君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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窮屈な居場所

 

 

 

 

 

 

 こうして、多くの深海棲艦が姫園鎮守府に着任した。

 出先から戻ってきた七海よりも一緒に出ていた五十鈴と由良が先に帰ってきた。

 あの娘がまた深海棲艦拾ってきたと出先で聞いて愕然とした。

 今度は20以上。内心五十鈴は思う。

(定数以上拾ってくるなっての!! 住まいはどーすんのよ!?)

 明らかに鎮守府の着任限界以上の深海棲艦が集まっている。

 多少余裕があると言えど、流石にこんな人数は賄いきれない。

 だと言うのに大本営は七海以外では無理なことを言うのだから、預かれと押し付けた。

 結果として、大量の女性が一度に増えた。

 艦娘たちは、とうとう七海に怒った。

 嬉しそうに困惑したり恐縮したりしている深海棲艦や拾った艦娘たちがついてきているのだが。

 正門で、五十鈴が出迎え……。

「こんのお馬鹿ッ!!」

 怒鳴って早々、鉄拳制裁。頭に拳骨を叩き落とす。

「ファッ!?」

 怒られるとは思ってなかった七海、見事に直撃。

 頭を押さえて踞る。唖然とする一同の前で、五十鈴は説教を開始した。

 由良が怒り心頭で周りが見えない彼女に代わり、苦笑いで待っていてほしいと説明する。

 七海が無茶をいって、規模以上の人数を集めてしまって、現在部屋割りを直している。

 後は過ごせるように大本営から届く荷物も悪いけど皆で搬入もお願いすると。

 当然、深海棲艦も穀潰しにはなれない。

 それなりに仕事を与えられ、元艦娘も今も艦娘もここに所属になり、要するにまた戦える。

 大本営からは生活費などは工面されつつ、実験や研究の対象にもなる。

 ただ、お望み通り襲われない平穏な生活も約束されたのだ。

 と、由良は皆に語りつつ、後ろで喧嘩をする七海と五十鈴。

「あたしは悪くありません! 何故ならあたしは悪くないから!」

「屁理屈を言うなァッ!!」

 五十鈴に頭を掴まれアイアンクローされて絶叫する七海。

 お仕置きなので気にしないでいいと由良がフォローする。躾であって体罰じゃない。

 そもそも部下が上司を体罰とか意味不明すぎる。

 一同絶句。あの七海が単なる軽巡に力負けしている。

 姉妹のようなものなので気にしないでとこんな風なドンチャン騒ぎの鎮守府で申し訳ないと謝るのも由良だった。

 ハゲも大本営に向かい、彼女たちから得た情報を桜庭に伝えた。

 すると、彼女は言った。七海の行為を助けてほしい。

 いざとなれば今回のように、島村の助力を受けないとこれからはやっていけない。

 詳細は言えないが世界にも目をつけられている七海は、要注意の人間。

 これまで以上の悪意が全世界から向いている。僅かで良いから、共に居てくれと。

 主張の異なる対立の立場の彼にも、彼女の補佐を優先するように特務を与えた。

 最後に、桜庭に言われた。

「今回はあの子を信じてくれてありがとう。島村提督、私の教え子を……宜しくお願いします」

 頭まで下げられて、元帥ともあろうお方が何を仰るかと彼も流石に動揺した。

 だが、逆を言えば七海の立場はそれほどに追い込まれているという意味となる。

 承った彼は、厳命であると同時に自らの誇りに誓って、新たな可能性を模索する事も考える。

 戦うだけが全てではない。新たな選択肢の先駆者を潰させる訳にはいかない。改めて腹を括った。

 ……彼も正直に言えば興味もあった。戦争以外で関わる、深海棲艦と人間、艦娘の在り方に。

