「お、学年で一番の幸福者が来たぞ、未だ殺されて無かったか」
「お前もな、レースクィーンの妹持ちの武藤くん?」
朝から暴走してるチームメンバーの対応に追われて、くたくたで教室に入ると、クラスの雰囲気がいつもと違って物々しくなってた。
そんな雰囲気も無視して俺に話しかけてきた武藤に、軽口を返して武藤の席の近くにある席につく。
「おはようキンジ君、朝から大変だったみたいだね」
「不知火か、おはよう。この後一日あいつらの暴走に付き合うと思うと、憂鬱で仕方無い」
ったく、あいつらも大人しく順番に渡してくれれば良いのに、何で直ぐにケンカ始めて武器を持ち出してくるのか、特にアリアと理子。
「うん?お前メール見てないのか?」
「はぁ、メールって?」
「これだよキンジ君、今日は同盟を組んでもらおうと思ったんだけど、無理そうかな?」
不知火から見せてもらったメールが、頭のオカシイ内容で叫ぶ。
「この学校はこれで良いのか!!!!?」
「それは俺も不安だがな」
思わず叫んだ俺に、武藤が悲しそうに同意する。
「いやはや本当に残念だ、お前達は友達なんだが、なんせ今日はバレンタインだからな」
そういって何処から取り出したのか、顔すら覆う全身ローブを被ってコルト・パイソンを構える武藤に、席から立ち上がって周りを見渡す。
「僕一人じゃ教室から抜け出せなくて困ってたんだよ、ここは手を組まないかい?」
周りのクラスメイトも覆面を被って此方を見ていた。席が窓際なのもあってか、出口までの道を堅められて抜け出す事が無理そうだ。誤射を恐れて武藤以外は銃を構えてないのが未だ救いか。どうやら不知火は、最初からこの状態で捕らえられてたらしい。物々しい雰囲気とは思ったが、まさか俺と不知火を捕らえる為だったとは。
「武藤団長、A組メンバー、準備出来てます。それと、後で先程の遠山の発言についてお話が」
「あ、あぁ、分かっている。FFF団、彼奴等をここから逃すな!!」
「「「「「うぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
「キンジ君、早く返事を!」
しかも武藤がリーダーかよチクショウ!!
春水車でヒステリアモードになりつつ、不知火に返事をする。
「一緒にここを抜けるぞ、不知火!!」
「ガァッ!?キンジテメェ、絶対に轢いてやる!!」
俺は隣にいる不知火に声を掛けて、こっちにコルト・パイソンの銃口を向ける武藤目掛けて、遠山家に伝わる技、矢指………呼びにくいから俺は『
「第1班は下駄箱を張れ!第2~第4は校庭だ、キンジと不知火をにがすなぁ!!!!」
俺と不知火が校庭に着地すると、武藤の怒号が聞こえるえ間も無く、下駄箱の方からドタドタと大量の人が動き回る音がして、退路を塞がれた事に舌打ちする。
「チッ、これからどうする?」
「生徒皆が敵になるなら、先ずは仲間集めとかじゃないかな?」
舌打ちしながら相談した俺に、苦笑いしつつ不知火が提案してくる。
仲間集めか、バスカーヴィルのメンバーは今朝の事があって仲間割れしてるし、元イ・ウーメンバーに声を掛けてみるか?
