君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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その後の動き

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて。

 こうして、何とか無事に戻ってきた戦いは大団円となった訳だが。

 生きていれば、大団円とは限らない。

 七海は、それを痛感するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ず、ガングートに連絡。紆余曲折あって、全員で帰ってきたと。

 死んだと言うのに何が起きたか理解できないガングートは置いといて。

 同時に桜庭が何故か帰港した鎮守府に待ち構えていて。 

 七海も見たことのない鬼の形相をしていた。当然全員戦慄した。

 怪獣が怒りを見せている。自覚のある七海、コロラド、ジャーヴィス、ザラ、ポーラは死を覚悟した。

 例外のゴトランドも小言は言われると覚悟をしていたが想定以上に相手の怒りが強いのに驚いた。

 結局全員が殺されると思ってガタガタ震えていた。

 で、その予感は正しかった。

「……夕立。とうとう、取り返しのつかないことをしようとしたわね?」

 一段と強い殺気を向けられて、七海は仲間を犠牲にしようとしたことと理解した。

 だが、否定する材料もないし、怒鳴られる覚えもない。

 説明しても理解しない姉妹が悪いと悪びれない。

 詭弁でもなんでもいいから言い返すと頭を回転させている七海に、桜庭は。

 

「……ムラマサ、持って帰ってきた?」

 

 と、凄い怒りを見せて問う。

 全然見当違いの言葉に呆ける七海。

「はい? ムラマサ……? あっ」

 しまった。そう思った。

 そうだった。あれは、変異した七海の装備。

 突然変異の原因を究明するべく、回収するべきだったのに。

 まるごと、ブッ飛ばしてしまった。海の藻屑に。

「…………夕立。変異したムラマサ持ち帰らないと原因分かんないでしょう? 何でぶっ殺しちゃうの!!」

 戻ってきたばかりの工厰で、全員桜庭に怒鳴られた。

 一番大事な証拠の回収を怠ったとして、七海は一番キツく叱られて。

 で、コロラド。ゴトランドの肩を借りている彼女も怒鳴られた。

「コロラドッ!! あんたはどうして勝手なことしたの!? そんなに艦隊の仲間を信じられなかった!? それともそうしてでも勝ちたかったわけ!? 夕立が今回は死に物狂いで頑張ったから帰ってこられたけどね、普通は……普通はもう、二度と戻ってこられないのを分からなかったのッ!? 私も提案したけど、あんたは最悪殺されても文句は言えないような姿になってさ迷ったのを自覚なさいッ!! 軍法会議にかけられてもおかしくない違反をしたんだから、覚悟はしておくことね」

 此度の彼女の行動は、審査に大きく響いているときっちりと言われて、謝罪しかできないコロラド。

 自分の愚かな行動の結果は受け入れると、頷いた。

 で、次はジャーヴィス。

「……ジャーヴィス? あんたは、夕立に何回仲間を殺せって進言した? 聞けば随分と仲良くなってるみたいねえ? じゃあ、性格も熟知したのに言ったわけだ。ん? ……私は生憎、騙されないわよ? あんたが社交性の裏で何考えているか知ってるわ。一番矯正しがいがあるのは、あんたみたいね」

 ジャーヴィス、顔面蒼白。夕立に入れ知恵しているのがバレていた。

 折檻を言い渡されて、死刑宣告を受けたのと同等の罰が待っているだろう。

 次、ザラ。

「…………いや、まあ。ザラ……あんたは、正直に言うわ。イタリアに帰りなさい。向いてないからこの仕事」

 ザラには、表情をどこか諦めに近い感じにして彼女は言った。

 ザラは目を丸くした。それは、試験官直々の辞退の勧め。

 何故か、そう聞くと。

「話はガングートから聞いたわ。どうも、一回喰われたらしいわね? その原因は、あんたの感性も一部ある。言いたくないけど、良くも悪くもあんたは民間人の感覚が強すぎる。軍人の思考がまるで出来てない。感情論だけで先走ってるのは前々から見ててあったけど……もう、限界ね。辞めなさいな、艦娘。今ならまだ間に合う。身を引いたほうが長生きできる。あんたみたいな、一般的な思考の艦娘は長生きしないの。真っ先に戦場で死ぬからね。死ぬ思いはしたでしょ? 恐ろしいと分かったんじゃない? 悪いことは言わない。十分ザラは頑張った。これ以上、無理しないで。穏やかな人生を生きたほうがきっと、幸せになる。元々ポーラを追いかけて艦娘に志願したんでしょ? なら、引き際も理解なさい」