 どう変わる。どう流れる。気になって仕方無い。その未来が、国の明日を豊かにするかもしれない。

 いや、もっと言えば……敵を皆殺しにせずとも、深海棲艦と人類が共闘もあながち夢じゃない。

 そんな気がした。七海は既に実行している。

 彼女は本当に自由なやり方で何者にも出来ないことをやっている。

 敵が居ない、平和な海。最終的にはそうなればいい。

 全滅するまでしなくとも、結果として、そうなれば同じじゃないか。平和に越したことはない。

 故に、彼は彼女の覇道を支持する。目標は同じだと、信じて共に戦えることを嬉しく、誇らしく思う。

 実際はそこまで七海は考えていないが、深読みと誤解は悪化していく。

 単純に深海棲艦可愛い、欲しい、お持ち帰り。そういう発想。

 最低すぎる。高尚な国防の誓いと、低俗な変態の欲望。

 何もかも真逆な癖に、妙に歯車が一致する奇妙な関係。

 そんな二人の間は至って良好であった。

 話は戻るが、正門で例の如く嫁と妹と娘とメイド三人がお出迎え。

 新人の深海棲艦。彼女たちも目を丸くする。本当にいた。しかもクラシックなメイド服で。

 人一目で同類と互いに認知した。そして牽制の一撃をお嬢様命の変態二号がぶち当てる。

「よく来た、歓迎する。盛大に。最初に言っておくけど、ここはお嬢様の箱庭。お嬢様の意志に背く行為は私が許さない。お嬢様の寵愛を拒否した場合は物理で愛情を身体に叩き込む方向でいく。この隣の淫乱メイドのように無駄な抵抗は一切禁じる」

「誰が淫乱よッ!! 新しい面子の前でまで誤解を招く事を言うなァ!! いい加減その言い掛かりを止めなさい!」

 無表情で親指で隣のツーテールメイドを指差す小春。

 今回は改造和服メイド服は洗濯して補修しているので同じクラシックなメイド服で登場。

 で、安定のエロ艦娘村雨はキレてグーで殴る。笑っているピンクの髪のメイド春雨も穏やかにしていた。

 五月蝿い感じだが雰囲気は悪くない。そう皆は思う。

「小春、今日は普通のメイド服ですか? 可愛いですよ」

「ありがとう。お嬢様に誉められるのが一番嬉しい」

 相変わらず呼吸するように皆を愛でる七海。

 頬を赤くする小春に微笑み、一度村雨も見た。

 途端に警戒する村雨。微妙に身構えていた。

「な、何ですか……? 村雨は何も言ってませんよ」

「今日は一段とエロいんですがシャンプー変えましたか?」

「セクハラするなって何時も言ってるでしょうが!!」

 案の定だった。

(何でそういうことだけ直ぐに気がつくかなこの変態は!!)

 真顔でセクハラされて怒った村雨にはたきで叩かれた。そのまま顔面から地面に倒れる。

 羞恥と怒りで顔を真っ赤にし呼吸が乱れる村雨を手のひらで示して春雨が補足する。

「こんな感じでいつもご主人様は皆さんをしっかりと見ています。何かあったら、直ぐに報告してください。怒ったご主人様に勝てる人間は此処には居ませんので」

 嫌な部分で信頼していいと言われても困る新人たち。

 暗にこの鎮守府における憲兵などの人間も、七海には勝てないという春雨の暗い警告。

 微笑んでいるが、皆はわかった。この三人も迫害を受けて、七海に守られているのだと。

 崇拝するような春雨が言うのだ。ほぼ間違いない。

「……まあ、驚いたでしょう? 突然こっちに来いとか言われても。大丈夫。五十鈴たちは普通の艦娘だけど、七海の部下だからね。深海棲艦も慣れっこよ。っていうか、七海で慣れているから偏見もないしみんなおんなじ仲間。そこに区別も差別もするなって、七海が口酸っぱくして言ってるから。あぁ、けど注意があるわ。こいつ言うこと聞かないと誰彼構わずセクハラするから、そこのところは気をつけて。こいつは本物の変態よ」

