君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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砲雷撃戦(物理)

 

 

 

 

 

「…………」

 他人への無関心。

 七海は幼少時より、そうだった。

 正直な話、コミュニケーションは嫌いだった。

 他人は興味がない。それよりも、紙の媒体や映像の媒体、そう言うものの方が楽しかった。

 なぜなら、七海は相手に反応を求めていない。一方的に楽しければ満たされた。

 自分のペースで進めるのが好きな子供だった。

 家族以外とは、大して接しなかったのは、鬱陶しいと思ったから。

 外で遊ぶ? 怪我をするから嫌だ。疲れるから嫌だ。

 運動の鈍い自分はほっておいていいと、周囲に言って周囲も置いていった。

 それで調和は取れていた小さい頃。

 得意、不得意を分かってからは嫌なことを上手に避けてきた。

 活字を好むのは、時間を長く潰せるから。無論、マンガもゲームもそれなりに楽しむ。

 今だって、日曜の朝にやってる特撮を、日課なので眺めている。

『知っているかな、卯月くん。ウサギはね……性欲をもて余す生き物なのだよッ!!』

 悪役の変態が現れて、主人公の女の子は悲鳴あげて逃げ出した。

 見た目は男の子だが、中身は歴とした女の子。それをペロペロしたいらしい最低の敵の幹部。

 エロスジェントルマンを名乗る奴は、仮面を被っていた。目元だけを隠す白い仮面を。

 派手なポーズで登場して、変身した。

『往くぞよ!! 今度こそ少女をペロペロするのだァッ!!』

 変身ベルトを構えて、股間を強調するダンスを躍りながらおっ始めた。

 ――ノーコントロールリビドー! ロリコンハザード、やめええええええ!! 

 ベルトが必死に制止していた。

 変態がそれで言うことを聞くわけがない。

『私のエロスが迸るッ!! 往くぞォ!』

『きゃあああああああーーーーーー!?』

 毎度思うが、日曜の朝によく流せると思うこの番組。

 主人公、気の毒に……。因みに数分すればヒーローが来る予定。 

 追われる少女、追い回す変態、数分後駆けつける英雄。

『ははははは!! これだからバカな人間は面白いッ!! だが……法律は守らないとなァ!? っていうか、うちの娘に何してんだゴルァッ!?』

 主人公を守るのは、実は地球を侵略しに来た悪い宇宙人。

 だったのだが、娘の主人公の親父に擬態しているうちに娘への愛で改心。

 娘を守るべく日々、悪の秘密結社『スケベユニコーン』をぶちのめす正義の使者、らしい。

 悪役のような口調で現れて、颯爽と全員生身でブッ飛ばす。

 変身するまでもない。七海はこの父親が気に入っていた。

「…………」

「司令官、朝御飯食べていい?」

「お好きにどうぞ」

 画面では親父がキレてアスファルトに拳をめり込ませて戦っている。

『き、貴様は……仮面ファイターラブ!?』

『ハッ、今頃気付いても遅い!』

 親父も変身。天体をモチーフにして、娘への無限の愛で強くなる陽気なバーの店長である。

 ゴツい派手な装飾を施した巨漢のファイターが登場、いきなり必殺技。

「司令官、マーガリンどこー?」

「冷蔵庫の一番上の棚ですよ」

「……あったー。ありがとう」

 ラブと名乗るファイターは不敵に叫ぶ。

『良いこと教えてやるよ……最後に勝つのは愛と正義ってやつだってな!』

 ――ラブラブテックアターック!! アデュー!!

