『鍵使い』が行くありふれた世界   作:星紡 粋蓮

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ヒロインアンケート……あと一週間もないけど、もうダブルヒロインにしてもいい気がしてきた。


第3話 イジメと子供の勇者

あれから二週間ほどが経過し、ステータスはこんな感じになった。

 

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粋月夜空 16歳 男 レベル:8

天職:キーブレード使い

筋力:145

体力:170

耐性:150

敏捷:165

魔力:170

耐魔:150

技能:鍵の力・回復魔法・全属性適性・闇属性耐性・剣術・高速魔力回復・気配探知・壁走り・言語理解

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ちなみに“鍵の力”に触れてみたらプレートにこう表示された。

 

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【鍵の力】

魔力操作・想像構成・リフレクトガード[+リベンジアッパー]・ドッジロール・ダブルフライト・エアリカバリー・グライド・エアスライド・ソニックレイヴ・ザンテツケン・フラッシュライナー・ダークスプライサー・シャドウブレイカー・ストライクレイド・ラストアルカナム・スタイルチェンジ・キーブレード変形

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ルクシア様(俺を転生させた女神)の元で修行していた時に使っていたグロウアビリティやアタックコマンドとやらがほぼ全てあった。リフレクトガードから予想すると、リベンジ系や属性が付与されたコマンドは派生技能として出てくると思う。ところで、スタイルチェンジからなにも派生してないからなのか、スタイルチェンジができない。

しかも、この世界の魔法の使い方のせいで容易に使えない。

ここトータスおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法が発動するというプロセスを経る。魔力を直接操作することはできず、どのような効果の魔法を使うかによって正しく魔法陣を構築しなければならないという面倒臭いモノだった。

しかも、効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなり、必然的に魔法陣自体も大きくなる。

例えば、火属性基本の“火球”を直進で放つだけでも、一般に直径十センチほどの魔法陣が必要になる。基本は、属性・威力・射程・範囲・魔力吸収(体内から魔力を吸い取る)の式が必要で、後は誘導性や持続時間等付加要素が付く度に式を加えていき魔法陣が大きくなるということらしい。

しかし、それが適性があると話が別になるらしく、体質によりある程度式を省略できる。例えば、火属性の適性があれば、式に属性を書き込む必要はなく、その分式を小さくできると言った具合だ。

この省略はイメージによって補完される。式を書き込む必要がない代わりに、詠唱時に火をイメージすることで魔法に火属性が付加されるのである。

そして俺は“鍵の力”の中にある“魔力操作”と“想像構成”のおかげで、キーブレードを介してなら魔法を無詠唱・魔法陣無しで使える。最も、俺が魔法を使うところを教会の連中に見られれば面倒臭いことになるだろう。

ちなみにハジメは適性もなかったが、それでも自分にできることを探して王立図書館に通いつめている。

そして俺は現在、チリシィを抱いた八重樫さんと共に、訓練場へ向かっている。

 

「助けて夜空ー」

「あのー、八重樫さん? そろそろチリシィを返してくれませんか」

「もうちょっと、もうちょっとだけ」

 

なんでこうなったかというと、俺がキーブレードの素振りしていたらちょうど八重樫さんがやって来て、ちょうど俺の動きを見ていたチリシィが八重樫さんに捕まってしまった。

 

「というか、八重樫さんって可愛いもの好きなんだ」

「はっ!」

 

俺の言葉に八重樫さんはビクッ、としてこちらを向く。

 

「女の子らしくていいと思うよ」

「そ、そう? ありがとう」

「ただほら、そろそろ訓練場だからさ」

 

八重樫さんは少し顔を赤くし、チリシィを降ろす。チリシィはふぅ、と息を吐く。

 

「ん、あれは……」

 

すると、ハジメが檜山達に連行されるかのように、人気のない所に向かって行くのを見つけた。

 

「……」

「どうしたの?」

「八重樫さん、白崎さんたちを呼んできて」

「え?」

 

俺は八重樫さんにそう言うと檜山達の方へ駆け出した。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

「ほら、なに寝てんだよ? 焦げるぞ~。ここに焼撃を望む――“火球”」

 

近藤によって転ばされたハジメに向かって中野が火属性魔法の“火球”を放つ。俺はキーブレードを呼びしつつ、檜山達を飛び越えてハジメの前に着地し、“火球”を防ぐ。

 

