アオ君の様子がおかしい。笑顔で接客をしているけど、それは作り笑いで、本当は無理をしているんじゃないのか、私はコーヒー飲みながら思った。もしかして、働きすぎなのかな?
「羽沢さん、どうかしたの?」
「何でもありませんよ!?友希那先輩、私はアオ君のことは見てませんからね!?」
「つぐみ、本音出てるよ」
また本音が出ちゃった!確かにアオ君を見てたけど、どうしても見ちゃうんだよ!アオ君が悪いよ。うう、顔が暑くなってきたよ。私は両手で顔を隠した。隠している間も、私はアオ君をチラッと見た。
その間、蘭ちゃんと友希那先輩は優雅にコーヒーを飲んでいた。はぁ、私って分かりやすいのかな?アオ君と付き合ってから、彼のことを目で追うことが多くなっている。一目惚れしたのが原因かもしれない。今更こんなこと言っても手遅れだよね。
その後、私はカーネーションに居続けた。途中で蘭ちゃんと友希那先輩は帰っちゃったけど、私は夕方までいるとにした。アオ君のことが放っておけなかった。だから私は閉店までいることにした。
「ありがとうございました……あー終わったー!」
「アオ君、お疲れ様」
「ありがとつぐ、まだいたんだね」
「まだいたって……。その……アオ君が心配だったから」
私はアオ君の顔を見ながら言った。営業が終わった途端にアオ君はぐったりとした。やっぱり無理をしてる、私はアオ君に近づき、彼の熱を測ろうと額を触った。
「アオ君、ちょっとごめんね」
「えっ、どうしたのつぐ!?」
「……やっぱり。アオ君、熱あるよね?」
私はアオ君に問い詰めた。彼は誤魔化すこともなく、素直に熱があることを言った。私はアオ君の頬を両手で触り、彼を大丈夫だよ、と慰めた。彼は私にごめんね、と謝った。謝ることじゃないんだけどなぁ。
「葵、明日から熱が治るまで休んでいなさい」
「父さん!?でも、接客は大丈夫なの?」
「澪と深雪君がいるから大丈夫、葵は熱が治るまで仕事は駄目だ」
滋さんにここまで言われたら休むしかない、葵君はわかったよ、と頷いた。明日、看病しようかな。私はそう決心し、アオ君にお大事に、と言いながら喫茶店を出た。
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次の日、僕はカーネーションの仕事を休んだ。父さんだけでなく、母さんや姉さんにも休むように言われた。ここまで言われたら休むしかない。隠せていたつもりでいても、つぐにはバレる。無理し過ぎたかな。
「はぁ、つぐにバレるなんて……。僕って情けないな」
「そんなことないよ、アオ君は頑張ってるよ」
「そうかな……ってつぐ!?何でここに来たの!?」
「えへへ、来ちゃった。ごめんね、アオ君」
つぐはウィンクをしながら両手を合わせて謝った。何だろ、こんなことされたら可愛いから許すってなるんだけど……。来てくれるのは嬉しい。僕はつぐにお礼を言いながら頭を撫でた。
つぐは目を細めながら気持ち良さそうにした。リスみたいだ。何か癒されるし、熱が治りそうな感じがする。実際は下がってない。けど、明日から仕事頑張ろうっていう気持ちになるな。
それはさておき、つぐがここに来たということは、看病しに来たとみていいのかな。まずは理由を聞いてからだ。
「つぐ、どうしてここに来たの?」
「アオ君が心配だったんだ。体調は大丈夫かなって思ってね」
「そうだったんだ。あまり近いと風邪移るかもしれないから、気を付けた方がいいよ」
「ありがとアオ君、心配してくれてるんだね」
「そ、そりゃあね。つぐは僕の……彼女だし……心配するのは当たり前だよ」
僕は顔を赤くしながら言った。それを聞いたせいか、つぐの顔が赤くなったのが見えた。これ看病する前だよね?僕達は何をしているんだ?