「そうなると、ここからじゃ不安だな、何処か良い場所ないか?」
「良いよ、とっておきの場所があるん「遠山ぁ!!」ッッッ!?」
不知火がそういって話を続けようとした時、怒鳴り声が聞こえてきて咄嗟に横に跳び込むと、俺が居た位置目掛けて弾丸が飛んできて、立ち上りながら弾丸が飛んできた方を見ると、長いポニーテールの髪につり目で凶悪そうな笑みから覗く犬歯がチャームポイントな、我らが
「お前らは不知火をやれ、遠山は私がやる」
「「「「「イエス、マム!!」」」」」
そういって不知火に向けて各々の武器を構えて突撃する生徒に、不知火はその場から走り出しながら言う。
「ゴメンキンジ君、
「おう、お前も気を付けろよ!」
強襲科で見たBランクの奴等も混じってたから、あっちもヤバそうだと思ってると、蘭豹の奴が俺に向けて発砲してきたから、それをバタフライナイフで
「蘭豹先生何でこんな事をッッッ!!!!」
「うるさいわ!!良いから私と香港に来い遠山!!!!」
尚も俺に向けて乱射をする蘭豹に、困った人だと頭を振って、市販のリボルバー最強と名高いS&W M500から放たれる専用弾の.500S&W弾を回避する。.500S&W弾は.454カスール弾よりも強力な弾丸であり、市販の防弾装備なら簡単に貫通するレベルの威力を持っている。
「生徒にそんな危ない物向けないで下さいよ」
「お前がこれしきで危ない?私を笑い殺すきか!?」
こっちに向かって笑いながらリロードしたM500を上に投げて俺に殴り掛かる蘭豹に、拳をいなしながら距離を取らないようにする。時々バタフライナイフで牽制するも、力が乗る前に弾かれて上手くいかない。
「大人しく香港に来る気になったか、お?」
女性とは思えない怪力てな掴まれそうになるも、バタフライナイフを手放して空いた手で顎に掌打を入れて強引に振り解く。
「生憎と、俺は日本が好きなので!」
「乙女の顔に躊躇なく攻撃するとか、鬼畜やなぁ」
乙女って感じじゃないでしょ先生は!?
「未だ19やのに、嫁に行けんかったらお前のせいやで!!」
軽口叩いて落ちてきたM500を近距離で打っ放してきた蘭豹に、
「痛っつ、お前本当に容赦無いなぁ」
「蘭豹先生に言われたくないです」
一つ一つが鉄板貫通する威力の拳を捌くこっちの身にもなって欲しいな、本当に。
「一年の頃は可愛かったのに、こんな生意気になりおって」
「危うく先生の人形になる所でしたよ、怖い人だ」
この人は日頃の態度を見てると脳筋と思われがちだが、ただの脳筋が香港最強になれる訳が無い。結構な策略家でもあって頭は良いのだ、この人。
「ハッ、本当に可愛げ無いなぁ遠山!!」
距離が開いたからか、M500を連射してくる蘭豹に、更に距離を取りつつ、銃弾を
「それならならもう少し、可愛げある人に自分がなってくださいよ」
ベレッタのマガを交換しながら軽口を叩いくと、蘭豹が一瞬キョトンとした後、笑いながらM500のリロードを済ませた。
「キショイ事言うなや!!」
蘭豹がまた走ってこようとするのを、ベレッタで牽制しつつ、胸ポケットに入ってる銃弾から、手探りで目的のものを見付ける。
これとこれに、これだな。
「今度こそ捕まえたで遠山ぁ!!」
残り3メートルはあった距離を一歩で縮めた蘭豹の目の前に、目的の銃弾を放って言う。
「残念ながら、ゲームはここまでです」
瞬間
「………て……やま!!……げん…や!!!」
音響弾で聴こえない耳が蘭豹の声を捉えたが、無視して校庭を後にする。蘭豹は閃光弾と音響弾で三半規管に影響が出たのか、その場で座り込んだままだ。
さてと、これから何処に隠れてやり過ごすか。………武偵弾使うことになるなんて、蘭豹本当に強いなぁ。
「チョコ渡せてないっちゅうに、バカが」
懐から出したワインレッドのリボンでラッピングされた小箱を出して、つまらなそうに呟く蘭豹に、いつの間にか居た高天原が言う。
「帰りのHRで私皆にチョコを配るので、こっそり渡してきましょうか?」
「お前そんな事してたん?まぁええか、頼むわ」
