君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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鎮守府夏休み 前編

 

 

 

 

 

 

 皆が鎮守府に来てから、暫く経過した。

 周囲の話は聞くが、どうにも他の候補生たちの戦績は宜しくないようだ。

 先代があまりにも強すぎると言うのを差し引いても、侮っているせいか惨敗が大半だとか。

 日本艦娘の場合は、我が強すぎる周囲が警告を聞かずに調和が取れずに負け、評価が下がる。 

 下がれば皆との軋轢が広がる悪循環。エリート意識の強い皆は、協調性皆無だった。

(下らない……) 

 七海は対しての己の艦隊を判断すると、まあ空気は悪くない。

 順番待ちになっている試験だが、映像を見たせいで寧ろ慎重になっているぐらいか。 

 全員が正攻法じゃ無理だと悟っているので、やり方が違う。

 若干一名以外は問題無さそうだ。ポーラ以外は。

 この足を引っ張る重巡が酒を抜いてもやる気を出さずに適当にやっている。

 周囲が訓練をしているなか、一人だけ埠頭で海を眺めていたり。

 コロラドが怒って叱ってもけんもほろろ。

 根本的な問題のようなので、盾にでもするしかない。

 フォローする気はないし、動かないなら囮にでも使えばいいと皆に相談しておいた。

 無気力上等。ならば、地獄を見せてやるまでのこと。

 ポーラが逃げ回っても無駄なように、徹底的に追い詰めることにする。

 提督の視点からしてあの性格は修正は無理だ。ザラが加減してくれと懇願するが無視した。

「痛みを与えると言ったハズ。ポーラ、喜びなさい。あたしが、深海棲艦になって死ぬという感覚を教えてあげましょう」

 七海がそのふざけた態度に対してイラついたので、キツいお仕置きに発展。

 一度海に引きずり出して、本気で殺しにいった。

 ポーラは絶叫して攻撃に堪えていた。

 結果、やり過ぎた。

 ポーラは暫く再起不能になったようで、夏の酷暑もあり見事にぶっ倒れてしまった。

 艦娘でも熱中症は無理だった。鎮守府の皆とはそこそこ仲良くやっているが全員が消耗している。

 何か対策を考えようと七海は思案していた。

 異国の慣れない暑さに、海外の皆はへばっている。これでは訓練にもならない。

「暑い……どうなってんのこの国……。猛暑日ってなに……?」

 ゴトランドが理解できないと嘆きながらクーラーで冷えた部屋から出なくなった。

『梅雨って言うんだっけ? 確かに酷い湿気よね。あたしは平気だけど』

 ジャーヴィスは扇風機で遊んでいるがそれなりに順応している。

「くっ……。こんな暑さに、この私が負けるなど……!」

「炎天下で何してるんですかコロラドさん。普通に死ぬので止めてください」

 暑さなど気合いで超えるとか言っていたコロラドは炎天下で演習してて倒れた。

 変な意味で自分にも厳しい。で、ドックに担がれ暫くお休み。

「…………」

「ザラさんも、具合悪いなら休んでください」

 既にゾンビになってハイライトが消失しているザラは、何やらポーラにお見舞いをしようと買い物に出掛けて、戻って早々ダウン。

 ミイラ取りがなんとやら。次々倒れる艦隊の面子。

 大本営から通達が入ったのは丁度その頃。

 あまりの猛暑に、試験を受ける皆の体調が崩れたので延期するという知らせだった。

 日本の艦娘ですら、見事に入院騒ぎになるレベルだとか。

「ありゃ……」

 折角手配していた秘策の料理。

 某男性提督は黒い歴史が来るぞとか叫んでいたが、例の闇色シェフたちのご厚意は受け取った。

 最低限の物資は揃った。

 ちょっと戦場に持ち込むには準備が足りないので加工している時間が欲しかったので、これは幸運。

『ラッキー! ってことは、遊ぶ時間もある!?』

