Vが目覚める Fate/ Grand order 作:変人ちゃん
「俺はまあ、キャスターって呼んでくれ、それで?」
青いフードに青いローブ、いかにも魔術師といった格好の男は、自らの素性を口にして次はアンタらだと彼らの言葉を促した
現在彼らは霊脈地を離れ、襲撃を受けた場所から遠ざかるように足を進めている
「ええ、私たちは.....」
人類の営みを永久に存続させるために設立された組織
人理継続保障機関フィニス・カルデア
組織の名にある通り、未来における人類の存続を保障し続けるという目的をカルデアは遂行し続ける事が出来なくなった
2016年
何者かの歴史介入により、あり得るはずのない特異点事象を観測したカルデアは、これを人類史を脅かす要因と仮定し、速やかに除去するというプロジェクトを立ち上げた
「.....それで、そのプロジェクトの一環で集められたのが俺ってことですね?」
「事前説明とこの場所であなたと合流して、計二回は似たような説明をしたわよね?なんでまだ自信なさそうに確認してるのかしら?」
「ハイスイマセン所長」
「嬢ちゃんはなかなか俺のタイプだな、気の強い女は嫌いじゃないね」
「そッ、そうかしら?.....」
「マジですか兄貴.....」
所長相手にそんなことを言ってのけたキャスターに、尊敬半分呆れ半分のなんとも言えない感情を抱く藤丸
「それでまあ、そのプロジェクトの序盤も序盤、いざこの特異点を修正しようと動きだした矢先よ.....」
襲撃
特異点で実働部隊として動く48名のマスター候補と、所長といった重要人物達が集まるタイミングでカルデアの中央区画が爆発
十中八九人為的に、計画的に引き起こされた事態に大きな打撃を受けたカルデアは、マスター候補の中で唯一意識があり活動できる状態の藤丸立香をマスターとして任命
奇跡的に生き残ったカルデアの所長オルガマリー・アニムスフィアと、カルデアの研究によりデミ・サーヴァントとなったマシュ・キリエライトと共に“特異点F“の探索に乗り出した
「ああもう!こんなときレフがいてくれれば.....」
彼女の嘆きにスネークが意地の悪い笑みを浮かべた
「残念だったなキャスター、どうやら彼女にはもう男がいるようだぞ?」
「へぇ〜、そいつは残念だなぁ」
言葉と裏腹にニヤついた彼の表情は、微塵も残念そうには見えなかった
「ちょっと!?わ、私とレフはそんなんじゃ.....彼はカルデアの古株で、一番頼りになるってだけよ!.....そう、そうよ!」
「へぇ〜?そうかいそうかい」
どうやら彼女は、この意地の悪い男達に遊ばれてしまっているようだ
「そんなことはもういいの!次はアナタよアナタ」
「ん?ああ俺か.....」
所長で遊んでいた男は、彼女に促されて話し始める
「さっきも言った通り、スネークだ」
「ですがその.....本名.....ではないですよね?」
「うん、それに銃やその義手を見るに随分近代の英霊なようだぞ?
加えてアヴェンジャーという規格外のクラス.....もしかしたらイレギュラーなサーヴァントを呼んでしまったかもしれないね」
「あん?通信機か何かかね、随分と胡散臭い兄ちゃんの声が聞こえんだが?」
「酷くないかい!?」
スネークはキャスターの辛辣な言葉にショックを受けているロマンを放置して話を進める
「まあ確かに、スネークは俺のコードネームだが
正確にはパニッシュド"
「毒蛇.....ですか」
(それに.....
「しかし参ったね、君は自らの事をあまり語りたくないのかもしれないが、せめてもう少しヒントをくれないかな?
