「キンジ先輩は、どの娘がタイプです?」
ミスコンが始まって直ぐにキンジからメールが来て、わりと時間が経たないで合流出来た。何の用事か知らないけど、何か合流前よりも機嫌が悪そう?
「変なこと聞くな」
今も何か考えてるキンジに、話し掛けても素っ気ない言葉しか返ってこない、折角のお祭りなのに何考えてんのさ。
「ミスコンなんだからこれくらい普通ですって、私あの三番の女の子可愛いって思います」
無理にでもこっちに意識を向けさせようと話を続ける。あのピンクに花柄のちっちゃい女の子とか、スゴく可愛い、西洋人形みたい。
隣の四番は美術品枠なんで除外です。あの美しさは比較しちゃダメなタイプの美しさ。傾国美人って言葉を体現してる人だからね。アリア先輩もキンジも無視してるよ、つかキンジはよく平常心が保ててるね、ようたが女装してミスコン出てるとか言われたら、私無心で写真撮りまくる機械になる自信があるよ。
「あれウチの高校の
「え!?」
あの人が先輩!!?
身長高く見積もっても140無いよあの人!?私が言えたことじゃないけど(139㎝)。何て言うか、えーと、理子風に言うなら合法ロリ?アリア先輩も驚いてるよ、まぁ、私含めて三人とも身長10㎝も違わないんだけどね。武偵高はロリ体系の生徒が多い気がする。勿論白雪先輩とか、中空知先輩とか、おっきい人も沢山居るけどね。
「私はあの六番の人、モデル体型でキレイだわ」
あ、確かにキレイで格好いい感じ。今舞台に出てきた長い黒髪を結ってうなじを見せてる女の人が、司会の人に質問されて答えてる所だ。観客の男の人達が鼻の下伸ばしてるのが分かる。
彼女が最後みたいで、出てきたのとは逆の順番でアピールタイムがあるみたい。
「エントリーナンバー六番 ヨウコちゃんは趣味は何かな?」
「えっと、私お爺ちゃんっ子で将棋と囲碁が打てます」
「お、渋いねぇ、お料理とかしたりする?」
「少しだけ、私和食しか作れなくて」
「おぉ!良いね和食!!得意なお料理とかって何かな?」
「えっと、肉じゃがです」
「「「「「キタアァァァァァァ!!!!!!」」」」」
「皆さん静かに~。肉じゃが良いよね、地方によって作り方とか違うみたいだけど、ヨウコちゃんの好きな作り方ってある?」
「私は、お肉を季節に別けて使う作り方が好きです。夏は豚肉で冬は牛肉を使ってます」
「良いねそのこだわり、夏に夏バテに効く豚肉で、冬は濃い味付けに負けない牛肉、食べる人を考えてるこだわりで、良いお嫁さんになるよ。」
「あ、ありがとうっ、ございます!」
「じゃあ最後に、結婚したらまず何したい?」
「え!?えっと………秘密ですっ!」
「「「「「うぉおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
恥ずかしそうに言うヨウコちゃんの言葉に、会場が大盛り上がり、何かもう別の宴になってない?
つかあざといなヨウコちゃん、格好いい見た目に反して回答がカワイイくてあざとい。
「………………」
「ん?キンジ先輩どうしたんです?」
ものっスゴい微妙な顔してるキンジが気になって話し掛ける。
「いや、このミスコン男も参加アリなのかと思って」
「まさかっ、そんなはず無いですよ!皆スゴい美人さんじゃないですか」
特に六番のヨウコちゃん、スゴいキレイ。
「いや、四番以降、全員男だ」
「「えぇぇぇぇぇぇ!!?」」
思わずアリア先輩とハモってしまった。
私達が何か言おうとした時、司会の人の声がタイミングバッチリに耳に入ってきて思わずそっちを見る。四番は知ってるから今更驚かないけど、五番と六番の人も男の人ってこと?
