恋は喫茶店から始まる   作:ネム狼

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凄く久しぶりの更新


初めての共同作業、新作は秋の定番

 つぐと初めての共同作業、電話でそう決めたけど、"初めての共同作業"っていう辺りで夫婦みたいに聞こえる。こんなことはつぐには言えないな。もし言ったりしたらしばらく口を聞いてくれなくなりそうだ。

 

 それにしても今日は見知った顔が何人かいる。RoseliaとAfterglowのメンバー、更に日菜先輩もいる。というか何でこんなにいるんだ?何か嫌な予感がする。

 

「ねえモカちゃん、これは一体何の集まりかな?」

「ふっふっふー。あーくん、これはねぇ新作を作ると聞いて集まったのだよー」

 

 ん?新作?もしかしてモンブランのことかな?これは僕とつぐしか知らない筈なんだけど……。僕は不審に思い、ひまりちゃんに聞くことにした。

 

 聞いたところ、つぐがうっかり言ってしまったそうだ。モカちゃんにニヤケている所を見られ、どうしたのかを聞き、電話のことを話したのだ。その後、日菜先輩の耳に入り、紗夜先輩から湊先輩、今井先輩の耳にまで入ったという。

 

 

――つぐ、何故そんなことを……。

 

 

「あっれー?葵、つぐみと二人きりになれるチャンスだったのにって思ってない?」

「そそそそんなこと思ってませんよ!?」

「すみません葵さん。台無しにしてしまって……」

「まぁまぁ葵君、チャンスはまだまだあるんだから。頑張ろうよ!」

 

 日菜先輩からの激励があったけど、決してつぐと二人きりになれるチャンスだったのにとは思っていない。それで何かあったら責任取れないし、つぐとの関係拗れちゃうよ。それだけはあってはならない。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私がアオ君と共同でメニューを作ることを言ったことで、蘭ちゃん達は今頃アオ君の元に行ってる。はぁ、ニヤケてただけだったのに、言わないと気を付けてたのに、結局言っちゃった。あんなに詰め寄られたら言うしかない。

 

 

――後でアオ君に謝っておこう。

 

 

 作業するんだからエプロンは必要だ。接客をやってる時の服も持ってきた。アオ君に似合ってるとか言われそうだな。実際似合ってるって言われたい自分がいる。こんな所、澪さんに見られたら色々聞かれる。

 

 私はカーネーションの裏口に着き、チャイムボタンを押した。ドアが開いた。迎えに来たのは澪さんだった。アオ君は準備をしてるかもしれない。早くアオ君に会いたい。

 

「おはようございます澪さん」

「おはよつぐみちゃん。葵は厨房にいるから準備しちゃってね。葵、張り切ってるみたいだよ」

「そうですか……。アオ君、楽しみにしてたんですね」

 

 アオ君は今回は真衣さんや澪さんの手は借りないとのことだ。澪さん曰く、つぐと一緒にやらないと意味がない。それは嬉しいけど、なんか恥ずかしい。

 

 接客の時の服装に着替え、エプロンをつける。髪型よし、顔よし。アオ君と付き合ってからの私はニヤケることが多くなっている。これだけは本当に気を付けよう。接客の時とかでニヤケたらしばらく籠りたい気分になる。

 

 厨房に入ろうとした時、何か視線を感じた。あれ、気のせいかな?一瞬モカちゃんがいたような……。私はバレないように顔をちょっとだけ出して覗いた。あ、本当にいる。友希那先輩に蘭ちゃん、しかも日菜先輩までいる。もしかしてRoseliaとAfterglow勢揃いで日菜先輩なのかな?

 

「お、おはようアオ君。あれは何かあったの……?」

「おはようつぐ。あれはまぁアレだよ。伝言ゲームがあったんだよ」

 

 アオ君に聞くと、モカちゃんからリサ先輩、そして日菜先輩、紗夜さん、という流れで伝わっていったそうだ。私のニヤケからここまで流れるなんて、なんかとんでもないことになったなぁ。

 

 

――こうなったら仕方ない、やるしかないんだ。

 

 

「とりあえずやろう。皆をビックリさせるくらいなモンブランを作ろう。よろしくねつぐ」

「アオ君頑張ろう!不束者だけどよろしくね」

「待ってつぐ。不束者って、使う場所間違えてる!」

「あっ!?」

 

 間違えた!不束者ってこれじゃあ結婚してるみたいじゃん。私とアオ君は"まだ"結婚はしないから!ってこれじゃあ結婚前提みたいになってるし!

 

 でも結婚したら私は澪さんの義妹でアオ君の妻……あ、いいかも……。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 つぐが張り切ってる。いや、張り切り過ぎてる。たまーにトリップしたり、たまーに戻ったり、それの繰り返しだ。そんな状態になりつつも作業は進んでいる。つぐの中で何があったんだろ。

 

 これは話し掛けない方がいいかな。いや、いつ怪我するかわからない。ここは話し掛けて落ち着かせた方がいい。

 

「つぐ、つーぐ!」

「ひ、ひゃい!?アオ君、どうしたの?」

「大丈夫?トリップしたり戻ったりを繰り返してるけど、いいことでもあった?」

「な、何でもないよ!?何でもないから!?」

 

 怪しいけど、聞かない方がいい。聞いたら生きて帰れないぞ、みたいな警告が僕の心に響いた。うん、これは見なかったことにしよう。その方がお互いのためになる。

 

 作業に戻り、ようやく完成した。あとは評価を聞くだけだ。試作だけど、評価次第によってはメニューに出せる。

 

「何か今日の僕達、夫婦みたいだね」

「そうかな?そうだったら嬉しいかも」

「まぁまだ結婚は早いけどね。僕は何を言ってるんだろ」

 

 評価は美味しかった、という意見が多かった。つぐは蘭ちゃんに質問攻めされ、僕は紗夜先輩や日菜先輩、今井先輩から質問攻めを喰らった。

 

 今井先輩からはやるねー色男と言われ、日菜先輩からは結婚はいつするの?と聞かれる。紗夜先輩に至っては良いものを見させていただきましたと言われた。

 

「葵さん、羽沢さんを幸せにしてあげて下さいね。あと、イチャイチャしてるところ、目の保養になりました」

「え!?イチャイチャしてませんよ!?紗夜先輩急にどうしたんですか!?」

「葵さんと羽沢さんのラブラブが尊過ぎたので……。というのは置いといて、モンブラン、美味しかったですよ」

 

 混沌としてるけど、つぐの表情はとても幸せそうだった。一緒に作ってよかったな。今日のことは忘れないようにしよう。僕は今回作ったモンブランはレシピにするつもりだ。僕とつぐの初めて作った物なんだ。

 

 このレシピは思い出にもなる。僕はモンブランを写真に納めた。名前はまだ決めてない。でも、今思い付いた。名前はーー

 

 

ーーSweet Souvenir(幸せの思い出)




モンブラン作りが申し訳程度になったような気がする
そして紗夜のキャラ崩壊がヤバイ方向に
最後のメニュー名はスイートスーヴニルと読みます
英語とフランス語を組み合わせました

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