 ここでは七海は等しく人間扱いすると、目をバッテンにし気絶する彼女を猫掴みで持ち上げ見せつける五十鈴が言った。

 ため息交じりであった。変なやつじゃない。ただの変態。

 同性であろうが何だろうが兎に角直球で愛情表現(過剰なスキンシップ込み)をする、倫理も常識もない脳内まで蕩けきった発情期のバカ犬。自分はその姉みたいな立場の代表。

 彼女は言動の一致が基本的なので嘘も偽りもない。

 故に心配せずとも一切皆を傷つける気はない。

 但し愛情表現にセクハラしてくる。さっきみたいな。

 と、目が点になる皆の前で五十鈴はボロクソに言った。

 これが証拠と、ずっと黙っていた三人に自己紹介させてみる。

「駆逐艦如月よ。司令官のお嫁さんだから、あんまり近づかないでね? ……司令官は如月のモノだから」

「駆逐艦弥生……。七海姉の、妹……。戦いは得意じゃないけど、一緒に出るなら……その、宜しく……」

「あたしも? 面倒くさい……。あたし、山風。ママの娘。ママ困らせることしないでよ。その時はあたし怒るから」

 嫁、妹、娘。全員駆逐艦。要するにロリコン。自分も駆逐艦。ロリコンのロリ。

 言うまでもなかった。言葉が出てこない。話と全然違う。なにこの変態オンパレード。

 マトモな艦娘は周囲に居ないのか。

「いるわけないでしょ。七海は全員大好きなの。自分が死んでも皆を優先するような頭してるのよ。一応注意しておいて。この子、追い込まれると直ぐに自分を擲つから」

 五十鈴が彼女はこういう人物と一通り説明して、唖然とする周囲に案内すると引き連れて入っていく。

 確かに平穏で平和だろうけど何か違う。絶対致命的に違う。

 艦娘優先の思考なのであまり無茶も言わないで欲しいと由良もコッソリと付け加える。

 ぞろぞろ続く一同は、こうして姫園鎮守府に着任した。

 別の意味で、身の危険を感じながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、大本営から客人も様子を見に来るから受け入れろと命令された。

 各国の最終兵器の方々。詰まりは桜庭の同僚。お偉いさんだが、立場は気にしないでいい。

 無理を言ってる以上は強くは出ないと各国は了承している。

 此方は渋々大本営が予算で何やら持ち込んでいた。

 キャンピングカーだった。小規模にあるまじき人数になったんでこれ使え、との事。

 海外の重要なポストの割には失礼極まる客員相手に安い宿であった。

 最悪深海棲艦が車中泊しろと言われ、複数のワンボックスも宿の代わりに寄越していた。

 聞けば七海が行った行為は世界も警戒するような次元であり、七海も自分と同じ海外の従来型艦娘をいれる気はない。

 追い払ってもよいというから早々追い回して撃退してしまった。

 皆を好奇の目に晒す事も極度に嫌がり追い払う。

 然し、若干一名にその辺にしろと制止を喰らって停止。

 なんとあの七海が、言うことを素直に聞いた。

 指図が大嫌いな七海が。七海が言うには、多分桜庭と同じく格上の歴戦の猛者。

 追い回していた、割と本気でぶっ殺そうとしていた七海の放った一撃を、割り込んで片手で防いでいるのを皆は目撃した。

 騒ぎに気付いて慌てて宥めに行ったのだが、そこでは本人も信じられないような表情で見ていた。

 ロシア海軍の制服を纏った、左頬に傷跡のある銀髪の女性は豪快に笑ってロシア語で何か話していた。

 その場にいた唯一翻訳できる駆逐艦いわく、こう言っていたそうだ。

『悪くない一撃だったぞ小娘。殺気も十分ある。威圧感も妥協なし。然し、軽いな。その体躯では仕方なしとはいえ、貴様の牙は軽すぎる。速度は大和を超えると言ったのは納得したが……まだ未成熟じゃないか。だが、気に入ったぞ貴様の啖呵とその態度。磨けば光る。貴様は素晴らしい原石と見た』

