ここは、物語の舞台裏。ある鎮守府の執務室を改装している。
姫園鎮守府の艦娘たちが、今回も説明会を開催するために準備に追われている。
慌ただしい鎮守府。出演者の衣装もマイクもカメラも大丈夫。
細かい事は……今回は裏方の五十鈴に任せればいい。
全員が忙しく働くなか、本番は徐々に近づいていた。
今回は補足説明会の二回目。本編では語れない事をメタ的に説明する。
いつもと違い、兎に角メタ発言が多発するのでご注意いただきたい。
あとは、何やら謎のぬいぐるみが出てきたりもする。
こいつはイ級ぬいぐるみ、作者の代用品で登場するのであしからず。
そんな感じでお送りする、補足説明会。
それでは、スタート。
場所は姫園鎮守府執務室。
外の光景は夜、内装は今回は……待て。なぜお風呂になっている!?
タイル張りの床と天井、回る換気扇、湯気をあげる浴場。壁には……なんか描いてある。
火のついた大きな蚊取り線香……? いや、何故? 兎に角、そんな中。
頭にタオルを載っけた、微妙に湯気でシルエットしか見えない主人公たちの登場である。
「はい、とうとうトータルで100を突破した長編となりました事を先ずは喜びましょう。君と結ばれる、物語の作り方。主人公、渋谷七海です。今回は作者の趣味で銭湯に改装した執務室よりお送りします。因みに裸は見えません。湯気で全部隠れてるのであしからず」
「もっと強く、美しく。司令官のお嫁さん、メインヒロインの一人の駆逐艦如月よ。今回は宜しくお願いします」
「あたしに、構わないで……。ママの娘、駆逐艦山風です。なんか今回は無理矢理呼ばれた……。宜しく」
「別に、怒ってないです……。妹の弥生、です。宜しくお願い……します」
今回はこの面子でお送りする。
尚、全員全裸だが、白いヴェールで見えないので皆様ご想像にお任せします。
見えているのは、優雅に風呂の中を回遊するイ級ぬいぐるみ、作者のみで……。
「如月、撃ちなさい」
「はーい」
パァンッ!!
「ぎゃああああ!?」
天井から突然振ってきた連装主砲が、泳いでいるイ級をぶち抜いた。
プカプカ浮かんでいる死骸が一匹。まあ、無視していく。
「なんでお風呂にしたんですか。ぶっ殺しますよエロ作者」
「……一度で良いから、書きたかった……」
浮かぶ死骸の言い訳を聞いて皆様軽く怒った。
嫁と娘と妹の砲弾の抗議を受けながらお送りしよう。
「さて。今回は補足説明二回目です。今回の補足は、島村さんの鎮守府、檜山鎮守府の事を説明したいと思います」
「語ることなんてないよ……。どうせ、皆だって分かってるでしょ? ただの外道だよあのハゲ」
と、作者を撃ちながら吐き捨てる山風。
「まあまあ。山風の作中の扱いは、理由があるんですよ。但し、作者の思想ですけど」
「あんたが! あたしを! こんな風に! 不幸にしたんだ!! 死んじゃえ!!」
二刀流で連射。イ級は死なないゆえに全部直撃。絶叫している。
「とまあ、本作で不幸な目に遭ったうちの娘と妹も交えて語りましょう。では、始めます」
一通り不満をぶちまけて、タイルの床に転がるぬいぐるみ。
口から生臭い綿をぶちまけて痙攣していた。
皆は湯船に浸かりながら説明を開始する。
「まずは、島村さんが登場した理由ですね。本来はあの人は、ただの悪役でした」
「最初は、報告会が初登場だったかしら。名前は結構序盤から出ていたけど。あのときはまだ、典型的な悪役にしようと思っていたのよ」
如月がそんなことを言いながら、湯船にオモチャの家鴨を浮かべて言った。
「ええ。あの人は本作におけるヴィランとして、作者は登場させたつもりだったんです。本当は」
「だから、正直な話をするとイメージはよくあるブラックな鎮守府その物だったの」
「そうなのです。ですがまあ、皆様知っての通り……現在では、あの愛国者の国防の豪傑みたいな扱いになってますね。正反対になってます」
「何でそうなったの? あたし、納得できないんだけど」
「弥生も……何だか腑に落ちない」
二人は不満そうに七海を見て聞いた。
「ああ、簡単な話です。……あたしのせいです」
「え? どういうこと?」
「まあ、あたしを中心に進めていくと、どんどん思考がヤンデレ特有の危険な行動になる過程で、あたしのほうが悪役みたいな事を繰り返していくようになります。で、主人公がそんななのに同じような相手を出すのもキャラが被るので、途中から逆転して、あたしと真逆になるように描いているんですよ。これでも」
「言われてみれば……作中は、人間には人気あるよねあいつ……」
山風が思い出すように呟いた。
「あたしのほうが余程悪党ですから。利己的排他的と何度も強調していますし、実際作中の多くの人間にも嫌われています。ですので、島村さんは真逆の存在として、修正を受けているんです。ですんで、全部真逆でしょう?」
「……そっか。七海姉は、自分のところの艦娘と深海棲艦の味方。あの人は……人間の、国の味方」
弥生も納得した。言われてみればそうだった。
「ですので、島村さんの鎮守府は簡単に言うと、昔はブラックな鎮守府そのままだったんです。但し、それは根本に国防の為という揺るがない信念があった。それも、事実です」
「艦娘は兵器と言っているのはどうして司令官?」
「根本が明らかですからね。島村さんの言う人間の定義は、国の中で育まれた命のこと。艦娘は正確に言えば違います。一度言ってますが、島村さんの前に艦娘はいるんです。後ろにいる人々とは扱いが全然異なるわけですよ」
