「迷宮の怪物」(現在スランプ・凍結中)   作:鉤森

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遅れました。そして短編予定だっただけに苦しくなってきた…どうしよう。



大変多くの皆様からの声、応援。すごく励みになってます。もうちょっと頑張りたいです。
本当にありがとうございます。


※ちょっと時間進んでます。独自にイベント食ってます。


女神の恐怖、予兆。/ 噂

その夢を見る時は、いつも決まって同じ場面から始まる。

 

 

空では大きな三日月が見下ろし嗤う、妖しく不穏な夜空の下。その夢の中で「私」は、今とは少しだけ違う、どこか懐かしい街並みの中を歩いている。何度も見た景色。何度も歩んだ都市の暗い街道。

眺めながら向かう先は…いつも変わらず。決まった場所だ。

 

 

 

 

———…やめて。

 

 

 

 

周囲に眼を走らせればギルドの職員たちに幾ばくか、少数精鋭の冒険者たちが、仕える(あるじ)に付き添い歩いている。当然、「私」の傍らにはその時さえも常変わらず、最も信に置く愛しい子(オッタル)がいる。今よりも若く、しかし変わらぬ忠義を宿す私の剣。

だが、これは夢だ。過去に見た情景を基にしただけの彼は、覗き見るだけの「私」の気持ちを察してはくれない。

 

 

 

 

———いや、お願い…やめて…。

 

 

 

 

やがて、遠目にも見えてくる目的の場所。広大な敷地に築かれた、景観など微塵も配慮しない山岳砦を思わす拠点。夜風にはためく旗印の掲げたその紋章(シンボル)を、この都市の住人たちは誰もが知っている。畏怖と嫌悪に彩られたそのファミリアの名を、呼べなくなった今も、人々は忘れてはいないだろう。

 

 

 

 

———ああ…止まって、私の足。わかるでしょう?そこには行きたくないの。見たくないの…。

 

 

 

 

徐々に近づく、大きく口を開いた巨大な門。黒く塗りつぶされたその先にある光景、その先に潜む存在を思い、「私」は懸命に拒絶する———が、夢の中の「私」の足は、「私」の拒絶を受け入れてはくれず、決して止まってはくれない。…わかっている、何度も見た光景なのだから。

警戒しながらも一行は門を潜り、灯りの乏しい、大きいだけの屋敷の中まで行進を進めていく。

 

 

 

 

———嫌…いや…イヤよ…。この先は、この先だけは…。

 

 

 

 

長い廊下をゆっくりと歩んでいく中、ふと涙が零れた気がした。夢の中の「私」ではない、きっと現実にいる「私」が流した涙であろう、冷たい水筋が頬を伝う感触が残る。それでも足は止まらず、瞼もこれ以上は閉じようがない。

 

そしてエントランスのような、暗く広い空間に出た時、

 

 

 

 

 

 

———あ…———ぁ———…ぁああ…っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソコ」にあったのは、正しく一つの「地獄」だった。

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

 

 

「———ぁぁああああああぁああああああああッッ!!」

 

 

爽やかな朝の空気を引き裂くように、天上の美声をかなぐり捨てた叫びと共に眼を覚ます。

己が叫びで目が覚めたのか、はたまた悪夢からようやく逃げおおせただけなのか。ともかく周囲に地獄の残滓が僅かにもないコトを確認し…夢でしかない以上当たり前だが、それでも影も形もないことに深い安堵を覚えて息をつく。

東から昇る寝惚けたような柔い朝日に包まれて、苦悩するように彼女は自らの額を手で抑える。

 

 

「また…また、あの時の、夢…?」

 

 

思わず零れ出た自らの呟き、それだけで心底震えが止まらなくなるほどに深く刻まれた「恐怖」の記憶。

二十余年あまりの昔、かの地にて与えられた衝撃は、未だにこの女神を…この迷宮都市において最強と名高き「フレイヤ・ファミリア」が主神・フレイヤの心を手放してはいなかった。優しき時の神(クロノス)がもたらす忘却は、しかし彼女を救ってくれない。忘れることを許されてはいないのだと再認識させられると、フレイヤは猛烈な吐き気を覚えた。

神とはいえ、意思を持ち、感情を宿す知性体である。特に彼女は「美」と「愛」を司る女神であり、その感受性の豊かさは敢えて述べるまでもない。思わずかき抱いた肩に震えが走る事を、誰が責められようか。

 

 

「今になって…なにか、なにが起きるというの…?いえ、まさか…。」

 

 

だがそんなフレイヤには今回、恐怖以上に不安と疑問が先走った。そこには拭えぬ恐怖の色が見え隠れしていたが、彼女の精神に未だ「狂い」は生じていない。常に瞳に宿る確かな意思の輝きまでを失ったわけではない。