 優しい言葉で、この世界から辞退しろと。死んでしまう前に退けと、そう教えた。

 詳しく言えば、七海のやったこともしょっちゅうこの世界じゃ必要になる手段。

 言い方は悪いが常套句とも言えるのだ、そう桜庭は説明した。

 ついてこれずにキレて不協和音を広げて分離するなら、マトモなうちに戻れと言うこと。

 ザラは、迷うように聞いていた。

 次、ポーラ。途端に彼女は疲れた顔になった。

「ポーラ……。あんたはもう、例外。艦娘になってアルコール依存症が悪化してるみたいじゃない。言うだけ無駄だから何も言わない。あんた、不合格が満場一致で決定したから。イタリアに帰れ。最近は夕立が叩いて矯正しているから大人しいだけで、バッチリ数値じゃレッドカード出てるのよ。いい加減ザラに迷惑かけないで自立しろ。大体、あんたはここじゃ大人しくしてるけど、死にたがりの真似も多かったじゃない。どうよ? 本気で死にかけた気分は。これが戦場だって分かったなら、投げ遣りな生き方も自分で何とかするように」 

 辛辣な評価で、不合格が通知された。

 一同妥当と思う。やっぱりアウトだったか。

 アルコール依存症なんて普通に無理だろうし、七海もこれでも全力で叩いたが直らなかった。 

 つまりは無理だったと言うことになる。ポーラも分かっていたのか、大人しく帰ると諦めていた。

 最後、ゴトランド。

「お疲れ様、ゴトランド。大変だったでしょ、この面々纏めるの。夕立は見ての通り効率ばっかり優先していくし、ジャーヴィスはこれだしコロラドも勝手なことするし、ザラもポーラも一般人だし……。負担大きくてごめんなさい。心底気苦労がよくわかるわ。先代も似たような連中が多いから……。兎に角、ゴトランドは評価は高くしておくから」

 唯一労いを受けた。実際仲裁は疲れるので苦笑いしておく。

 疲れた顔の桜庭は、大本営にこのまま全員検査を受けるので向かうと告げる。

 他の鎮守府の艦娘の救助なども含めて色々やることがあるので、回収されていく。

「あ、如月。あなたも来なさい。分かったわね?」

「……」

 隅っこで眺めていた如月もバレているので来いと言われて渋々同行。 

 こうして、全員が呼ばれてあれこれ後始末をすることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言えば、コロラド、七海、如月は重度の汚染を受けていた。 

 とくに魂の汚染は三者とも無視できるレベルではなく、深海棲艦の特性を引き継いでしまっている。

 コロラドは意識が途中から消えており、救出されるまで殆ど覚えていない。

 長期間、ムラマサに喰われたまま徘徊しており、深海棲艦も捕食したせいで一段と汚染濃度が高い。

 七海は元々慣れているとはいえ、攻撃衝動による凶暴化が付与され、如月は理性の消失という重大な欠陥が出た。

 但し、不思議なことに七海と如月は対になっているらしく、互いが互いに引き合うようで一緒にいる限りは暴走しない。

 七海は耐性が既にあるのである程度自制できる。

 問題はコロラドで、半端な状態で呑まれたので深海棲艦の憎しみに負けており、機能に一部弊害が出ている。

 いわく、性能が根本的に上昇はしているが通常の艤装が反応しなくなってしまっていた。

 七海の鎮守府で少数生産される、深海棲艦用の艤装しか装備できなくなった。

 毒気は抜けているが、膨大な力を制御できずに困惑していた。 

 それは追々解決するとしても。

 原因のムラマサは、後日戦闘区域の海底で発見された。へし折れた状態だったらしい。

 で、改めて七海立ち会いのもとで浮遊要塞の腹の中で再生してもらい、現在解析中。

 桜庭も一度手にして、中身を覗いたが力なきモノに持たれると食らいつくと中身に白状させていたとか。

 詳しくは機密なので知らない。聞いた限りじゃそういうことらしい。

 政治的な意味では、桜庭がアメリカと交渉したようで何やらキナ臭い話になっているようで。

 ガングートが舌打ちして七海に教えてくれた。当事者なので、軽くだが知る権利はあるとか。

「アメリカは、コロラドの事をどうやら最終兵器にする気のようだ。どうも、桜庭の教え子……つまり、貴様の存在を向こうは既に認知している。それの対抗策に、コロラドを受け入れこちらに対する一種の有効なカードにする気なんだろうな……。世界にはまだ貴様とコロラドしか、深海棲艦に堕ちた従来型は居ない。貴重なモルモットの確保とでも思っているんだろうよ。気に食わん。アメリカめ、ロシアや日本と戦争でもおっ始めるとか言わないといいが……」