 大きく跳躍。呆然と見上げる変態。

 派手なエフェクトを出しながら巨漢の急降下の蹴りが放たれる。そろそろ決め台詞が出る頃か。

 蹴りが変態の脳天を直撃。

 親父の愛が今週も炸裂した。

『ぐあああああああ!!』

 倒れる変態、大爆発。それを背に、親父は決めた。

『……アディオス』

 カッコいい。本当に宇宙人かこいつ。いいやつ過ぎる。

 最後に娘を迎えにいく所で今週は終了。

 次週は二号ファイターが出てくるとか。

 実に楽しみであった。満足して画面を閉じる七海。

「司令官、コーヒーの瓶はー?」

「…………今行きますので」

 週末なので、如月が遊びに来ていたのだ。

 彼女は特撮にはあまり興味がないようで。

 いつも見ずに朝御飯を用意している。

 いわく、

「如月はタイマンって言われてもわかんないし……」

 とのこと。数年前の奴を見ていて止めちゃったらしい。

 話はずれるが姉は特撮好きである。

 たまに睦月の変身を見るにゃし!! とか言ってポーズ決めている。

 如月のたれ込みであった。

 で、日曜なのだが今日は昼に例の演習もとい、喧嘩祭りの日である。

 通常勤務は皆に任せて、七海たちは近海で殴りあう予定。

 あの後、しっかりと由良と響には謝っておいた。

 二人は、分かってくれればいいと許して、五十鈴がその後個人的な話で連れていった。

 次の日に聞いたのだが、吹雪に関して二人で何とかフォローしてみるといってくれた。

 有りがたいので、素直に礼を言ってから、任せている。

 皆の結論は、問題が問題なので、やはり殴りあいはしておいた方がいい。

 こう言うのは後腐れなく、と言うのは難しい。時間ぐらいしか癒せる手段もないのだ。

 吹雪の問題になるし、妹を違う場所とはいえ失ったと聞けば、辛い気持ちにもなるし八つ当たりもしたくなる。

 しかも普段から仲の悪い相手が一端になっていれば余計に。

 今日の演習は、吹雪のガス抜きと同時に、七海も吹雪の相手をする。

 但し。恐らく、本当に殺しあいになる。

 沈まないのだから向こうも死ぬ気で来ると、響は言っていた。

 故に、七海は司令官として、吹雪の憎悪を受け止める。

 あの行為そのものの詫びはする気はないし、後悔もしない。

 必要なことであり、如月の命のためだ。事故、としか言えない。

 吹雪も分かっているが感情の昂りは我慢出来ない。それも、仕方ない。

(さて。如月とご飯食べて、準備しますかね)

 私室の備え付けのミニキッチンに立っている如月と一緒に、七海は朝御飯を食べて、昼に備える……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼過ぎ。ドックの準備も終えて、皆は近海の真ん中で突っ立っていた。

 それぞれ、七海の指示なしで好きにやれと七海が命じて、好きにやっている。

 勝敗はとりあえず互いの全滅か降参。それ以外は無し。

 旗艦は五十鈴と由良が務める。駆逐艦が大半の艦隊だ。

 五十鈴が皆に作戦をたてているが、七海は例外。

 従来型の艦娘として初めて言われたのが、

「あんたは前衛で派手に暴れて夕立」

 旗艦として、七海ではなく、駆逐艦夕立として参戦している彼女に命じる。

 中々に七海……いや、夕立は恐ろしい艤装を使っている。

 皆とは明らかに異なる造形。背中に背負う機関は大型で、彼女はなんと手ぶらであった。

 精々、手甲をはめているだけ。後は脚部に装備が集中している。

 左足に何故か可動式の主砲を搭載。よく見れば、如月の速射砲の連装バージョン。 

 右足にも同じものがついていた。

 腰から、一応魚雷らしきものをぶら下げているが、危ない。

 夕立が言うには、これは打ち出す機能は無いらしい。

 投げをするための武器だそうで。つまりは、手で外して投擲する。

 滅茶苦茶過ぎる。足には装備を載せた具足、両手には波形の手甲。

 頭には水上、対空の電探にソナーを纏めて使う複合アンテナと通信機を兼ねるヘッドフォン。

 全体的に危険性を意識しているのか、漆黒と黄色の配色が目立つ。

 まるでスズメバチのような目立つが手を出したくない配色。

 従来型の艦娘は常識が通じないとは言うが、それにしても怖い。

「司令官、カッコいい!!」

「如月。戦闘中は夕立として扱いなさい。今のあたしはただの駆逐艦」

 手を合わせて目を輝かせて褒める如月。

 最近、彼女のLOVE度数が酷い。

「お姉ちゃん、威圧的だね……」

「カッコいいでしょ?」

「そうだけど……」 

 イムヤが浮き輪の上に座って眺めている。

 くるくる回って全身を見せびらかす夕立。

 戦闘中は提督呼び以外なら好きにしていいと言うので、普段通り呼ぶ。

 今は五十鈴の命令に従う駆逐艦だ。

「夕立ちゃん、援護は任せてね」

「睦月の本気を見せてやるのね!」

 五月雨と睦月の頼もしい言葉に、夕立は頷く。

 開始のブザーが鳴った。審判は古鷹にお願いしており、観客も何人かいる。

 扶桑と山城は初の従来型の艦娘を見るので、少し楽しみだった。

「んじゃ、始めるわ。皆、ついてきて」

 偵察機を放つ五十鈴が号令をかけて、演習が開始される。

 戦いの、始まりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五十鈴の偵察機が相手を発見した。

 そこまで射程が長くない互いの艦隊。

 夕立は司令官として全部の装備のデータを記憶している。

 フェアになるように工厰の珍獣と相談して決めた今回でも、見れば大体分かる。

 情報で彼女に勝てるわけがない。故に対策も読まれる。

 イムヤが慣れた手付きで先制の雷撃を放つ。

 ソナーを装備しているのだろう。散開して回避したようだ。

 と、言うことはどうせ爆雷も持ち出している。 

 由良の艦載機を見つけて見上げる夕立。

 気にしないで、五十鈴が突撃を命令した。

「初陣よ夕立。……食い散らかして」

「了解です」

 五十鈴は訓練状態の夕立の結果を見ている。

 なので、こういう采配にした。そして知る。

 放たれた夕立は、狂った猛犬のように、攻撃のみに特化していると。

 それまで、皆に合わせていた夕立。だが、行けと言われ。

 