そう、不可解だった。思い出させられた(・・・・・・・・)とはいえ、ここ最近はすっかり頻度も薄くなっていた悪夢が、ここ最近は連日枕元に立っている。狂いそうなほどに、喉が裂けそうなほどに。「ヘラヘラ」という笑い声が、今も耳に残響を残している気さえした。

それら全てをただの偶然と言えれば幸いだが…そう思えるほど、フレイヤという女神の中で、「迷宮の怪物(シュタイン)」という存在と恐怖は軽くない。

 

 

「上がってきた?…違う、だったら気付く。あんな規模の魂がわからないハズない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。…じゃあ一体…?」

 

 

思い出すのは、まだ人間だった筈の頃に視た「フランケン・シュタイン」という少年の魂。小さな肉体からあふれ出し、あの日、エントランスのような広い空間を正しく埋め尽くしていた(・・・・・・・・)、神々でもあり得ない規模(スケール)を持った魂。信じたくはなかった、未だ知られぬ世界の一端。

次の瞬間には大きく変質したが(・・・・・・・・・・・・・・)、それでも地上に上がってきていれば、例え眠っていたとしても見逃すはずがないとフレイヤは断言する。無論、これから、という可能性を捨ててはいないが…恐らくは違うだろう。この感覚は断じて予兆だけ(・・)で済ませられるものではない。このリアルで身近な、不愉快なざわめきにはひどく覚えがある。

 

 

なんにせよ無視などできようハズもない。故に、身だしなみを手早く整え、決意したような面持ちでフレイヤは寝室を後にした。

 

 

愛する子供たちに警戒を促すために。全信を預ける忠義の剣に、自らの不安と共に新たな使命を伝えるために。

 

 

 

そう、

 

 

 

この愛する迷宮都市(オラリオ)に何らかの変化が生まれた。そうとしか思えない。

ロクでもない、よくないナニか(・・・・・・・)が発生したとしか。今のフレイヤには思えなかった。

 

 

 

**************

 

 

 

 

『オイ、聞いたか?今度はウダイオスだってよ。』

 

 

『また?こないだアンフィス・バエナを単独撃破(ソロ)したばっかだろ…?』

 

 

『まだ15にも満たない娘が…。』

 

 

『ヤベェよな。ありゃ姫っつーか鬼だぜ、鬼。』

 

 

『ハハ!上手い上手い!』

 

 

『鬼といやぁよ、こっちは聞いたか?』

 

 

『あぁ?また"魔女"の噂か?ありゃ眉唾モンだろ。』

 

 

『三日月の夜に現れる魔女が現れると人が死ぬ、か。確かに人死にが多いが、今更だよな。』

 

 

『二年ちょっと前くらいから聞いてるが、誰も姿見ちゃいないって話だしなぁ。』

 

 

『そうそう。それに最近は肝っ玉が小さいせいかよ、頭オカシクする阿呆も多いしな(・・・・・・・・・・・・・・)。』

 

 

『それがよ、どうもフレイヤ・ファミリアの連中が動いてるらしい。』

 

 

『あ?どういうこったよ。』

 

 

『探してるっつーか、やけに熱心にその噂を探ってるらしい。』

 

 

『マジか?誰か殺られたのか?』

 

 

『わからねぇ。でもそのせいか、ギルドの方も本格的に捜査を始めたらしいぜ。』

 

 

『掲示板にゃあなんもなかったがなぁ。』

 

 

『まだ噂ってこったろ。混乱させねえためのな。俺は…へへ、懇意にしちゃってるギルドの娘からコッソリな。』

 

 

『けっ、羨ましい。しかし…そうなると三日月の月夜は出歩けねえなあ…。』

 

 

『バーカ。今歩いてる俺らが言えることかよ!(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

『そうだったそうだった!で、じゃあ帰るか?』

 

 

『まさか!このまま娼館へゴーに決まってらぁ!』

 

 

『ハハ…で、話は終わりか?』

 

 

『んにゃ、あと一個だ。そんなこんなで、実はギルドが"魔女"に呼び名をつけたらしい。神々といっしょにな。』

 

 

 

ヒュゥッ…。

 

 

 

『へぇ、なんて?』

 

 

 

 

スルリ。ス リュ リ。

 

 

『足取りも掴ませない、神出鬼没の魔女ってことでな。蛇に因んでシンプルに———

 

 

 

 

 

 

       「蛇魔女(メデューサ)」、とかって…———?』

 

 

 

 

 

   ザチュッ。 ゴロロン。   

 

 

 

 ジュル     モキュモキュ。

 

 

 

 

 

 

 ゴキュ   ゴクン。   …プフゥ。 

 

 

 

 

 パシンッ。

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした。」

 

 

 

 




そろそろ原作主人公出しますかな



その前にシュタインか…。
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