つぐは顔を赤くしながら僕にお粥を作るから寝てていいよ、と言った。とりあえず寝てよう。このまま起きていると、気まずくなるし、余計熱が長引く。僕はつぐに言われた通り布団に入り、横になることにした。
ーー今はつぐに甘えよう。何も出来ないのなら甘えるしかない。
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アオ君、あれは反則だよ。私はアオ君に言われたことを思い出しながら思った。いきなりあんなこと言われたら何も言えないよ。ああもう、顔が熱いよ!
「彼女だし、心配するのは当たり前……か。嬉しいけど、あれはズルいよ」
完成したお粥をお盆に載せながら、アオ君の部屋に向かう。どうしてるかな?風邪とか大丈夫かな?苦しそうにしてないかな?私の頭の中は彼のことで一杯になった。それと同時に、私の顔は更に熱くなった。
部屋のドアを三回ノックし、どうぞ、とアオ君の声がした。よーし、頑張ろう!気まずくならないように、後、アオ君の風邪が治りますように!私はお盆を片手に持ちながら、ドアを開けた。
「アオ君、食べれそう?」
「食欲は大丈夫かな。ごめんね、作ってもらって」
「そこはありがとうでしょ。アオ君、食べさせてあげるからじっとしててね」
あれ?食べさせてあげるってことはあれだよね?あーん、だよね?私とアオ君は付き合ってからあーんをやったことは無い。ということは初めてやるってことだよね?
あ、待って。意識したらまた顔が熱くなってきた。これじゃあどっちが熱あるのかわからないじゃん!私はスプーンでお粥を掬い、息を吹き掛けてアオ君の口に近づけた。手が震える、溢さないようにしないと!
「アオ君、あ、あーん……」
「つぐ、大丈夫?手震えてるけど……」
「早く口に入れて!溢しそうで怖いから……」
「は、はい!あーん……」
私はアオ君に口に入れるように促した。彼は返事をし、お粥を口に入れた。よかったぁ。これ、食べ終わるまでやるんだよね?私、大丈夫かな?心臓持つかな?
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つぐに看病をしてもらってから数時間が経った。僕は熱を測ることにした。つぐが目を逸らしてる、何かあったのかな?
「つぐ、どうしたの?」
「な、何でもないよ!」
「そう……。本当に何もない?」
「うん、何もないから。本当に何もないから!」
大丈夫なら問題ないか。体温計が鳴ったのを確認し、体温計に表示されている温度に目をやる。体温は……36.6℃か。大分下がってきたな。
「下がってきたね。大丈夫そう?」
「うん、後は寝てれば治るかな。明日にはまた仕事に出られそうだよ」
「よかった。これでまたアオ君のコーヒーが飲めるよ」
「言ってくれたらいつでも淹れてあげるよ。つぐ、今日はありがとね」
僕はつぐにお礼を言った。つぐはどういたしまして、と言った。そして、また明日ね、と言って僕達は別れた。今度何かお礼をしないといけないな。とっておきのコーヒーを淹れてあげようかな。
それにしても、つぐ何かあったのかな?何もない、なんて言ってたけど、怪しい。聞かない方がいいかもしれない。聞いたら、何か言われそうだし、やめておくか。
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私は歩きながら、さっきのことを振り返った。アオ君に何もない、何て言ったけど、本当はある。それも彼には言えないことだ。
「アオ君が体温測るだけなのに、首元や鎖骨が……綺麗だなんて……言えないよ」
アオ君、もしかして誘ってるのかな?体調を崩してなかったら、襲ってたかもしれない。普段の私ならやらないのに、アオ君が相手だと襲っちゃうかもしれない。私、何を言ってるんだろ。
今日は疲れてるかもしれない。帰ったらゆっくり休もう。アオ君といるだけなのに、顔は熱くなるし、ニヤケそうになるし、ああもう!全部アオ君のせいだよ!
でも、可愛かったからいいか。今度、私が体調崩したら、アオ君に看病してもらおうかな。私はそんなことを思いながら、帰路に着いた。
天使によるバリスタのための看病であった