送った。姉さん、ありがとう。僕、つぐに良いところを見せられるように頑張るよ。

 

「姉さん、ありがとう。頑張るよ」

「私はあんたの恋を応援してるんだから、つぐみちゃんと結婚できるようにしなさいよ」

「結婚だなんて、気が早いよ姉さん」

 

 結婚か......。そこまで考えてなかったな。僕にはまだ早い、これからどうなるかわからないんだ。あまり考えたくないけど、僕とつぐが付き合えない可能性だってあるかもしれない。だから、そうならないように少しでもつぐに良いところを見せないと!

 

 朝と昼は普段通りでそこまで忙しくはなかった。けど、忙しくなるのは夕方からだ。常連の人の中には父さんや母さん目当てで来店する人も少なくはない。その中には瀬田先輩とりみさんが来たり、休日ということで白鷺先輩や松原先輩、奥沢さんも来店していた。

 

 瀬田先輩と松原先輩、奥沢さんの三人は今日の七夕は弦巻さんのところでやると言った。ということはハロハピのみんなでやるみたいだな。りみさんはというと、香澄さん達と七夕をやるそうだ。りみさんに聞いたところ、有咲さんの家には蔵があるらしく、そこで質屋「流星堂」を経営しているとのことだ。

 

 そして昼にはロゼリアの人達も来た。もちろん、日菜先輩もいる。僕が接客を担当した瞬間、今井先輩に話し掛けられた。

 

「やっほー、葵!」

「いらっしゃいませ今井先輩。今日はどうしたんですか?」

「今日はね、七夕をここでやろうと思ったんだ。友希那が昨日の練習終わりに突然決めちゃってね」

「そうなんですか。珍しいですね」

 

 湊先輩が誘ったのか。それにしても周りが賑やかになってきてるな。確か夕方につぐ達が来るからまだ時間はあるはず。

 

 今井先輩から視線を感じる。僕の予想だとチョーカーのことを聞かれるかもしれない。これは正直に言うしかないかもしれないな。

 

 そして僕は案の定今井先輩からチョーカーのことを聞かれた。僕は顔を赤くしつつ答えた。つぐとのデートのことは伏せて答えたけど、大丈夫かな?

 

「そっかそっかー、葵もやるね!」

「な、何がですか!?」

「プレゼントされるなんてねー、この幸せ者!」

「ホントよ。さすが楠木君ね」

「っ!?唐突になんですか湊先輩!?」

 

 今井先輩にからかわれた瞬間、湊先輩がひょっこりと顔を出した。心臓に悪いよ!

 

「いきなりどうしたんですか?」

「ちょっと猫の気持ちになっただけだから気にしないで」

「気にするよ友希那!さすがにそれはおかしいって!」

 

 そうですよ!僕は湊先輩にツッコミを入れた。なんだろう、湊先輩に会うのは久しぶりなのにこの人ってこんな人だったっけ?って思ってしまう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私は今蘭ちゃん達と葵君のところに向かっている。約束の時間は夕方だからもう着く頃だ。葵君や澪さん達は忙しいかもしれない。一緒にいる時間が作れるか心配だ。

 

 少し寒い。最近は外が暗くなると風が冷たくなってくる。上着を着た方がよかったかもしれない。でも私は少し期待している。葵君が上着を掛けてくれんじゃないのか、二人きりになれるんじゃないのかということを期待していた。

 

「そろそろ着く頃だね」

「そだねー」

「つぐは何をお願いするの?」

「それは秘密かな」

 

 私は一応決まっている。でもそのお願いは蘭ちゃん達には秘密だ。Afterglowとしてのお願いは決まっているけどね。

 

「そういえば巴、あこはどうしたの?」

「あこは先にカーネーションの方に向かったよ。確か湊先輩達と一緒だったかな」

「え?湊先輩来てるの?」

 

 湊先輩が来ている、そう聞いた瞬間に蘭ちゃんは唖然とした。蘭ちゃん、相当驚いてるみたい。ということは紗夜さんも来てるのかな?だとしたら日菜先輩も来てるかもしれない。

 

「リサさんも来てるかもだねー」

「だね!急ごうよみんな!」

「そうだな。ひまり、そんなに急がなくても着くから少し落ち着けよ」

「私はこれでも落ち着いてるよー!」

 

 ひまりちゃん、楽しみにしてるみたい。まあ、私も楽しみなんだけどね。早く葵君に会いたいな。私は葵君に早く会いたいと思い、早足気味にカーネーションへ向かった。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 頬に冷たい風が当たる、冷たいということはもう夕方になるのか。早くつぐに会いたい、つぐと話をしたい。僕は楽しみでウズウズしていた。

 

「葵さん、そんなにウズウズしてどうしたんですか?」

「あ、紗夜先輩。何でもないですよ?」

「何故疑問形になるんですか......」

 

 危ない、つぐに会いたいってことがバレるところだった。姉さんには秘密にしてくれって釘を刺してあるからバレることはないと思うんだけど......。

 

 父さんからは早く上がっていいと言われた。姉さんと深雪さんも同じだ。姉さんと紗夜先輩、仲良くなれてるかな?