『ええ。準備もあるので少し息抜きもどうぞ。元気あるなら』

 梅雨明けした初日にジャーヴィスはオタショップに行くとか言い出して飛び出していった。

 凄くイキイキとしている様子で。日本語分からないがオタクの閃きでどうにかするとか言ってるので放置。

 七海は着々と進めていた。で、ある程度終わると。

 ……加工に使っていた材料が余った。主に食べるもので。

 暗黒物質シェフ、比叡さんと磯風さんに教わったレシピをアレンジして、より毒性を増した七海お手製ブラックマテリアル。お二人のお手製も含めてたんまりと作成した。

 ……一応、分類は料理。大丈夫、食える。頑張って試食した。

 臭いで一回気絶して、食って一回気絶した。お腹痛くてドックに自分で向かった。

 これなら桜庭でも倒せるだろう。……お二人の奴は食べてないけど。

 気にしない。死にはしない。相手は最強の艦娘だからと根拠のない自信で忘れることにした。

 取り敢えず。この暑さの対策をどうするかが、早急な課題であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世間は変わらず夏休み。

 皆は持ち場からは離れられない。

 だったら、海で泳げば良くね? と解決策を思い付く。

 鎮守府のすぐ近くの砂浜で泳いで涼もうという計画だった。

 敷地内なので問題ないし、何かあればすぐに戻れる。

 こいつは名案だと七海は早速計画を練る。 

 日程の調整から、周囲と相談してあれこれ決める。

 ついでにバーベキューもやろうとリンゴが言い出して、艦娘も深海棲艦も自由に参加してもよいという計画になった。

 食うものは七海の余りも処分できるし、涼めるから最高の娯楽と皆は大喜びだった。

 当日、日焼けが嫌だという一部とクーラー最高だぜ的な艦娘が代理で仕事をしてくれる。

 そっちも万事問題ない。七海も無論参加する。

「あんたにしては、名案だったわね七海」

 と、五十鈴も褒めてくれた。

 当然ジャーヴィスたちも参加して交流も深めたいと言っている。

 主にジャーヴィスとゴトランドが。ポーラは未だに体調が悪く、ザラは看病で欠席。

 コロラドはと言うと。

「丁度良いわ。深海棲艦の実力とやら、お手並み拝見と行こうかしら。かかってらっしゃい!」

 と、挑戦状を叩きつけた。上から目線で。

 困惑する一同に、勝てば当日に飯でも作ってやろうとコロラドは言う。

「自慢じゃないけど、下積みは長いからね。味の保証はするわ。疑うなら先ずこれを食べてからにしなさいな」

 と、吹っ掛けてきた早々、厨房を借りて簡単にハンバーガーを持ってきた。手作りらしい。

 リンゴが恐る恐る受け取ったそれをかじる。そして、

「めっちゃ美味い!」

 と愕然とした。驚く皆にコロラドは、自分は天才じゃないので出来ないことは言わないと豪語する。

 いわく、あくまで秀才。努力によって選ばれたものという自負。天才じゃないので注意という。

 裏付けされた努力があるから、大口は叩かない。出来ることを自慢するだけ。上から目線で。

「なに、演習しようって言ってる訳じゃないの。ちょっと勝負したいだけ。とくに……そこの生意気な和装のメイドとね」

「私はお前に興味などない」

 コロラドは、小春を一瞥して言った。小春は鬱陶しいと切り捨てるが。

 あの生意気な小春と一戦を交えてどちらが強いか見たい、と言うようだ。

「私が興味があるのよ。深海棲艦の駆逐艦の性能とやらを」

「なら、村雨でも良い」

「なんで村雨を巻き込むのよ!?」

 行くか悩んでいた村雨に飛び火して、騒がしくなる。

 因みに嫁と妹と娘は行く。メイドも行く。

 五十鈴や由良も参加。深海棲艦は全員参加。

 他にも暇をしている艦娘たちも集まって、大きなお祭りのようになりそうな予感がした……。

 

 

 

 

 

 