「エントリーナンバー五番 ナダちゃん、趣味は何かな?」
「えっと~、和菓子作ること、かな?」
ちょっとギャルっぽい感じの喋り方の、紺地にトンボ柄の、男モノっぽい浴衣を着てる人が答える。あの人も結構な美人さんなんどけど、雑誌モデルとかに居そうな感じ。水着とか結構際どいの着てるタイプの人。
「和菓子!?スゴいね!じゃあお料理とかも得意なのかな?」
「得意なのは和食だけどぉ、中華もフレンチもいけるよ~」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
「お静かに~。まぁでも男としては嬉しいですよね。ほら、家庭的な女の子にパスタ作ってもらったりとか、私だったらもう惚れちゃいますよ」
「あはは、司会さん上手~。でも私ホレっぽいから、結婚とか難しそう」
最初は調子良く話してたナダちゃん、途中ちょっと落ち込んだ感じの雰囲気を出して、元気な感じからのギャップ狙いで、男の人達が何かもうスゴい事になってる。
ナダちゃんもあざといな、ヨウコちゃんよりあざとい!!
「あの人が男?本当に?」
「男だよ、っつか知り合い」
アリア先輩が信じられなくてキンジに確認取るも、返ってきたのは耳を疑う言葉だった。
「知り合いって、マジですか!!?」
「こんな嘘なんて吐かねぇよ、ほら写真」
携帯をいじって画面を私に見せてくるキンジ。
写真に写ってるのは、キンジとカナさんに何か筋肉の塊みたいな男の人とその人の腕に抱かれて気持ち良さそうに眠ってる女の子。それと肩パッドがキツい男の人と、ようたにかがり、私のお父さん、最後に風魔 陽菜ちゃん。
画面一杯に写っててどこで撮ったのか分からないけど、スゴいメンバーね、皆何かしらAランク以上の人ばっかり。強さがRランククラスも居るし、知らない人もとんでもない強さなんだろうな、特に筋肉の人。
「で、この肩パッドの人ですか?」
「そうだけど、それ本人気にしてるからあんま言わないでやってくれ」
「会うことがあったら気にします」
「私は、このメンバーが殆ど分からないんだけど、キンジの友達?」
「一度このメンバーで仕事したんだ、その時の記念写真」
「エントリーナンバー四番 カナさん」
「よろしくお願いしますね?」
その瞬間、音が止んだ。
さっきからひっきりなしに盛り上がってた男の人達が、余りの美しさに口を開いて呆けてる。司会の人も緊張してるのかさっきより表情が硬い。
「カナさんご趣味は何でしょうか?」
「私キリシタンでして、日曜日の礼拝の後にクッキーを焼いて信者の子供に配るんです、それが趣味の様なものかしら」
女神!?
「そ、そうなんですか。お料理とかはしたり?」
「ローマに留学した事がありまして、イタリア料理を少し」
「す、スゴいですね、プロフには18歳と書かれているんですが、飛び級ですか?」
「はい、16の頃に高校の卒業認定を取って留学しました」
天才!?
「そうなんですか、ご結婚とか興味あります?」
「今は未だ、私はカトリックなので考えてません」
「もし、旦那さんが出来たら何をして欲しいとかありますか?」
「そうですね、私は特殊な事情を抱えていますから、それを理解してくれれば良いと思います」
天使!?
「ありがとうございました。続いて三番 いちごちゃんです!」
「ふぇっ、い、いちごですのだっ、よろしくね!!」
次のいちごさんが可哀想、前のカナさんが強烈過ぎて、いちごさんも可愛いんだけどインパクトが無くて、お客さんの受けもあんまり良くないし。
「いちごちゃん、趣味は何かな?」
「レース観戦で、将来の夢はレースクィーンなのだ!」
「スゴいねぇ、レースってスポーツカーでしょ?」
「そうなのだ、乗り物が好きで、フェリーにもよく乗りに行くのだ!」
最初は緊張してたみたいだけど、趣味の話で元気一杯に答えるいちごさんに観客の人達もほっこりしてきた。
「好きだから自動車免許取ったのだ!!」
浴衣の袖口からデコってるピンクの財布を出して免許証を見せてるいちごさん、大型二種だけじゃなくて大型特殊二種に、テンション上がって他にも免許証を出してる。
「えっ、本当にスゴいね!!?大型二種を二つも取れるってプロだよもうそれ!!」
司会の人もそれを見て目を丸くした後、会場の人にどれだけスゴいかを言う。会場の人も司会の人の言葉で目を丸くしてざわつき始める。
「こっちが特殊小型船舶操縦士で、こっちが一級小型船舶操縦士、後は事業用操縦士免許、ヘリ免も持ってるのだ」
「えっ、は?ちょっと!?」
さらにボロボロ出てくる運転技能の難関資格達、武偵高はバカが多いし偏差値も低いけど、専門知識はそこらの一般人の
武偵ランクにしてBはプロと遜色無いレベルだし、A何てその道の第一線で活躍出来る人、S何て取ったら世界有数のレベル何だよ。
最近は何か、ランクのインフレが激しくて忘れそうになるけど、Bランクでも十分就職には困らないレベルの技能なのだ、就職出来る職が限られてるけどね。因みにRはその世界有数レベルを複数求められるレベルの難易度らしい。
「今は海技士の航海一級の勉強中なのだ!」
うぅん、武偵高の中でも中々に廃スペックな人だね、いちごさん。
「あいつ噂じゃ武藤と張り合えるレベルの運転中毒らしいからな、納得だ。ついでに言うならあの二人はしょっちゅう一緒に居るぞ」
え?あの乗り物って着いてたら初見の奴でも関係無く乗り回すフリークスと同類?
