Vが目覚める Fate/ Grand order   作:変人ちゃん

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無駄話です


閑話

「.....チッ」

 

月の光を映し出す夜の海を前に、男は舌を打つ

まだそう歳を数えてはいないだろうに、あらゆる苦悩に疲れ切った彼の顔つきは、実際の歳よりも彼を老けて見させるだろう

 

海の彼方を見据えるようにその場に立っているが、その実彼の目には海も、月も、その光さえも映ってはいない

 

弱り切った彼の背は月光に晒され、尚の事その姿を弱々しく見せる

激情に燃えていた彼の姿は、もうそこにはなかった

 

「カズ」

 

その背に声をかける事に、彼はどれくらいの時間を要しただろうか

 

「スネーク.....」

「痛むのか?」

「.....いや」

 

首を振る

サングラスの向こう側にある目が、彼の左腕の有った辺りを追った気がした

 

 

 

カズヒラ・ミラーはBIG BOSSに裏切られた

少なくとも本人はそう感じたようだった

 

ヴェノム・スネークの正体を知った日から、ミラーとBIG BOSSの決別は決定的となった

 

彼は言った

BIG BOSSは自分が討つと。ファントム(影武者)も、自分が大きくすると

 

失意の底に有った彼は、自らの信じた者に牙を剥いた。そうする事でしか自分を保てなかったのか

或いは、彼は報復というミームに取り憑かれ、振り払う事が出来なかったのかもしれない

 

「カズ.....いやミラー」

 

彼は、呼びなれた愛称をあえて使わなかった

 

「.....お前がここを去りたいなら、俺はお前を」

「いや、いい」

 

強い口調で、ミラーは彼の言葉を遮った

 

「あんたは俺が.....俺たちが追いかけた、理想のボスだ.....」

 

スネークは僅かに目を開いた

言葉とは裏腹に、そう言った彼の表情が、今にも泣き出しそうな程、頼りなく弱々しくて

寂寥に駆られたその様には、負の感情以外に何かを見受けられない

 

カツカツと音を立て、彼がスネークに歩み寄る

 

「あんたがそのままで居てくれれば俺も、ダイアモンド・ドッグズ達も....."あの女"も、あんたに手を貸すだろう」

「.....だがミラー」

「それと」

 

スネークの言葉を遮る

 

「あんたと俺は相棒だ、そうだろう?.....カズでいい」

 

そう言って彼はスネークとすれ違い、その場を去った

 

その背にスネークは.....

 

(俺は何も言わなかった)

 

分かっていた

あの時交わした言葉には何一つとして意味が無い事を

空虚で、中身なんてこれっぽちもない

言葉の形をしただけのただの音の塊に過ぎない

そんな事は俺も、奴も分かっていた

 

BIG BOSSを討つ

カズヒラ・ミラーはBIG BOSSとの決別を選んだ

それは即ち俺との決別をも意味する

俺は今やBIG BOSSの影であり、BIG BOSSそのものでもある

ミラーが復讐を選択した時から、俺と奴の関係はいずれ瓦解すると決定した

歩む道が交わることは二度と無い

 

 

俺が奴の隣にいる事を選べば

それも良かったかもしれない

奴と組んで今までの様に仕事をこなして、そうしていけば、いずれはBIG BOSSさえ越す力を持てたかもしれない

そうしてミラーの報復を叶える事も出来たかもしれない

 

だが俺はそうしなかった

 

もしそうしようとミラーに伝えられたなら

迷ったかもしれない。きっと答えを出すのに時間を要しただろう

だが答えは恐らく変わらない

 

俺はカズヒラ・ミラーを裏切った

 

だから、ミラーが俺の元から姿を消す事も分かっていた

その背を追おうとはしなかった

あの時俺が、擦れ違う奴に何も言わなかった時から、この別れは避けられないモノだった

 

だが.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の記憶を辿り終え、彼は目を開いた

ブリリアントカットの石が輝く、左肩のエンブレムを指でなぞりながら、彼は空を見上げる

 

(なあカズ.....俺はどうしたらいい?)

 

周囲が火に包まれているからだろうか、夜空が薄っすらと赤い

 

(また力を貸してくれるか?.....相棒)

 

再び目を瞑り、電子煙草を口元に運ぶ

幸いキャスターの特訓とやらはまだ時間を要するらしい

もう一服するぐらいの時間はあるだろう

 

 

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