 ――突然、艦隊を激しい波が襲った。

 

 至近距離。背丈を超える波が、皆を飲み込む。

 驚く一同。水中のイムヤも大きな音がしたと報告する。

 頭から海水を被って、全員びしょ濡れだった。

 幸い、艤装は濡れた程度じゃ問題ない。

「行ったわね。じゃ、援護を始めましょう。……心の準備も、しておいてね」

 五十鈴が意味深なことを言った。

 波が起きた先にいたはずの夕立が忽然と消えている。

 何かと思えば、先程の波は夕立の瞬間的な加速のせいらしい。

 彼女の速力は艦娘のそれとは違い、人間に近い。

 一瞬で最高速度に達して放たれる様は、航行と言うよりも跳躍。

 要は、夕立のスピードは飛んだり跳ねたりがメインの、海上に足がつかない高すぎる機動性。

 一瞬のスタートダッシュは、電探から消えたような速度で動くので、視認せねば戦えないと言う。

 同時にその性質上、海中の魚雷が当たらない。空中を跳ね回る彼女に当たる訳がない。

 人間と言うか、超人のようなモノらしい。唖然とする周囲に、五十鈴は疲れたように言った。

「規格外の仲間だからね……。五十鈴たちの常識じゃ通用しないを通り越して分からないもの。何とか追いついて見せないと」

 偵察機が報告。敵の艦隊に駆逐艦が一人で突っ込んで暴れている。

 相当な距離を一分かからずに詰めて、始めていた。

 援護する彼女たちを差し置いて、その頃。

「きゃー!?」

 突然乱入してきた駆逐艦に、暁がパニックになっていた。

 電探が妙に速い何かを察知したと思ったら、至近距離に既にいた。

 由良も驚いている。この接近するまでの間に、迎撃も出来ずに寄られた。

(なんて速さ!? 従来型の艦娘はこんなに速いの!?)

 艦娘とは思えない速度で現れた彼女、夕立。

 真正面から飛び込んで、由良が直ぐに指示して散開する彼女たちに無表情で言った。

「ほら、かかってきなさい吹雪。あたしは、此処ですよ」

 吹雪を名指しで挑発した。吹雪は当然反応する。

 無謀とも言える愚策に、怒鳴った。

「一人で突っ込んで……的になりたいんですか!?」

「的になるなら、そうでしょう。……試してみますか?」

 淡々と、急停止して待っている。

 周囲を取り囲む彼女たちを一瞥して。

 吹雪は由良の指示に従い攻撃はしない。

 悔しそうに睨んでいる。夕立は黙って見ていた。

「……由良。攻撃しないんですか?」

 囲むように配置した周囲を見て、由良に夕立は問う。

 主砲を向ける威嚇など、彼女に効果があるわけがない。

 装備の詳細を知るなら、ダメージも予想していると見る。

 棒立ちが寧ろ怖い。由良はあれこれと必死に考える。

 だが、夕立は悠長には待たない。

「じゃあ、こっちから行きます」

 とだけ、告げて。

 再び、波を起こして消えた。

 距離を跳躍して詰めて、雷の真ん前に着々。

「!! 皆、迎撃を!!」

 由良が迷った一瞬で、雷が接近されてしまった。

 雷も撃とうとする。が。

「知ってます雷? 砲雷撃戦の、もうひとつのやり方って」

 左手で、雷の主砲を殴って弾き飛ばす。

「きゃぁ!?」

 悲鳴をあげて思わず後退する雷に、詰め寄った。

 そして。

「これが、従来型の艦娘の、砲雷撃戦です」

 胴体に腕を回して捕獲。豪快に抱き上げる。

 驚く雷に、夕立は持ち上げて構える。

「きゃー!? 見えちゃう、見えちゃうってば司令官!!」

「……ああ、ごめんなさい」

 スカートの中が見えると抗議する雷に謝りながら、夕立は呼び方を訂正しつつ。

 嫌な予感がして、逃げ腰になる電を発見した。

「……お覚悟を」

「ひぃっ!?」

 案の定だった。

 慌てて逃げ出す。由良が庇おうとするが、投げ槍の要領で構えを取る。

「……えっ? 雷、こんな意味で胸を貸すって言った訳じゃ……」

「有り難くお借りします。全身ですけど」

 呆然としている雷を、勢いをつけて。

 ……投げた。電目掛けて。

 思いっきり、放り投げる。

「放る雷の攻撃による戦闘。略して、放雷撃戦」

「漢字が違うでしょおおおおおお!!」

 砲弾と化した雷の絶叫が木霊する。

 逃げ惑う電よりも空を切る雷は早かった。

 そして。どーんと。

 派手に頭から、逃げる彼女の後頭部にぶつかって。

 大爆発した。早速二名脱落。

 言葉を失う彼女たちに、従来型の恐ろしい攻撃が、幕を開けたのだった……。

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