「あの人見かけによらず、とんでもない人だったんですね」
「珍しい乗り物を見付けると陶酔する癖があってな、轢かれ掛ける度に、近くの仲間が担いで逃げるって事を繰り返してるから、付いたアダ名が『
「あ、聞いた事があるわ、見た目が幼女にしか見えないのに、運転の腕前はカースタント顔負けの絶技を片手間に出来る凄腕が居るって」
いやもう何それは、七不思議になってもおかしくないレベルの珍獣じゃん。女の子に珍獣って失礼だけど、そうとしか言えないんだから仕方無い。
「タイプの人ってどんな感じの人?」
「優しくて、私の全力の運転についてこれる人なのだ」
「因み武藤はフェミニストで女に優しいぞ」
え、いつも一緒の男の子がタイプとか言ってるのあの人?
いちごさんのコメントに補足を入れるキンジの言葉に、よく言えるなと度胸の凄さに尊敬する。
「じゃあ、最後にいちごちゃん、それだけ資格があれば仕事に困らないだろうけど、旦那さんに求める条件とかってある?」
そこはかとなく妬んだ感じの表情で質問してる司会の人、この人も意外と美人だ。喫茶店とかの名物ウェイトレスになれる感じの素朴系美人さんである。
「えっと、家事は分担だとして………オムライスが美味しく作れて、私の趣味を分かってくれる人なら大歓迎ですのだ!!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
いちごさんの言葉に盛り上がってきた観客の男の人達、残念だけどいちごさんには本命が居るらしい。
「因みに武藤の得意料理は、妹にせがまれてよく作ってるオムライスだ」
「これもう告白じゃないの?」
キンジの言葉にアリア先輩が呆れてる。うん、これもう告白だよね、悲しいのは武藤先輩は白雪先輩みたいな大和撫子が大好きって事なんだよね。
「本人達は気付いて無いんだろうけどな、バレンタインも無差別に配るから結構人気高いんだよあいつ」
その言葉に思わずピクリと反応する。見ればアリア先輩も表情を硬くしてた。まさか、キンジの口からそんな言葉が出るなんて予想してなかった。
「ねぇ、キンジ先輩。キンジ先輩もバレンタイン貰ったんですか?」
「あ、あぁ、廊下でトッポ配り歩いてたから、不知火と二人で貰ったんだ」
ふむ、相手はその状況なら十中八九義理チョコだろうし、友達と一緒に貰ったって事ならキンジも大して意識する要素はないし、これは無罪?
「その後武藤にいつも仲良く遊んでるからって、生チョコ渡してたからな、俺は関係無いぞ!」
焦った様子で言うキンジに、ちょっとクスリと笑ってしまった。
「まぁ、無罪ですかね?」
「そういうことに、しておきましょうか」
「心臓に悪いぞ、二人とも」
「続いてエントリーナンバー二番 メーヤさん」
何で居るのさ、貴女ローマ武偵高所属でしょう?
