君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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やべーコンビってレベルじゃなかった

 

 

 

 

 

 

 上司に、警戒を言われて、七海は決意した。

 皆を守る。だけど、それはきっと一人では無理だろう。

 相手は桜庭と同じく、最終兵器。アメリカの代表なのだ。

 規格外の戦闘能力を有する、化け物に間違いない。

 今までの相手とは訳が違う。どうすれば、守れるか。

 真剣に考えた。いつも通り、自分だけで思考する。

 七海の悪い癖。一人で勝てないと分かるのに抱え込む。

 何も言わないで、自分がそうしたいからそうする、そんな少女。

 だが、この世界は違う。決定的に。

 ガングートがいる。アトランタがいる。何より、ジャーヴィスがいる。

 ある世界では友達と言える稀少な存在になった彼女が。

 本当の名前を明かしてしまえるほど、信頼できたジャーヴィスたちが幸運にもここにいる。

 ガングートもそうだ。嘗てあった最悪の結末にて、唯一最期まで面倒を見てくれた。

 国を越えて、生にしがみつく愚かな女を助けてくれた恩人がいた。

 また、言葉を深海棲艦と交わした豪傑もいた。

 あの男は、この世界では七海を助ける特務を賜った。

 ならば、あの男もまた彼女に手を差し伸べる。

 島村という男は、たとえ彼女が深海棲艦に堕ちたとしても、決して敵対しなかった。

 共に戦うことを誉れと誇ってくれた。この世界には、人間たちが揃っている。

 条件は整った。国が相手だとしても、彼女は負けない。負けられない。

 ピースはもう、手元にあるのだ。彼女が完全なる理想郷に辿り着く、好条件。

 三つの世界を乗り越えて、渋谷七海は、皆が幸福になれる世界を目指せる。

 人間が、揃った。ならば次は、深海棲艦。

 人間を諦めて深海棲艦にならず、人間を信じて深海棲艦に至るとすれば。

 それは、今までにない最強の深海棲艦が誕生するだろう。

 愛に狂うイカれた彼女の、新たな、そして最後の覚醒の序章を、始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、鎮守府に閉じ籠り皆に鬱憤が溜まっていると七海が考えて、ローテーションで出かける計画を立てていた。

 尚、客人たちは既に激減して、もう殆ど残っていない。

 七海が追い出してしまった。脅しや露骨な扱いに堪えかねていた。

 残っているのは深海棲艦に適応したり仲良くしたりしている連中のみ。

 結局、環境に我慢できずに帰っていった。

 アトランタ、ジャーヴィス、ガングートなど一部は七海も軟化した態度で接していた。

 ガングートは元々枠外だが。その彼女も、渋い顔で桜庭と連絡を取っていた。

「ふむ……アイオワめ、本当に日本と戦争を始めるようだな。個人で国に喧嘩を売るとは、血迷ったか。大和、だが良いのか? あいつ、他にも面子を集めているようだ。此方で把握しているだけで、カナダやブラジル、オーストラリアに……」

 顎に手を当てて、片手で携帯を持って鎮守府の裏で通話しているのを見回りしている時に見かけた。

 忙しそうなので、関わらずに無視したが何やら裏でも大きなことが起きているようだ。

 自分のことなのに気にしない七海は嫁とイチャイチャしながら戻っていった。

 それに気付いて横目で見送るガングートも続ける。

「あのバカめ、バルト三国まで連盟を組もうとしているようだったぞ。安心しろ、バルト三国は潰しておいた。ブラジルもな。裏手でロシアにも妨害工作を働いたようだからな。報復しておいた」

 電話先で、見境ないアイオワに呆れている桜庭のため息が聞こえた。

 裏工作でロシアに挑むとは無謀な。特殊組織など世界有数の強力なロシアと知っての狼藉か。

 嘲笑うガングートは言った。

「次はカナダを消す。連中め、例の話の候補地に選んだ場所に細工をしたらしい。賄賂でもって、業者に口添えしたようだ。オーストラリアも此方の作業に横槍を入れて妨害しているが、どうする? 私が判断していいなら、根本から捻るが?」

