僕は雨が降りしきる中、つぐの手を掴んで走って家へと帰った。つぐが風邪を引かないように全力で走った。
途中でくしゃみが出ちゃったけど、僕は風邪を引いていないと自分に言い聞かせるように急いだ。裏口から家に入り、すぐに姉さんを呼んでタオルを用意するように言った。
「おかえり葵……ってつぐみちゃん!?どうしたの二人とも!?」
「ごめん姉さん、途中で雨降っちゃって濡れたんだ。あとタオル用意して!つぐが濡れちゃったから!」
「わかった。その様子だと訳アリみたいだね」
姉さんはすぐに洗面所に向かってタオルを取りに行った。僕はつぐに靴を脱ぐように言って自分の部屋に案内した。
「お、お邪魔します……」
「入ってつぐ、さっきは強引に手掴んでごめんね。痛かったよね?」
「大丈夫だよ。アオ君が離さなかったからそれでいいよ。あの時のアオ君カッコよかったから」
ん?何を言ったんだつぐは?まぁいいか。怪我はなかったから大丈夫だな。とりあえず毛布肩に掛けてあげようかな。
「お待たせー持ってきたよ葵……」
「ありがと姉さん」
「あ、お邪魔だったね。ごゆっくり二人とも!」
「ちょ、姉さん待って!」
姉さんはすぐにドアを閉めて出ていった。どうしよう、つぐが黙っちゃった。ああもう気まずくなっちゃったじゃん。
つぐが寒がってる、早く髪拭いてあげなきゃ!風邪を引いたら僕の責任だ。あと毛布も掛けないといけない。
僕は姉さんから渡されたタオルでつぐの髪を拭く。そうだ、毛布を掛ける前にシャワーを貸してあげないとまずいよな?
「アオ君、髪拭いてくれてありがと」
「いいよお礼なんて。つぐ寒いでしょ?シャワー浴びて来たら?」
「いいの?」
「全然いいよ、僕は待ってるから。つぐ、何か飲みたい物ある?」
ホットミルクが飲みたいかな、とつぐは言った。僕はつぐを浴室に案内するために部屋を出る。浴室に案内した後、つぐはシャワーを浴びるために浴室に入り、僕は暖かい飲み物を入れて待つことにした。
▼▼▼▼
アオ君に髪を拭いてもらうなんて全く予想してなかった。気持ち良かったけど髪を拭くの慣れてるのかな?私はまだアオ君のことよくわかってないんだ。そんなことを思うと悔しいと感じてしまう。
アオ君は私の想いに気づいてるかな?もうこのまま告白してしまおうかと迷ってしまう。それが出来たらどれだけ楽になれるのか、私は何でこんなに焦ってるんだろう。もう少し落ち着かないと駄目だな。
私はシャワーを浴び終えて浴室から出た。体は暖まっても寒気はする、早く拭かないとまずいかな。ここで風邪を引くとアオ君に移っちゃう、それだけは気を付けないと。私はそう思いながらアオ君の部屋へ戻った。
「お待たせアオ君」
「おかえりつぐ、ホットミルク入れといたから暖かい内に飲んで」
「ありがと。アオ君ってお家だと雰囲気違うんだね」
そうかな?とアオ君は言った。あれ?そういえば私、男の子の家に上がるのって初めてだよね?それも好きな人の家、これって運命かな?そんなことを思うと恥ずかしくなる。
今のアオ君は濡れていたせいか着替えていたみたいで、さっきとは服装が違っていた。今の服装はTシャツにジーパンだった。ジーパンは別みたいだ。髪は拭いた後はあるけど若干濡れていた。なんかカッコよく見える。
「アオ君、カッコいいね」
「つ、つぐどうしたの?」
「あれ、私口に出してた!?」
「うん、口に出てた。気づかなかった?」
全然気づかなかった。やっちゃった、やっちゃったよ私!確かにアオ君の言う通りだ。私無意識に口に出してたんだ。
アオ君は顔を赤くしながら目を逸らしていた。もしかして嫌われちゃったかな?嫌われてたらどうしよう……。
「……つぐも可愛いよ」
「アオ君!」
「ごめん!何か言った方がいいかなって思ったというか、何て言ったらいいかわかんなかったから……」
さらに気まずくなっちゃった。今は二人きり、ここでアオ君に告白してしまおうかなんて思っちゃうけど、どうしたらいいかな?
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この空気、どうしたらいいんだろう。何とかしないといけない、つぐと話をしないといけない、そんなことを思っているけど話題が全く思い付かない。外を見ても未だに雨は降っている、雷は少し収まって来たけどまた鳴るかもしれない。
姉さん達にはつぐが泊まることは言ってある。言った瞬間に皆からグッド、頑張ってこい!なんて言われたけど、さすがにこの状況だと難しいと思う。
「あ、あの!」
僕とつぐの声が重なった。これは先につぐに譲った方がいいな。
「アオ君お先にどうぞ」
「いや、つぐが先でいいよ」
「わ、わかった。アオ君伝えたいことがあるんだけどいいかな?」
伝えたいこと?何を言うんだ?告白じゃないよな……?
「わ、私ね……。アオ君のことが……」
その時、雷が鳴った。つぐは悲鳴をあげて直ぐ様僕の腕に抱き着いた。ちょっと待って、なんか当たったんだけど!?何なのこれ!?
つぐは腕を絡めて僕を離さないように抱き着いていた。相当怖いんだ、ここは僕か側にいてあげないといけない。
「大丈夫つぐ?」
「大丈夫だよ。ごめんね急に抱き着いて」
「いいよ、つぐが怖がってるんだ。しょうがないよ、あと何か言わなかった?」
「さっきのこと?ああ、何でもない!何でもないから!」
「そう……」
僕はそれしか言えなかった。何かを言おうとしていたのは確かだ。でもその言葉は聞こえなかった。
――これは聞かない方がよさそうだよな。
僕はそう感じ、つぐがさっき言おうとしていたことを聞かないことにした。今は側にいてあげよう。聞いたとしても話を逸らされるに違いない。
▼▼▼▼
夕飯をご馳走してもらい、夜になった。雷は収まり、雨は止んでいた。今はアオ君と一緒に寝ている。私が側にいたいと、離れたくないと無理を言って入れてもらったからだ。
私はさっきアオ君に告白しようとした。私は何であんなことを言おうとしたのか。アオ君を取られたくなかったから?早く彼女になりたかったから?
焦りすぎたのかもしれない。少しずつアオ君のことを知ってからがいいんだ。アオ君と会ってから四ヶ月になる。
「アオ君起きてる?」
「……」
「寝てる……よね」
アオ君はすやすやと寝ていた。さっきのこともあったから疲れてるのかもしれない。アオ君は私のこと好きなのかな?こんなことを思うなんて、私って重い女だな。
アオ君への告白はまた今度にしよう。早とちりして上手くいかないで別れよう、なんてなったら水の泡だ。そうなったらおしまいだ。
だから私はアオ君のことをもう少し知ってから告白しようと思う。その方がお互いのためになる。
だから――
――アオ君、待っててね!
つぐみの告白は不発に終わりました
告白はいずれまたやることになります