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…なに、知ってるって?モンスターがいるなんて常識だ?
はっはっは、そうだね。確かに、迷宮にはモンスターが住んでいるなんてのは常識だ。特に、君みたいな冒険者になった子なら知らないハズはなかったね。…いやいや、バカにしたワケじゃないんだ、そう怒らないでくれよ、愛しき子よ。
ああ、そうさ。バカになんかしちゃあいない。私や他のファミリアの
そう、察しが良いね。賢い子はモテるよ。その通り、これは冗談や教訓の類ではない。
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お前だけじゃないよ。この
男も女も関係ない。大人も子供も関係ない。強者も弱者も関係ない。神も人も関係ない。皆皆、知らなくてはいけない。だって、
あの怪物には、そんな分別存在しないんだから。
よく、覚えておいで。そう、姿勢を正して、耳を傾けて。…いい子だね。
じゃあ、話そうか。この迷宮都市・オラリオで起きた、忌むべくも忘れがたき惨劇を。
「怪物」の誕生を。
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…もう、二十年以上も前になるかね。その頃からこの迷宮都市は大層にぎわっていたんだが、当時はもう少し荒れていてね。治安もすこぶる悪かった。
原因かい?…お前には「最大派閥」と言った方が分かりやすいかな。
そう、今でいう「ロキ・ファミリア」や「フレイヤ・ファミリア」などに当たる存在だ。その当時、ソレに該当する幾つかのファミリアの中に酷いファミリアがあったんだ。
主神の名は故あって口に出来ない。だが、そいつは所謂「邪神」と呼ばれる類の悪神でね。「略奪」と「快楽」の神で、ファミリアの家訓として掲げている内容も最悪だった。
「常に刺激を求め、存分に愉しめ」とね。そいつは自分自身の快楽に通ずる「全て」を容認したのさ。
最悪だろう?奪うもよし、殺すもよし、犯すもよしときた。ただどんな状況も自分で愉しめ…品のない教えだよ。
…でも、それが冒険者の気質に合っていたのかね…次々と入団者は増えていったし、中には高レベルの冒険者が
勿論、他のファミリアだって排そうと動いたさ。ギルドだってね。特に我が子の尊厳や命を奪われた神なんかは、そりゃあもう怒り狂ってねえ…戦争だって何度も起きたのさ。
ああ、ダメだったんだ。誰もヤツを排せなかったし、何柱も送還された。犠牲もたくさん出たんだ。
単純に強かった、というのもあるがね…結束した悪党どもの手腕と、主神であるソイツの采配が尋常じゃなかったのさ。
ああいった連中の結びつきは強固だ。加えて深く広い繋がりがあった。だから、いろんなところに息のかかった連中が潜んでいたのさ。そうなると主神の悪意は多種多様に、実に効果的にそれらを活かした。諜報に不正、人質や妨害なんか甘いもんさ、もっともっと、色々やらかしやがった。
結果、何柱目かが送還された辺りで、もう誰も言えなくなったんだ。
あの憎たらしい猿顔が歯を剥き出して嗤う様、殺してやりたいヤツはたくさんいたがね。折れちまったのさ。
そっからは言った通り、荒れに荒れたんだ。口にしたくもないほど、あらゆる「悪」が広まった。それでもオラリオから人が去らなかったのは、他の派閥、特にかの「大神」の尽力あってこそだったろうねえ…。
うん?怪物はどうしたって?
…ここからさ。もうちょっとだけでも聞いておくれ。
そう、二十年かそこらほど昔、そのファミリアが散々悪さをしていた頃にね。まだ十にも満たないような、一人の小さな「子供」が、そいつのファミリアに入ったというんだ。
すぐに広まって一日で消えたような、小さな噂でしかなかったがね、実をいうと誰も驚かなかったよ。
小さくても「そういうコト」目当てに、あのファミリアの門を叩く人間は後を絶たなかったから。でも皆、同情はしてたね。なぜならそういった目的で入った子供は、皮肉にもドス黒いファミリアの「洗礼」を受けて、大抵死ぬ事が多かったからね。自業自得とはいえ…ね。
だけど、その噂が広まって三日ほどした頃だ。「豊穣の女主人」って酒場あるだろ。そう、あの気の強い女主人のいる。
そこにね、そのファミリアの下っ端が転がり込んできたんだ。どいつもこいつも揃いの黒い毛皮着てやがったからすぐにわかったよ。皆顔をしかめたり、眼をそらしたりしてたさ。
そいつがねえ、こんなことを叫んだのさ。
———『助けてくれ!神サマも他の連中も、あの新入りのガキに殺された!』
…とね。
いや、一瞬静まり返りはしたがね。皆大爆笑したさ。少なくとも人間、子供たちはね。
