恋は喫茶店から始まる   作:ネム狼

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本格的な冬が始まろうとしている


少女の決意、寒がりなバリスタ

 ナニの悲劇と期末試験から一週間が過ぎ、本格的な冬が始まった。12月が始まったのだ。この時期になると色々な行事が行われる。行事によっては店が混む時がある。特にクリスマスがヤバい、クリスマスは僕にとって地獄かつ忙しい一日だ。

 

 地獄だけど今年は違う。今年はつぐと付き合って初めてのクリスマスだ。地獄のような一日なのか、癒しの一日になるのか……不安しかないけど、楽しみだ。

 

「寒い……もう12月になるって、早すぎない?」

「言われてみればそうだね。雪が降らないように祈らないと」

「いや雪は降るでしょ」

「雪降ったら雪掻きでしょ?私は面倒だからやりたくないよ。葵だって嫌でしょ?」

 

 姉さんの言う通り、僕だって雪掻きはやりたくない。面倒なのは凄く分かるけど、やらないと客が店に来なくなる。それを考えると、面倒でもやらなきゃいけない。店と客の為にと思えば楽になるんじゃないのか……。

 

 羽沢珈琲店も雪掻きの方はどうなってるんだろ?近くにはやまぶきベーカリーや北沢精肉店がある。商店街は商店街で協力してやっているかもしれない。それなら心配しなくてもいいか。

 

「そろそろ準備しようか。ああ寒い寒い」

「そうだね、深雪さんが中の清掃終わったかもだし入ろうか」

 

 こんなに寒いと外に出たくないな。中は暖房付いてるから大丈夫か。今日は客が少ないかもしれない。落ち着いてた方が僕としては楽にやれる。このまま混まないように祈るか。

 

 

ーーしかし、僕の祈りは通じず、午後は普通に混みました。解せぬ……。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 午後になり、店は落ち着き始めた。アオ君、大丈夫かな?最近のアオ君は何かおかしい。手を繋ごうとしたら冷たいから繋がない方がいいよって言われるし、寒いなぁって結構言うし、寒がりなのかな?

 

「つぐみ、どうしたの?」

「蘭ちゃん!?」

「どうせアレでしょ?葵のこと考えてたんでしょ?」

「何で分かるの!?」

「葵のことになったらボーっとするでしょ?顔に出てたよ」

 

 ボーっとしてるって自覚ないなぁ。私ってそんなに分かりやすいかな?こんな顔、アオ君には見せられない。いや、見られたら穴に入りたいくらいに見られたくない。

 

 顔に出てたということはさておき、これからどうしよう。彼に何か出来ることはないかを思いながら、私は席に座り机に項垂れた。今いるのは私と蘭ちゃんだけだ。偶にはこうしてもいいよね……。

 

「蘭ちゃん、どうしたらいいかな?」

「どうしたらって何を……」

「アオ君って寒がりかなって思って、何かしてあげられることはないかなって」

「それをあたしに聞くの?」

 

 蘭ちゃんは呆れながら言った。聞いても意味ないかな?こんなことを蘭ちゃんに聞いても自分で考えなよって言われるのがオチかもしれない。いつも皆に相談していたけど、今回は自分で考えるべきかもしれない。

 

 彼と付き合う前にプレゼントした物はチョーカーだ。私は彼にいつも貰ってばかりだ。貰ってばかりじゃ駄目だ、今度は私がアオ君に贈り物をしよう。

 

「蘭ちゃん、私決めたよ」

「決めたって……葵にしてあげられること?」

「うん。アオ君にマフラーとか手袋をプレゼントしようって決めたの」

「そっか、何かあったら相談してね」

「ありがとう蘭ちゃん」

 

 私は決意した。今年のクリスマスプレゼントはマフラーと手袋にしよう。編み物はやったことはないけど、リサ先輩なら教えてもらえるかもしれない。

 

 上手くいかないかもしれない、失敗しちゃうかもしれない。でも、決めたからには諦めたくない。アオ君への手作りのプレゼントは初めてだ。上手く出来るように頑張ろう。このことはアオ君にバレないようにしよう。

 

「蘭ちゃん、このことは……」

「もちろん葵には黙っておくよ。モカにも釘は刺しておくから」

「モカちゃん、サラッと言いそうだよね」

「まぁモカだからね」

 

 モカちゃんだったら絶対に言いそうだ。バレたら計画は台無しになる。このサプライズはアオ君の為なんだ。最高のプレゼントにしよう。それで、アオ君を喜ばせよう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ベッドに横になり、僕はつぐに電話を掛けた。寝てるかな?もし寝てたら学校で話すか。僕は彼女と今月の予定について話し合うことにしていた。秋は店のことで忙しくて、デートも出来なかった。つぐはどう思ってるんだろう。そう考えると不安に感じるな。

 

「アオ君?どうしたの?」

「つぐ、今って大丈夫?」

「いいよ、私もアオ君に電話しようかなって思ってたところだから」

「そうなんだ。つぐ、今月って……クリスマス空いてる?」

「クリスマス!?ちょ、ちょっと待ってね!」

 

 急に慌てるなんて何かあったのか、ちょっと急過ぎたかな?そうだったら、電話するべきじゃなかったか。しばらく待っていると、スマホ越しから彼女の声がした。

 

「お、お待たせ」

「大丈夫?何か息切れしてるように聞こえるけど……」

「大丈夫!大丈夫だから!えっと、予定だよね?」

「うん。25日なんだけど、その日って空いてるかな?」

「25日は空いてるよ。何かあるの?」

 

 25日は彼女とデートをしようと決めていた。空いてるって言った、後はデートしようと言うだけだ。それだけのことなのに、何故か緊張してしまう。ここで緊張するなんて情けない。僕は深呼吸をし、落ち着け自分と言い聞かせた。

 

「何かっていうか、その……一緒に出掛けようかなって……」

「出掛けようって、それってデートってことでいいの?」

「そ、そうだね。デートだね」

「……分かった。予定空けとくね、ありがとうアオ君」

「どういたしまして?」

「ふふ、何で疑問形になるの。おかしなアオ君」

 

 笑われた。こんなことで笑われるなんて僕はどれだけヘタレなんだ。付き合っているのにはっきりと言えない、デートしようってカッコよくキメたかったのに、思っていたものと違うし……。上手くいったからいいけど、しっかり言えればよかった。

 

 僕は彼女と予定のことを話し終え、スマホを切った。あとはクリスマスに備えるだけだ。

 

「つぐって何か欲しい物あったかな?はぁ、クリスマスプレゼントどれにしようかな」

 

 期限は三週間。それまでにクリスマスプレゼントを用意しないといけない。時間はあるんだ、焦っちゃ駄目だ。つぐに最高のプレゼントをあげたい。思い出に残る一日にしたい。決めなきゃいけないものは色々ある。

 

 

ーー今年一番の思い出にしよう。それで、つぐにありがとうって言おう。

 

 

 

 




二人のクリスマスは上手くいくのか
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