キンジの関わりがある人達ばかりのミスコンに、これもう身内のイベントじゃない?何て思わず考える。
「よろしくお願いします」
「ご趣味とかってありますか?」
「私、旅行が好きで、よく行くんです、この前は三重県の伊勢に行ってきました」
「ほう、旅行ですか、良いですね旅行。旅行先で必ずすることとかあります?」
「えっと、その土地の教会に祈りに行く事でしょうか、私シスターをしてまして」
「「「「「シスターキタァァァァァァ!!!!」」」」」
「お静かに~。メーヤさんお料理とかってします?」
「簡単なものなら……あ、ピザはよく焼きます、専用のピザ釜じゃなくても、オーブンでも美味しく焼けるんですよ」
ピザかぁ、うちのオーブン小さいからお店とかの大きさの焼けないんだよね、どうしても小さくなっちゃう。
それはそれでトッピングの種類を増やしてパーティー料理とかに出来るんだけど、作るのが手間で、でもピザって作ると結構安くて美味しいし、今度友達呼んでピザパーティーでもしよっかな?
「ピザ、スゴいですね、あれ手間隙が掛かりますが材料は安いですし、結構庶民の味方なんですよね。見た目も華やかでお腹一杯食べられますし、具材によって味も変えられて、主食もおやつもデザートだって作れますからね。それでも、ピザを一から作れる人って結構珍しいのでは?」
「こっちはオーブンが小さいものが多いですから、仕方無いのかも知れませんね」
「成る程、確かにお店サイズのピザを作るなら、業務用とかの大きなオーブンが必要ですからね、小さいのだと火加減が難しいですし。それはそれとして、ご結婚とかって考えています?」
「今は一人が楽しいので」
でた、困った時の定型文、『一人が楽しいので』、あれを愛想よく言う人程焦ってるんだよね、素っ気ない人程本当に興味が無かったりする。
「そうですか、もし、旦那さんの条件にするなら何を求めます?」
「そうですね、子育てを手伝ってくれる人かな?」
子育てかぁ、キンジって亭主関白な所あるからなぁ、してくれるかなぁ。個人的には三人くらい欲しいんだよね、最初は女の子で二人は男の子が欲しい。出来れば三人、間宮の技を継ぐ子と遠山の技を継ぐ二人。私は間宮の技をあまり会得してないけど、ののかが結婚出来るか分かんないし、身体の弱いあのこが出産出来るのか不安だから。
「確かに、子育てって大変ですからねぇ、世の中のお母さんは本当にスゴいですよ」
あ、観客の男の人達が気不味い空気を出してる。奥さんや彼女の事を考えて気不味くなったんだろうね、うん。
「続きまして一番
「…………」
「どうしたの?」
「何でもない」
何かキンジが不機嫌になってる、アリア先輩も心配してるけどキンジは憮然とした表情のままだ。そういえば高千穂さんって、金一お兄さんの
「乗馬です、実家の近くに牧場がありまして」
あの人は多分だけど、私や志乃と同じ、前世の記憶を持ってる人だと思う。志乃が前世の高千穂さんと話した事があるって言ってたけど、全然性格が違うって言ってたし。
そう考えると風魔さんも怪しいんだよね、前世だとキンジに一回ボコられるんだけど、そんな事無かったし。
「乗馬ですか、私も一度経験しましたが、馬の動きに合わせて風を切って進む感じ、良いですよね」
「えぇ、乗るだけでは無く、気に入った馬をブラッシングしたりして、人懐っこい動物なのでとても可愛いのですよ」
何か志乃みたいな事言ってる、二人の前世が気になる。これで高千穂さんがアリアとか理子だったら、何かもう笑いが止まらない気配がする。犬猿の仲のあの三人が実は似た者同士って、私としては面白い。
「良いですね~、私もまた経験してみたくなりました。お料理とかってなされたりします?」
「えぇ、人並みには」
「っけ、本当かね。あいつの料理とか、怖くて食えん」
そこまで言うほど嫌いなの?ちょっと高千穂さんが可哀想なんだけど。
「因みに得意なお料理は?」
「『いただき』と言う郷土料理です。油揚げにお米と野菜等の具材を詰めて、出汁で炊き上げる料理何です」
「お、美味しそうですっ!!何かもうお腹減ってきました、もう晩御飯の時間ですし、今日はそれ試してみよっかな?」
何か司会の人が脇道に話をそらし始めた。あの人食道楽だったのか。コメントも料理の所だけやたらと長いし。
「手順は簡単ですし、レシピはネットに載ってますから、作るだけなら失敗はないと思いますよ」
「ありがとうございますっ!それで、ご結婚とかって考えています?」
「もちろん、私には心を決めた人が居ますから」
え?マジで!!?
