Vが目覚める Fate/ Grand order 作:変人ちゃん
燃え盛る街を見下ろし、外套をたなびかせながら
黒い男は目を細めた
(あの女が退場か.....所詮我々は残滓、残り香のようなモノだ
真正面からでは純正の英霊には及ばないか)
(しかしあの男.....)
驚異的な眼を以って、事の顛末をその目に収めた男は
自らの組する相手に手を下したサーヴァントに思考を巡らす
「.....いや」
男は思考を外に追いやり、自らの役割を全うする
(アレがなんであろうとも、我々の敵以外の立ち位置にいる者ではない.....)
男はその姿をそのまま写したような黒い長弓を取り出し、矢を宛てがう
およそ常人が弓で狙う距離では無いだろう
(であるならば私の成す事は決まっている)
しかし男はそのような事などは微塵も懸念してはいなかった
男は一度、肺の中身を全て出すように息を吐き捨て
全霊を込め、番えた矢を引き絞り
「ハアッ!」
音は、越しただろうか
まともな人間ならば目の前で何が起きたか分からないだろう
そのような矢を放っておきながらしかし
「チィッ......今の出力では”この程度”が限度か.....」
男は舌打ちする
「.....まあいい、いずれ決着が着くだろう」
男はそう言い放つと、”命中する事の無い”矢に興味を失くしたように背を向け姿を消した
「それで?アンタらはなんて
男は言葉を途切らせる
心臓が握られたような錯覚を感じながら振り返り
(マズイ.....!)
「...っあぁ!?」
遅かった
ソレがこの場所に着弾するのにおよそ一秒と少し
その時間を用いてこの現状を打開する手段を、この英霊は.....
いや.....マシュも、藤丸も、オルガマリーも
この場に居合わせた者には誰一人として持ち合わせていなかった
そもそも後者の二人はまだソレに気づいてすらいない
彼らはこの瞬間に詰んだのだ
しかし、一秒後に彼らは蒸発していたわけでは無かった
(.....なに?)
直前までソレから目を離さなかった彼は、飛来した物が激しい炎で燃え盛るのを目視した
炎によって大きく力を削がれたそれはしかし、まだ十分に後ろにいる生身の人間を溶かしうる火力を秘めている
「....ッ!」
マシュは目を見開き、英霊としてのスペックをフルに使い地を蹴る
盾を構え、全力を尽くし飛来物を受け切る
直後にソレは小さな爆発を起こす
「グッ.....」
襲い来る衝撃を、か細い足で耐え凌ぐ
「マシュっ!」
二人が駆け寄る
「ちょっと!今何があったの!?」
「説明も自己紹介も後だな
この場に居ればまたアレが飛んでくるかもしれん」
「それに.....また誰かさんの助けが入るとは限らんからなぁ!」
「「えっ?」」
困惑する二人を尻目に
スネークと名乗った男は、倒壊した建物の裏に向けて
その場所にいた人物へ声が聞こえるように声を上げた
「なぁ〜んだ、気づいてたのかよ」
「ああそれと、そんなに急がなくてもいいと思うぞ」
物陰から、フードを被った人物が現れる
「どうやら”アイツ”、どっかに行っちまったみたいだぜ?」
気さくな口調とは裏腹に、フードから覗かせる赤い瞳は
どこか違う場所を見ているかのような、聡明な雰囲気を纏っていた
本気の赤いアーチャーさんって、音速の6倍ぐらいの矢を飛ばしてるらしいですね