 

「姉さん、迷惑かけてませんか?」

「大丈夫ですよ。澪さんにはよくしてもらってますからとくに何もありませんよ」

「そうですか、ならよかった」

「では葵さん、また後ほど。日菜が待ってますので」

 

 そう言って紗夜先輩は姉さん達の元へ戻っていった。ここにいるのは僕一人だけだ。冷えるだろうから上着を着てるけど、つぐは大丈夫かな?

 

 待ってからしばらくしたらつぐ達の姿が見えた。どうしよう、やっと会えるってなった途端にドキドキしてきた。しかも緊張までしてきた。ここは深呼吸して落ち着かせた方がいいか!?

 

「こんばんは葵君!」

「こ、こんばんはつぐ」

 

 駄目だ。挨拶しただけなのにさらにドキドキしてしまう。なんでこんなにドキドキするんだ!?ていうか蘭ちゃん笑ってるし!そんなに笑わなくてもいいじゃん!

 

「蘭ちゃん、そんなに笑わなくても......」

「葵がガタガタ震えてるから、笑うしかないよ」

「あーくん、つぐの前になるとそうなっちゃうから仕方ないよねー」

 

 モカちゃんにまで言われた。好きな人の前になるとこうなるのはしょうがない。口に出して認めたらつぐのことが好きだってことがバレてしまう。

 

 僕は深呼吸をして心を落ち着かせることにした。けど、落ち着かせてもドキドキは止まらなかった。いいところを見せるって決めたんだから頑張らないと!

 

 僕はつぐ達に短冊を渡し、筆はみんなで使うようにと言って願い事を書くことにした。願い事はすでに決まっている。でも、それは秘密にしている。何故なら、願い事は二つあるからだ。

 

 表と裏の願い事、表は「みんなが幸せでありますように」だけど、裏はまだ秘密だ。

 

 みんなが願い事を書いた短冊を笹に飾っていく。願い事を聞くのはさすがにまずいかもしれない。聞くのは罰当たりだし、その人の願い事が叶わないってなっちゃうとやばい。

 

「寒くなってきたね」

「そう......だね」

 

 つぐが隣に来た。蘭ちゃん達はどうしたんだろう。周りを見ると巴ちゃんはあこちゃんと白金先輩といる。蘭ちゃんはモカちゃん達と一緒みたいだ。みんな別々に過ごしてる、ということは今は僕とつぐは二人きりか。

 

 

――ん?待てよ。二人きり?

 

 

「葵君どうしたの?」

「な、何でもないよ!」

 

 二人きりって気づいた瞬間にドキッとした。つぐと顔を合わせられない。どうしたらいいんだ!?

 

 

▼▼▼▼

 

 

 葵君どうしたんだろう。何かあったのかな?蘭ちゃん達は向こうに行っちゃったし、蘭ちゃんには頑張りなよ、なんて言われたし、私大丈夫かな?

 

 葵君の顔を見ると顔が赤くなっていた。何かあったのかもしれない、もう一度聞いてみよう。

 

「葵君、私の顔を見て思ってることを言って!」

「え!?わ、わかった」

 

 葵君は私の顔を見て思っていることを言った。今の私達の状況、葵君がどんな状態なのかを全て私に打ち明けた。

 

 それを聞いた私は徐々に顔が熱くなっていった。もしかして葵君は私達が二人きりになったことに気づいて顔が赤くなったのかもしれない。

 

「なんかごめんね」

「つぐは悪くないよ。意識した僕が悪いから、だからつぐは悪くない」

「で、でも!」

 

 私が言おうとした瞬間、葵君の手が私の頭に置かれた。急にどうしたんだろう、なんで葵君はこんなことをしたんだろう。私は葵君に頭を置かれて気持ちよくなってしまった。こんなことされたら恥ずかしくなるし甘えたくなってしまう。

 

 でも、私達は会って三ヶ月しか経ってない、甘えるのはまだ早い。いや、旅行の時に一緒に寝たり、天体観測の時にあんなことをしたんだ。こんなことを言うのは今更か。

 

「葵君恥ずかしくなるからもういいよ」

「ご、ごめんつぐ!」

 

 葵君は私の頭から手を離した。名残惜しい、もう一度撫でて欲しい、そう葵君に言いたいけど、こんなことを言えるのは付き合ってからだ。

 