高天原にチョコを放ってその場に立つと、携帯でメールを手早く打つ。
「これで良し…………ったく面倒な依頼もあったもんやなぁ」
「神崎さんとキンジ君、後峰さんにレキさん。一年では間宮さんの姉妹に佐々木さん。今年は
嫌そうに溜め息吐く蘭豹に高天原も苦笑いしつつ話を続ける。
「年々
校舎に向かって歩きながら言う蘭豹は、口では文句を言いつつも、身体から嬉しさが溢れ出ているのを隠しきれて居なかった。
「それでも大事な生徒ですし、ね?」
高天原もそれに気付きつつも咎めない、生徒が道を踏み外した時に止めるのは、自分達だと考えているからだ。
「
生まれつきの
「その、すまん」
「君が隠れる所を探してここに来たのはまぁ、仕方が無いね。今の学校は君達強襲学部の高ランカーにとって確かに危険だ」
蘭豹から逃げて、学園島を隠れながらメールを再確認した俺は、学園島と台場を繋ぐ道路がこのイベントの間封鎖されてるのを知って絶望し、人気の無い部活棟にある空き部屋で籠城しようと忍び込んだが、そこでばったりこいつと鉢合わせしてしまった。
「切羽詰まってたのは分かるけど、だからってノックもせずに入らないでくれるかな!!?」
涙目で顔真っ赤にしつつ、土下座してる俺の背中をゲシゲシ素足で蹴ってくるワトソンに、慌てて言う。
「そんなでかい声出すな、ここに居るのがバレるだろう!?」
「うるさいうるさい!君は僕の着替えを覗いたんだ、このまま掲示板に
携帯片手に脅してくるワトソンに、俺は冷や汗を流しながら言う。痴漢で逮捕とか、兄さんに殺されるから止めてくれ!!!!
「本っ当にすまなかった、俺に出来ることなら何でもしよう、だからチクるのは勘弁してくれ!!」
その言葉に反応したワトソンが、蹴るのを止めて俺を見てくる。
ぐっ、この体勢だとワトソンのスカートが危ないラインで、奥の三角布が見えそうで怖いんだが。
「本当?本当に何でも聞いてくれるのかい?」
女っぽい仕草に慣れてないワトソンは、そんな事に気付かずに俺の前に屈んでくる。
だぁぁーー、止めろそんなことするな!見える見えちゃう三角布が見えちゃいます!?
水色が一瞬見えて慌てて下を向いて答える。何でそこは破壊力抜群なんだよ、ギャップで俺を(社会的に)殺すきか!!
「1つだけだ、1つだけだからな!?」
落ち着け俺のヒス血流、ここでなったらお前は今日の夕刊に犯罪者として乗る事になるぞぉ!!
俺が血流を落ち着けるためにバカ共とゲーセンに行った時の事を必死に思い出してると、ワトソンが俺から離れて、自分のカバンから小さなラッピングがされた小箱を出して、俺に渡してきた。
「こ、これの感想をくれないかい?」
「これって、チョコか?」
立ち上がりながら小箱を受け取ると、ワトソンがうなずく。
「女性らしさの特訓で、僕が作ってみたんだ。君は甘いのが苦手と聞いて、感想を聞くのを諦めたんだが、無理だったら良いんだ……………その、ダメかな?」
身長差のせいで上目遣いになってるワトソンに、俺は必死に血流を堪えながら答える。
「これで一つだからな?」
「ありがとうキンジ!お茶を買ってくるから、少し待っていてくれ」
嬉しそうに微笑んで、財布をカバンから出して部屋から駆け出して行ったあいつに、思わず呟く。
「
今日は晴れてて気温が高いとはいえ、未だ2月なのに、ボーダーのシャツにジーンズの上着とミニスカという薄着で、普通に似合ってて可愛い格好で外に出たワトソンに、あいつ
さっきまではワトソンとのゴタゴタで、ここが何の部屋かもろくに確認してなかったからな、画材にキャンバス、絵の具に筆………美術部だったのか、ここ。
壁際には部活で書いたと思われる絵が飾ってあって、ワトソンが来るまでの暇潰しに見てたんだけど、結構よく書けてるのが多くて驚く。
「武偵高の連中でも、こういう絵が描けるんだな」
絵を見ていたら、ワトソンの名前があった、鳥の絵だろうか?青空と共に書かれた白い鳥が描かれた絵を見ていると、部屋に誰か入ってきたのが分かって振り向く。