え、メッチャ気になる、前世持ちだと思ってる人が心に決めた人が居るって、え、相手は誰で貴女は前世で誰よ!?
周りもどよめいてるのか、ざわざわとした雰囲気になってきた。
「………っ、ふん」
キンジは苛々してきたのか鼻を鳴らした後目を瞑って寝た振りをし始めた。どんだけ嫌なんだか、でも耳は少し動いてる、聞き耳立ててるのは丸分かりだ。
「そうなんですか!?じ、じゃあその、何が決め手だったんですか?」
「私が困ってた時に、身体を張って助けてくれたんです。命もプライドも、その人が守ってくれたから」
……………そっか、そう思ってくれてたんだ。
何か恥ずかしくなってきた、顔が真っ赤なのが分かる。これはあれよ、夏で夜も未だ暑いからで、照れてる訳じゃないから、そもそも話したことも殆どない私が照れる必要なんて無いし。
「あらら、二人とも大変ね」
にやにやしながらこっちを見るアリア先輩から目をそらす。何で私の事を見るんだし、普通ならキンジでしょ?
「何で俺が大変なんだよ、兄さんだろあいつが言ってんの」
「あ、え、そうなの?」
え、そうなの?今世での話だったの?それじゃ私自意識過剰見たいじゃん、恥ずかしっ!!
「ありがとうございました!!それではこれより投票を始めます、舞台前に集まったスタッフから紙を受け取って、彼女こそミスコンに相応しい!!と思った人の名前の部分をもぎって前の投票箱に投票してください」
その言葉に、観客が動き出す、我先にとどんどん並んでいって、すぐに行列が出来た。
「私達も投票する?」
「いや、そろそろ時間だから移動しよう、ついてきてくれ」
???時間って、何かあったっけ?
「私は良いですけど」
「私も良いわよ、誰がミスコン優勝でも納得できるメンバーだし、もう十分楽しんだしね」
アリア先輩のその言葉に首肯く。正直私が出ても脇役っていうか、あの人達の添え物扱いだったろうし、出なくて正解だったね。
「近くの公園に行こう、あそこが一番見晴らしが良いんだ」
そう言って歩き出すキンジ、見晴らしって、何の事?
三人で祭の喧騒から離れていると年甲斐もなく、外見によく似合ったピンクの生地に金魚柄の可愛い浴衣を着たオバさんが、慌てた様子でこっちに走ってきた。
「あれ、オバさんどうしたの?」
「こっちにようた来なかった!?」
ようた?見てないけど、ようたも居るならかがりも来てるの?
「見てないけど、どうしたの?」
「ハデスの反応がここら辺にあったのよ!!」
ハデス?
ギリシャ神話の主神三兄弟の一人じゃない、そう言えばギリシャの神卸しじゃない、そう言えばギリシャの歴代神卸しの1人がそうだって修行の時にオバさん言ってたっけ、でもその人って確か生きていたら今年で160代のおじいちゃんじゃなかったっけ?
「その人未だ生きてたの?」
「代替わりしたみたいなのよ、ちょっと前に若い子と」
オバさんのちょっと前とか若いとか、時間感覚当てにならないのは小っちゃい頃からの付き合いだから分かる、ついでにぼかして言うときは、大体隠し事があるのもそうだ。
「いつの話よ」
「じ、10年前」
「一世代前はちょっとじゃない!!」
私が小学校入る前の話じゃん!!
キンジもアリア先輩もオバさんの時間間隔に呆れてるじゃない。
「どうせ若いって言っても40代とかでしょ?」
「…………50代よ」
神卸し基準の時間感覚で話さないでよ!