ざまあみろ、寝惚けたこと言ってんじゃねえよ、お前も殺されて来いってね。乾杯に拍手の嵐、そりゃあ大騒ぎだった。
でもね。私たち「神」は手放しに喜べなかったよ。
だって「嘘」言ってなかったからね、ソイツ。
そしたら騒いでた子供たちも静かに、だんだんと困惑してきてね。真顔の私達と震えるそいつの様子で、どうやら尋常じゃない事態が起きてるってわかったんだろうさ。
とはいえとても信じられなかったろうさ。神は勿論、そのファミリアにはLevel5クラスだってたくさんいたからね。冒険者なら、とても
放置は出来なくてね。そいつギルドまで引っ張っていって事情を話して、半信半疑の連中に査察もかねて調査隊を編成させたのさ。
その調査隊に、神々も同行した。私やロキ、フレイヤ、イシュタル…他にも色々とね。
ぞろぞろ、まあ壮観だったろうさ。あんな光景は今も昔もそうなかったろうね。
そして連中の、品のない本拠地に足を踏み入れた時———
「いた」のさ。「怪物」が。
**************
暗いエントランスのような広い空間にね、そこかしこに、悪神のファミリアの連中の死体があったよ。調査隊は、だいたいそこで吐いてたね。
死体だから…というより、状態がね。酷かったのさ。丁寧に丁寧に
信じられなかったね。これを子供が、そんな小さいのがやったなんて。でも、信じざるをえなかったさ。
なんでかって?そりゃあ、その奥に「いた」からさ。
悪神を
ひっどいモンだったさ。頭は胴から離れて、手足は繋がったまま開かれてたり、切断されてたり、電流が流されてるのかずっとこ痙攣してたり。胴体や頭も見事に開かれててね。ピン止めされたり取り出されたり、
…ん?なんで送還されなかったのかって?
……。
………ソレ、言わせるのかい?わかってるんだろ?
まだ
眼が生きてた。喋れないまま泣いていた。笑ったみたいな顔で固定されたまま「たすけて」と懇願していたよ。
ロキが確か吐いてた。私も、吐いたかもしれない。ここまでくると「どうやって」とかは思えなくてね…ただただ「悍ましい」としか思えなかったよ。
しかも怪物は怪物で、ずっと笑ったままブツブツ言ってるのさ。
———『
ひとしきり色々喋って、そいつは立ち上がった。
そしたらだ。そいつの手元に、赤黒い「光の玉」がふよふよ浮いてたのさ。私達は何だかわからないまま身構えていたらね、フレイヤが吐いたのさ。
信じられるかい?あの、フレイヤがだ。みんなそりゃあ驚いたさ。
…でだ。そのフレイヤがいうにはだね。その赤いの「魂」らしい。
魂が普段から見えるフレイヤだからねえ、よっぽど怖かったのかもしれないよ。なんせ可視化した魂、ソレも「ツギハギだらけ」なんてね。
どうやったら出来るんだか。
…その魂、どうしたと思う?
「喰った」のさ。
あっという間だったよ。卵でも口に放り込むみたいに一口でね、モキュモキュ喰ってる咀嚼音がこっちまでしてきた。もしかすると、他のファミリア連中も…。
悪神が「消滅」したのは…同時だったね。塵一つ残さず消えちまって…何も残らなかった。
そしたら、だ。
「怪物」が、もっと上の「怪物」になった。
見た目は変わらない。でも「中身」が完全に変わったのがわかったよ。直感した、アレはもう、
そこから先はね…。
先は…実は、覚えていないんだ。
いや、齢じゃないよ失礼な!皆ね、頭働かなくなっちまったのさ!
いや、なんというか…怖くて怖くて、仕方がなくなったというかだね?あれは、そう…例えるなら…。
「狂気」…かね。
ともかく、正気に戻った時には、怪物はいなくなってたんだ。
私達はとにかく周辺を探したが見つからなくてね、仕方なくギルドに戻って情報をまとめて、ついでに冒険者登録から名前や情報を割り出そうとしたんだ。
でも、わかったのは名前だけ。スキルは、
正体不明。
震えあがったよ。あんな怪物を、何もわからないまま迎え撃たなきゃいけないなんてね。
そして、
目撃情報、都市の出入り口や、足跡、匂いの痕跡など、多角的な情報を割り出した結果。
「怪物」が、「迷宮」に潜ったことが判明した
私達は、決めたのさ。
あの怪物の名と、惨劇の血の歴史を…せめて忘れぬように伝えよう、とね。
ヤツの名は———
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冒険者名
『フランケン・シュタイン』
要警戒・避難対象人物。討伐及び初遭遇からの戦闘を厳禁とする。
特徴・色の抜けた髪、全身の縫合痕、頭部から巨大な螺子。
ステータス不明。スキル・魔法不明。種族不明。
99の悪漢ファミリアと一柱の悪神を殺害・解剖・捕食の罪状。
神々よりの忌み名
『
狂気を流布せし狂気の怪物は。
今もこの、迷宮のどこかに———。