「なっ!」

「よ、夜空……くん」

「無事か。いや、無事じゃあないな」

 

そう言うと檜山達に向かってキーブレードを構える。

 

「邪魔すんなよ粋月」

「俺達は南雲の特訓に付き合っただけだぜ」

「……そうか。一方的に攻撃するのが特訓か。なら」

 

一旦キーブレードを下ろす。そして、切り上げるのと同時にキーブレードを鞭に変形させる。

 

「うっ」

「え……」

 

鞭となったキーブレードによって近藤は腹を打たれ、2回ほど転がる。それを見た檜山は茫然とする。

 

「ひっ! こ、ここに焼撃を望む――“火球”」

「こ、この! ここに風擊を望む――“風球”」

 

そんな近藤を見て中野と斎藤が魔法を放つ。

 

「へ? ぐあ!?」

「なん、うご!?」

 

しかし、リフレクトガードで跳ね返された魔法を喰らい、近藤と同じように転がる。

 

「な、なんなんだよ」

「なにって特訓だよ。お前たちのな!」

 

キーブレードを振り下ろすが、檜山はとっさに剣で防ぐ。なのでキーブレードを1度しまい、逆手で呼び出し、檜山の剣を弾き飛ばす。そしてキーブレードを順手に持ち変えて、再び振り下ろそうとすると後ろからキーブレードを掴まれた。振り返ると八重樫さんが少し悲しげに掴んでいた。

 

「もういいわ」

「……わかった。けど」

 

キーブレードを左手に呼び出し檜山に一撃を入れる。

 

「がっ!」

「こいつだけ無傷ってのは無しだ」

 

八重樫さんは何か言おうとするが、何も言わずハジメの方を見る。俺もハジメの方を見ると白崎さんが回復していた。それを見て俺達もハジメに駆け寄る。

 

「大丈夫か、ハジメ」

「あ、ありがとう。夜空くん、白崎さん。助かったよ」

 

ハジメは苦笑いしながらお礼を言う。すると白崎さんは泣きそうな顔で首を振る。

 

「いつもあんなことされてたの? それなら、私が……」

「いや、そんないつもってわけじゃないから! 大丈夫だから、ホント気にしないで!」

「君はもう少し、他人に頼った方がいいんじゃないかな」

「……なにこれ」

「……可愛い」

 

チリシィがハジメに意見を言うと、ハジメと白崎さんの二人はチリシィを見て固まる。あ、チリシィが白崎さんから少し距離を取った。そして八重樫さんはチリシィの言葉に「うんうん」と頷いてる。

そこに天之河が水を差してきた。……ていうかいたんだ。

 

「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛練に充てるよ。南雲も、もう少し真面目になった方かいい。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

己の正義感のみでハジメに忠告する天之河に、俺は無言でキーブレードを突きつける。

 

「な……」

「ハジメはさ、戦闘系じゃないんだよ。そんなハジメを、勇者のお前基準で語るなよ」

「だ、だが」

「お前に見えなければ全て不真面目か! お前だけが正しいと思うな!」

「っ!」

「お前は所詮、理想しか見ない子供だ」

 

俺はそう言い放つと、キーブレードを消して天之河の隣を抜けて訓練場に向かう。その時の天之河は、苦虫を噛み潰したような表情だった。

 

その晩、メルド団長から明日から【オルクス大迷宮】へ実戦訓練をしに行くからしっかり休めと伝えられた。

実戦訓練と聞いて、「未来の力はもう借りれないし、そもそも戦い方がなってない」という理由で、あの世界の未来の出来事を夢という形で体験させられた事を思い出した。アレよりは楽だろう。

ちなみにチリシィは八重樫さんに「今晩だけ」と連れてかれた。帰ってこないのだから、なんだかんだ受け入れているのだろう。

 

後で聞くと、離れようとしたら八重樫さんが悲しそうな顔をしたから、だそうだ。




※フラッシュライナー……青年ゼアノートの技。3Dでキーブレードがめっちゃ伸びて曲がるアレ。この技、光の玉をキーブレードで繋げてたのね。Wiki見るまで知らなかった。


天之河と戦わせようと思ったけど、体力200じゃすぐ終わるので止めた。檜山達はKHシリーズのチュートリアルと思って書いた。

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