 で、だ。

 泳ぐとなれば……当然水着は必要になる。

 服屋に買いに行くのも暑いので面倒臭い七海は、纏めて発注するから個人で支払って用紙を持ってこいと言った。

 サイズもちゃんと見てこいと指示して。

「逃げるな村雨! サイズが測れない!」

「いいいいいやああああああ!!」

 メジャーを持った小春に村雨が追われていた。 

 執務室の中を走り回るメイド服の二名と、冷たいお茶をすする春雨と七海。

 あと何時もの三名。バカを見ている目で村雨を眺めていた。

「自分でやるって言ったでしょうが! 何で小春がイチイチやるのよ!?」

「恥ずかしがって適当な数値を言うから。正直に白状しなさい。一番の乳がでかいのは村雨、お前でしょ」

 顔を真っ赤にして怒る村雨を見て、小春は事実を突きつける。

 周囲から嫉妬の視線を受けて怯む村雨。弥生や如月、春雨の目付きが怖い。

 実際、この普段の面子で一番の巨乳は誰か。村雨である。

 七海は体型すら変化しているのでどちらかと言えば山風に近く、一番虚しいのは弥生であった。

「嫉妬なんかしてないよ……嫉妬なんか……」

 とか言いながら殺意すら籠る目に村雨はたじたじ。理不尽な怒りが襲ってきた。

 見事な連山……いや、弥生が平原ならばあれは最早山脈。恨めしい高い山。

 詰まりは憎しみがふつふつ沸いてくる。抉れれば良いのに。

「な、何でこんな理不尽な目に遭うの……」

 村雨はすっかり落ち込んでいた。体型ばかりは仕方ないだろうに。

 マイナスしてキツい水着になろうとも具体的な数字は誤魔化す予定だった村雨の計画は頓挫した。

 結局きっちり計測されて、七海が予め渡したカタログで選んだ水着を発注。 

 七海は注文したそれらを見て思った。

「如月と弥生は……もう、背徳的ですね……」

 これが仮にプールにいたら小学生にしか見えない。

 只でさえ小柄な二名が着ていると、既に……いけない香りがプンプンする。

「弥生は……幼くない。幼くないよ……」

「司令官はそっちのほうが好きなの? だったら如月も頑張っちゃおうかな?」

 妹は自分は幼くないと言うが無理があるし、嫁は何を頑張る気なのか。

 少なくとも、七海はロリコンじゃない。寧ろ昔は自分がロリコンの餌の方だった。

「なんで……姉さんだけ育ったのかな……。わたしも白露型なのに……」

 自分の胸元を見てため息をついて嘆く春雨。 

 上の姉たちは大半発育がよろしいようで、悲しいが春雨には遺伝していなかった。

 小春はなんだかんだ、山風よりも少し小さい程度。全く気にしていない。

「あたしはママとお揃いだから気にしないし。ね?」

「そうは言いますが……あたし、ビキニってのは初めてですよ? 似合わなくても笑わないでくださいね」

 ドラム缶だった以前とは違い、凹凸のある今の体型で大胆なビキニを選ぶのは躊躇いがあった。

 が、娘と春雨とお揃いにすると言われれば、阿呆の七海は条件反射で決定していた。 

 春雨も七海とのお揃いという甘言にほだされて、受け入れて我に返り悶々としていた。

 性格的に恥ずかしいのであったが、時は遅かった。

 七海も相変わらず周りに流される女であった。

 村雨もお揃いであるがサイズが一回り巨大なのは……触れないでおこう。

「体型なんて気にするだけ無駄。お嬢様は気にしない。どうせ、私含めて見てほしい相手はお嬢様だけな訳だから、お嬢様が選り好みしない以上は悩まないでいい。春雨も、弥生も、落ち込まないで。村雨は……知らない」

「村雨だけ扱い酷くない!?」

 小春の言う通り、見てほしい相手は七海。

 その七海はそんな細かいことはどうでもいいので、どうしようも無いことをうじうじしていても時間の無駄。

 みんな好きだ。平等に。だから、皆もそんなことは忘れ初めてのイベントを楽しもう。

 小春はそう纏めて、村雨以外を慰める。

 村雨が何で自分だけと不満を言うが、

「お前は真逆でしょう? 苦しみがわからない村雨に言うことはない。巨乳な自分を恨んで」

 と、バッサリ切られた。またも突き刺さる妬みの視線。

「もういやああああああーーーー!!」

 今日も村雨は絶叫する。

 セクハラが終わっても、結局村雨は……エロいという自分の属性と、宿命からは……逃げられないのであった。

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