彡(゚)(゚)「いったん頭空っぽにしたろ・・・せや。バレンタインも近いし、それにちなんだ短編でも作ってみよか」
そうして出来上がったものがこちらになります。
「指揮官、私と結婚しよう」
朝の執務室はNTW-20・・・通称、ダネルのそんな言葉とともに嵐に包まれそうになる。
今日の副官で隣で書類作成していたWA2000はその言葉を聞いて作成途中の書類に派手にインクをぶち撒け「!?・・・、!?」と声にならない声を出すし、先に任務完了の報告をしていたUMP9は言葉には出さないが目が点になっている。
対して言われた方の男・・・指揮官は表情を動かすことはなくたった今作成した書類に目を通していた。そのまま口を開く。
「ダネル・・・昨日も言ったはずだ。誓約装備一式はコストが高くて今の俺達じゃ手が出せない代物だって」
「そっちではない。・・・いや、誓約もしたいが私が言っているのはそっちではなく、婚姻を結ぶ方の結婚のことだ。私は貴方のことが好きだ」
ダネルのその言葉にUMP9が小さく「おお〜・・・」と声を出し、WA2000の座る方からガタッ、と椅子が鳴る音がする。
指揮官はその言葉に小さく嘆息を零す。
「あのなダネル、いつも言ってるだろ。それは無理だって。俺は人間で、お前は人形なの。人間同士がする結婚は無理なんだって」
「たかが種族の違いだろう。問題は無いはずだ」
「いや大有りだからな?」
そこまで言うとダネルは「むぅ」と唸ってしまう。
やれやれ、ようやく諦めてくれたかと一息つく指揮官。
「わかった。では結婚は諦めよう。ならば指揮官、私と子づk「言わせねぇよ!!?」
その先を言うのはやめろぉ!
「ただいまー、無事戻ったわよー・・・って、ナニコレ? どういう・・・あー、そゆこと」
阿鼻叫喚となった指令室を見て、遠征任務を終えて戻ってきたMicroUziは全てを察し、ハァ、とため息をついたのだった。
「はぁ~・・・酷い目にあった・・・」
仕事がある程度終わった指揮官は休憩と気分転換を兼ねて、基地内にある室内庭園へと向かった。
そして庭園内のベンチに腰掛け、クソでかいため息をつく。
あの後の数十分の口先攻防戦の結果は、最後は指令室に来たUziにすべで投げつけるという行為により、指揮官側の勝利(?)で終わった。
Uziはしぶしぶといった形でダネルを部屋から引っ張り出していき、一息ついたかと思えば
『ヒューヒュー、熱いねぇ指揮官!』
『あああアンタ!? どどどおdddどおういうことよあれは!』
とUMP9にかわれるわ、WA2000に胸倉をつかまれるわでほとほと参った。おかげで今日の業務は胃薬を抱えながらの仕事となりそうだ。
「仕方ないのではないか? UMP9とWA2000は最近ここに来たばかりだろう?」
うん、そうだな。ここでの『恒例行事』知らなくて当たり前よね。
ていうかわーちゃん、詰め寄るならせめて手についたインクを拭いてからにしようなって話だ・・・おかげで襟元に手形がデカデカと写されちまったよ。
「問題ない。そう思ってここに新しい制服を用意しておいた。クリーニング済みだぞ」
お、気が利くじゃないですか。では後で着替えておきましょうか。ここじゃ何ですしね。
「? 別にここで着替えても大丈夫だと思うのだが? ここには今私と指揮官しかいないぞ?」
「それが問題なんですよ、なんでここにいるのダネルさん!?」
気が付いたらベンチの隣にダネルが座っていた。ちょっとまてお前いつからいた!? 直前まで気配全然感じなかったぞ。つか朝にUziが連れて行ったハズでは!?