 私は空を見上げた。星は綺麗に私達を照らすかのように輝いていた。空を見上げていたら一番星が輝いていた。

 

「あ、一番星!」

「え、どこ?」

「ほら、あそこだよ」

 

 私は一番星がある方向を指刺した。葵君が見上げた瞬間、私と葵君の手が触れ合った。

 

「あ......」

「ご、ごめん!」

 

 顔が熱くなって来た。うわあ、やっちゃったよ!偶然とはいえやってしまった。葵君、ごめんね。私は心の中で葵君に謝った。でも、葵君の手柔らかかったな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 どうしよう、つぐとくっついちゃった。なんかヤバいことしたな。つぐ、困ってるかもしれない。

 

「つぐ、ごめんね。嫌だったよね?」

「そんなことないよ!むしろ嬉しかったから

「なにか言った?」

「な、なんでもない!」

 

 怪しい。怪しいけど聞かない方がいいかな。それにしても一番星をすぐ見つけるなんて、凄いなつぐは。

 

「つぐって一番星見つけるの得意なの?」

「うん得意だよ。蘭ちゃん達にも言われてるんだ」

「へぇ、凄いね」

 

 そんなことないよ、つぐは照れながら言った。照れてるつぐ、可愛いな。僕は微笑みながらつぐを見守った。

 

「つぐ、寒くない?」

「少し寒いかな」

「そっか、じゃあこれ着てていいよ」

 

 僕は上着を脱いでつぐの肩に掛けた。暖まってくれればいいんだけど......。

 

 僕は後悔していた。もっと早く気づいていればよかった。なんで早く気づけなかったか、と。つぐに寒い想いをさせたのはまずかったな。

 

「つぐ寒くなくなった?」

「うん、暖かくなってきた。ありがとう葵君」

 

 どういたしまして、僕は照れながら言った。駄目だ、つぐが笑顔でお礼を言ってきたから照れてしまった。照れてるの隠せてるかな?

 

 それはさておき、つぐの願い事が気になる。願い事を聞くのはまずいけど、どうしても気になってしまう。ここまで気になるなら聞こうかな。

 

「ねえつぐ」

「何?」

「つぐの願い事ってなんなの?」

「私の願い事?それは秘密だよ」

 

 やっぱりそうか、案の定秘密か。つぐに聞かれても秘密にしよう。だって、僕の願い事は......。

 

 

――つぐと付き合えますように、なんだから。

 

 

▼▼▼▼

 

 私の願い事はみんなには秘密にしている。もちろん、葵君にも秘密だ。

 

 これは誰にも知られてはいけない私だけが抱える想い。例え届かなくてもいい、でも届いてほしい、私が葵君に好きだという想いと共に願っている事だ。

 

 そう、私の願い事は......。

 

 

――葵君と付き合えますように、そして幸せでありますように。

 

 

 これが私の願い事だ。私は考えていた。いつ葵君に告白するか、葵君を好きでいていいのか、と。どうしてこんなことを考えてしまうのかは自分でもわからなかった。

 

「つぐ、なんか悩みでもあるの?」

「え、悩みはないよ。どうしたの?」

「その......なんだろう。つぐが悩んでるように見えたからかな」

 

 葵君は私のことよく見てるんだな。私は君のそんな優しいところが好きだ。最初は一目惚れから始まったけど、葵君のことを知ってどんどん好きになっていった。

 

「ねえ葵君。目瞑ってくれる?」

「え?いいけど......」

 

 葵君は目を瞑った。これは私なりのお礼だ。七夕とはいえこんなことをしていいのかと自分でも疑問に思う。でも、これでいいんだ。これが私なりの......。

 

 

――私なりの精一杯の伝え方なんだ!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 目を瞑った瞬間、頬に冷たい感触がした。これはなんだ?もしかしてつぐ......。

 

「つぐ......」

「じゃ、じゃあ葵君私帰るね。上着ありがと!」

 

 そう言ってつぐは僕に上着を返して帰っていった。

 

 ズルいよつぐ。そんなことをされたらさらに好きになってしまうじゃないか。君はホントにズルい人だ。

 

 僕はつぐが僕のことを好きだと知っている。でも、つぐはどうなんだろう?僕のこと好きなのかな?そこはわからないけど、いつかこの想いを伝えよう。

 

 つぐは僕の頬にキスをした。これは忘れたくないけど、今は頭の隅に置いておこう。思い出してしまったら気まずくなるしつぐに顔向け出来なくなってしまう。

 

 明日からつぐと話出来るかな?むしろそれが心配だな。

 

 

――二人の願い事は"付き合いたい"ということは偶然にも同じだった。この事を知るのはさらに先の話である。

 

 

 

 




一昨日キスの日だったので、混ぜてみました
付き合うのは近いかもしれませんがまだまだ先です
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