 要は皆が直接気に食わないアイオワは反省と報復を物理で行うため、敢えて放置。

 それよりも外側の協力者を知らない間に排除していく。ロシアの本領発揮であった。

「……分かった。バカの教育は我が国に一任してもらおう。本当の恐怖を、我が国の流儀で叩き込んでやる」

 桜庭に、此方は関係者の身辺警護をするので、排除を宜しくと頼まれる。

 電話を切ったガングートは非常に凶悪な笑みを浮かべていた。

 こういう作業は昔から面白い。まるで戦争。武力でなく、権力の殺しあい。

 楽しい。目立たず、然し確実に結果が見えるこの戦争は本当に楽しい。

 だいぶネジが吹っ飛んでいるガングートだがこの人一応味方です。一応。

 次々に指示を出す最中。ふと、気付く。アイオワがまた動いた。

 見張られているとも知らず、また勝手にやらかした。

 尚、既にアイオワは身内から諦められ、国から関与してないこいつの独断と見捨てられ、孤立無援なのを気付いていない。

 頭がハンバーガーとコーラで満たされている極めつけのバカなので、こういう裏工作に向かない。

 だから、周囲は潰されているのを理解できず苛立ち焦れて、更に過激になる。悪循環の繰り返し。

(ふむ……教え子に入れ知恵しておくか。派手に荒立てて、あのバカを挑発してやろう。大和にも一報入れておけばいい。あいつは単純だからな、追い込まれれば自分で何れは襲ってくる。大義名分さえあれば、罠と知っても乗るだろうさ。分かりやすい。アメリカの面汚しめが、私や大和に勝てると思ったか)

 パワーに全部能力を注ぎ込んだ知性の足りない子供なので、煽れば更に激怒する。

 扱いやすい、そして救いようのない愚者に、ガングートは嘲りを交ぜつつ、出かける七海に入れ知恵を図った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七海はそれでも出かける。ガングートにも言われた。

 気を付けろ。どうやら、もうこの鎮守府は見張られている。

 出かけるなら、荒事に備えろ。細かいことを気にせずに、余裕がないから攻めてくる。

 故に、七海は二人を誘う。

「アトランタ、ジャーヴィス。奢ります、観光しましょう」

 暇をもて余す二人は、相談をしようと思っていたのに出鼻を挫かれた。

 大事なことだが、ガングートに二人も言われる。

 取り敢えず、大事になるから用心しておけ。七海がどういう女か、自分で確かめろ。

 七海も、アトランタとジャーヴィスがもうある程度は打ち解けているとは見ている。

 たまには気晴らしでも良いだろうと誘ったのと、何かあればお国が黙ってないというある意味の身代わり。

 半分が変化、半分がいつも通りという微妙な心境の違いだった。

『デカイ、ヤバい、怖い! すごーいカブトムシー! ……って、なに? 驕り!? うん、行く行く!!』

 特撮の変身音をオモチャを使って真似ていたジャーヴィスはオタク故か直ぐに反応。

 カブトムシのアイテムを荷物にしまっている。最新の悪党のアイテムらしい。

「いや、あれ……主人公? なんで金属のイナゴ使ってるの、意味わかんない……」

 ジャーヴィスに誘われて最新の話を観ていたアトランタも、暇だし心配なので行くと答えた。

 画面では、お笑い芸人が金属のイナゴを纏って奮闘するも、高笑いする邪悪な社長に蹴飛ばされて横たわっていた。

 イナゴを使うヒーローはありなのかと、真剣に悩んでいた。

 準備をしている二人をおいて、今回は嫁と妹と娘とメイドたちと久々にいく。

 代理は、五十鈴に任せておく。

「宜しくお願いします。帰る頃には血塗れでしょうが」

「……七海、あんた何する気なの?」

 不穏な単語をわざと言って、経験上身構える五十鈴は不可抗力という意味を悟る。

 七海がするんじゃない。七海がされるのだ。そして、これは囮にして誘きだすという作戦でもある。

 ガングートに補佐をお願いしておくと、五十鈴も解せたのか気を付けろとだけ言った。

 伊達に一度は暗殺未遂を乗り越えていない。今の七海は皆を守るためなら遠慮なく反撃する。

 多少、軟化してもあの激情は早々直らないだろうから。

 執務室で、喜ぶ皆を見ながら五十鈴は小声で七海に言っておく。

「帰ってきなさい。必ず、皆で。誰一人欠けないで」

「……はい」

 戦争になるかもしれない。五十鈴も、七海も、アトランタもジャーヴィスも、ガングートも。

 皆分かっていた。これは所詮、狼煙に過ぎない。これから発生する戦いの序章。

 強大な個人と戦うための、始まりに。

 七海がこうやって、五十鈴に素直に白状したりガングートに根回しするだけ変化していた。

 以前はもっと感情的で、暴走している状態だっただろうが、今は幾分冷静になっている。

 故に警戒できた。反撃の準備をする。

 派手にしても、軍部が口止めと情報封鎖をできるバックアップもある。

 最悪桜庭が居るのだ。負ける理由などない。

 妙に身構える皆と、なにも知らない周囲の面子との久々の外出が、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おめかしする六人と、普段通りの制服のジャーヴィスとブラウスにジーンズのアトランタ。

 そして、何気に動きやすい白露型の制服の七海で出掛けた。

 何事もなければ、別にいい。そのまま楽しむだけ。

 でも、多分それはないだろうと分かっている。

(心苦しいですね……皆の笑顔を曇らせるのは……)