 放り投げるように解放した女性は腕組みして、挑発した。

 かかってこい、腕前を見てやると。じゃれてやろうというか。

 で、バカにされたと七海は感じて反射的に飛びかかる。

 鳩尾を蹴り飛ばそうと突っ込むが、呆気なく速度に対応されて掴まれた。

 再び七海は理解を超えた。陸上で七海を超える反射速度。掴んでまた放り投げる彼女は指摘する。

『甘いな。貴様は本能で戦っているようで中身は理屈か。現状最も効果のある箇所を最短、最速で攻めて一撃の軽さを手数でカバーするのは宜しい。だが、フェイントもなしに素直に攻めては愚直に過ぎる。真正面から攻撃するなら鳩尾は有効だろうな。そして、貴様はこう考えているはずだ。そのまま前のめりに倒れたところを喉笛を潰して終了、と。自分の速さに自信があるのは良いが、過信がある。未熟者が、私に通じると思うか?』

 反射速度で追い抜かれたら意味がないと指導していると翻訳された。

 何度か繰り返し、悉くを防がれて七海は素直に相手の技量を認めて従うと決めたらしい。

 尊敬に値する、との事。人格も実力も。

 大半は何しているか見えずに呆然としているのに、彼女は余裕だった。

 若輩者が多いらしく、渋々受け入れた残った逃げなかった連中の世話も焼いている。

 工厰立ち入り禁止と執務室立ち入り禁止を受けているが。技術的なモノを信用しないための措置である。

 歓迎するしかないと諦めた七海はちょっかい出したらぶっ殺して追い出すと全員に脅してその女性ガングートも賛同したのもいい。

 丁度良かったので節分も一緒にやっていた。

 は、いいが……。

「じゃぱにーず、えろかんむす?」

「誰がですかッ!! 違いますよ!!」

 イギリスの駆逐艦が、村雨相手にセクハラして本人が激怒した。

 長袖のミニスカートワンピースの金髪碧眼の女の子は、慣れない日本語でそう聞いた。

 誰が日本のエロ艦娘だ失礼な。節分に落花生を代用して準備していた村雨は頭に来た。

 通じてないが、ふざけるなと翻訳機で分かって慌てて謝罪するそのイギリスの駆逐艦。

 名前をジャーヴィスと言うらしいが、背後を気を付けた方がよかった。

『おいそこのオタク。あたしのメイドをエロ艦娘とはいい度胸ですね』

『夕立ごめんなさい、あたしが悪かったです! この通り!!』

 英語で怒っていた七海が追い出すと脅すと土下座してジャーヴィスは謝った。速攻だった。

 この人種、オタクらしく色々やらかしていた。

 アメリカの軽巡、某まな板空母に似た髪型の少女にもその後絡んでいた。

『えー……アトランタさんは、裏表のない素敵な艦娘です。はい復唱』

『てんめえ……あたしを何だと思ってるんだ……!!』

 ダウナーな雰囲気のなんか駆逐艦の制服を無理矢理大人が着ているような女の子、アトランタもキレていた。

 一人で居ることを好む割と口は悪いが大人しく静かな艦娘。

 声が似てるからってギャルゲーのヒロインのネタを振ってはいけない。一般人分からないので。

『みなさーん、ここに変態がーってのでも良いよ?』

『誰がパッケージヒロインだ!! ブッ飛ばすよ!?』

 わざわざ七海が知っているので気の毒に教えてやると怒るアトランタ。

 ジャーヴィスとにらみ合いしていると、節分しているせいで、襲撃を受けた。

『あいた!?』

 暁が外国のお客様と遊びたくて落花生を投げていたのだ。

 で、此方に凄むアトランタ。当然お子さまの暁はビビる。

 すると、七海が怒気を放ってアトランタが怯える。

『ちょ、いや……ナイトメア? あたし、被害者じゃん……?』

 七海をナイトメアと呼ぶ彼女は恨むのジャーヴィスで良くないと責任転嫁。

 ジャーヴィスも再度ピンチになった。

『アトランタ、今回は手伝います。そこのゴールドモザイクを普通にモザイクに仕上げますので』

『話分かるじゃん、ナイトメア! 良いよ、そこのバカオタクぶっ飛ばしてやろう!』

 ダウナー軽巡と狂暴ナイトメアのチーム結成。

 結果、ジャーヴィス大ピンチ。節分の鬼の代わりに外に叩き出される。

 その後、ジャーヴィスの裏返った絶叫が聞こえるのは……騒いでいた皆が予想した通りだった。

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