僕らは蛇なんて英雄に心当たりが無い」
「別に語るつもりが無い訳じゃないんだがな.....俺についてきた連中や戦場にいた戦士たちは、俺の事を.....」
僅かに言葉を発すことを躊躇して、しかし男はその名を口にした
「
「それで?」
「.......何かね」
「随分と本気だったようだが?アーチャー。貴方が本気で弓を引くとは珍しい」
「.....それは皮肉か何かかね.....耳に痛いな」
アーチャー.....弓兵と呼ばれた男は参ったようにかぶりを振る
「白々しいな、あのサーヴァントと関係があるのだろう?」
「さてね、私は職務に忠実なだけだとも。それに弓を持たない弓兵なぞ居らんだろうに」
男は頭の中に黄金の甲冑を着た男を思い浮かべて苦笑する
勿論、自分の事は棚に上げてだが.....もしかしたら彼には自覚が無いのかもしれない
「.....まあ、貴方が本気になるならば詮索は余計か。好きなようにするといい」
「感謝する。ならば私は外の見張りにでも戻るとするよ。キャスターめが奴らをここまで手引きするだろうからな.....やれやれ、合流を許してしまった私の落ち度だ。失点は次で取り返すとするよ」
そう話し背を向ける彼は、義務を果たす以上にこの後の戦いを心待ちにしているように見えた
「戦いに赴く人間にしては、随分と楽しそうに見えるが」
「詮索はしないのでは?」
「.....はぁ」
少し子供のような彼の態度に、呆れたようにため息を零す
(らしくないな.....こうも滾るとは)
口角を上げる
汚染された身だからだろうか。普段の冷静な彼の思考は、随分と好戦的な考えに偏っていた
("伝説の傭兵".....あの男はおそらくそうだ。隻眼に
「「BIG BOSSッ!?」」
ロマンと立香が声を上げる
対照的にマシュと所長は首をかしげる。キャスターに至ってはあまり興味がなさそうだ
「.....すいませんマスター、私達はその、BIG BOSSという人物を知りません」
「知らなくても無理はないとも、BIG BOSSという人物は教科書に載るような人物ではないだろうね
彼はほんの十数年前まで活躍していた人物だ。グリーンベレーなどのような特殊部隊に所属し数々の功績を挙げてきた彼は、後に二十世紀最強の兵士とまで噂される程の名声を集めた」
「中でも大きなモノは、CIAに所属していた時の任務で、彼はこの任務を達成してBIG BOSSの称号を受けたらしいね」
「CIA.....アメリカの諜報機関よね?」
オルガマリーが問う
「そうだね。彼はアメリカでその名声を広めた人物だ。こんな辺鄙なところにあるカルデアの中だけで育ったマシュや、魔術師であり、如何にも他国の情勢に疎そうな所長には耳慣れない名前かもしれないね」
「私の不勉強ですか.....申し訳ないです.....」
「馬鹿にしてるのかしら?今私馬鹿にされた?」
「お前もうちっと言葉選んだらどうだよ」
「え!?僕なんかマズイこといったかな!?」
ロマニ・アーキマンという人間は本質的に空気が読めない
「しかし.....なぜそんな人物が
それに.....本人のまえで話すには大変失礼な事ですが.....現代の、しかも.....」
「一介の諜報員がなぜ英霊になる程の知名度を得ているか、だろう?」
マシュの問いをスネークが遮る
「.....はい」
「まあ端的に言えば、国に身を尽くしただけが俺の人生の全てって訳じゃないという事だ」
「ああ、その通り。むしろ彼は特殊部隊.....CIAから身を退いた後の方が有名なんだ。そこに彼が教科書に載らない理由があるんだが.....」
ロマンはそこまで言って曖昧に言葉を切る
彼はBIG BOSSという人物が決して善人である訳では無いという事を知っているからだ
負の側面があってこそ歴史であり人間だ。しかし一般的な環境で育った人間であるならば、BIG BOSSが行ってきた事の多くに不快感を示すだろう
そんな事を本人がいる前で自分の口から話す度胸が彼にはなかったし、なにより説明された彼らがもしスネークへの信頼を揺るがせれば、その事実は彼らの生死に関わるかもしれない
自らのサーヴァントとの絆はそれ程までに重要なのだ
だからこそ、ロマニ・アーキマンはその後の言葉を紡がなかった
「.....まあ、俺のしてきたことは、恐らく調べればいくらでも出てくるだろう。自分で探してくれ
俺が生きてた時代にだって、何度かメディアに取り上げられたこともある。.....まあ.....好意的な意見ではなかったと思うが」
ロマンの内心を知ってか知らずか、スネークは自らの事をそれ以上語ろうとはしなかった
実際のところはこの場での説明に時間を割きたくなかったというのと.....
