君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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姉の威厳で更なる高みに

 

 

 

 

 

 

 七海が好き勝手食い荒らしている頃。

 此方では、はっきり言えばいじめが発生していた。

「ううううわああああ!?」

 進撃の駆逐艦が、ゴトランドを袋叩きにしていた。

 主に二名、姫が目の仇にしている気がする。

 反撃するも、飛ばした艦載機はとっくに旗艦の軽巡に落とされていた。

 確かあれは、ゴトランドに似ている防空軽巡みたいな役割が出来るらしい。

 事前に聞いた話じゃ、侮ると蜂の巣も有り得るから警戒は怠るなと言ったのに。

 無意識で舐めていたゴトランドは猛烈に攻撃を受けていた。

 因みに、七海を差し出せとかお前はお呼びじゃないとか散々その二名が吠えていたが聞いてない。

 背後の普通の駆逐艦はどこか呆れていたし、今回の景品さんとか七海が襲おうとしている彼女は止めても無視されていた。

 軽巡は頭を抱えていたし、大丈夫か七海のところの艦娘たち。

 とは思っているのもつかの間、正直に言おう。

(ここの艦娘、凄く実戦に慣れてる! しかも格上と!!)

 戦ってわかったのは、ここの艦娘は連携が非常に上手い。

 性能が上の格上に対する動きを初見で把握して上手に渡り合っている。

 厄介な連中だ。ここの性能はゴトランドとコロラドで勝っている。

 が、艦隊とは連携が鍵になるし、向こうは恰も嫌がらせのような行動をしてくる。

 一人ずつ仕留める気なのだろう。

 援護のコロラドが当てにくい、中距離や近距離でゴトランドのみを狙ってくる。

 大物相手にも怯まない、中々統率されている。厳しい。

 コロラドも混乱していた。攻撃が全部避けられる。

(狙いは悪くないのに、どうして?)

 大丈夫、砲撃はスムーズにいっている。

 なのに、あの疾走する駆逐艦たちは華麗に避ける。

 機動性では小型艦ほど小回りが利いて接近されたらそれだけ不利になる。

 基礎をよく押さえてるし、殴りあいになれば向こうは火力と装甲が阻む。

 故に回避に徹して倒せるゴトランドだけを狙っていくのか。

「ゴトランド、大丈夫!?」

「全然大丈夫じゃないかも!! なんか一人、変な娘がいるよ! 多分、夕立さんのお嫁……うにゃー!?」

 二人を分断して、近寄れないように群れでゴトランドを孤立させて囲って殴る。

 分散させようにも、撃った後には狙った場所に誰もいない。

 背中に目玉でもついているのか。電探に砲弾は映らないだろうに。

 ゴトランドの情報は、若干一名明らかに射程のおかしいのが紛れている。

 多分、如月というお花の髪飾りの艦娘と言うと本人が黙らせに来た。

 気安い奴は嫌いらしい。

(もしや……ここの艦娘は優れた直感を持っている? 確か、心眼とかいう第六感)

 と、コロラドが思うほど本当によく動く第一艦隊。

 実際は大したもんじゃない。種明かしは簡単である。

 五十鈴の指示は、落ち着いて対処すれば勝てない相手じゃない。

 但し戦艦は徹底的に無視していくと。

 何故なら戦艦を倒せる火力がない。

 此方は良くて五十鈴と妙な武器を持ち込んでいる如月。

 火力と射程の異様に高い得物だが、なぜあんな長物使えるんだろうか。

 兎に角、コロラドは後回し。旗艦のゴトランドを撃破に絞る。

 で、回避できるのはここの変態に慣れているから。

 もっと近距離で、もっと素早く飛びかかって演習中でも良からぬことをする変態よりはずっと避けやすい。

 ぶっちゃけ砲弾は直進しかしない。奴は急な方向転換も普通にする。

 何が言いたいかと言えば、余程危ない変態を相手しているので砲撃ならば慣れっこ。

 速度に対する反応は七海により十分鍛えられていた。

 最近妙に発情期のあの娘に比べればいくら規格外の戦艦と言えど。

 基本構造は大差無いのだから、セオリーが通じると踏んだがその通りであった。 

 結果、位置と攻撃さえ気遣えばどうとでもなるコロラドは無傷で、ゴトランド大破。

 倒されてしまった。

「よし、旗艦撃破……」

 ノロノロ撤退していくゴトランドを見送り、興奮状態の駆逐艦たちは何やら反応する。

 電探に一瞬映る影。刹那で消えて、また映る。

 この移動の仕方は、メインイベントが向こうから来てくれたか。

「あらあら……。ゴトランドさんを倒すとは、五十鈴も上達しましたね」

 派手に飛沫を飛ばして、着水して停止した音。

 背後を振り返ると、無傷の七海が待っていた。

 いつも通りの笑顔で、もう一人は倒されたのか居なかった。

「あら、七海。ジャーヴィスはどうしたの?」

「彼女は怪我したので、棄権して貰ってます。でも、残念ですね。山城たちは全滅ですよ」

「……でしょうね」

 無線で聞こえていた、気の毒な山城の絶叫。

 この娘、また加減しない暴力を振るったようだ。

 コロラドが警戒しながら寄ってきた。

 一度止まる戦い。戦力差は更に倍加した。

 砲口を向けているが皆戦意が高まる第一艦隊。

 対して、驚きと称賛の表情のコロラド。

 そして、ぶれない七海と五十鈴。

 双方、にらみ合いをしていた。

「降参するなら、今のうちですよ五十鈴。今のあたしには、コロラドさんもいます。ジャーヴィスも、ゴトランドさんも見ています。一人じゃないあたしに、勝てると思ってます?」