「何を言っている指揮官。今は昼だぞ。当の数時間前に解放されている」
「え・・? あ、そ、そうなの?」
庭園内の設置時計を見る。・・・もうお昼を回っていた。マジか。まだお腹空かないからそんなに時間経ってないものだと思っていた。
「それよりもだ、指揮官。朝の答え再考してくれたか?」
ダネルはズイィ、と顔をこちらに寄せてくる。
「いや。再考も何も変わりません。お断りです」
「むぅ。そうか・・・しかし、なぜだ? なぜそう頑なに拒むんだ? 理由を教えてもらえないか」
俺の返事にシュン、となってしまうダネル。
・・・コイツ本当にその理由に気が付いてないのか?
「理由も何も、お前は俺の事どう思ってるのさ」
「もちろん大好きだ。毎日言っているじゃないか」
「ああそうだね。俺が5歳の頃からそう言ってるよね。もういい加減ギャグだって分かってるからやめてほしいんだけど」
・・・要はそういうことだ。
実はこのダネルという戦術人形、元々は俺がG&Kに入る前の実家で購入・使用していた民生人形だった過去がある。
世間が第3次世界大戦が始まったと騒いでいた頃。親父が徴兵されて戦場へ行って、女手一つで生まれたばかりの俺を育てていくことになった母は相当な苦労を強いられていたらしい。
そんな中でそんな母を見て不憫に思った
それがダネルだった。
以来、俺とダネルは一見年の離れた姉弟、もしくは幼馴染という感じで過ごしていったのである。
そしてこいつは俺が物心つき始めるその時から、事あるごとに俺への告白をしてきているのだ。
最初の方はまぁ、きれいな人から告白されたってことだったから恥ずかしくはあったし、子供ながらにどぎまぎもしていた。だがそれも毎日言われ続ければ、ダネルのことを家族の一員として完全に意識している頃にはそれには物応じしない男になっていたというわけだ。
要は、挨拶のようなモノ。彼女の告白はそういうモノだと思うようになったのだ。
で、そのまま時が流れていって、第3次世界大戦は終わり、親父は戻ってこず、母に少しでも楽をさせるために勉強して、そんなことをしなくていいといと渋る家族の元を離れ、見事就職に失敗。そこから色々と流れ着いて、気が付けばG&Kの指揮官候補生になっていて。
・・・そうして指揮官になったら、いつの間にか戦術人形へ様変わりしていたコイツと出会って・・・朝のような状態が毎日続くということに至るのである。
「ギャグなものか! 私は本気だぞリナト!・・・あっ、し、指揮官」
勢い余って俺の本名を口にしてハッとするダネル。
俺はその様子に少しだけ笑ってしまう。
「別にいいよ。ここには今俺とお前しかいないんだろ、姉さん」
「!、・・・そうだな。ああ、そうだったな。リナト」
そう言って少し顔をそむけるようにして帽子の直すダネル―――もとい、姉さん。若干頬も赤い気がする。
普段はスッパリとモノを言うのに、こういうところは恥ずかしがるとは。なんだかなぁ。
「・・・姉さんが俺を好いてくれるのは嬉しいよ。でも俺はここの指揮官で、それ以前に・・・その、姉さんは俺の姉さんでもあるんだ。だから姉さんと結婚するっていうのは、その、な、分かるだろ?」
「・・・いや、分からない。おかしいことなのか?」
ダネルは指揮官の言葉に首をかしげる。
・・・何でそういうところはポンコツなのよ畜生。ああでも俺も口に出せないのがつらい。なんて説明すればいいんだ畜生。
「ああもう、とにかく駄目なの! 姉弟で結婚とか! お母さんが許しません!!」
「?
言葉の綾ってやつだよちょと待て今重大なこと言わなかったこの子?