「成る程……。じゃあ最初は向こうじゃ消耗品だったんだ?」
如月が二人に問うと、首肯する。
「向こうは……凄い昔は、厳しかった。死んでも任務は成功させろ。失敗は許されない。お前たちは所詮は道具だって、威圧的な態度で命令してた……」
「うん……。任務のためなら死んでも良いって何度も言ってた。成功のために、使えない艦娘を犠牲にする事も多々あった。無理矢理出撃もしたし、死にかけた経験も一度や二度じゃない。でも、弥生が言ったと思う。あの人は、解体は早々なかったよ。ちゃんと基準があったし、基準に満たすまで説教したり独房に入れたり、異動させたりして反省もさせてた。それでも改善しなかったり、一度でも取り返しのつかない事をした場合は無理だったけど……。それに、自由も……結果さえ出せばある程度は認めていたし。やることさえやれば、それなりに暮らしていたと思う。だけど、とんでもないストイックな鎮守府だったから、性格の不向きはあったかな……。セクハラとか、一度もないし本人も規律に厳しいから、文字通りのブラックな鎮守府という感じ。それに個性は、絶対認めなかったのが一番辛かった」
と、二人は顔色が悪くなりながらも教えてくれた。
あくまで兵器、道具という認識で扱っていたんだろう。
「……確かに司令官とは対極ね。厳しいストイックな鎮守府と、司令官が暴走するバタバタ鎮守府。シリアスとコメディ並みに違うわ」
「で、戦う理由も扱いも全部逆。そんなんでよく対立しないもんですよね。ただ、わかってほしいのは……島村さんは、悪人じゃないです。悪人は、あたしです。あの人は、作者の想像する人間の味方を具現化したものになってますので。正義か悪かは、立場により違うと思いますが……あたしが艦娘と深海棲艦の味方なので、向こうの言動が悪に見えるでしょう。ですが、思い出してください。あたしが、何をして来たか。そして、艦娘擁護の連中が名前だけ出てきてますが、何を島村さんにして来たか。……人間からすれば、悪は此方なんです」
七海はそう言って、死にかけているぬいぐるみに向かって振り返る。
「作者は思うんだそうです。人間の味方と、艦娘の味方とは……本当に相容れるのか? 本作の艦娘の扱いは、どう足掻いても人間にはなれません。真実を知れば、多くの人々はどう思うでしょうか? 作者の出した答えは、あたしが受けてきた迫害の数々だと言うこと。あたしは深海棲艦というモノでしたが、この立場を艦娘の味方する提督と、民間人に置き換えれば、同じことが起きると作者は考えました。人類の味方と、艦娘の味方は、本作では交わらない。あたしが初期に艦娘は化け物と言っていました。普通の人からすると、化け物と言われて、果たして反論できますか? 反論するとして、その内容は? 感情的ではなく、理論的に人間と声を張って言えるでしょうか。少なくとも、軍部には……艦娘を道具にするだけの理由は過去にありました。あの苦痛を再び受けないために、候補生時代に道具と刷り込まれるのです。島村さんの扱いは作中でも波紋を呼んでいます。納得していただけるとも思いません。あくまで本作の中では、島村さんの鎮守府は間違ってはいないと、作者は思い描いたそうです」
それぞれの主張はある。彼女は彼女の、彼は彼の。
この問題は、描く人のそれぞれが出る。
あくまでも、この作品での彼は悪はないと言うこと。
「でも、今は違いますよ。あの人も、変わったんです。どうも微妙なすれ違いを起こしながら、気がついたらこんな風になってました。あたしは信じられる大人として、島村さんはあたしを強い人間として……」
「勘違いってことよね。毎回発生しているけど」
如月が苦笑する。
不貞腐れる山風と不満そうな弥生がぬいぐるみに言った。
「なんで、そう言えば選ばれたのがあたしたちなの? 他にも艦娘いたのに」
「そう……。クローズアップされるのが、弥生たちだったのが納得できない」
自分達の初登場が酷い奴から捨てられるような形だったのが気にくわないらしい。
「そんなの……山風の怯える顔が……書きたかったからに決まっている……。弥生は……怒ったような表情を……笑顔に……」
「二人とも。殺ってよし」
ゲスな理由を明かしたぬいぐるみ、七海の許可で再び砲弾のご褒美が直撃する。
「ぎゃあああああああっ!!」
酷い音がした。ぬいぐるみ、痙攣しながら倒れている。
「とまあ、島村さんの過去の状態を簡単に説明しました。関係ないことも少し語りましたが、如何だったでしょうか?」
「あの人の存在は、言ってしまえば司令官とは違った立場だから、言い分も合わないのは仕方無いの。けど、明確に言えるには……悪があると言うなら、それは立場によって異なると言うこと」
「この物語は、ママとあたしたちが主役だから」
「艦娘と深海棲艦の視点で、これからも進んで行きます……」
と、そろそろ時間なので纏める。
「そんな感じで纏まった所で、今回はお開きとさせて頂きます。ここまで長話にお付き合い頂きありがとうございました!」
「そろそろこのルートも終了間際。次は人類ルートか、艦娘ルートになると思うわ。人類ルートは最終兵器メインで、艦娘ルートは……うふふ。皆さん知ってのあの指輪がテーマになるかも、だって」
「まだ予定ですけどね。それでは、補足説明会を終わらせて頂きます。ありがとうございました!」
「山風の泣き顔は良いぞぅ……。わかるか、諸君。山風は泣かせるもの……」
「山風、殺りなさい」
「うん! 死ねこの外道作者ー!!」
「ファッ!?」
「アーッ!!」