「世間ではもう折り返し越えてるから、もう十分大人だから、下手すりゃ孫がいる年齢を若いとか言うな」
ジト目で見ると気不味そうに目を逸らしたオバさんに、溜め息を吐く。
「それは今は良いのよ。それでそのハデスなんだけど、好色家って
好色家って、ハデスはギリシャ神話だと有り得ない位の好青年な性格してるのに。
あの三兄弟で強姦も浮気もしてないのはハデスだけだし、ペルセポネの時だって、親であるゼウスに話を通す位の、あの神話なら他にはいない位の真面目な性格してる神様じゃん。
こう考えるとギリシャ神話って、女から見ると悪夢みたいな世界観だね、化物にされたり植物にされたり、強姦も拉致監禁も当たり前で、人以外の子供を産まされて、しかも女神だろうが人だろうが関係無く…………………うぅん、地獄かな?
あんまりな世界観に、あの世界観で好青年でも、現実じゃ別かな?何て考えてると、オバさんが携帯で撮った写真を見せてくる。
「このこ何だけど、見てない?」
「え、これって」
「六番のようこちゃん?」
「やっぱりそうだったか」
写真を見て各々が呟く。見せてきた写真に写ってたのはミスコンに出てた六番の女の子のようこちゃん。あいつ和食なんて作れたんだ、この前まで外国暮らしだったのに、オバさん家でそんな趣味見付けてたのね。
「何処で見付けたの!?」
「ミスコンに出てたよ、キンジ先輩のおにっ……お姉さんさんも居たし、大丈夫だと思うけどね」
あの見た目で兄は分からないだろうなと思って、とっさに姉って言って誤魔化した。キンジも頷いてるし、カナもカナで、兄さんとか金一さんって呼んでも反応しないから、これはこれで正解。
「そう、良かったわ。あ、私は密入国したハデスを見付けないとダメだから、失礼するわね」
密入国って、
「良かったら、ついでですけど見付けたら連絡しますよ。目印になる特徴とかってありますか」
キンジが、密入国って聞いて正義感燃やしたのか、手伝いを提案してる。この後の予定を潰す訳じゃ無さそうだから、私は文句は無いけど、ようたが心配なのは確かだし。
ギリシャ神話って男色ってどれくらい居たかなぁ、ヤバイのはその後のローマ神話っつうか皇帝連中何だけど、ヨーロッパとか地中海とか、あそこら辺は本当に男色の歴史が多いからなぁ。日本も戦国時代とか、他所の事言えないけど。
「特徴が無いのが特徴ってのと、笑い方がひたすら下衆な中年」
嫌な事を思い出した様に顔を歪めるオバさんに、何だそれと思いつつも、そう言えばうちの高校の校長も似た感じの人なのを思い出す。
『
「それらしいのが居たら、連絡します」
「分かったけど、期待しないでね~」
私達の返事を、後ろ手で返事をして走り去るオバさん、日頃人に淑女云々言ってる癖に、今の仕草男前過ぎない?
まぁ、あの二人の事それこそ実の子供みたいに可愛がってるし、さもありなん。
オバさんと別れてから10分くらい歩いて来た公園は、ちょっと高めの位置にあって、祭りの様子がよく分かる。
途中に怪しい人間は、あんな特徴とも言えない特徴のせいで容疑者多数で特定出来ず、早々に三人して諦めた。
「キレイね」
その光景をみたアリア先輩が思わず呟く。私も首肯いて景色を眺める。そこまで歩いた覚えは無いけど、祭りの音は微かで、周囲は静けさを保って薄暗い。それが祭りと対称的で、だから祭りの景色が更に際立って見える。
「そろそろだ」
途中で買ったジュースを飲みながら言うキンジの言葉に、反応しようと口を開いた時、大きな破裂音が響いて驚く。
「ふぇ、な、何!?」
「……花火ね」
「あぁ、規模は小さいから、あんまり知られていないんだ」
知らなかった、ここで花火やってるなんて。さっきまで祭りの様子を見ようと下がってた視線を上げると、夜空に小さいけど色とりどりの花火が上がっていた。
「良いわね、これ」
「あぁ、これを見せたかったんだ」
「きれ~、スゴいです」
30分も無かった花火の景色は、スゴくキレイで、キンジが見せたかった景色を私は忘れたくなくて、瞬きすら惜しんで食い入るように見てた。