 コロラドの母国から横槍があって、彼女に厳罰は与えるなと言われているそうだ。

 ガングートが懸念している意味が恐ろしいことと分かる七海は、ゾッとした。

 人類同士の戦争の当事者など勘弁願いたい。

 七海の戦果にもアメリカは口出しをしており、マイナスを振り切って大きくプラスに強要されている。

 利害の一致で、コロラドと七海はセットでいたほうが先方の好都合な部分になるそうだ。

「面倒ですね……」

「ああ。全くもってな。貴様はコロラドと親身にしておいた方がいいぞ。不利益になればアメリカのことだ。何をしでかすか分からん。私も個人的には貴様を気に入っている。庇ってやっても良いが、そうなると……フフッ。アメリカの連中は眉をつり上げるだろうさ。面白い。戦争はご法度だが、そういう戦いなら腕が鳴るな。私を倒せるかどうか、奴等に思い知らせてやるのも一興」

「生臭い感じしかしないんですが!?」

 ガングートは不敵に笑う。

 戦争は避けたいがそれ以外のちょっかいなら上等だとか言っていた。

 何をする気なのか、怖いことになるので聞かないことにした。

 政治的な世界には七海を巻き込まないでほしい。

 平和な世界で生きていたいので。

 コロラドは取り敢えずお咎め無しにされた。色んな事情ありで。

 で、ジャーヴィスはとくに何もない。説教とお仕置きで済んだ。

 まあ、仲たがいを加速させたとして、本人のメンタルが一時的に死んでいたが。

 イギリスはとくに看過しないと言っており、公平な評価を求めているので彼女はマイナス。

 次は姉妹。姉は辞退して、妹は不合格で国に帰っていった。

 こういう世界はもう懲り懲りと言って、穏やかに生きていくと決意したらしく。

 艦隊を去っていた。

 最後、ゴトランド。

 一応、一足先に合格ラインを突破していた。

 普段より評価の高い彼女はこの任務により桜庭と戦わずとも正式な最終兵器に就任していた。

 が、仲間が心配と言って一緒に怪獣退治に出てくれるという。よい娘だった。

 残った連中が何をしでかすか分からないと胃薬常備で参戦した模様。

 七海は、桜庭に個人的にこう、呼び出しを受けて言われた。

「渋谷さん。今回は、本当にお疲れ様。色々あったけど、あの二人のことは気にしないで。あれが普通の対応だから。寧ろ、ジャーヴィスやゴトランド、コロラドっていう仲間を大切にしてほしいな。コロラドの為に命懸けで、また深海棲艦になってまでよく頑張ったわ。渋谷さんに関しては、ちょっと周りが五月蝿いから評価は分かんないけど……ただ、深海棲艦を受け入れてくれる人は、他にも出来たよね。だから、言う。……あの娘たちは、信じてあげて。貴方の仲間や、お友達を信じてほしいの。同じ苦しみを知っているジャーヴィスや、親しくやっているコロラド、なんだかんだ受け入れてくれるゴトランドは、敵じゃない。あなたの味方をしてくれると思うから」

 人間を信じてみろと。そこにいる、仲間という人間を。 

 七海の不信感を知っているけど、信じていい人間だから。

 ……七海もバカじゃない。ジャーヴィスはとっくに信じている。

 コロラドも、仲良くしているから少しは信用している。

 ゴトランドは微妙だけれど、その内信頼するかもしれない。

 漸く、同年代の友達や仲間と言えるような間柄が出来た。

 一人じゃない。今は、頼ってもよいと思える人がいる。

 七海はその信じてもいいと思う艦隊の仲間と挑むのだ。

 最強の試験官、大怪獣大和。倒すと決めた。絶対に倒そう。

 ……どんな手を使ってでも!!

 

 

 

「桜庭さん。取り敢えずお忙しそうなので、早めに試験の再開をお願いします。元気ないうちに殺しますので」

「おい待てそこぉ! 殺すって何!? まだあの毒物使う気なの!?」

「当然です。あとは多忙なうちに急いで日程を組みます。ガングートさんもお仕事の邪魔してくれるそうです。面白そうだからと」

「あの女は悪魔か!! 挙げ句には私の事まだ怪獣とか言うの!? 止めて、本当に死んじゃうからストレスで!」

「死ぬならちゃんと海に還ってください」

「ちょ、本気で勘弁して!!」

「嫌です。容赦しませんので、大怪獣大和さん」

「あんぎゃああああああ!!」

 

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