 どこか上機嫌の小春や、村雨も笑っている。春雨など大喜びだった。

 無邪気な弥生、山風、如月だけが不穏な空気を察知して、音もなく七海に近寄る。

 皆で騒ぐ往来の歩道。近場の、商業施設を目指して歩いている。

 そんな中、嫁は春物の服で七海の傍で囁く。

「準備は出来ているわ、司令官。皆浮かれているみたいだけど、そうも言えないんでしょ?」

「お見通しですか、流石は嫁」

「ふふふっ」

 然り気無く、武器を持ってきている如月は不敵に笑う。

 分かっているんだろう。このお出かけは台無しになると。

 でも、その台無しは……必要なこと。七海の苦心も、分かってくれる。

 後で土下座でもなんでもしようと、如月は言っていた。

 アトランタも、ジャーヴィスも出来れば何もないことを祈っていた。

 誰しも、荒事にはなりたくない。けれど、それは……起きてしまう。

 ある意味、予定通りで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巻き込まれたのは、姉妹だった。

 小春が自販機で購入して、皆も道中にある公園に寄って暫し遅れた花見も兼ねて散策している頃。

 村雨と春雨に、見るからに怪しい黒いスーツに黒いサングラスに帽子の男たちが、声をかけた。

 何人もいる彼らは、道を教えてほしいから少し先まで送ってほしいと言われる。

 春雨が七海に一声かけて、微妙に警戒している村雨も無礼なので一応教えるために案内する。

 背中を向けて、戻ってきた無警戒の春雨と共に歩き出す。

 公園から出て、近くの建物の陰を通りかかった頃だった。

 村雨は、隣に立って案内していた春雨とは違い、警戒心が強い。

 春雨は七海の溺愛により愛でられた結果警戒心が欠落している。

 なので気付かないが、背後で言うなれば殺気を感じた。がちゃがちゃという小さな金属音も。

 軍属だからこそ、聞き覚えのあるその音は、危険を察知して隣の妹を庇って咄嗟に倒れることに成功した。

 その音と、嫌な気配は。人間が使う、拳銃の音と。

 七海に対する、普通の人間の嫌悪感とそっくりだった。

「春雨!」

 庇って倒れる刹那、村雨は見た。

 此方に武骨な大型拳銃を、消音装備をつけて銃口を向けているエージェントと思われる連中を。

 数回、銃撃を受ける。倒れて回避できたが、起き上がる前に愕然とする春雨は言葉を失う。

 無言で銃口を向けてきている知らない大人。呆然として、反応が遅れる。

「春雨、逃げ……」

 素早く起き上がった姉が助け起こす。

 台詞の途中で、間に合わないと何時かのように愛する妹を庇った。

 効果があるから使う大型拳銃。撃たれれば、死ぬかもしれない。

 村雨は思わず目を閉じる。怖い。やっぱり、人間なんか最悪な存在だった。

 せめて妹だけでも、と思った……その瞬間。

 

「ご主人様が来たよ、姉さん」

 

「…………へっ?」

 

 何故か普段通りの妹の声。

 驚いていたが、取り乱していない彼女は大丈夫と笑っていた。

 ……うん、いつも通り。春雨が警戒心が欠落しているのは、何故か?

 それは、ご主人様がとっても迅速で確実で強い狂犬だからである。

 

 どぐしゃぁっ!!

 

 呆けた声を出して、振り返る。丁度、凄い音がした。

 同時に、男の一人が何かを回避して、近くの外壁に、何かが勢い良く飛んで突き刺さった。

 ……公園にあった、ベンチ? 大破してバラバラになっていたが金属の足だけが、刺さっている。

 

「落ち着いて、ナイトメア!! 死ぬ、それ死んじゃうから待って!! ジャーヴィスもそれ死ぬって言ってるじゃん!!」

 

 で、男たちの更に背後。アトランタがパニックになりながら必死に宥めて止めていた。

 が、そこには……取って置きの危険生物が、二名ほどいた。

『お前ら絶対ぶっ殺す……』

 ベンチを投げたのは片手でもうひとつベンチを持っているジャーヴィスだろうか。

 綺麗な碧眼が濁った状態で、英語でそう罵っていた。無表情で。

「春雨、村雨……30秒下さい。そこの生ゴミを捨て置きますので」

 七海に至っては完全にキレていた。

 オッドアイは血眼で血走り、左手にはなんとバス停の標識を担いでいる。

 根元にコンクリートのついた、鈍器である。

 殺意しかない装備で、倍加した狂犬と誰も知らないが、殺人未遂経験者の人殺し擬きのコンビが、タッグを組んだ。

 挙げ句には如月まで呆れたような顔で、スタンガンを構えており、逃がさない布陣が出来ている。

 唖然とする皆をおいて、アトランタだけが悲痛に叫ぶ。

 

「うわああああああもういやだあああああああーーー!!」

 

 一つ、追加しておこう。

 アトランタは、苦労人の胃痛枠だった。

 兎に角、狂犬と人殺し擬きを止めるため、アトランタが頑張る次回に、合掌ッ!!

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