 余裕の降伏勧告。七海は既に然り気無く、自分には心強い味方がいると自然に言えていた。

 今まで他人を、とくに人間を頼ったり信じなかった七海。 

 その彼女が、自分から言い出している。まさに劇的な変化。

 五十鈴はどこか嬉しそうに、目を細めていた。

「そう……。変わったわね、七海。今回は良い意味で」

「?」

 自覚ないのか、首を傾げるがそれはいい。 

 友達という存在や、同じ立場の仲間が出来たのだ。 

 艦娘では決してなれないかけがえのない人たちがいる。

 七海は、もう少なくとも艦娘と深海棲艦だけが味方じゃない。

 他人に興味のなかった彼女にも、親しい人がそばにいる。

 姉として、喜ばしい限りだと自然と微笑みが浮かぶ五十鈴。

 妹が珍しく正しく成長している姿を見て、笑顔になっていた。

 ……が。

「ああ、降参しないからね。あんたに勝たないと村雨の貞操が危ないから」

 村雨を虎視眈々と狙っているのは知っている。

 不純同性交遊は認めない。絶対にだ。

「やはり最後の敵は五十鈴でしたか。村雨を寄越しなさい。あと後ろの嫁と妹と娘も従者も。全部あたしのモノですよ」

「いい加減になさい。あんたは発情期か。片っ端から手を出そうとして。合意でも何でも、成人するまでは絶対に五十鈴は認めないわよお姉ちゃんとして」

 性教育の出来てない変態に、お仕置きを兼ねてかかってこいと言う。 

 背後の嫁と従者が無言でターゲットを五十鈴に変えていたが。

「そこ、無言で裏切らないの。あんたらは茹だった頭を冷やしなさい」

 振り返らずとも分かる。あの二名は言うまでもない。

 村雨が顔を真っ赤にして、二人を宥めているが……。

「村雨、お前は黙ってお嬢様に全てを捧げていればいい。私も続く」

「そうよ。自分だけしておいて抜け駆けはズルいんじゃないの?」 

 聞いてない。ダメだったこの二人。

 唖然とするコロラド。コイツら、要するにそういう関係らしい。

 まあ、人それぞれだから文句はないが……。

「折角、頑張ってるの見てほしいのに……。ママが見てくれない……」

「ショック……かも……」

 山風と弥生が、バカをしてて見てくれないと不満そうに七海に文句を言った。

 途端に我に返る。

「……そうでした。目先の村雨に先走って、皆の活躍を見るはずだったのに。流石は謎の村雨嬢……」

「提督、淫乱なのは提督です。村雨じゃないです。引力ないからね」

 淫乱じゃないと否定しておく。その扱いはしない約束なのにと怒ると直ぐ謝る。

 ハッとして、七海は一瞬迷って。

 一度、鎮守府に通達。春雨を呼び出す。

「はーい? 何でしょうご主人様?」

「春雨、今から言う支度を早急にお願いします」

 提督として、何やら命じているが。

 なんと、ご褒美あると自分を見失うので欲しがる艦娘全員に七海は一日券を出すから予約用の準備をしておけと言い出した。

 要するに、真剣になるので余計なものはあとでいいやという七海の妥協。

 当然皆は大喜びだった。ロハで入手できたのだ。

 平等にしようという七海の提案で、皆は更にやる気アップ。

 最早殺気立っていた。喜びで。

「夕立……」

「何も言わないで結構。自覚してます」

 最初からそうしておけという、コロラドの指摘は分かっているので反省しておく。

 取り敢えず、気を取り直し再開する。

 最終決戦が、とうとう始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、思いきや。

「じゃあ、とっとと全滅させますか」

 七海がいきなり本気を出してきた。

 深海棲艦に変化して、巨大化した鉤爪を纏う姿に変身。

「司令官がその気だったら、如月も本気で行っちゃうわよ!」

 此方も変身した深海如月に、一同呆然。

 そう言えば知らなかった。言ってないので。

 角生えた如月が、邪悪に笑っておっ始める。

 七海が真正面から飛び込んでくる。

 相変わらず速い……じゃない。

(ちょ、何この速度!? 見えないじゃない、分かんない!?)

