転生?
俺は生まれた時から、『普通』から逸脱していた。
何を見ても何が起きても何を聞いても何をされても、何時だって理性は克明に働いて。決して動じることもなく。感情はあれど衝動は無く、俺は不気味なヒトだった。
『あらゆることに動じない程度の能力』
その異常性に気づいた時、そんな言葉がふと浮かんだ。
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「じゃあなー」
「おーうまた明日」
男子校に入学し、部室棟の悪臭にもなれた七月のある日の事。同じ山岳部に入部した同学年の友人に別れの言葉を告げ、俺は家路に着いた。
徒歩で二十分程の場所の、こじんまりとした平屋が俺の家だ。両親は二年前に他界し、遠く名古屋に住む祖父だけが俺の親族だ。その祖父ももう、一年は持たないと診断され、今はとある病院に入院している。
まあ、俺の事も忘れてるんだろうが。もう歳だしな。
そんな事をつらつら考えながら歩いていると、もう家に着いていた。体を動かすのと下らない思考を並列して行うとは、流石俺。異世界モノだったら『スキル:並列思考を習得しました』とか通知が来るに違いない。
「ただいまーっと」
『おかえりなさい』、なんて言葉が帰ってくる事は無い。さっきも言った通り、俺はほぼ天涯孤独なのだ。
「んー・・・・・カップ麺で良いか」
少々健康に悪いが、そんなもの十代の健康体には大した事では無い。美味ければ良いのだ。
片手鍋に水を入れ、ガスコンロのつまみに手をかける。
「・・・・・ん?なんか臭い?・・・・・まあ良いか。後で窓開けよう」
ここで面倒くさがって先に火を付けたのがいけなかった。
臭いのはガスの匂い。疲れていたから気づかなかった、朝に閉め忘れたガスコンロ。思考が鈍っていたから分からなかった、そこで火を付けるという行為の愚かさ。
ドッカーン、と、マンガの様な音を立て、俺と俺の家は爆発した。
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「ん・・・・・」
太陽の光に晒され、俺は眠りから覚醒する。むせ返るほどの土の匂い。湿った草木の感触と、服に染み込む汁の冷たさを感じる。
目を開く。
「森・・・・・」
俺は森の中に居た。何故かは知らない。天涯孤独なのだから身代金目的の誘拐なんて事は無いだろうし、犯人が何の確認もしないバカヤロウだったとしても、拘束もせずに森に放り出すはずもない。
「ん?・・・・・心なしか背が低いような」
立ち上がり、気付く。170程度はあった俺の身長だが、今は130程度しか無いように感じる。視線が低いのもそうだが、手足も短い。というか声も高い。つーかロリっ娘だわこれ。
「この服装・・・・・何処かで見たことあるような」
見覚えのある服装はさて置き、取り敢えず何故かは知らないが体は幼女、頭脳は男子高生状態になって森に放置されているらしい。なるほど分からん。俺は黒いヤツらの取引現場を目撃した記憶は無いのだが。
「・・・・・ルーミア、か?」
思い出した。これは東方Projectのキャラクター、常闇の人喰い妖怪ルーミアだ。多分。顔見えないから分からんけど。この白黒の洋服とロングスカートに、胸元のリボン。だが頭を触ってみても赤いリボンは無いようだ。
「そーなのかー」
取り敢えず有名過ぎるルーミアのセリフを言ってみる。ただし友人にこれを言ったら『原作ではほぼそんなこと言ってねーぞ!それをネタにしてバカルテットなんて呼びやがって・・・・・そもそもルーミアは』などとグダグダ説教されたので、ネタにするなら相手を選びましょう。
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そーなのかーなんて言っててもどうしようもないので、情報の確保に動く事にした。
幸いというか何と言うか、身体は違和感なく動かせたし、妖怪としての高い身体能力もある。太陽の光が当たっていると何故か調子が悪くなるが、太陽の光なんて隠れてしまえ、と願うと闇の球体が俺を包んで太陽光を遮ってくれた。視界も遮ってくれたのですぐさま解除したのだが。
『闇を操る程度の能力』
闇玉(俺命名)を使った時に思い浮かんだ能力だ。今思えば、生前?の俺のも所謂『程度の能力』だったわけだ。今も問題無く発動しているようだし、俺には二つの能力がある事になる。
「そう言えば、弾幕って出せるのか?」
東方Projectと言えば弾幕STGのゲームだ。スペルカードルールがある以上、従わなければ俺に待つのは腋巫女からの制裁のみ。どうにかしなければ。
「ルーミアのスペルカードか・・・・・全部割りと簡単だった記憶があるんだが。バカルテットで合ってるだろ。まあ一面ボス強くしてもダメか」
博麗神社に行きたいが、道が分からん。誰かが通りかかるとも思えないので適当に歩く。
そして、それがいけなかった。
「グルルルル」
「・・・・・妖獣なのかー」
「グワウッ!」
幼い姿の俺を食料と見定め、そいつは飛びかかってきた。俺のものと似た力を感じるから妖獣だと判断したが、これが妖力というものなのだろうか。それにしてはこいつの力はだいぶお粗末だが。
「闇玉」
「グルゥ!?」
オオカミ型の妖獣を闇玉で覆う。自分を中心に展開する必要は無いのでね。やってみたら出来た訳だが、何故本当のルーミアはこうしないのだろう。さっきより多少疲れる気はするが、誤差の範囲だろう。
「弾幕発射」
「キャンっ!」
自分の中の妖力を丸く固めて、発射する感覚で弾幕を打ち出す。やり方は本能的に理解している。ご都合主義だな。
段々と妖獣の鳴き声が弱々しくなり、遂には聞こえなくなった。闇玉を囲むように打ってたから逃げられることもない。
「・・・・・死んだか?」
闇玉にその辺の木の枝を突っ込み、妖獣をつんつん突く。
反応がない。ただの屍のようだ。
「勢いでやっちゃったがどうすっかな・・・・・・・・・・・・・食うか」
ルーミアとしての本能なのか、あるいは妖怪というのがそういう物なのか、目の前の死体が美味しそうな肉にしか見えなくなってきた。
「・・・・・・・・・・いっただっきまーす」
ゴリッ、ズルズル、ポキッ、グチャグチャ、そんな音が響くが、やっぱり食欲しか湧かない。前世?だったら多少の抵抗はあるだろうに・・・・・やはり今の俺は妖怪なのだ。
それに、食ってみて分かる。妖怪が妖怪を食べるというのは、生命維持以外に自身の強化の為でもあるのだ。目覚めた時よりも、体内の妖力が増えている。相手が弱かったから微量だが。
妖怪って色々世紀末な種族だぜ。
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「うーん・・・・・便利だなあ、この能力」
『闇』というのは中々に汎用性が高い。イメージとして『塗り潰す』ものというのが有るからか、大抵の妖獣は闇をぶつければぶっ殺せるのである。勿論殺した妖獣は美味しく頂いたので、妖力は最初の1.1倍程になった。スペルカードルールが導入されたと言っても、幻想郷は弱肉強食。強いに越したことは無いだろうし妖力が増えるのは歓迎するべき事だ。
と、そんな事をつらつら考えながら歩いていると、
「止まりなさい。それ以上近づくなら破魔の矢を撃ち込むわ」
「ん?」
そう脅しを掛けてきた人物に視線をやる。そして、その先に居たのは、長い銀髪を三つ編みにして前髪を真ん中で分けた美幼女である。
そう、美
「私の名は八意××・・・・・聞いたことくらい有るでしょう。今すぐ去りなさい」
「おう。分かった。でも一つだけ聞いていいか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ええ」
「ここは、幻想郷か?」
「幻想郷?聞いたことは無いわね。ここは人間の街近くの森よ」
「・・・・・・・・・・そうか。ありがとな」
えーりんの訝しげな視線と殺気を感じながら、来た道を引き返す。えーりんに勝てる訳無いし。
さて、これで分かったことがある。俺は今まで幻想郷に居るルーミアに憑依だか融合だか乗り移りだかしたんだと思っていた。
けど、えーりんが教えてくれた事で分かった。幻想郷うんぬんの前にこれ、
古代スタートだわ。
ガス爆発・・・・・・気をつけよう!我が家はIHだから関係ないがな!
オリ主くん・・・・・・いきなり憑依しても動じないオリ主の鑑。東方の原作はルーミアについて暑く語った友人君に借りて紅魔郷だけはやってた。ノーマル?ハード?ルナティック?ソンナモードシラナイナー。原作書籍?イラストだけは見てたし、気になるキャラの解説も読んでたよ。
『あらゆることに動じない程度の能力』・・・・・・めがっさ動じない。
ルーミア・・・・・・リボンは付けてないらしい。
『闇を操る程度の能力』・・・・・・闇は全てを塗り潰す。対抗するには
世紀末種族ヨウカイ・・・・・・古代に産まれて人格を得た妖怪は、きっと頭おかしい。どこから畏れを獲ていたのだろうか?
美幼女えーりん・・・・・・( ゚∀゚)o彡°えーりん!えーりん!