(こいつは俺も調べ上げないとマズイな.....)
思わず苦笑する
"彼は彼が去った後のBIG BOSSを知らない"という事が主な理由だが
彼は自分を騙る為に必要な知識を有していない
その気になれば言い訳はいくらでもできるだろうが、怪しまれる事に変わりはないのだ
故に彼はこの場での素性の公開を先延ばしにした
「さて、それじゃ本題に入るとするかい?アンタら、俺の持ってる情報がほしいんだろ?」
キャスターがそう話すと、必然彼へ視線が集まる
「.....そういえばキャスターさんは、何故僕らを助けてくれたんですか?」
「そりゃお前、アンタらが他の連中よかよっぽどマシだったからだよ」
「ふむ.....カルデアとしてはこの街が何故こうなったのかは実に重要な情報だ。協力願えますか?」
「おうよ。とは言っても、俺も対した事は分からないんだがね」
そう言って彼は語り始めた
「大方予想はしてたんだろうが、この街では聖杯戦争が行われていた」
「やっぱり.....」
マシュが頷く。彼女たちは先程のサーヴァントに襲われた時から薄々とその事に気付いていた
聖杯戦争
七人のマスターと七人のサーヴァントが万能の願望器を求め、文字通り戦争を行う大儀式だ
「だがな、俺達の聖杯戦争はいつのまにか別のモノにすり替わっていた」
キャスターは大仰に首を振る
「経緯は俺にも分からねえ。街は一夜で火に覆われ、人間はいなくなり、残ったのはサーヴァントだけだった。」
その後も彼は語り続ける
セイバーが残ったサーヴァントを打ち倒していった事。その後彼らが泥に呑まれた事。サーヴァントが最後の一人にならなければこの聖杯戦争は終わらない事
「.....おい待て。それってつまり、お前をこの場で殺せば聖杯戦争は終わるって事か?」
「いやいやちょっと待ってよ!」
物騒な事を言い出すスネークを藤丸が制止する
「おう、確かに俺が死ねばこの聖杯戦争は終わるだろうな。まあこの戦争が終わること自体がアンタらの目的とイコールかどうかは保証しかねるがね?」
思わずマシュ達が息を呑むほど、一瞬にして空気が緊張する
この空気を作り出した張本人はしかし.....
「だろうな。それにさっきの黒い連中、そのセイバーってのに従ってるんだろう?で問答無用で襲い掛かってきてるって事は、ハナから俺達を消す気マンマンって訳だ
だったらこの場で友好そうな戦力を一人潰すのは得策じゃないって事か」
「.....なんだ。最初からそのつもりなんて無いんじゃないか.....心臓に悪いなぁ.....」
通信機の向こうで胸を撫で下ろした事が分かる程に安堵した様子が伝わって来る
「いやまあ、俺としてもアンタとは手合わせしてみたいトコなんだが.....槍がありゃあなぁ!」
ヤケクソ気味に声を荒げるキャスター
「槍.....キャスターなのに?」
「そういう事もあるんですよ、先輩」
ふっと湧き出た疑問にマシュが答える
「この人は槍の使い手ながら、魔術師としての側面も持つ、非常に高名な人物なのだと思います」
彼女の言葉に顔を頷かせ、キャスターが言葉を口にする
「ありがとよ嬢ちゃん。てな訳で、俺とアンタらは特段敵対する理由がある訳でも無い。お互い、陽気に手を組まないか?」
そう言ってキャスターは藤丸に手を差し出した
忙しさにかまけては筆の進まない日々、申し訳ないです