 五十鈴は直ぐ様理解した。 

 七海の速度がまた上がっている。もう、此方では捉えきれない。 

 遠方で水柱をあげたと思ったら、直ぐ目の前にいた。

 巨大な爪が、振り上げられている。

 ちょっと待て。直線で軽く見積もっても100Mはあるのに。

 艦娘の感覚ですら、追い付けない超速度。防ぐので精一杯だった。

 狙いはやはり五十鈴。リーダーを初手で倒して烏合の衆になった皆を片付ける気だ。 

 コロラドも分かっているのか、撹乱に切り替えて撃ってくる。

 邪魔立てする戦艦の砲撃とその中を縦横無尽に駆け回る七海。

 成る程、よく考えた。火力ならばどちらも致命傷。

 当たれば終わりというその思考は、変わらないか。

 だが……。

「あんたの癖は分かってるのよ!!」 

 五十鈴は逃げない。振り上げたその左腕、肘の部分を狙って艤装の増設しておいた機銃を掃射。

 七海の反応速度ですら回避不能な超至近距離の攻撃に、なんと彼女が、被弾。

 撃たれた七海は苦悶の声をあげて一度退いた。

 撤退する最中も、どうやら見えるらしい如月と小春が追撃。

 驚く山風や、弥生と村雨。

 距離をあけた七海は肘を負傷して、関節を潰されて膝をついた。

「夕立!?」

「すみません……。急所を貰ったようです」

 立ち上がる七海は、直ぐに元の姿に戻った。

 左腕は、肘に弾痕を残して負傷。流血していた。

 動かせないと訴える彼女に、コロラドは何が起きたか分かんないらしい。

 再び襲う七海は何時もよりも、目に見えて遅くなっていた。

 激痛で鈍っていると五十鈴は感じる。焦りが彼女にも見えていた。

「五十鈴さん、流石ね。司令官の癖をよく知ってる」

 応戦する如月が笑って言った。

 彼女は深海棲艦になったまま。性能は今は如月が勝っている。

 五十鈴は言うのだ、経験が勝ったと。

「速度で惑わされるけど、結局七海だもの。効率優先の、性能頼りの戦い方をするじゃない」

 詰まりはマジで心眼だった。

 七海の慣れない変形により、蹴り技主体から大振りの攻撃になったせいで、増設機銃でも追い付けるほどには遅くなっていた。

 移動速度が上がっても、攻撃速度は落ちている。  

 更に大物を振るう宿命で、咄嗟の回避が出来ない。

 特に超至近距離での場合は致命傷。七海は反応出来ても重くて鈍ったのだと指摘する。

 で、七海は元々捨て身が多く、その時最も有効な方法を必ず最短で通る。

 つまり言えば、さっきならば五十鈴を真っ先に倒すために慣れない変形のまま、突っ込んでくる。

 後ろにコロラドがいるという安心感が、深海棲艦のまま突っ込むという手段を選ばせた。

 七海の最大の武器は、蹴りによる機動性。あらゆる速度で惑わすスピード特化。 

 故に、山城もやったがカウンターに弱い。捕まると何とかならない場合はこうなる。

 素手という軽さが重要なのに、鉤爪なんていう重たいものを使うから。

 だから、反撃で痛手を受けるのだ。

 小春たちが本気になって、七海を追い詰めている。

 一撃でも貰うと、七海は動きが鈍化する。

 無傷だから速いのであって、怪我すると気が散るので散漫になるのも知っている。

「あの娘は、便利なモノがあると直ぐ頼る。それじゃあ、あの人には勝てないわ。五十鈴にも対応されるんじゃねえ」

 お粗末と笑う五十鈴は、姉としての確かな観察力があって、事実性能は負けたが経験で勝っていた。

 敢えて、使うと相手に思わせて使わないという選択肢。

 それを出来るようにするだけで、七海は強くなれる。 

 山風や弥生にすらボコボコ撃たれ、村雨も遠慮なくぶちこみ。

 結果……。

「あんたは後で、お勉強ね。今はお疲れ様」

「あたし……負けちゃったんですか……」

 満身創痍で、ボロボロになった七海は、かなり持ちこたえたが、軈て倒れた。

 が、五十鈴も思う。……弾丸、消耗し過ぎた。

 偉そうなことを言って、倒れる七海を抱き抱えるのは良い。 

 然し、向こうにはまだ余力のあるコロラドが自棄っぱちで残っていた。 

 後回しにした、つけがきた。

 此方も七海の反撃で皆結構傷ついている。

(一人なら勝ってた。でも、今回は此方の負けね……)

 気絶する七海をお姫様抱っこで持ち上げて、素直に降参しよう。

 皆ももう無理と言うので尚更。

 こうして、対抗演習は七海たちの勝利で終わった。

 沢山の反省点と、改善点が浮かび上がって。

 また、皆は一歩……ラスボスの怪獣に近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追記。

「提督を着せ替えするんです!!」

「衣笠さんはカラオケ行くからね」

「七海ちゃんとお買い物に!!」

「ママ、映画いこうよ映画!!」

「弥生は動物園……!」

「えっ? わたしもいいんですか?」

「村雨は……別にいいんですけど……」

「お嬢様、一緒に一日中惰眠を貪ろう」

「如月は……お風呂かなぁ?」

 各々、終わったあとに好きなこと要求していた。

 若干一名懲りてないので、お仕置きが実行され無事に済んだという……。

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