「と、そうだ。そういえば渡すものがあるんだ」
「え、なにいきなり・・・渡すもの? 告白の続きのためだけに来たのではなく?」
「それだけではない、いや、そっちも諦めてはいないが・・・いやそうじゃなくてだな」
そこで姉さんが腰につけていたポーチから何かを取り出し、俺の前に持ってくる。
・・・なんだろう。片手で持てるぐらいの大きさの箱みたいだが。
「リナト。今日が何の日か覚えているか」
とそこで姉さんが急に話題を振ってくる。
今日? 今日は確か・・・2月14日。世間では確かこの日は。
「・・・え? まさか」
「開けてみてくれ」
言われるがまま、その箱の包みを開いてみる。・・・この香りは、まさか。
「ハッピーバレンタイン、というやつだ」
中には一口大にかたどった形のチョコレートが六つ並んで入っていた。
「これって・・・」
「菓子作りに関してはあまりやったことが無いから、味は変かもしれない。でも・・・食べてくれると、嬉しい」
・・・驚いた。あのダネルが、姉さんがバレンタインチョコを作ってくるだなんて。
いや、確かに民生人形時代は家でメイド紛いのことはしていた記憶はあるし、料理を作っているところを見たこともあるが。
「・・・姉さんが何かを作ってプレゼントするなんて」
「むぅ、私はそこまで薄情な奴に見られていたのか?」
「いや、姉さんは確かこういう行事には興味を持たなかったでしょ? 新鮮だなって」
「ん、まぁ、確かにそうだな・・・こんなことしたくなかったしな・・・」
「え? 最後なんだって?」
「ん、いや、なんでもない・・・それより、食べては、貰えないだろうか」
え、今? まぁ、ちょうど姉さんと話していたら小腹もすいてきたし、ちょうどいいか。
指揮官は入っていたチョコレートの一つをつまんで口に頬張る。
「うん、甘くておい・・・し・・・」
その時だった。
急に舌に痺れるような感覚が走ったかと同時に、足に、いや、体全体に力が入らなくなった。
崩れ落ちる体。その体をダネルが抱き留める。
「どうした? 眠くなったのか?」
ダネルの声色は変わらない。が、その一瞬見えた表情で確信する。
「おま、なにを、入れ・・・!?」
「何、ちょっとの間だけ力が抜ける薬さ。大丈夫、人体に後遺症は与えない」
「な、ん、だと・・・!?」
「・・・お前がいけないんだぞ、リナト」
ダネルの指揮官を抱き留める腕に、力がかかる。
「民生人形の時からお前のことが好きだった。信じてはもらえないだろうが、一目惚れ、というやつだ。おかしいか? おかしいだろうな。その時はまだお前は5歳になったばかりの子供だったというのにな・・・でも、その時から好きなんだ」
「お前が成長していった後も、私はお前のことが好きだった・・・お前が就職のために家を出るといった時は焦った。お前が隣にいない生き方なんて考えられなかった。・・・あんまりじゃないか。あれだけ離れたくないと言ったのに。あれだけ好意を伝えたのに。答えもないがしろにして去っていくなんて」
「お前が家にいない日々を何度過ごしたんだろうな。私のこの思いはどんどん膨れて、焦がれていって・・・耐えきれなくて」
「・・・お前がG&Kに入ったと聞いて、真っ先に行動した。
熱い吐息が指揮官の耳元をそよぐ。
「言っただろう?
ダネルの顔が指揮官の前に寄せられる。
それは指揮官も今まで見たことが無い、民生人形の頃だってしなかったダネルの、涙を浮かべながらも情欲めいた顔がそこにあった。
「今夜は寝かせないからな、リナト」
・・・それ、女の子が言うセリフじゃないと思う。
口を開けられないでいた指揮官は、なんとかそれだけを思うと、その後に意識を落とした。
・・・その後、指揮官は大人への階段を上ったんだとか、そうでもないとか。
前々からダネルやPTRDのようなクールな人形を主軸にした物語は書きたいなーとは思っておりました。そしてそこに頭空っぽにした筆者を混ぜた結果、ヤンデレが生まれました。どうしてこうなった。
・・・というか、ヤンデレで合ってますかね? 他作者様のドルフロヤンデレ作品のインパクトが強すぎて果たしてこれで合っているのか判断ががggggg以下略。
それと今作には関係ないのですが、現在筆者の連載中の作品「ジャーニー・エイジス」の閲覧数が1600越え、お気に入り数が68件となっていたようでございます。どっと増えた数に思わず『ファッ!?』と声に出しておりました。この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございます。