ねこまたぐらし!
吾輩は猫又である。名前はもう無い。
偉大なる先達、つまりは百万回死んだ猫には及ばぬが、吾輩も一度死んでおる。死んで畜生道に落ちるとは、吾輩はそれなりに罪を重ねていたようである。
長靴は履いておらぬが、代わりに神様に貰った筋斗雲に乗っておる。その筋斗雲は、大きさは自由自在で重量制限も定員もないと来た。心が清らかで無くても乗れるので、もはや筋斗雲では無いような気もするのである。
吾輩の与り知る所ではないが、昨日からこの街は様子がおかしいのである。なにやら正気を失った人間が共食いを始め、正気の人間が逃げ惑っているのである。
今世の吾輩にとって、人間とはおやつ係でしか無いのであるから、助けようという気もあまり起こらぬ。・・・・・・いや、『ゆき』と呼ばれていた人間から貰ったチューブ状のおやつは美味であった。見かけたら助けてやろうと思うのである。
しかし吾輩を慕っていた猫達は保護するのである。同族のようなものであるし、釣った魚に餌をやらぬ不届き者になったつもりは無いのであるから。
・・・・・・さて、そのためにも先ずはショッピングモールへ餌の調達に行くのである。人間が混乱している以上、吾輩とシモべの食料確保は最優先なのである。
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先に気づいたのは、圭だった。いつもの様にリバーシティ・トロンで過ごしていた日常は、あまりにも簡単に破壊されたのだ。暴動のようなもの・・・・・・人が人に噛みつき、殺し、捕食することを暴動と言っていいならばそれが起きた。
それに気づいた私達は、どうにか三回の服屋に逃げ込めた。更衣室に隠れて救助を待った。
・・・・・・来たのは、
避難できたのは十一人だけ。やたら高級な布団で寝泊まりした。みんなで生活空間を整えて、男性が物資を運んできて、女性が家事をする。そうやって過ごして、何とか安定してきた。
ダメだった。
燃えていた。色んなものが燃えていた。リーダーの恋人だったのかもしれない女の人も燃えていた。きっと、リーダーも燃えていた。きっと、リーダーは
あの日から、圭は笑わない。
私もきっと、笑ってない。
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ちらりと覗いたショッピングモールは、なかなかの惨状だったのである。人間の生存は絶望的なのである。シモべの猫共は筋斗雲に残し、吾輩は小さくちぎった筋斗雲でショッピングモールにお邪魔するのである。
吾輩はまず、生鮮食品売り場に向かったのである。人間の冷蔵設備は画期的な発明であるが、電気が無ければ腐るのである。吾輩は賢い猫又であるから、その事に抜かりはないのである。
筋斗雲に食料を積み、吾輩はシモべ達の元に帰るのである。
これで今日の夕飯は心配無いのである。しかし明日の朝にはもう腐っていると思われるからして、キャットフードを確保しなければならぬのである。カリカリは好きなのである。
しかし、餌だけあっても暇なのである。早急にオモチャを手に入れなくてはなるまい。
吾輩はまたもや筋斗雲を飛ばし、三階へと向かったのである。
『にゃあ、生存者か?』
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その猫・・・・・・猫?は、生存者捜索中に現れた。
神々しいような気がする雲に乗って、ぷかぷか浮かんでいた。血統書でも着いていそうな毛並みのいい猫である。
非現実的な光景の連続に頭がおかしくなりそうだったが、着いて来いと言わんばかりにチラチラと振り返りながら進むので着いて行った。
行き着いたのは女性服店。案内するだけして、猫はさっさと何処かに行ってしまった。
そこでは、二人の女子高生を保護した。これで避難できたのは十一人。一度、捜索を打ち切った。
・・・・・・これ以上居ても、きっと保護しきれないから。